「趣味悪!」
俺の声が木霊する。紅魔館の住人からしてみれば失礼この上ない。
「同感ね、ここはいつも薄暗くて真っ赤だから目に悪いわ」
霊夢も賛同する。やはり傍から見ても紅魔館は常軌を逸しているのだろう。そういうものは当事者以外には賛同されにくいものだ。悲しきかな紅魔館。
「とりあえず門番のところに行きましょう」
「門番なんているのか。なんというかスケールが大きな。俺のいた世界でも、門番なんて大きな城にしか居なかったぞ」
「そう?でも確かに、紅魔館以外で門番なんて見たことないわね」
「だろう?しかも門番を任せられてるやつなんだ、結構な実力者と見るがどうだ?霊夢」
「残念、ここの門番はそれほど強くないわ。まぁ、接近戦になれば結構強いかもしれないけど」
「あれ、読みが外れたか」
「残念だったわね、…ほら、あそこにいるのが門番よ」
「お、どれど…れ?」
そこには緑色の服と帽子を被って、立ちながら寝ている女性がいた。
「…霊夢さん?まさかあそこで立ちながら寝てる人では断じてないですよね?冗談ですよね?」
「彼女が紅魔館の門番、紅美鈴よ」
「まじでか…」
思わず絶句する信二。それもそうだろう。門番とは客を最初にもてなす、言わば最初の顔と言っていいだろう。また、不審者等を館や屋敷に入れないように常に気を張っているのが仕事だ。それなのにこの門番は堂々と昼寝をしている。
「門番の仕事しようよ…」
信二は未だ寝ている美鈴に訴えかける。…その言葉は届かないが…。
「大体いつも寝てるわよ?この門番」
「駄目じゃん門番!」
「うぇ?!何ですか?あ、霊夢さん、こんにちは。そちらの方は?」
門番が俺の少し大きな声で起きる。…些か起きるのが遅いような気がするが…。そもそも寝ること自体が間違ってると思うが…。
「おはよう美鈴。こっちはこないだ幻想郷入りした信二よ」
「初めまして。火渡信二だ。信二って呼んでくれ」
「初めまして信二さん。紅美鈴です。この紅魔館の門番をやってます」
「俺の目からは全然門番の仕事してなかったように見えるんだが?」
「そ、そんなことないですよ〜。ちゃんと見張ってましたよ」
「爆睡してたじゃない。これじゃあまたお仕置きされるわよ?ねぇ咲夜」
「え?」
「そうね、美鈴ったら全然反省しないんだもの。今回はキツくいっとこうかしら」
「い、いらしてたんですね、咲夜さん…」
美鈴が油がまったく差されていない機械のようにゆっくり後ろを振り返る。そこには紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が暗黒微笑をしていた。
「霊夢、あの人は?」
「紅魔館のメイド長の十六夜咲夜よ。紅魔館の家事全般をほぼ一人でこなしてる奴よ」
「一人で?こんな大きな屋敷を?」
「ええ、妖精メイド達もいるみたいだけどあまり役に立っていないそうよ」
「すごい人だな…掃除だけで1日終わるんじゃないか?」
「彼女には時を止める能力があるわ。それを使っているから1日で家事が全部終わるのよ」
「時を止めるって…とてつもない能力だな…。もはや彼女が最強なんじゃないか?」
「そうでもないわよ。私も勝ったことあるし」
「…霊夢も大概あれだな…」
「聞かなかったことにするわ」
と、そんな話をしているとあちらではお仕置きが終わったのか咲夜がこちらに来る。…美鈴?ナイフが刺さってボロボロになっています。
「待たせたわね霊夢。そちらの方は初めてですね。紅魔館のメイド長、十六夜咲夜でございます」
「もっと砕けた口調でいいよ。火渡信二だ。よろしく」
「では、そのように。信二と霊夢は今日は何をしに?」
「信二が幻想郷を旅して回ってるのよ。私はその付き添い。あとパチュリーに会いに。こいつも魔法使いだから」
「なるほどね。それなら歓迎するわ。ただしパチュリー様に会う前にお嬢様に挨拶をしていって下さい」
「お嬢様っていうと、この館の主かな?」
「そうよ、館に入るからには主に挨拶くらいはするものよ」
「まぁだよね。それなら早速挨拶に行こうかな。案内してくれるかい?咲夜」
「もちろん。こちらへどうぞ」
俺達は咲夜の案内のもと紅魔館の中へと入る。
「そう言えば霊夢と咲夜は戦ったことがあるんだよな?さっき霊夢が咲夜に勝ったって言ってたから」
「そうね…霧の異変の時ね」
「霧の異変?なんかあったのか?」
「昔この紅魔館が幻想郷の空を赤い霧で覆ってしまった異変よ。その時に咲夜と戦ったの」
「異変を起こしてたのか。今はまるくなった感じなのかな?」
「そうなるのかしら。あの時は私達も幻想郷に来たばかりだったから。こんな厄介な巫女がいたなんて想像してなかったわ」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
「やっぱり霊夢は異変が発生したら解決しに行くのか?」
「ええ、面倒だけど、それが博麗の巫女の仕事だから仕方ないわ」
話しながら歩いていると一際大きな扉の部屋についた。どうやらここに紅魔館の主がいるそうだ。
「お嬢様、霊夢がお目見えです。新たなお客様もいらっしゃいます」
「そう、入ってきていいわ」
そう言われたあと咲夜が扉を開ける。
(粗相のないようにね)
(分かってるよ、これでも国に使えてた騎士だから、心配するな)
「こんにちは霊夢。あなたが新しい客ね。ようこそ紅魔館に。私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ」
そこで待っていたのは俺が想像していたような人物ではなく、薄い青色をした髪に翼を生やしている、どこから見ても幼い少女だった。