東方不死鳥紀   作:はまなつ

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54話です。年号が変わりましたね。令和ですよ令和。特に何も変わらないですけどね。


幻想廻り〜星蓮船編〜
54話 空飛ぶ船は何を運ぶ


「あれは……船だよな」

 

多分だがここからかなり距離が離れたところにあるな。でも見えるくらいだからかなり大きな船なのだろう。いや、考えるとこはそこではない。本来船というのは海を渡るためのもの。決して空を飛ぶ乗り物ではない。

 

「なんでそんなものが空を飛んでるんだよ」

 

いつか早苗が言っていた。幻想郷は常識にとらわれてはいけないと。それにしたってこれは無理があるだろ。

 

「魔理沙……なーんか見たことないあの船?」

 

「霊夢も気づいたか。やっぱりあれは()()()だよな」

 

「聖輦船?知ってるのか二人とも?」

 

どうやら霊夢と魔理沙はあの船について知ってるようだ。

 

「ええ。あれは前に異変を起こしたやつが使ってた船なのよ」

 

「でもその時に船としての機能は無くなったんじゃなかったか?」

 

「それ以前にあそこまで大きくなかったわ。何か前回とは違う事情があるのね」

 

話から察するにあの船にも異変が起きてそうだ。そうなると……

 

「あれも異変ってことになるのか……?」

 

「その可能性は高いでしょうね。とにかく行ってみましょう」

 

「だな、ここで考えてたって解決することは無いからな!」

 

「………」

 

恐らくだけどあれもアスモダイが影響しているのだろう。これで何回目だ。幻想郷での異変を起こすのは!何回罪を重ねればいいんだよ!

 

「信二が思い悩むことじゃないわ」

 

「ど、どうしたんだ霊夢?」

 

そんな想いを察してか、なんの脈絡もなく霊夢がそんな事を言ってきた。

 

「別に。そう言って欲しそうだったから」

 

「……ふはは!」

 

「何笑ってるのよ」

 

「いやなに、やっぱり霊夢は優しいなと思ってな」

 

「なによそれ。なんかムカつくわ」

 

「まぁまぁ。ほら、そんな事より早く行こうぜ。異変はすぐに解決するもんだろ」

 

霊夢に何か言われる前にその場から逃げるように船の方へと向かう。

 

「あっ、待ちなさい!」

 

その後をすぐに追いかけてくる霊夢。……ありがとうな。霊夢のおかげでずっと気持ちが楽になった。こんな異変早く終わらせてアスモダイをぶっ潰す!それがこんな俺を受け入れてくれた幻想郷への最低限の礼儀だ!

 

 

♢

 

「……近くで見るとかなりデカいな」

 

「何人乗り込めるかしら」

 

船の近くへと行ってみてまず最初に思ったのがその大きさだ。遠目で見ても大きな船と言うことは分かっていたがこんなにでかいとは。俺の世界でも船はあったがこんな巨大なものはなかった。一体家何軒分のデカさだよ。その分その速度もかなりゆっくりなものになっている。動かすだけで精一杯と言ったところか。

 

「とりあえずこれを動かしているやつの面を拝みに行くか!」

 

そんな未知の物にも億さずに突撃をする魔理沙。けど勇敢過ぎるのも考えものだ。

 

「おい魔理沙!せめてもう少し周りを見てから___」

 

「大丈夫だって。ただ船に乗り込むだけで何も___」

 

「魔理沙!」

 

魔理沙が船に降りた瞬間どこからともなく弾幕が魔理沙を襲った。周りに俺たち以外の人の気配が無いのにだ。

 

「っぶな!」

 

何とか回避をしていたようだ。しかし弾幕が止むことは無く次々と襲い掛かってくる。

 

「だから言ったろ、確認しろって!」

 

今度は俺も船に降り弾幕をかき消す。ボーッと眺めているほど間抜けではない。

 

「誰がうってるのよこれ!」

 

霊夢も降りてきて弾幕を処理していく。

 

「恐らく船の防御装置とかそんなところだろ!」

 

これだけでかい船なんだ。そのような機能がついていたとしても不思議ではない。

 

「前はそんな機能ついてなかったけどな!」

 

「誰がこんな改造したのかし__魔理沙!」

 

弾幕に紛れて魔理沙の死角から何者かが攻撃を仕掛けてきた。突然の事だっただけに魔理沙も反応が遅れる。

 

「なぁ?!こいつは!」

 

「魔理沙を離せ……ってなんだコイツ!?」

 

魔理沙を掴んでいた者に切りかかる。しかし手応えは感じられたかった。そいつは通常の人間ではなかった。いや、人間ですらないだろう。なんせ見た目が完全に雲そのものだからだ。

 

「……出て行け」

 

「しかも喋んのかよ!」

 

「信二、そいつは雲山っていう入道雲の妖怪よ!」

 

「よくわかんねーけどそろそろ離せっての!」

 

雲という事は物理攻撃は基本的に効かないだろう。そのため魔法での攻撃を試みる。その予想は的中し炎で薙ぎ払ったところから雲が晴れていった。

 

「サンキュー信二!」

 

「雲山は単体では行動が出来ないの。近くにもう一人いるはずよ!」

 

「全然気配が無いけどな!」

 

今までの弾幕に加えて雲山が介入したことにより一層凌ぐのが難しくなってきた。特に雲山が厄介だ。向こうは物理攻撃をしてくるのにこっちからは意味がないところもそうだが、雲山が視界に入ると後方から弾幕がどれだけ来ているのかが分からないところだ。そのデカさと謎の桃色の体色によって邪魔くささが増している。

 

「あーめんどくせぇ!魔理沙、霊夢、下がっててくれ!」

 

「何をする気だ?」

 

「雲山ごとぶっ飛ばしてやる!『王の御前(キングバーン)』!」

 

雲山と近くにあった弾幕を全て爆炎で包み吹き飛ばす。その余波で足場も燃えていった。

 

「足場は燃やすなよ!」

 

「仕方ないだろ!周囲を燃やす技なんだから!」

 

キングバーンは俺を中心として数メートルを全て炎で燃やす技。当然足元もその対象になる。

 

「空飛べばいいじゃない」

 

「「……それもそうだな」」

 

確かに足場がなくなったところで今の俺達には関係無いことだ。

 

「ちょっと、大切な船を壊さないでくれる!」

 

「うん?なんか下から声が……」

 

壊した足場から声が聞こえたため覗いてみる。すぐ下に人がいたのか?

 

「雲山!」

 

「おぉっと、消えてなかったのか」

 

誰かの呼びかけに応えるように雲山が殴りかかってきた。どうやら下にいるやつが雲山を操っている者で間違いないだろう。

 

「早く出てこいよ、一輪!」

 

「……何しに来たの?」

 

やはり下から人が出てきた。魔理沙に一輪と呼ばれた女性は出てくるなりそんな事を言ってきた。

 

「俺達はただこの船がなんなのか調べに来ただけだ」

 

「そんなこと言ったらあんたらこそこんな船を取り出してきて何考えてるの」

 

「さぁ。何でしょうね」

 

「答える気は無いようね。それならこれを異変として処理するけどいいわよね」

 

「それでもいいわ。解決出来るといいですね」

 

「随分強気だな。異変ってなったら俺達も本気を出すぜ?」

 

「いいのよ。私達も本気を出すもの。ねぇ()()()

 

「……あらあら。こんなにも人間(ゴミ)が私たちの船に……」

 

「やっぱりあんたが主犯なのね……聖」

 

何処から現れたのか気がついたらそこにいたのは金髪に紫色のウェーブが入った女性。雰囲気で言えば紫さんや永琳さんと似たものを感じる。

 

「霊夢あの人は」

 

「聖白蓮。命蓮寺って寺の主よ」

 

「それにしてもワタシたちをゴミなんて随分と口が悪くなったな」

 

「本当の事を言っただけよ」

 

「おかしいわね。あんたは妖怪も人間も全てが等しいとか言ってなかった?」

 

「確かに前までの私だったらそのような事を言っていました。けど気付いたの。人間の愚かさに。存在価値の無さに」

 

「完全にイカれてるわね」

 

「普段はあんなこと言うやつじゃないぜ」

 

俺は聖を知らない。けどこの二人がこう言っているんだ。あの人も異変に……アスモダイの毒牙に侵されているんだろう。

 

「待ってなさい。今正気に戻してあげるから」

 

「過ぎたことを言うのね。人間(ゴミ)には無理なことよ」

 

「まずはその口をきけなくしてあげる!」

 

聖の言い方に怒りを感じ霊夢がお祓い棒で殴り掛かりに行く。

 

「無理だと言っているのに」

 

しかしその攻撃は聖の前で停止する。まるで壁にぶつかったように。聖は一歩も動いてないのにだ。

 

「忘れたか霊夢。聖も魔法使いだ!」

 

「前はこんな魔法使って無かったけどね!」

 

間髪入れずにその手に御札を持つ。お祓い棒での攻撃から弾幕へと切り替えるようだ。

 

「目障りな……」

 

「嘘っ?!」

 

弾幕を霊夢が放つ前に聖が霊夢を片腕で押し出すような動作をとる。すると霊夢は強風にあおられたように船の外へ吹き飛ばされた。

 

(何この力……!ただ強いんじゃない。なんというか、理不尽だわ……)

 

「霊夢!」

 

「よそ見とはいい度胸ね」

 

「不意打ちなんて卑怯だな!」

 

またも魔理沙の死角から雲山で攻撃する。しかし魔理沙も警戒は怠っていない。その攻撃は見えていたかのように綺麗に躱す。

 

「霊夢に何した!」

 

今度は信二が聖に攻撃を仕掛ける。先程の霊夢を見て近接では危険と判断し炎を使って攻める。

 

「無駄だって言ってるでしょ」

 

その攻撃も霊夢の時と同じように壁で阻まれたみたいに届かない。

 

「早く死んでくれないかしら」

 

そう言い手に魔力を溜める。

 

「妙な事をする前に__」

 

斬る。そう思ったがその前に船に降りた時のように船から弾幕が放たれた。けどその量は比べるのも馬鹿らしいほど違う。完全に弾幕ごっこのルールを超えた量。ただ信二達を飲み込み倒すだけを考えたものだった。

 

「くそっ!デタラメだな!」

 

弾幕の処理に手間をかけさせられ聖の元に近付けない。それだけの量。今まで戦ってきた者のどれよりも多かったのだ。

 

「ちょこまかとハエみたいに。やっと捕まえたわ」

 

「なんだってんだ。急に動きが早くなりやがって!」

 

一輪と戦っていた魔理沙も雲山に捕まっていた。二人の動きもさっきとは段違いに早くなったのだ。魔理沙の動きを超える程に。

 

「魔理沙!『フレアジェット』!」

 

魔法で一気に近づき雲山を炎で燃やす。そうすることで魔理沙は助けられる。しかしそれは聖に対して背を向ける事になる。すなわち隙だらけなのだ。

 

「それを助けたところで二人とも死ぬだけよ」

 

その隙を逃すほど今の聖は甘くない。背を向けた信二に向かって容赦なく弾幕を放つ。

 

「………ジャストタイミングだ」

 

「霊符「夢想封印」!」

 

その攻撃を戻ってきた霊夢が打ち消す。信二は信じていた。霊夢が戻ってくることを。

 

「霊夢、魔理沙、一旦引くぞ!このままだと分が悪い!」

 

「同じこと考えてたぜ!魔符「ミルキーウェイ」」

 

魔理沙の弾幕を殿にその場を撤退する3人。聖達は追うようなことはしなかった。まるでこの3人に何も警戒していないように。

 

「とんだ邪魔が入りましたね」

 

「虫が迷い込んだようなものよ。支障はないわ」

 

聖の魔法で信二が燃やした床も元通りになる。本当に信二達が来る前の状況に……なんの支障もなかった。

 

「……私の怒りを知りなさい人間(ゴミ)

 

船は止まることは無く進み続ける。収まらぬ怒りを乗せて。

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