「にとり、どうするこの2人」
河童が目の前に横たわる2人__信二と早苗を指さして言った。
「とりあえず縄で縛っておこう。明日までは目覚めないと思うけど念の為ね」
それと見張りも何人か付けといて。そう言い残しにとりはその場をあとにした。
「しかし恐ろしいやつだったな」
見張りの1人がもう1人に語りかける。
「本当だよ。怪我人も多かったし。1人であそこまでやるとは…」
「私も火傷しちゃったよ」
「災難だったね、いくら天狗との契約とはいえ骨の折れる仕事だったわ」
2人の監視も程々に雑談を始める。だかそれも仕方ない。まず至近距離からの弾幕。死にこそしないがほぼ手加減なしの一撃、それを頭に打ったのだ。少なくとも今日中に目覚めるとは考えずらい。もう1つ、猛威を振るっていた信二は腕と足それぞれに大怪我を負っている。河童達が軽い治療をしているがとても戦線復帰出来るとは言えないだろう。
「ふぅー、しっかし暇だな」
2人が倒れてから既に数時間経っている。
「確かにそうだな。誰か見張り変わってくれないかな」
「それならワタシが変わってやろうか?」
「本当か?助かるよ」
「「え?」」
見張りの河童が気を失いその場に倒れる。何故か?
「全く、また異変に巻き込まれたのか信二」
………
「って言っても聞こえてないか。おい信二、起きろ」
信二の顔をペちペち叩いて起こそうとする。
「……うっ……魔理沙か、来てくれたか」
「朱雀が追いかけ回してきたからな、文句のひとつでも言おうと思ってたんだ」
そう、魔理沙がこの場に訪れたのは偶然などでは無い。にとりの銃により腕を貫かれた時に信二は既に突破できないと確信していた。そのため朱雀を飛ばし救援を呼んでいた。状況を瞬時に把握でき、実力もありなおかつ動きの速い者…それを満たすのが魔理沙であった。
だが1つ問題もあった。それは魔理沙が幻想郷の特定の場所にいないこと。朱雀が家に訪れてもおらず紅魔館に訪れてもおらず人里にもおらず……どこに行こうか悩んでいた矢先偶然空を飛んでいる魔理沙を発見。今に至るのだ。
「にしても酷くやられたな」
「あぁ、けどここで立ち止まっているわけには…っつ!!」
立ち上がろうとして足に力を入れると体全体に広がる痛みに思わず顔をしかめる。見た目以上に内部の損傷がひどい。止血は河童達により行われているがとても動けるような状態ではない。
「おいおい、無理すんなよ。素人目から見ても重傷だぞ」
「それは分かってるが…」
痛みをこらえてなんとか立ち上がる。立ち上がるだけでこれ程の痛みを伴うのだ、戦闘はほぼ不可能に近い。さらに動くことによって傷が開き悪化する恐れがある。
「はぁー、信二今から永遠亭に行ってこい」
「それが1番の得策だろうけど今行くわけには行かないんだよ」
信二は魔理沙に話した。今回の異変の内容と天狗について。これから守矢神社を守らなければならないのに自分がいなくては勝率が下がると。
「…信二の言い分も分かった。
「だからこそ?」
「そんな深手負ったやつが戦闘に出ても足でまといになるだけだ。だからすぐに行ってすぐ治して戻ってこい。それまではワタシが守矢神社を守ってやる」
「…そうか、そうだな。魔理沙が居れば百人力だな」
「当然だぜ!」
信二は託す。そして決意する。絶対に戻ってくると。
「じゃあ俺はすぐに永遠亭に行ってくる。これからの予定は早苗と話し合ってくれ。それとどこかに霊夢もいるはずだ」
「あぁ、分かった。それじゃあ行ってこい」
「行ってくる」
信二は空を飛び永遠亭を目指す。残された魔理沙がやる事は
「……とりあえず早苗を起こすか」
またも顔をぺちぺち叩いて起こそうとする。
「起きろー早苗ー」
「………うぅん、……魔理沙さん?」
目を覚ました早苗はまだ状況が読めないのかボーとしている。
「大丈夫か?」
「………!」
と、急に飛び起きる。そして魔理沙にずずっと近寄る。
「うぉ?!」
「魔理沙さん、なんでここにいるんですか!他の河童達は!信二さんは!」
「お、落ち着け。1つずつ話すから、とりあえず離れてくれ!」
「…そうですか、信二さんは永遠亭に」
「必ず戻るって約束したんだ。心配しなくても大丈夫だ」
「…ですね」
「よし、まずは霊夢と合流しよう。話はそれからだ」
「はい、と言っても何処にいるんでしょう?」
早苗は守矢神社から飛び出す形でここに来たのだ。当然霊夢が何処にいるかなど知っているはずもない。
「とりあえず守矢神社でいいんじゃないか?」
「そうですね、他に行くところも無さそうですし」
2人は守矢神社を目指して歩き始める。
「あら。戻ったのね早苗。遅かったじゃない。…魔理沙はいつの間に来てたのよ」
守矢神社に着くとそこには手に沢山の御札を持った霊夢がいた。
「あれ?信二は?」
早苗は今まで起こったことを霊夢に報告する。
「…そう、大変だったわね」
「霊夢こそ何してたんだ?」
「文から情報を聞いていたのよ。それで決まったみたいよ、攻めてくる時間が」
「そ、それは何時ですか?」
早苗が恐る恐る聞く。
「明日の正午……それが攻めてくる時間よ」
「正午……はやいですね」
「元々準備がなされていたらしいから、早くても不思議じゃないわ」
重くなる空気。その空気に耐えかねて魔理沙が質問する。
「……さっきっから何してんだ霊夢?」
霊夢は御札を使って何やら作業をしている。
「結界を張ってるのよ。攻めてくる数が多いから守りきれる自信が無いのよ。だからあらかじめ多少強力な結界を張ってるの」
なるほど…と頷く魔理沙。
「早苗、あんたも手伝いなさいよ。わざわざ追加の御札を博麗神社から取ってきたんだから、後で請求するわね」
「は、はい。守矢神社が守れた時はお礼をさせてもらいます」
早苗も霊夢に促される形で結界を張る準備をする。これは同じ巫女だからこそ出来ることであるため魔理沙に出来るとはない。そのため魔理沙は暇を持て余していた。
「……なぁ霊夢、なんか手伝えること…」
「ないわ、黙って見てなさい」
「…………」
「…………」
「あー!こっちは暇なんだよなんか構えよ!」
「うるさいわね!どんなわがままよ!」
睨み合う2人。まさに一触即発。
「あ、あのーお二人共喧嘩は…」
早苗の言葉によりお互いに引く。
「はぁー、ここに居ても仕方ないか。ワタシは一旦帰るぞ。日も落ちてきたし」
魔理沙の言う通り既に日が暮れかけていた。
「そうね、その方がいいかもね。明日寝坊するんじゃなわよ」
「誰がするか!」
そう言いながら飛び立ち去っていく。
魔理沙が帰った後も作業を続ける2人。
「…霊夢さん」
「何?」
「どうしてそこまで守矢神社にしてくれるんですか?」
早苗には不思議だった。あの面倒臭がりの霊夢が自ら進んでここまで準備するのが。それに守矢神社は博麗神社にとって同業者、つまりライバルだ。そこまでよく思ってないのも事実。なのに霊夢がこれ程までに働くのが、何がそこまで突き動かしているのかが分からなかった。
「何よ、藪から棒に。異変が起こったら解決するのが巫女の役目でしょ」
(昔最後の最後まで動かなかったことがあったような…)
「それに」
「それに?」
「こんな神社でも無くなったら信二が悲しむもの」
表情1つ変えずにそんなことを言う。そんな発言で早苗は気づいた。
(あぁ、なるほど。霊夢さん信二さんに惚れてるのか)
そこに自覚があるかは知らないがそれだけは自信を持って言えるだろう。
「…なにニヤけてるのよ」
「いえ、なんでも無いですよ」
今後霊夢をからかうネタが出来た早苗の表情が緩む。
「ムカつくわねその顔。1回ぶっ飛ばすわ」
「そんな理不尽な!」