「俺が必ず………船をたたっ斬る!」
その信二の言葉には決意がこもっていた。絶対に成し遂げる……そんな強い意志が。
「船を斬るったってあんなデカいのにか?」
まず船を斬るということが非現実的な話。それに加え今信二が斬ろうとしている物は想像を絶するほどの大きさ。物理的な話でいえばまず不可能。
「信じてくれ。必ずやってみせる!」
「………そこまで言って出来なかったら承知しないわよ」
「ははっ!霊夢にそんなこと言われて出来なかったら死んでも死にきれねぇな」
「……わかったぜ。船のことは頼んだぞ信二!」
「あぁ、任せてくれ!」
何やかんやで魔理沙もかなり信二を信頼している。未だにあの船を一人で壊せるとは思えない。しかしそれと同時に信二ならやってくれるという信頼も存在している。
「話は済んだか?とりあえず私は他の人間達を探してくるよ」
「頼むぜナズーリン。ワタシ達だけだとキツイかもしれないからな」
「なるべく早く見つけなさいよ」
先程の戦闘を踏まえてその戦力差……いや、自分たちとの相性の悪さをその身に感じた。人手はいくらでも欲しいところ。
「心配しなくてもすぐ見つかると思うよ。あの船は言うなれば対人間兵器。嫌でも力を持つ人間を引き寄せるだろうね」
そういい残しナズーリンは残る人間を探しに行く。ああ言ってたのだ、加勢に関しては期待していいだろう。
「それでワタシ達はどうするんだ?ここで待ってるか?」
「いや、もちろん戦うぜ。たださっきみたいにがむしゃらにやり合う訳じゃないけど」
「具体的にはどうするのよ」
「俺が二人……というか援軍に来たやつもそうだけど。して欲しいことはまず聖の気を俺から逸らすこと。直前で邪魔されたらたまったもんじゃないからな」
「そこは任せて。私にも意地ってもんがあるから。負けたままじゃ終われないわ!」
随分やる気を見せる霊夢。普段は冷静だが意外と負けず嫌いな一面がある。今回はそれがいい感じに働くだろう。
「あとは船の中に誰も居ないようにして欲しい」
「船の中ってなると今いるのは星と村紗か?」
「村紗って誰だ?」
「聖輦船の船長をしてたやつよ。多分今もそいつが舵を切ってるわ」
「ならその二人を船の外に出して欲しい」
「なんでそんなことを?」
「寅丸についてはシンプルに救出の意味もあるけど。俺が斬る時にもし軌道上にいたらまず殺しちゃうからな。外に居てくれれば狙いを定められる」
流石に船の中を透視するとこは出来ない。出来れば全員が外から見える位置にいて欲しい。
「あの聖や一輪を相手にそこまで出来るかしら」
あの力を増した二人の攻撃を躱し、船の中に入り、寅丸を助ける。まさに無謀と言えるだろう。この三人だけでは明らかに人手が足りない。
「だから今回は俺達だけじゃ無理だ。救援が来るまではな。だから今俺達がとる作戦は一つ。出来るだけ情報を集めることだ」
♢
「………懲りずにまた来たのね」
「あんたが今すぐこの船を引き返すってのなら潔く消えてあげるわ」
「それこそ戯言ね。私が
「聞くわけないでしょ。今のあんたは」
「だからこうしてワタシ達が前に立ち塞がるんだぜ」
「全く……本当に鬱陶しい生き物ですね」
そういいなんの前触れもなく弾幕を放ってきた。その質量は先程と変わらず桁外れの量で。
「いきなりか!」
「当たり前だが容赦無しだな!」
だが話が通じないなんて予想通り。三人もすぐに戦闘態勢をとる。この船に戻った時から警戒は怠っていない。
「また戻ってきたのね!私達の邪魔ばっかりして!」
「一輪か、魔理沙!」
「任せとけ!二度同じ失敗はしない!」
一輪の相手はまたも魔理沙に任せる。どちらにせよ誰か一人は相手にしなくてはならないし、何より魔理沙も負けず嫌いだ。やられっぱなしは性にあわない。
「ほら、ワタシが相手だ!」
一輪の前に立ち、気を引くために弾幕を向ける。一輪としてはなるべく聖の傍にいたい。そのためこうでもしないと魔理沙に着いてこない。
「ちょっと……!邪魔くさいわね!」
「だったらワタシを倒すことだな!」
「待ちなさい!」
魔理沙の挑発が効きその後を追いかける一輪。信二の頼み通り船から離す。
(魔理沙は上手くやってくれたな)
後は魔理沙が負けないことを祈るだけ。
(そんなもん杞憂に終わるだろうけどな!)
先程の初見殺しのようなものは仕方ないと言える。そして今魔理沙は一度負けたことでもう油断も手加減もしない。本気も本気の状態。そんな魔理沙の負ける姿なぞ想像がつかない。
「俺達も気張るぞ霊夢!」
「言われなくても!」
信二と霊夢はひたすら弾幕を処理していく。下手に反撃しようとしてもその弾幕の物量に押し負ける。そのため一瞬の隙を逃さないため今は耐えている。
「そんなんじゃ勝てませんよ」
聖が信二に向かって腕を押し出すように向ける。
「うおぉっ?!」
そうすると信二は何かにぶつかったように押し出される。
(これが霊夢が言っていたやつか!)
霊夢が吹っ飛ばされたといっていたものが今聖が使っている魔法と信二は予想した。確かに見えない壁に押されているような感覚だ。このままだと船の外に放り出されるだけでなく、大量の弾幕の前で無防備に突っ込むことになる。
「でもこれは対象外だろ、朱雀!」
「っ、小賢しい!」
信二は飛ばされながらも朱雀を出し、そのまま聖の方へと飛ばす。朱雀に邪魔された聖は信二から気を逸らす。すると信二を押していた魔法が解けた。
「予想通りだな」
相手は人間に対してだけ強くなっていた。そのため今の魔法も人間は通さないがそれ以外には何の効力もないと信二は考えた。だから今朱雀を使い試したのだ。結果予想は的中した。朱雀は信二の魔力、生命力を受けて生きている。しかしその本質は獣。人間ではない。
「こっちはどうだ!」
今度は魔法で炎を繰り出す。この魔法は攻撃用では無い。そのため規模も小さい。何故放ったのか?それはまたも検証のために放った。
「無駄よ」
しかしすぐに体制を立て直した聖は先程同様壁を作り炎を防ぐ。けどこれでまた一つ得た情報がある。あの壁は人間だけでなく、人間が放った魔法……恐らく弾幕も弾いてしまう。
(厄介だな。問題はあれの耐久力だな)
魔法にも絶対はない。どんな強力な魔法も魔力が尽きれば消えてしまうし、強靭な攻撃を受ければ弾けて消滅する。あの魔法も例外では無いだろう。こちらからあれを上回る攻撃をすれば破れるだろう。
しかし何かに突出した魔法というのは力を増す。それは魔法だけに留まらない。何か一つのことに集中したものを破るのは至難の業である。
「見てたか霊夢!恐らくあの壁は弾幕も防ぐぞ!」
「見てたわよ!その発動条件もね!」
霊夢が言った発動条件。それは聖が壁を使う時に必ずやっていた行為の事だ。その行為とは腕を前に突き出すこと。そしてその腕が示す方に壁は作り出され、動き出す。要はその腕の動きさえ見ていれば壁が何処にあるのかをある程度予測出来る。しかし大きさ、迫ってくる速さなどは見えないため厄介なことに変わりはない。
「それが分かったところで貴方達に勝機はない!」
見破られたことが癪に障ったのか攻撃が激しさをます。船からの攻撃は聖によって調整されていると見て間違いないだろう。
「くそ、戦力差は絶望だな!」
信二としては本当はなるべく戦いたくはない。魔力を消費したくないからだ。でも戦わなくては攻略のヒントは見つからない。それは船上で戦ってくれるみんなの負担がでかくなる。信二はそれも避けたいのだ。
「だったらこうすればいいのよ!」
霊夢が御札を数枚持ち、それを船へと向けて投げつける。御札はそれぞれ等間隔に船の上へと走っていく。
「邪魔なものには蓋をしましょう!」
霊夢が指を鳴らすと御札が光り、そこから結界が広がっていく。船を覆うようにして。
「何を………!」
船からは変わらず弾幕が出される。しかし出された直後霊夢の結界によって防がれる。行き場を無くした弾幕はそのまま消滅していく。完全に船からの攻撃を防いだ。
「私も得意なのよね。
霊夢はずっと御札に力を込めていた。乗り込む前からだ。そこまで力を込めた御札数枚によって作られた結界だ。そうそう壊れやしない。
「……生意気な」
「流石だな霊夢!」
少しずつ、少しずつだが対抗できている。追い風が吹いてきた。そして一度乗った波は止められない!船の下から突然人が現れた。幻想郷のもう一人の巫女が。
「大丈夫ですか霊夢さん!私が助けに来ましたよ!」
「………よりによって早苗が最初なのね」
「事情は聞きましたよ!こんな船早く壊してしまいましょう!」
念願の救援者の登場だと言うのに霊夢は何故かガッカリした。