東方不死鳥紀   作:はまなつ

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43話です。気がついたらもう8月も後半。早い。夏休みが終わってしまう…。普通に嫌ですね。


43話 篭城戦

「まったく霊夢は!もうちょっと話し合おうとは思わなかったの?」

 

アリスの不満が霊夢に投げかけられる。

 

「ちゃんと話し合ってたじゃない!向こうがそうそうに却下したの見てなかったの!」

 

天狗達の攻撃を躱し、相殺し、反撃しながら答える霊夢。なんとも器用と言うか余裕があるというか…。

 

「そんな風には見えなかったけど……ね!」

 

アリスもまた天狗達と戦いながら律儀にも霊夢に文句を言っていた。

人形を何体もだして攻撃範囲を広くして応戦している。確実に一人を倒すと言うよりは一人でも多く足止めをする…そんな戦い方だ。

 

「お前ら真面目に戦え!早苗は喋らず真面目に戦ってるってのに」

 

「私は……余裕が無いだけです!」

 

早苗はまさに手一杯といった感じである。だが普通ならそれが当たり前であり、話す余裕がある3人の実力が飛び抜けているだけである。

 

天狗達もまた攻めあぐねてる。相手が実力者というのも1枚かんでいるが理由は他にもある。敵に対して自軍の量が多いこと。敵がよく味方の影に隠れて迂闊に攻撃出来ない状況なのだ。

 

しかし、それでも圧倒的な兵力の差はそう簡単に覆せるものではない。

 

「くそ、量が多過ぎる!どいてろ霊夢、ワタシが一気に吹き飛ばして…」

 

魔理沙がお馴染みマスタースパークを放とうとすると白狼天狗が盾を持ち数人で捨て身の突進をしてくる。

 

「くっ…!邪魔だ!」

 

至近距離まで迫ってきては爆発に巻き込まれると判断した魔理沙は即座に別の弾幕に切り替える。

 

「霊符「夢想封印」」

 

霊夢も1番得意な弾幕を発動する。

 

『全員でかかれ!』

 

『『『はぁぁぁ!』』』

 

「……そこまで効果なさそうね」

 

その弾幕に対して何十人もの天狗が弾幕をぶつける。10数人の被害は出ているもののその程度である。霊夢の力を持ってしても天狗達を一掃することが出来ない。

 

「もぉー!こんな大変だなんて聞いてないわよ魔理沙!」

 

「ワタシだってもっと楽だと思ってたよ!」

 

もし今戦っているのが有象無象の連中ならすぐに終わったかもしれない。しかし今戦っているのは天狗。一人一人の力もそれなりに強いが、何よりも連携に優れている。そうなると1人を倒すのにも時間がかかる。

 

「アリス、あんたもっと人形出しなさいよ」

 

「これが限界だって!……っ、糸が!」

 

アリスが人形を操るために張っていた糸が突如として切れる。

 

「……あーやー」

 

アリスの糸は決して柔なものではない。それを一瞬にして切り裂くような芸当ができるのは天狗の中でも限られてくる。

 

「あややや、勘弁して下さい霊夢さん。こっちにも立場ってもんがありまして」

 

文は守矢神社を攻撃するのには反対派だった。しかし立場上天狗達の目の前で裏切るような行為はできない。なので仕方ないと言えば仕方の無いこと。

 

「問答無用よ、裏切り天狗め」

 

「流石霊夢さん、理不尽ですね!」

 

……まぁ霊夢には関係ないことだった。だが文も幻想郷の中ではかなりの実力者。霊夢の攻撃に無差別に巻き込まれる者はいるだろうが基本的に一体一の状況にもってかれた。これは早苗側にとっては相当な痛手である。

 

「アリス、早く糸貼り直せ!」

 

また糸が切れて無防備となったアリスのカバーには魔理沙が行っていた。瞬時にアリスを箒の上に乗せて飛び回った。

 

「あともうちょっと踏ん張って魔理沙!………よし、再出撃よ!」

 

「よし、この状況だとお前が重要だからな!もう糸切らすなよ」

 

「急に連れ出しといて変なプレッシャーかけないでよね!」

 

「そんなもん感じないくせに、とっとと行ってこい!」

 

「ちょっ!そんな急に落とさないで……!」

 

まだ完璧に体制が整ってなかったのにも関わらず箒から蹴落とす魔理沙。アリスは叫びながら戦場へと戻された。

 

(さて、さっきから音信不通な早苗でも手伝っ『後で覚えておきなさい魔理沙!』てやるか)

 

魔理沙の図太さも中々のものである。叫ぶアリスを無視して早苗を探す。するとそこには魔理沙の予想通り若干ボロボロの早苗が天狗達相手に苦戦していた。

 

「今助けてやるぜ早苗!魔符「スターダストレヴァリエ」」

 

「え?魔理沙さ……」

 

早苗が振り返ると無数の星の弾幕が天狗達に降り注いだ。

 

「ってうわぁぁー!」

 

………例に漏れず早苗にも。

 

「ちょっと魔理沙さん、危ないじゃないですか!私を倒したいんですか?!」

 

「おいおい、そんな興奮すんなって。お礼は後でいいから」

 

「あげませんよ!怒ってるんですよ?!」

 

「まぁまぁ、それはそうと……敵から目を逸らすな!」

 

「えっ、あ、はい!」

 

白狼天狗の攻撃を魔理沙が早苗を押す形で躱させる。

 

「いや、目を逸らしたのも魔理沙さんのせいですよね?!」

 

「人のせいにするなよ。ちゃんと助けてやったろ」

 

「他に方法はなかったんですか!」

 

言い合いをしながらも戦い続ける。

 

これだけ激しい戦いなのに守矢神社には傷一つついていない。それは霊夢の結界のおかげだ。しかしこの強固な結界にも弱点がある。

 

『いい?この結界は四つの核となる御札によって作られてるの』

 

『守矢神社の四隅にあるあれか』

 

『そう。あれがあるから強い結界になるの。でもその御札が1枚でも剥がれたら途端に強度が弱まるわ。だから御札の傍で戦わないように注意して』

 

『りょーかい』

 

『でも天狗に見つかったらすぐに剥がされちゃうんじゃない?』

 

『一応見つけづらくはしてるけど……そこは結局のところ運ね。勘のいいヤツがいないことを祈るしかない』

 

結界は強固だが破る方法は簡単なのだ。結界が破られてしまったら流石に守りきることは不可能だろう。

 

しかし、天狗達も結界を破る方法を模索している。解除のされるのももはや時間の問題なのかもしれない。

 

「秘術「忘却の祭儀」!」

 

「魔符「ミルキーウェイ」!」

 

弾幕をばら撒きなるべく1箇所に留まらないように攻撃していく。その場で止まっていれば囲まれてしまうため。さらに天狗の注意を引くためでもある。

 

(……ん?あいつどこ見てるんだ?)

 

魔理沙がふと目にした天狗がいた。その天狗は倒すべき標的である魔理沙達には目もくれず何かを探すように地面を這っていた。

 

(まさか……!御札をさがしているのか!)

 

魔理沙は急いでその天狗に向かう。しかし他の天狗達が露骨に道を塞ぐ。まるで守るように。

 

「くそ、早苗!あそこの天狗が見えるか」

 

「見えます…けど」

 

「あいつを倒しに行くぞ、放っておいたらまずい気がする!」

 

「そう、したいのは、山々なんですが…」

 

早苗は今は動けるような状態ではない。今少しでも他のことに気を取られたらやられる。そんな状況なのだ。

 

(早苗は無理、アリスも近くにはいない…)

 

「おい霊夢、いつまで戦ってるんだ!」

 

「うっさいわね、意外と本気なのよこいつが!」

 

「じゃないと怒られますから」

 

誰も加勢には来れない。魔理沙は必死に向かおうとするが中々前に進めない。

 

「どけお前ら!」

 

半ば捨て身で、やけくそに突破しようとするが、遠く及ばず。そしてついに…。

 

『っ!あったぞ、これだ!』

 

……隠していた御札が見つかった。


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