「妖夢のその刀は結構な業物なのか?」
妖夢との手合わせを終え今は台所を借りて花見用の食事を作っている。ちなみに霊夢さんは幽々子さんとお話中…お話好きだな、霊夢。
「そうですね…まず長い方の刀。これは楼観剣と言います」
「楼観剣…」
「妖怪が鍛えたと言われている刀です。この剣に切れぬものはほとんどない…と思います」
「なんか曖昧だな」
「私の腕だと限界があるのでまだこの剣の上限が分からないんです」
「まだ実力が未知数か…これからが楽しみだな」
「もうひとつの短刀。これは白楼剣といい人の迷いを断ち切ると言われています。魂魄家の家宝ですね」
「迷いを断ち切る?それはまた珍しい能力だな」
「はい。と言ってもその能力はあまり使ったことはありませんけど」
「そんな機会早々なさそうだもんな」
「それに私自身あまりこの能力を使いたくないんです」
「使いたくない?なんでまた」
「人の迷いを断ち切る…それがどこか自分勝手な感じがして。なんて言うんでしょうか…人を変えてしまうような気がして」
「それは違うと思うぞ」
「え?」
「人は何かに迷ってる時、他人に助けを求めるものだ。自分じゃどうしようもないから迷ってるんだと思うしな」
「…」
「それに人の迷いを断ち切るなんてまるで聖人みたいじゃないか」
「か、からかわないでください!」
「はは、悪い悪い。でも俺はそう思うけどな」
「…そういう考え方もあるんですね」
「ああ。…ところで妖夢、料理の手際いいね」
「幽々子様のために毎日作ってますから」
「……こんなに?」
既に作られた料理の量は明らかに四人(まぁあとから魔理沙が来るのだが)が食べる量としては多い。しかも妖夢は未だ料理を作る手を止めない。
「幽々子様はいっぱい食べますから」
「…いっぱいの量が凄くない?」
「…幽々子様ですから」
「何その理由…」
「…でも最近は特に沢山食べてますね」
「…これ以上?」
「いえ、前はこれより少なかったんですけどつい数週間前から食欲がまして」
「大変じゃない?」
「…正直大変です」
「だよね」
妖夢からなんともいえない哀愁が漂う。料理を作る手は止まらないが。
(まだ作るのか…)
俺は驚きを通り越してもはや呆れていた。
時は少し遡り、妖夢と信二が調理に入った頃。幽々子と霊夢は縁側で話をしていた。
「いや〜強いわねあの子。妖夢が手も足も出てなかったわ」
「信二のこと?確かに強いわねあいつ。この間もフランとレミリアの二人を相手して勝ってたしね」
「知ってるわ。天狗がばらまいてた新聞に書いてあったもの」
「何してんのよ文は…」
実は信二は人里にいる時どこから聞いたのか烏天狗の射命丸文に紅魔館でのことをインタビューされていた。その時の話はまたいずれ…。
「あそこまで強いなんて、一体何をしてたらああなるのかしら」
「…色々あったのよ。詳しくは本人に聞きなさい」
「…そう。にしてもあなたが他人に対して興味を持つなんて珍しいこともあるのね」
「…何言ってんのよあんたは」
「あら、自覚ないの?まぁあなたは博麗の巫女だもの。どこまでいっても第1は幻想郷なのよね」
「当たり前よ。変なこと言わないでよ」
「ふふふ。悪かったわね」
『おーい、そろそろ出来るぞー』
「意外と早いのね、行くわよ幽々子」
「ええ。…今日はお腹一杯になれるかしら…」
「?何か言った?」
「いいえ、早く行きましょ」