38話 一段落したと思ったら
「ふぅ…」
博麗神社の縁側でゆっくりとした時間を過ごしている信二。永遠亭での異変から2日たちようやく一息つける時間が出来た。
「随分とくつろいでるわね」
そこに霊夢が茶菓子を持ってきた。
「最近忙しかったからな。ゆっくりするのも大事なことだ」
「…この間アスモダイをぶっ飛ばしたいみたいなこと言ってなかった?」
「それはいつも思ってるさ。けど何処にいるかが分からないし、そもそも俺はまだ幻想郷の地形に疎いからな。無理に探しに行って迷子にでもなったら目も当てられん」
ただえさえ幻想郷は色んな場所がある。それに加え迷いの竹林や迷いの森など素人が絶対に迷子になるであろう場所もいくつか存在している。そんなところにまだそこまで幻想郷に慣れていない者が探索に行くとどうなるか……最悪野垂れ死にだ。
「そう…。なら次にどこへ行くか決めないと」
「どこかいい場所はあるか?」
「…なんかそれ観光地を聞かれてるみたいだわ」
「そんなつもりは無かったんだけどな」
2人で次の目的地を決めようとしていると空から騒がしい声が。
「霊夢さーん!」
「この声は…」
「どうしたの文。騒がしいわ」
「騒がずにいられませんよ!今妖怪の山が大変なんです!」
「大変…文その話詳しく教えてくれ」
「文と知り合いだったの信二?」
「はい、この前人里で取材を…ってそんな話は置いといて」
一呼吸おく文。
「ことの始まりは守矢神社が関係してます」
「守矢神社?」
ここにきて聞き慣れない単語。そもそも博麗神社以外に神社がある事に驚く信二。
「早苗のところが?今度は何をやらかしたのよ」
同じ神社だから仲がいいのかと思ったら霊夢の言い方的にそんな事は無いと悟った信二。
「実は今あそこの神社は…「霊夢さぁぁーーん!!!」」
文が来た時よりも甲高い声で霊夢の名を叫ぶものが1人。
「…今日はよく呼ばれるな」
「もう!次から次へとなんなのよ!」
声の主は博麗神社に着くなり速攻で霊夢に抱きつきならが泣きわめいた。
「助けて下さい霊夢さん!!」
「あーもう!鬱陶しいから離れなさい早苗!」
早苗と呼ばれた緑髪で霊夢と同じ巫女服を着た少女は強引に引き離された。
「か、神奈子様と諏訪子様が!」
「神奈子と諏訪子がどうしたの!」
「変なんですぅー!!」
急に来て霊夢に泣きつくお前も大概だぞ…と若干引き気味で傍観(というか話に入れない)信二と完全に存在を忘れられた文であった。
「すいません、取り乱しました…」
ようやく落ち着きを取り戻した早苗。
「じゃあまず君の名前を聞こう。俺は火渡信二だ」
「あ、わたしは東風谷早苗です。守矢神社の巫女をしています」
「それで?神奈子と諏訪子に何があったの?」
「はい……つい1週間ほど前からですね…」
早苗は語る。なんでも守矢神社を司る祭神ー八坂神奈子と洩矢諏訪子の二神が急に信仰を集めることに執着しなくなったのだと言う。神は人の信仰無くしては存在出来ない。自らの生命線と言っても過言ではないだろう。それをしなくなったのだから明らかに異変だと言える。
「最初はいつもと比べて熱心じゃ無いなと思ってたんですが…ついさっき…」
『早苗…もう信仰を集めなくてもいいよ。早苗も大変だろうから』
「って言ってきて…わたし…」
また涙ぐむ早苗。
「そう……。文のほうは?」
「天狗がですね…」
文の方はこうだ。元々天狗の中には守矢神社をよく思っていない者達がいるという。天狗はテリトリーに厳しい。急に幻想郷に来た守矢神社を表面的には和解しているが、それでも認めていない者がいる。そこに信仰を集めなくなったことにより力が弱まってきた神奈子と諏訪子。これを機に守矢神社を潰そうとする勢力が現れ始めたのだと。その勢力はどんどん力をつけていき、近いうちには守矢神社に総攻撃を仕掛けるとのこと。
「その勢力の中には結構上のお偉いさんもいてですね。私達部下を無理やり勢力に加えようとしてるんです」
天狗の世界は絶対的な縦社会。上の命令とあれば基本的には従う他ないのだ。
「最近の妖怪の山もなんだか嫌な雰囲気でして、それが拍車をかけている様な気がします」
「ふむ…」
(信二、これってやっぱり…)
(ほぼ間違いなくアスモダイだろうな。そうなれば俺らの出番だ)
(…はぁー。付き合うわ)
(サンキュー霊夢)
2人でコソコソ話している姿を見せつけられる2人。
(仲いいなー。付き合ってるのかな)
(これは…ネタの予感ですね)
「よし、とりあえずその守矢神社に行ってみるか」
「え?それって…」
「ええ。異変を解決しに行くわ」
「……あ」
「あ?」
「ありがとうございますぅぅーー!!」
またも泣きながら霊夢に抱きつく早苗。抱きつきぐせでもあるのだろうか。
「あぁー鬱陶しい!」
「…仲のいいことで」
「どこがよ!」