東方不死鳥紀   作:はまなつ

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55話です。最近前書きで書くことがなくて困ってる作者です。もう特別な事が無ければ書かなくていいのか……?


55話 作戦会議

「さてと。作戦会議だな」

 

「なんでそんなに冷静なのよ」

 

霊夢が俺の方をじーっと見てくる。確かに落ち込むのも分かるけど。

 

「俺達はたった今敗走した。けどだからといって取り乱してもいい事なんて無いからな」

 

「そうとも言えるけど……」

 

「本当にこれで国の英雄だったのか?」

 

ほっとけ。

 

「で、二人からしてどう感じた?」

 

「どう、ねぇ〜」

 

二人ともどこか腑に落ちない様子だ。何か思うところがあるのだろう。

 

「うーん………なんて言うか、違和感だらけだったわね」

 

「それはワタシも思ったぜ」

 

そんな返答が帰ってきた。やっぱり二人も感じてたか。あの妙な違和感、強さに。

 

「まずこのワタシが一輪に捕まるって事がそのまんま異変だ」

 

「随分高飛車な発言ね」

 

「でも実際そうだろ」

 

確かに魔理沙は幻想郷でもトップクラスに強いし何よりも速い。比喩でもなんでもなく純粋に移動速度が。さらに小回りも効くため魔理沙を捕まえるどころか弾幕を当てることも至難の業なのだ。

 

「その魔理沙が捕まったってのは確かに何かあるのかもな」

 

「他には……やっぱり聖よね」

 

「普段はあんな事言わないしな」

 

「普段はどんな人なんだ?」

 

俺は普段の聖……というかあの船に乗っている人のことを何も知らない。出来るだけ情報は集めておきたいところだ。

 

「いつもはとても物腰の柔らかいやつよ。それこそ誰にでも優しい天女みたいな感じね」

 

「でもさっきあった時はだいぶ口が悪かったな」

 

「出会っていきなり罵倒だったからな。性格がキツイ人なのかと思ったけど、実際は違うみたいだな」

 

ここまで性格が変わるのは今までの異変でも類を見ない。しかもここまで強力な力を持ったのも今回が初めてだ。今までも異変の首謀者は新たに力を付けた者もいた。しかし聖達はその比ではない。

 

「妙に俺ら……って言うか人間を罵倒してたな。なんでか分かるか?」

 

「心当たりはあるわ」

 

「どんな?」

 

「かなーり昔に人間に封印されてるのよ、アイツ」

 

「封印?!何やらかしたんだ?」

 

封印なんて当たり前だがそうそうされるもんじゃない。消し去りたいけど殺すことが出来ない、そんな相手に使うものだ。つまり基本的には相当な理由があるはず。

 

「昔っから妖怪に気を使ってたの聖は。どうにかして人間と一緒に過ごせないかってね」

 

「でもそれが仇となった。その考えが人間にバレた途端今まで親しくしてた奴らから悪魔扱いだ」

 

「そして封印されたのよ。人間にね」

 

「……じゃあ今も人間を恨んでんのか?」

 

「恨んでたらあんな優しい性格になってないだろ」

 

「ってみんな思ってたんだけどね。実際は違ったみたい」

 

「うーん。恨む理由は十分ってところだな」

 

ぶつかり合うのに戦う理由を知らないってのは個人的に良くないと思ってる。相手のことを知らないのに戦うなんてそんなものはただの喧嘩だ。本当に分かり合うことは出来ないだろう。

 

「動機は何となく分かった」

 

「じゃあ次はどうやって止めるかだな」

 

「根拠はないけど正面からやり合って勝てる気がしないわ」

 

霊夢の勘は驚くほど当たる。その霊夢が一度やり合った後に無理と言ってるのだ。恐らく正当法は通じない。

 

「なんて言うんだろうな。上手く言えないけど俺達を前にした瞬間力が増したような感じだった」

 

「しかもまだ力を出し切ってないぜあれ。いくらなんでも強化され過ぎだ」

 

「絶対に何かあるよな」

 

「…………もしかしてだけど」

 

何やら霊夢が思いついたようだ。

 

()()()()()力を増してるんじゃない?」

 

「人間だけに?」

 

「………その通りだよ」

 

突然森の奥から知らない声が話に入ってきた。そんな得体の知れないものを警戒しない訳が無い。

 

「誰だっ!」

 

「そう声を荒らげるな。お前達にとっても私は有益なはずだ」

 

言いながら姿を表したその少女は誰かと戦った後なのか既にボロボロだった。

 

「ナズーリン?どうしてお前が?」

 

「それよりもその傷、何してたのよ」

 

「……これは聖達を止めるためについたものだ」

 

「戦ったのか?!」

 

「……それよりもまず自己紹介をしてくれ。じゃないと俺が話に入れない」

 

霊夢と魔理沙はこの少女のことを知っているようだ。それに話から察すると聖とも面識があるみたいだ。

 

「そういえば初対面だったね。ナズーリンだ、よろしく」

 

「火渡信二だ」

 

ナズーリンと握手を交わす。どうやらこちらに敵意は一切ない様子。

 

「それで、ナズーリンはなんで聖達と戦ったの?仲間でしょ?」

 

「仲間だからだよ。霊夢だってそこの魔理沙が異変を起こしたら止めるだろ?」

 

「そりゃ、そうだけど」

 

「そうじゃなくてなんで聖と一緒に行動してないのかってところだ」

 

「そうよ、それが言いたかったの」

 

「どういうこと?」

 

「ナズーリンは変わらなかったのか?聖達は人が変わってあの異変を起こしたんだ。一緒に過ごしてたナズーリンもああなる可能性はあるだろ?」

 

一緒に過ごしていたのにナズーリンだけ何もわからず異変にも加担しなかった。何も無ければそんなこと起きるはずがない。

 

「それは……自分でも分からない。ただいつの間にかご主人達は変わった。人に怒りを持つようになったんだ」

 

理由は分からないか。

 

「けどそれも不思議じゃないか。これまでの異変でもそうだったろ」

 

まず首謀者がいてそれを止める存在が身近な人で必ずいた。その存在……抑止力とも言える者と俺達は協力し合ってここまで解決してきたんだから。

 

「何故ナズーリンが変わってないのかはこの際ハッキリさせなくてもいい。それよりも仲間が1人増えたことの方が重要だ」

 

「……それもそうね」

 

「それで話を戻すがナズーリン、聖達が人間にだけ強さを増してるってのは本当か?」

 

「それは本当だよ。具体的にどれほど力を付けるかは分からないけど」

 

「なんでそんな事分かるんだ?」

 

「私と戦った時には強さは変わってなかったから。それともう一つ。聖の最終目的も関係してると思う」

 

「最終目的?」

 

「聖はあの船を使って人里にいる人間を全員殺そうとしてる」

 

「なんですって?!」

 

ナズーリンか語った聖の目的を聞いた瞬間霊夢が驚愕の表情を浮かべた。

 

「そ、そんなに驚く事なのか?」

 

いつもの霊夢に比べ明らかに動揺している霊夢を見て正直そこまで驚くことなのかと思う。人里の人間を全て殺す__そんなもの良くないに決まっている。しかしそこに血縁者もいない霊夢が冷や汗を流すのはなんというか意外だった。

 

「当たり前よ!いい、幻想郷に存在している妖怪は『人間に恐れられる存在』という前提で存在が証明されてるの。そこに例外は無く妖怪なら全てよ」

 

「それが人里の人間を滅ぼすのと何が関係するんだ?」

 

「人里の人間……つまり幻想郷で人間が全ていなくなってしまった時、妖怪を恐れる存在がいなくなる。そうなると妖怪の存在を証明する者がいなくなる。それは幻想郷の妖怪が消え去るということなの」

 

「なんだと?!」

 

人間が消えれば妖怪もいなくなる?そんなことになってしまえばそれこそ幻想郷の崩壊だ。

 

「だから今すぐ止めないと__!」

 

「待てって!」

 

今にも飛び出しそうな霊夢の腕をつかみその場に留まらせる。

 

「なんで止めるのよ!一大事だって___」

 

「だからこそだろ。無策のまま向かってもさっきみたいに返り討ちにされるだけだ!絶対に止めないといけないからこそよく考えるんだ!」

 

「………分かったわ」

 

よかった、納得してくれたか。ここで仲間割れなぞしても時間の無駄だからな。

 

「でも作戦を考えるって言っても具体的にどうするんだ?助っ人でも呼んでくるか?」

 

「………その作戦自体は悪くないと思う。数は多いに越したことはない。けど問題は人選だ?」

 

「人選って、強いやつを呼べばいいんじゃないか?」

 

いや、それだけじゃダメだ。

 

「これは俺の勘でしかないけど、今回の異変は()()()()()()()解決しないと意味がないと思う」

 

「人間だけ?妖怪とかのの手を借りないってこと?」

 

「そうだ。聖は人間への怒りでああなってるんだろ?」

 

ナズーリンの方を向いて問いかける。

 

「そう。そこだけは確実だよ」

 

「それなら聖は今人間に存在意義を見いだせないってことだ。そこに自分が起こした異変を人間以外が止めてもやっぱり同じだ。聖は納得しない。怒りを抱いたまんまだ」

 

「じゃあ人間(私達)の力だけで止めることが出来たら……」

 

「許しはしないかもしれないが、少なくとも認めるはずだ」

 

「そうなるとこの異変はワタシ達だけで解決するのか?」

 

「思い出せ。幻想郷には俺達以外にも人間はいるだろ?」

 

「………あっ、そうか!」

 

「そいつらに手伝ってもらうさ。きっと手を貸してくれるだろ」

 

「残りの人間達を連れてくるのは私がやるよ。こんな状態で戦っても足でまといだし、何より私は人間じゃないからね」

 

今この場にいない人間をナズーリンが連れてきてくれるという。探す手間が省けるのだ、断る理由がない。

 

「それともう一つ教えておく。あの船について」

 

「船?あれは聖輦船じゃないのか?」

 

「そうだけどちょっと違う。あれは聖の怒りの結晶だ」

 

「怒りの結晶?」

 

「聖の怒りがあの船を作ったんだ。だから船を壊せば聖も諦めると思うんだ」

 

怒りであれを作った。それはその行動力となったのか、魔法的な意味なのかは分からないが、どちらにせよその想いは半端なものでは無いことが分かる。

 

「それに……あの船は何で動いてると思う?」

 

「動力源の話か?」

 

「普通の船だったら、風とか物を燃やしたりだけど、魔法で動かしてることもあるな」

 

どれも首を横に振るナズーリン。その顔はどこか悔しそうにしいる。

 

「あれはご主人………寅丸星の力を動力源としてるんだ」

 

「寅丸星?誰だ?」

 

「聖の仲間でナズーリンの主人。毘沙門天の代わりとなる存在よ」

 

「それが動力源ってことは……!」

 

「うん。あれはご主人の毘沙門天としての力を吸い取って動いてるんだ。このままだとご主人はただの妖怪に……それだけじゃない、命まで吸い取ってたとしたらご主人は……!」

 

「………絶対に止めるぞ」

 

「言われなくても!」

 

「異変は止めなきゃな!」

 

「……ありがとうみんな」

 

必ず止めなくてはならない。改めて気合を入れる理由が出来たな。

 

「やる事は決まったわね」

 

「でもあの巨大な船をどう止めるかだな」

 

「………あっ、あれは信二?幽々子の時に放ってたやつ」

 

「幽々子の時?炎王強襲激の事か?」

 

「そうそう。あれだけのパワーがあれば全部燃やせるんじゃないか?」

 

魔理沙がそんな提案をする。

 

「なんの事よ」

 

そう言えばあの時霊夢は気を失ってたな。知らないのも当然か。

 

「白玉楼での異変の時に信二が使った技の事だ。あれはとてつもない魔法だぜ」

 

「………期待を裏切るようで悪いがそれは無理だ」

 

「なんで?!」

 

「純粋に魔力が足りないからだ」

 

実は地霊殿で起きた異変から休み無しで今まで来ている。多少魔力が回復したとしても雀の涙ほど。全開とはほど遠い。さらにあの技はかなり魔力を消費する。今放ったとしても燃やし尽くすのに時間がかかるだろう。

 

「それにあの船はたとえ破損したとしても聖の魔法で大抵は直せる。それはさっき確認した」

 

敗走する直前、俺が燃やした床の範囲が小さくなっていた。恐らく修繕出来るんだろう。

 

「炎王強襲激で燃やしていっても聖が直す。それのいたちごっこになるな」

 

ちまちまとやっていてもあの船は壊せない。直感とかではなく、確信している。

 

「じゃあどーするんだよ!」

 

「………一撃で決めればいい」

 

「一撃?」

 

「一撃であの船をぶっ壊す。それしかない」

 

少しずつ壊していくのではなく、一撃……一発で壊すことが出来たら直す暇も無いだろう。

 

「そんなこと出来るの?」

 

霊夢が不安そうに俺を見てくる。

 

「出来るさ。霊夢と魔理沙が手伝ってくれれば」

 

これは俺一人じゃ邪魔される。だから二人の助けが必要なんだ。

 

「二人で船の中の人の注意を引き付けてくれ。そうすれば俺が必ず……船をたたっ斬る!」

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