東方不死鳥紀   作:はまなつ

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57話です。だいぶ遅れました。皆様覚えていますか?リアルが忙しくまたモチベも全然上がらなかった為こんな事に。これから頑張ります。


57話 戦慄の攻防

「ビックリしましたよ。まさかあの霊夢さんが私に助けを求めるなんて!」

 

「来てそうそう騒がしいわね!」

 

基本的に霊夢に頼られない早苗。むしろ同じ巫女として霊夢との絶対的な差をよく比較される。そんな霊夢が自分の力を貸してほしいと言われたのだ。テンションも上がるというもの。……まぁそこに言葉の綾はあるかもしれないが。

 

「照れないでください。素直に私に助けt___」

 

「目障りよ……」

 

痺れを切らした聖が早苗が喋っている途中にも関わらず弾幕を放った。今の聖が早苗達のやり取りを優しく待ってくれるはずもない。それどころかさらに人間が増えて機嫌が悪くなっている。

 

「うわっ?!……話には聞いていましたが本当に優しさが無くなりましたね、聖さん」

 

「そんなものを人間(あなた達)に与えるなんて無駄な真似しないわ」

 

「随分ないいようですね」

 

早苗とて賢くはないがバカでは無い。今ので話し合いは通じないということが分かっただろう。

 

「よく来てくれた早苗!後は頼んだぞ!」

 

「なんの!信二さんには恩がありますか……後は?」

 

そう言い残し信二は船から姿を消す。朱雀をその場に残して。

 

(俺の代わりに頼んだぞ、朱雀!)

 

「えぇぇーー!?信二さんは一緒に戦ってくれないんですか!?」

 

「色々とあんのよ。ほら、いつまで突っ立ってるつもり!」

 

聖は既に攻撃を始めている。早苗に説明している暇はない。なぜならここはもう治外法権とでも言おうか。弾幕ごっこの掟を全て無視した潰し合いとなっている。戦わなければ生き残れない!

 

「ちょ、ちょっと多くないですか?!」

 

「絶対に当たるんじゃないわよ!当たったら痛いで済まないから!」

 

「これまでの異変ともだいぶ違うんですね!」

 

信二が来る前に起きた異変。それはどのような事件でも必ず幻想郷内でのルールに従っていた。ただ信二が来てからの___アスモダイが関わっている異変はルールを破って起こしているものも多かった。それだけ異常なことが起きていると実感出来る。

 

「容赦はしませんよ聖さん!」

 

早苗も弾幕を撃つ。それがきっかけとなり三人は一斉に動き出す。それだけじゃない。信二が残していった朱雀も霊夢と共に動いている。

 

「手を貸してくれるのね。頼りにしてるわ」

 

霊夢のおかげで船からの攻撃は無くなった。しかし聖の弾幕が生ぬるいわけはない。的確に隙間を埋めて迫ってくる。躱す隙さえ与えてはくれない。

 

「でも負けられません!秘術「忘却の祭儀」」

 

「無駄よ。魔法「魔界蝶の妖香」」

 

スペルカードの撃ち合い。本来だったら二人の実力差に大きく差はない。しかし今の聖は()()()()()強い。撃ち合って勝てる相手じゃない。早苗のスペルカードとぶつかっては一方的に勝っていく。いくらか打ち勝ってはいるがこのままだと絶対に負ける。

 

「いつもより強いですね!」

 

「逃がさないわ」

 

撃ち合いでの勝機が薄いと感じた早苗は弾幕から逃げようとする。しかし早苗を壁で包みその場に留まらせる。早苗は先程の戦いを見ていない。故に虚を突かれた。見えない壁に当たりパニックに陥る。

 

「なっ?!何が当たって__」

 

迫り来る弾幕。避けることは当然出来ない。こちらも弾幕を放って相殺するのも1歩遅い。その前に自分を飲み込むだろう。一瞬の遅れが早苗を死へと導く。

 

「霊符「夢想封印」」

 

けど今は一人じゃない。助けてくれる仲間がいる。早苗の前に立ちはだかり自身のスペルカードで聖のスペルカードを相殺していく。それだけにとどまらず弾幕はそのまま聖の方へ。

 

「……やっぱり強いわね」

 

しかしそのまま弾幕を受けるはずもなく、壁によって阻まれる。やはりあの壁をどうにかしなければ二人に勝機はないだろう。

 

「気をつけなさい早苗。あいつ強固な見えない壁を作ってくるから。手をかざしてきたら注意して」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「ほら、すぐ次が来るわよ」

 

「……はい」

 

落ち込んでいる様子の早苗。今のスペルカードの撃ち合いで自分は完全に負けていたのに霊夢は勝っていた。あの時も焦らなければ対処出来たかもしれない。けど自分の実力が足りず危機に陥ってしまった。どうしても脳裏にチラついてしまう。自分は足でまと「言っとくけど」……

 

後ろは向かず前を見たままの霊夢が語りかける。

 

「足でまといなんかじゃないわ。今のだってあんたが削ったから私のスペルカードが勝っただけだし」

 

「……霊夢さん」

 

どうやら全てお見通しだったみたいだ。霊夢なりに励ましてくれた。不器用ながらもその想いを隠すことなく。そこに情けや同情の感情はなしに。

 

霊夢がこう言ってくれた。それだけで力が出る。……いや、出さなくちゃいけない。霊夢の為にも、そして任せると言ってくれた信二の為にも。

 

「それに私一人じゃキツイから……。頼りにしてるわ」

 

「分かりました!私の全力をもって勝利を手にします!」

 

「あなたじゃ力不足よ」

 

「なんと言われようと気にしません。だってそんなこと分かってますから!」

 

もう自分の弱さに嘆くのは辞めたのだ。不格好でも全力で。それが早苗が気付いていない強さだ。

 

「いきます!」

 

「無駄だと分からないの!」

 

またもお互いがぶつかり合う。ただ早苗は吹っ切れて先ほどよりもいい動きをしている。危なっかしい部分もあるが見違えるような動きで。

 

「邪魔なのよ!」

 

次第にイラつき始める聖。ついさっきまで暗然としていたくせに。当たり前のように気持ちを切り替える。それが気に食わない。手のひらを返したようなその態度が!

 

昂る感情を発散するかのように辺り一面に弾幕をばら撒き始める。手当たり次第に全てを破壊するように。しかしそこに先程のような戦略性はなく、そのせいか弾幕に少し隙間が出来ている。

 

「イラつてるの?雑になってきてるわよ!」

 

その隙を霊夢は見逃さない。ギリギリ入れるような間を瞬時に見極め距離を詰めていく。

 

「私だって!」

 

早苗もそこに食らいつく。それはもう必死に。それが癇に障るのかより険しい表情を浮かべる聖。人間の成長が、感情の移り変わりが、信じ合うという軽い言葉が!全てが自分を怒りの炎に突き落とす!

 

「それ以上近づくな!」

 

二人に向かって腕を向ける。近づかれる前に壁で押し出そうという考えだろう。しかしそれは判断ミス。軽率な行動と言える。

 

「お願い朱雀!」

 

「…っ!小癪な!」

 

発動と同時に朱雀を聖にぶつける。そうすることによって聖の妨害をしなおかつ動揺を誘える。人間が出した技でもない朱雀だから出来ることだ。現に聖の魔法の発動そのものをさせない事に成功した。そして一瞬朱雀によって聖が気をそらす。その瞬間を狙い霊夢は聖に殴りかかる。

 

今この場では朱雀の力が必要になる、そうなることは信二も考えていた。聖は壁の魔法に頼っている。自分に危機が迫ったら必ず使うと。だから朱雀を残したのだ。

 

「ようやくその面を拝めるわね!」

 

「人間が過ぎた真似を!」

 

「私も忘れないで下さいね!」

 

そこに早苗も加わる。弾幕を用いない近接格闘。人間相手に反則のように強くなってはいる。だが聖はそれを得意としていない。さらに相手は二人。逃げようとしても距離を離せない。誰が見てもどちらに分があるかは分かるだろう。徐々に聖を追い詰めていく。

 

(このまま押し切ってやる!)

 

……しかし主の危局に駆けつけぬ従者など存在しない。時に自らを危険に晒そうと主の為に力を貸す。

 

「フンっ!」

 

「なぁ?!」

 

「雲山?!」

 

三人の横槍を入れてきたのは魔理沙と戦っているはずの雲山だった。主の危機に駆けつけたのだろう。

 

「悪い霊夢!ヘマした!」

 

「ご無事ですか姉さん!」

 

その上空では一輪と魔理沙の姿が。そこに戦っている様子はなくにここまで飛んできた一輪を魔理沙が追いかけている。戦闘を無理やり中断して雲山で聖の手助けをしに来たのだ。

 

「ちゃんと止めてなさいよ!」

 

「もう二度としないよ!それにすぐ終わらせて手伝ってやる!」

 

一輪は雲山を戻そうとする。が魔理沙の腕も甘くはない。そんなことをしているうちに一輪を追い詰めるだろう。一輪と雲山、さらに人間特効といえる力が合わさり魔理沙以上の力を持っている。そのどれかが欠けていれば一気に形成は逆転する。この二人の勝負はもうすぐ決するだろう。

 

だがこの介入はあまりにも大きな戦局を動かした。霊夢と早苗が掴み取った数少ないチャンス。それが今手のひらから零れ落ちた。この刹那、聖は二人から距離をとりスペルカードの発動寸前まで至っていた。

 

感情の異常な昂りで招いた敗北への道。聖はこれを体験してしまった。そうなれば自身の感情をコントロールする。もうこの好機は訪れない。それどころかより徹底的にこちらを潰そうとするだろう。より隙のない相手になったのだ。

 

「死になさい!魔法「マジック____

 

優勢からの劣勢。この距離ではすぐに逃げなければ直撃は免れない。頭では動かなくてはならないと思っている。だがその事実が動きの鈍さを生み出す。

 

(やばっ、間に合わない!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__バタフライ……!」

 

時の流れの最中、思考が鈍るなら()()()()()()()()()()()。そのような暴論を行える人物が人間側には居る。

 

「貸し一つよ二人とも」

 

「……ビビるから辞めなさいよそれ」

 

「さ、咲夜さん!」

 

「はぁー…。お礼くらい言えないの?」

 

十六夜咲夜。時を止めることの出来る人間の少女。幻想郷にいるこの船を止められる数少ない戦力!

 

「それで?私の仕事は何かしら?」

 

頼まれた仕事は完璧にこなす。それが彼女の信念、生き様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……頼むぞ皆」

 

船の下ではずっと剣を携える男がが一人。ゆらめく炎のようにただ静かに戦局を見守る。最大の一撃を決めるために。

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