戦い…そう聞いたとき霊夢と魔理沙は真面目な雰囲気になる。おそらく、常人が体験し得ないものを経験してきたのだろうと…
「俺は元いた世界では騎士をしていた。その国を守る護衛騎士。その騎士団の中でも俺は1番強かったんだよ」
自分で言うのもあれだけどね、と信二は続ける。
「俺の仕事は国を守ること。だから国に脅威を脅かす魔物や悪人なんかを倒したりする生活をしていた。俺の国では名のある強い騎士は名誉な事だったからとても充実していた。だがある日突然、国…いやその世界に対する最大の脅威が襲ってきた。それが悪魔だ」
「強かったのか?その悪魔ってのは?」
魔理沙が問う。先程の技を見て信二はかなりの戦闘力があることは霊夢と魔理沙は分かっていた。そんな信二が脅威と言うほどなのだ。問いたくなるのも無理はない。
「ああ。下っ端の悪魔でさえうちの騎士20人ほどの強さだったからな。正直最初はこの戦争に敗北すると思っていた。だが、俺の死んだ恩師が死ぬ前に言ったんだ。絶対に諦めるなと。絶対に歩みを止めるなと。その言葉を胸に俺は戦い続けた。平和を求めて」
数々の犠牲を払ってね。信二はそう言う。
話している信二はどんどんとくらい表情になっていく。無理もない。戦争というのは悲劇しか産まない。信二もまたその被害者の一人なのだろう。多くの親しき人を失ったに違いない。
「それで一心不乱に戦っていたらある少女に神からの啓示が来たんだ。悪魔を倒すための魔法、それを記した書物の場所に。そこからは一気に戦況が変わった。防戦一方だった俺達は一転攻めに出た。そんで俺は仲間二人とともに悪魔の親玉、アスモダイって言う悪魔を倒した。だけどアスモダイは最後に生物を異世界に飛ばすという魔道具を持ち出し、俺たちを異世界に飛ばそうとした」
霊夢と魔理沙は黙って聞いている。
「このままだと悪魔による脅威が無くならず、戦争に負けると思った俺は咄嗟にアスモダイに飛びかかった。魔道具を覆うようにしてな」
今朝見た夢がまた脳裏に出てくる。信二にはアスモダイを倒しきれなかったという悔しさの表情が見える。
「結果異世界に飛ばされたのは俺とアスモダイだけだった。そして気がついたらこの幻想郷に居て霊夢に看病されてたって訳だ」
「…大変だったんだな。信二は」
「なに、死んだわけじゃないし、最後の敵と相打って勝ちを呼び込むなんて騎士にとっては誇り高いことだよ」
信二は穏やかな笑顔で答える。その笑顔はすこし無理していると霊夢は思った。
しかし、霊夢はなんて声をかければいいか分からなかった。今までの異変でも皆何かしら思うところがあり異変を起こしてきた。だが、信二のようなものは見たことがない。正義のために戦い決着のつかなかった者を。霊夢が話かけるのを迷っていると
「私から一つ質問していいかしら?」
突如として新しい声が聞こえた。声のする方を振り返るとそこには金髪の美人がいた。目だらけの穴から体を出すようにして。
(なんだあの穴?空間魔法か?にしてもすこし気持ち悪いな)
「紫。何しにきたの?」
霊夢がその女性に話しかける。その顔はめんどくさい奴が来たと言うような、あからさまに嫌な顔をしていた。
「あら?私が来てはダメ?珍しい人間が来たら見たくなるものよ」
紫と呼ばれた人は霊夢の問いに答える。どこか余裕そうな態度で
「あのー、とりあえず、あなたの名前を聞いてもいいですか?」
信二がすこし聞きずらそうに問いかける。
「あら、もう少し砕けた言葉でいいのよ?私は八雲紫。この幻想郷の創設者よ」
幻想郷の創設者。そう聞いて直感的に凄い人だと信二は思った。
「はじめまして。俺は火渡信二。信二と呼んでください。ところで、その目だらけの穴は?」
信二は紫に問う。魔理沙にも負けないくらい探究心の深い信二は珍しい魔法だと思って聞いたのだ。
「これはスキマと呼ばれるものよ。簡単に言えば空間を割いて好きな場所に行ける私固有のものね。魔法では無いわよ」
そんなものも幻想郷にはあるのか、と信二は感心する。
「気をつけなさい信二。こいつこんなんでも幻想郷の賢者。多分幻想郷で1番強いわよ」
「強い?霊夢達は戦うのか?そんなふうには到底見えないが?」
「ああ、そう言えば言ってなかったわね。私たちは…」
霊夢が信二の問いに答えようとした時
「その前に私の質問に答えてちょうだい。元々の理由はそれなんだから。挨拶しに来ただけじゃないわよ」
「そう言えば質問したいって言ってましたね。」
「ええ、私が聞きたいのはあなたと一緒に異世界に飛んだという悪魔、アスモダイも幻想郷に来てるのかってことよ」
縁の問いに信二の顔が引き締まる。
「…これは俺の勘ですがアスモダイもこの幻想郷に来ているでしょう。そしてアイツは大きな傷こそ負っていますが確実に生きてるでしょう」
信二は答える。
「だから、俺は必ずアスモダイを見つけ出して今度こそ倒す!それが俺に残された使命だからだ!」
信二は力強く言う。今にも燃え上がりそうなほどに。
「…そう。なら私もそのアスモダイ捜索に協力しましょう」
おそらくそいつは幻想郷の敵だから…そう言って紫はスキマの中に消えていった。