東方不死鳥紀   作:はまなつ

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47話です。最近中々話が思いつかなくて更新が遅くなっています。書きたいのに書けない……そんなジレンマが今の悩みです


47話 地底の主

「それじゃあ行くわ、パルスィ」

 

あんな事があったのにも関わらず、何も無かったかのように振る舞う信二。

 

「ええ、こんな所長居する場所じゃないもの」

 

何かを察したのかパルスィも先程のことについては深くは聞く様子はない。

 

「じゃあなパルスィ!」

 

「じゃあ」

 

それぞれが別れの挨拶を交わす。

 

「__あっ」

 

そんな時パルスィが何かを言いたげに声を出す。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「……いえ、なんでもない」

 

「そうか?それならいいけど…」

 

少し疑問が残っている様子だったが歩き始める。それを見守るパルスィ。

 

(言わない方がいいわよね)

 

不安を煽るようなことは__

 

その真意を知っているのはパルスィだけだった。

 

♢

 

パルスィと別れたあと数分歩いていくと何やら騒がしくなってきた。そこらかしこが明かりに照らされていてどことなく笑い声が聞こえてくる。

 

「なんか楽しそうな雰囲気だな。もしかしてあれが旧都か?」

 

「そうよ」

 

「へぇー。人里とあんまり変わらなそうだな」

 

「っと思うじゃん?」

 

「え、何?違うのか?」

 

「あそこに人間はいないの」

 

「基本的にいるのは鬼や地霊だな」

 

「なんでそんなもんが多いんだ?人間だって居てもおかしく無さそうだが」

 

「そもそも旧都なんて名前してるけど、ここは元地獄なのよ」

 

「元地獄だから怨念とかがひしめいてるんだ。それを抑える役割として鬼が住んでるんだとさ」

 

へぇーと関心する。地底は地上とは違うと言っていたが、確かに明確に違う点がいくつかあるようだ。

 

「そんなおっかないものを抑えられるくらいなんだから鬼ってのは相当強いんだよな?」

 

「まぁそうね。幻想郷でもかなり上位にくるのは確かね」

 

「元々天狗の上司みたいな感じだったしな」

 

「そうなのか!それは強いなー」

 

あの厳しい縦社会を形成する天狗たちの主ともなるとそれが強いのは容易に想像出来る。

 

「どんなやつなんだろうな__」

 

鬼がどんな姿を思い浮かべていた時、フッと何かを感じた。

 

「何かく………」

 

その瞬間、信二達がいた場所に土煙が上がる。

 

「__ほぉ、素直に止めるかい」

 

「いきなり攻撃ってのは無礼が過ぎるんじゃないか?」

 

突然攻撃してきた者の拳を受け止めながら信二が睨みつける。

 

その者は金髪の長い髪に大きな杯をもち、額に角を生やした女性だった。

 

「いやぁ、そいつは悪かったね。別に攻撃した訳じゃなかったんだが」

 

「結構な威力だったけど……」

 

そうは言っても不思議と納得してしまった。本当に攻撃してきた様には感じられず、例えるなら友達の肩を叩きたがら挨拶するような__そんな感じがした。

 

……威力は別問題として。

 

「相変わらずねアンタ」

 

「知り合いか?」

 

「ええ。星熊勇儀、さっき言ってた鬼よ」

 

信二は少し驚く。まさか聞いていた鬼が女性だったとは。しかも先程の拳は魔法などの小細工がない純粋な力だった。その細腕からは想像出来ない力を出していた。これが鬼か……と。

 

「ほぉー、あんたがそうか。聞いてた通りの力だな」

 

「なんだい、アタシの話をしてたのかい?なら話は早いね、星熊勇儀だ」

 

「火渡信二だ。よろしくな」

 

「あぁ、あんたが……。どうだいあんたも、さっきの詫びだ」

 

そういい勇儀がその手に持っている酒を進めてくる。信二もこう見えて中々の酒豪。酒については目がない。

 

「いいのか?それじゃあお言葉に甘え__」

 

「辞めときなさい」

 

「辞めた方がいいぜ」

 

二人に全力で止められる。様子は落ち着いているがその目はかなり本気で語っていた。

 

「二人して止めるなんて、なんかあるのか?」

 

「ナイナイ。普通の酒さ」

 

「中身はそうね」

 

「ただの酒じゃないだけでな」

 

「ただの酒じゃ…ない?」

 

謎のパワーワードを聞いて思わず聞き返してしまう。

 

「いい信二。鬼が呑んでいる酒は普通のソレとは訳が違うの。一言で言えば()()()()()()()()()なの」

 

「ありえない程強い酒…」

 

またしても謎のパワーワードにより聞き返してしまった。

 

「鬼はびっくりするくらい酒に強いから普通の酒だと酔えないんだ」

 

「だから普通の人間じゃ耐えられないような酒を呑んでるの」

 

「そんなことないさ。ただ普通よりちょーっと強いだけじゃないか」

 

「アホ言いなさい」

 

「お前の酒を飲んで今まで何人のヤツが倒れたと思ってるんだ」

 

「そ、そんなにか」

 

その話を聞いて流石に戦慄する。そこまで強い酒があるのかと。

 

「そうかい?残念だねぇ。味は保証するんだがね」

 

「ははっ、まぁまた今度一緒に飲もう」

 

もう乾いた笑いしか出てこなかった。

 

「あぁ、楽しみにしてるよ!」

 

手に持っている杯の酒を飲みながら歩き出す。まさに嵐のような人物だった。

 

「……何だったんだろうな」

 

「気にしたら負けよ」

 

「鬼は自由奔放だからな」

 

「さいですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー。危ない危ない。最近血の気が多くて困るねぇ」

 

屋根の上で一人いまだ高ぶった感情を抑えられずにいた。

 

「あの人間二人は流石だねぇ」

 

勇儀が突っ込んで行った時、霊夢と魔理沙はその事に気づいていたしそれを止めようともしていた。その中で一番早く前に出たのが信二だった。

 

「火渡信二……あれは相当強いね」

 

その体に自然と力が入る。冷めぬ闘志が心を燃やしていた。普段とは違う、身を焦がすような闘争心が心を支配していた。

 

「いいねぇ。……やり合ってみたいもんだ」

 

♢

 

「結構歩いてきたけどそろそろ着くのか?」

 

「もうちょっとよ」

 

「あの建物だな」

 

魔理沙が指さす方には今までの地底にはなかった大きな屋敷。

 

「あれか。どことなく紅魔館を思い出すな」

 

「じゃあ入るわよ。一応ここの主に挨拶くらいはしとかないとね」

 

「だな。お邪魔しまーす」

 

扉を開けるとそこには犬や猫を初めとする動物達がひしめき合っていた。

 

「おおう、まさかの動物まみれときたか。他の人間とか妖怪は居ないのか?」

 

「居ないな。基本的に動物だけだ」

 

「主に問題があるからね」

 

「問題?」

 

「そこは会った方が早いわよ」

 

霊夢が歩みを止める。この地霊殿の主の部屋に着いたようだ。

 

「それじゃあ入るわ。失礼するわよ」

 

ドアをノックしてから扉を開ける。その奥にはピンク色の髪のゆったりとした服を着た少女がいた。そこで一番目を引くのは胸にある目。

 

(なんだあれ?明らかに目だよな。オシャレ?)

 

「オシャレではありませんよ」

 

「え?口に出てたか?」

 

「いや、心を読んだんだ」

 

「心を?じゃあ俺が思っていることは__」

 

「あの子に筒抜けってこと。あれが地霊殿の主、古明地さとりよ」

 

「初めまして。さとり妖怪の古明地さとりです」

 

「ああ。火渡信二だ。よろしくな」

 

笑顔で返すもどことなく悲しそうな顔をしている。あの感じだと何もしていなくても人の心を読んでしまうのだろう。それのせいでまわりから疎まれる。その想像をするのに時間はかからなかった。なぜなら、信二は心を読んでしまう苦痛を分かっているから。

 

(心を読むねぇ〜。それじゃあ……)

 

「それで、今日はどのような要け………ん……」

 

急にさとりが驚いたような表情を見せる。その様子を見て霊夢と魔理沙は首を傾げた。それもそうだろう、何もしていないのに相手が驚いているのだから。

 

「どうかしたかさとり?」

 

「………読めない」

 

「何が?」

 

「読めないんです!信二さんの心が!」

 

珍しく声を張るさとり。けどさとりにしてみればそれは一大事と言っても過言ではない。今まで動物を除いた生物の心を読んでいた。読んでしまっていた。それなのに目の前の男の心が読めなくなった。それだけでも高揚してしまうのは仕方の無いことだろう。

 

「ふふっ、驚いたか?」

 

「も、もちろんです。あの、なぜ急に心が読めなくなったんですか?」

 

「簡単だ。俺の心を魔法で隠したんだよ。さとりに見えないようにな」

 

「そんなことが出来るんですか!?」

 

「前居た世界にも心を読む奴がいてな。そいつと対等に話すために練習したんだよ」

 

(練習して身につくものなのか、そんな魔法?)

 

同じ魔法使いとして魔理沙も驚いていた。心を隠すなど、そんな魔法聞いたことも無い。またひとつ魔理沙の信二への好奇心が増えた瞬間だった。

 

「そ、それで前の世界のその人はどんな人でしたか?!」

 

さとりに至っては興奮して信二を質問攻めしていた。さとりにしてみれば初めて心が読まなくて話が出来る存在。そんなもの興奮するに決まっている。

 

「ちょ、ちょっと落ち着こうか」

 

信二もそこまで興奮されるとは思っていなかったため若干戸惑っている。

 

そして………

 

「……何この置いてけぼり感」

 

またも霊夢だけ流れに置いていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………(ギリッ)』

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