東方不死鳥紀   作:はまなつ

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52話です。最近リアルが忙しく投稿が遅くなってます。前のように一週間ずつ投稿出来るようにしていきたいですね。


52話 心の行方

「なんだったのあの爆発は?!」

 

自分達のスペルカードすらも消し去る爆発がなんの前触れもなく起こったのだ。パニックになるのも仕方がない。しかし、そんな爆発にも関わらずお燐、お空は大きな傷を負っていない。

 

「なんだ、意外と元気そうだな。スペルカードのおかげか?これはまた()()()()かな」

 

「何を訳の分からないことを!」

 

けれどもいつまでもパニックになっている訳では無い。今の二人は全ての感情が信二への嫉妬で埋め尽くされている状況だ。何かあってもすぐそちらに感情が戻ってしまうのだ。

 

「おいおい、せっかく俺が爆発のヒントを教えてるのに___」

 

「知ったことか!」

 

もう信二が何を言おうと聞く耳を持たない、聞く気がない、聞きたくない。火渡信二という人間が気に入らない。

 

(貯める?一体何を……)

 

一人正常なパルスィが信二の言葉を復唱する。敵対はしていないが信二の技が気になってしまう。普段は見れないスペルカードとは違う純粋に相手を倒すための攻撃を。

 

(それに赤い粉塵?……確かに少し景色が赤かったような)

 

爆発が起こる前は言われれば風景が赤みがかっていたような気もする。しかし今はそんなことも無い。信二の呟いた赤い粉塵なるものは見えない。やはりブラフなのか。

 

「逃げてるばっかりじゃ勝てねーぞ!」

 

「うるさい!焔星「フィクストスター」!」

 

巨大な弾幕が信二を囲むように回り始める。さらに小型の弾幕をばら撒き逃げる隙を与えない。

 

「甘いな!」

 

信二は大型の弾幕のみを避け残りは7つの剣で斬り伏せていく。その動きはだんだんと激しくなっていってるように感じられる。

 

(……やっぱりそんなもの__)

 

無い。そう思っていた。いや、実際に先程までは無かった。しかし今戦場をよく見てみるとちらほら赤い粉塵が確かに確認できる。ついさっきまでは無かったのにだ。

 

(どういうこと?さっきまでそんなもの無かった!)

 

しかも心なしかどんどん増えていっているようにも感じられる。空間が紅く染まっていくように。

 

「反応「妖怪ポリグラフ」!」

 

「出てきたかこいし!」

 

信二の意識が完全に二人に向いている時に死角から姿を現しスペルカードを発動する。信二を捕捉するように8つの弾幕が襲ってくる。

 

「なんだこれ、俺の動きに合わせてる?」

 

それは信二が動けばそのように動き動かなければジリジリと迫ってくるスペルカード。 さらに先程のお空のスペルカードはまだ残っている。

 

(全部を切ることも出来るけど、厄介だな)

 

いちいち7つの剣で切っていくのもちまちまとしている。そうでなくても難しいのだ、純粋に。剣を7つも同時に扱うのは。例えるなら七人と同時に話し合っているようなもの。当たり前だがそんな状況になれば脳の処理が追いつかない。それを今信二は行なっている。そのため余裕そうに見えて脳への負担は半端なものでは無い。

 

「だったらここしかないな!『王の御前(キングバーン)』!」

 

周囲を爆炎で包む。この技は範囲が狭い代わりに威力がかなり高い。お空、こいしのスペルカードを相殺している。

 

「今!本能__」

 

「爆符___」

 

「屍霊__」

 

その状態を見て三人は畳み掛けるようにスペルカードを発動しようとした。今の動けない状況なら量で押し切れると思ったからだ。さらにさすがに炎の中にいるならこちらの姿も見えない。つまり剣が的確に飛んでくることも無い。

 

……だが三人は知らない。炎の中で信二が笑っているのを。

 

「爆ぜな!」

 

「今のは?!」

 

パルスィは確かに見た。信二の一言の後に宙に浮いている六つの剣が淡く紅く光るところを。そして次の瞬間にはまたあの爆発が起こった。

 

「また!?」

 

油断をしていた訳では無いし爆発にも警戒していた。しかしここ一番の攻撃。ここで決める。そんな思いが強まり爆発に対して対応が遅れた。その一瞬の隙が命取りとなる。

 

狂った炎の行方(マッドネスクリムゾン)!」

 

指先から出る5つの炎。それぞれが不規則に動きながら空間を切り裂いていく。

 

「くっ!」

 

「危ない!」

 

「これくらいで__」

 

三人はギリギリ避ける。ランダムに動くものを瞬時に見切って避けたのは流石と言ったところだろう。けど信二は今の攻撃だけで決着を決めようなどとは微塵も考えてはいない。

 

「『フレアジェット』!」

 

「うっ……!」

 

「っ……!」

 

魔力を爆発させることで推進力を大幅に上げる技。そのスピードは文字通り目にも留まらぬ速さ。一瞬でお燐とお空の背後に周りそのまま首に手刀を繰り出す。魔力を込めて打ったその打撃は一息に二人の意識を奪った。

 

「よくも二人を……!」

 

「逃がさねーよ」

 

二人から離れたところにいたこいしがまたも無意識へ入ろうとしたところを六つの剣で囲み逃げれないようにする。剣はこいしを攻撃することは無い。だがこいしを中心としてそれぞれが高速で円を描くように回転している。

 

「何を__」

 

そこでこいしも気がついた。赤い粉塵が自身の周りに漂っていることを。それぞれの剣の軌跡から後を追うようにして。そして動けば動くほど粉塵の出る量は増えていく。

 

「まさか……!」

 

「そのまさかだ」

 

先程からの爆発は7つの剣から出る魔力の残滓が起爆剤となっている。そしてそれは魔力を流すと小さな爆発を起こす。その量が少なければ爆発も大したことはない。だがそれが貯まればそれだけ爆発の規模も大きいものとなる。文字通り塵も積もれば山となるという事だ。

 

「これで終わりだ!」

 

剣が紅く光る時、周りの塵に魔力が流れ連鎖的に爆発が起こる。こいしの周りにのみ漂っていた粉塵はこいしを包み込むようにして爆発する。

 

「これでどうだパルスィ!」

 

「完璧よ、後は任せて!」

 

三人の意識が無くなり力が弱まった今、ようやくパルスィの力で嫉妬の心を取り除くことが出来る。

 

……嫉妬は生きていればしてしまう醜い感情。相手よりも良くなりたい、相手よりも上に立ちたい。そんな想いが積もり積もって出来る感情だ。

 

(でも私はそれを美しいと思うの)

 

そんな醜さが人を強くさせる。自分の方が劣っていると自覚し自分をより良くしようとする。傍から見れば美しくはないかもしれないけれど。そのひたむきとも取れる姿に目を引かれる。……そのせいで周りから疎まれるのかもしれないけど。

 

(だから私は妬み続けるのよ。自分の強さを忘れないために)

 

しかし嫉妬はいきすぎると恨みへと姿を変える。そうなってしまったら成長の余地はない。

 

「だから認めないわ。あなた達の心を」

 

パルスィは心を解放させる。元々は美しかった(嫉妬)心を。

 

 

 

 

 

 

 

「……おっ?この感じは」

 

魔理沙と一騎打ちをしている勇儀が何かを感じとった。それはこいし達の心が正常に戻ったからだろう。

 

「どうした?もう勘弁してくれるのか?」

 

「そうだね。もう終わりでいいか」

 

先程まで凄まじい殺気と闘気を放っていたのにコロッとそれが止んだ。

 

「久々に楽しかったよ」

 

「これだけ暴れればそうだろうな」

 

元々何も無かったところで戦っていたが今辺りを見渡せば地面がボコボコになっている。

 

「この決着はまた改めて___」

 

「二度とつけないぜ」

 

魔理沙も本気で戦った。でも全然勝負がつかなかった。接戦に次ぐ接戦。実際のところかなり疲弊している。途中で辞めてこれだ。決着なんてつけた日にはどちらかが死んでもおかしくない。

 

「なんだい、それは残念だねぇ。まぁいい。巻き込んで悪かったね、楽しかったよ」

 

そう言い残し旧都の方へ歩いて行く。友達と遊んだ帰り道のように。

 

「……気まぐれすぎるぜ……」

 

嵐のように暴れては過ぎ去っていった。鬼というものの危険さを改めて認識した魔理沙だった。

 

「……信二のとこに行くか」

 

勇儀が戦いを辞めたと言うことはあちらもことが片付いたのだろう。ゆっくりとそちらへ向かう。

 

「あれ?なんであいつがここに?」

 

♢

 

「___いし。こいし……」

 

「………うーん」

 

「こいし!気がついたのね!」

 

「………お姉ちゃん?」

 

戦いは終わり三人は地霊殿の中へ運ばれた。お燐とお空はすぐに意識が回復したが至近距離で爆発を食らったこいしは目覚めるのに時間がかかっていた。

 

「大丈夫?痛いところはない?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

さとりを安心させようと笑顔で答える。実際は少し体が痛い。

 

「いや悪いな。一応手加減はしたんだが」

 

「……分かってるよ。ずっと戦わなくていい方法をしようとしてたのも知ってるから」

 

「気づいていたのか?」

 

「うん。本当を言うと私も戦いたくはなかったの。でも心の中に別の自分が居るようだった。止めようと思っても止まれなかった。それで……」

 

「いいのよ。嫉妬なんてそんなもの。ただ今回はそれが行き過ぎただけよ」

 

パルスィがこいしを励ますようにそんな台詞を言った。

 

「良くはないけどな。安心しろ。なんでそうなったかもだいたい分かってるし俺も気にしてないから」

 

 

「………ありがとう二人とも」

 

「私はまだ怒ってるよ。あんなに無茶して信二さんにも迷惑かけて」

 

「………お姉ちゃ__」

 

「それに、あなたが一番大事に決まってるでしょ。たった一人の妹なんだから」

 

「お姉ちゃん……!ごめんなさい……、ごめんなさい……!」

 

今までの色々な感情が全て出てきたのか泣き出してしまった。そんなこいしを優しくさとりは受け止める。

 

「あなた達もよ。血は繋がってないけど家族なんだから」

 

「「さ、さとり様〜〜!」」

 

遠くで見ていたお燐とお空のこともお見通しだった。四人は仲良く抱き合い泣きあった。

 

「……帰るか」

 

「そうね。ここにいても邪魔そうだし」

 

もうここにいる意味は無い。あの三人ももう大丈夫だろう。それにここにいては後で変な気を使わせるだろう。四人には気づかれないように部屋を後にする。

 

「にしても巻き込んで悪かったな。おかげで助かったよ」

 

「いいのよ。住んでる場所であんなことされたらうるさくて仕方ないもの」

 

「……迷惑かけたな」

 

「もう、だからいいって___」

 

「この異変は俺が幻想郷に来たせいなんだ」

 

「え?」

 

「俺が来なければこんなことには……」

 

「……妬ましいわね」

 

「な、なんで?」

 

自分が思っていた返答と異なり慌てる信二。

 

「そんなに人のことを考えるなんてお人好しすぎるわ。それに異変が起きるくらいが丁度いいわ。暇にならなくて」

 

「……ふふっ」

 

「笑うところ?」

 

「いや悪い。パルスィの方がよっぽど優しいなって思っただけだ」

 

「ば、ばかな事言わないの」

 

「はいはい」

 

「……もう!」

 

そんな事を言いながらも笑顔になっていた。久々に笑顔になったかもしれないとパルスィは後になって気がついた。これが信二の力なのだと思った。人を照らす存在なんだと。

 

「そういえば霊夢はどこに行った__」

 

「信二ぃーー!」

 

「……魔理沙?」

 

遠くから魔理沙の張り上げるような声が届いた。よく見てみると魔理沙が誰かを連れてこちらへ向かってきている。

 

「藍じゃないあれ?なんで魔理沙といるのよ」

 

「藍?確か紫さんの式神だったよな」

 

なんでそんな人が魔理沙と、しかも先程まで勇儀と戦っていた人間といるのか。

 

「ここにいたか信二!とりあえず落ち着いて聞けよ!」

 

「まずは魔理沙が落ち着___」

 

「日渡……紫様が襲われた。アスモダイと名乗る者に」

 

「……なんだと?!」

 

……異変は終わってなどいなかった。

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