「初めまして、お嬢様。私はつい先日幻想郷入りをした火渡信二と申します。どうか信二とお呼びください」
「あら、霊夢と一緒にいるのに随分と礼儀正しいわね」
「どういう意味よ、あなたも失礼よレミリア」
「ちょっとした冗談だったのだけれどね、失礼したわ」
「それにしても女性の方だったとは。それに随分お若いですね。てっきりお年を召した男の人かと思っておりました」
「見た目に騙されてるわよ信二。あいつ、あの見た目で500年は生きてるわ」
「500年?!本当ですか?」
「ええ、本当よ。でも若いって言うのはあながち間違いじゃないわ」
「お嬢様は吸血鬼ですので。吸血鬼で500年と言うのはまだまだ歳をとっていない年齢です」
「なるほど、吸血鬼ですか。それなら納得です」
「吸血鬼は知っているのね」
「元の世界にもいましたので」
(敬語が抜けてない…)
「それで?今日は何用で紅魔館に来たのかしら?」
「私は先ほど申しましたように幻想郷に来たばかりです。なので今幻想郷を見て回っているのです」
「それで私が紅魔館を提案したのよ。信二は魔法使いでここにはパチュリーもいるでしょ?」
「なるほどね。それならパチェに会うといいわ。彼女も喜ぶだろうし。咲夜、図書館に案内してあげて」
「かしこまりました。では信二様、こちらへ」
信二は言われた通り咲夜に付いて行く。
「ああそう、霊夢はここに残りなさい。私とお茶しましょう」
「なんでよ」
「あなた魔法に興味無いでしょ?行っても退屈だと思うけど。それに咲夜に紅茶を入れさせるわ」
「……」
確かに霊夢は魔法に興味が無い。行ったところでこの前の魔理沙と信二が話していた時のように疎外感を感じることだろう。それならレミリアとお茶をしていた方が有意義なのではないか?咲夜の紅茶も美味しいことだし。
「…そうね、そうしようかしら」
「ふふ、ありがとう。そしたら咲夜、信二を図書館まで案内したら紅茶をお願いね」
「かしこまりました。それでは少々お待ち下さい」
そう言いながら信二と咲夜は部屋を後にする。
「それにしても意外ね。本当にちゃんと出来てたじゃない。そんなふうには見えなかったのに」
「俺もそう思う。無理やり叩き込まれたからなー。初めて王に挨拶した時は結構礼儀知らずでな、恩師に『そんなんじゃいつか首が飛ぶぞ』って言われて強制的に習わされたよ」
「いい恩師じゃない。作法は大事よ」
「今は習って良かったと思ってるけど、当時は思ってなかったな。まぁ大体そんなもんだろう。有り難みなんて後になって分かることだ」
「同感ね」
「そう言えばパチュリーって人はどんな魔法使いなんだ?」
「魔法使いとしては一級品よ。どんな魔法も使えるし魔力も膨大。おまけに知識も相当ある、魔法使いとしてはかなり上位の人だと素人目からでも分かるわ」
「すごい人だな。より会ってみたくなった」
「けど一つだけ。喘息持ちだからあまり戦闘はこなせないのよ。」
「喘息持ちか。それは大変だな」
「ええ、付き人の小悪魔も苦労してるわ」
「小悪魔?」
悪魔と言う単語に対して反応する信二。悪魔に対していい思い出がないので仕方の無いことだが。
「そんな大した悪魔じゃないわ。本当に使い魔のような感じだから」
「そうか…。世の中にはそんな悪魔もいるんだな」
「ええ。驚いた?」
「ああ。驚いた。悪魔には嫌な思い出しかないからな」
「そうなの?今度聞かせてくれるかしら?」
「もちろん。少し重い話になると思うけどな」
「そう…。っと着いたわ。ここがパチュリー様のいる図書館よ」
「遂に来たか。待ちわびたぜ」
そう言い信二は図書館の中に入る。そこにはおびただしい程の本の数。図書館という名に恥じないほど広く、大きい。またいくつかの場所から少量の魔力を感じる。どうやら魔導書も置いてあるみたいだ。
「パチュリー様。お客様がお目見えです」
「あら、咲夜。私にお客?」
本棚の奥から声が聞こえる。そこから歩いてきたのは紫色の髪をした少女。
「その人が?会ったことは無いわよね?」
「ええ。幻想郷を旅している信二様です。この方も魔法使いとの事で是非パチュリーとお話がしたいそうなのです」
「初めて。火渡信二です。よろしく」
「ええ、よろしく。あなたも魔法使いなのね?」
「はい。なのでパチュリーさんからお話を伺いたくて」
「そんなかしこまらないで。いいわ、奥で話しましょう」
「そうか?ならお願いするよ」
「それでは信二様。ごゆっくり」
咲夜が部屋を後にする。俺はというとこれからの話に胸をふくらませていた。