東方不死鳥紀   作:はまなつ

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58話です。……はい、完全に失踪してました。待っていてくれた方々、本当にすいませんでした!今もう待っている人がいるかは分かりませんが何とか完結には持っていこうと思います。


58話 動く戦況

「ザグヤさー〜ん!!」

 

「ちょっと、泣きながら抱きついてこないで」

 

間一髪のところで二人を助けたのは紅魔館の時を操る専属メイド、十六夜咲夜だった。

 

「ナズーリンから大体の話は聞いたわ。私の力が必要なんだって?」

 

そう言った時の顔がどことなく得意げだったのを見て若干霊夢はイラッとしたが助けられた手前強い態度も取れないため微妙な表情をするしか出来なかった。

 

「そりゃもう、咲夜さんがいれば百人力ですよ!」

 

こういう時に素直に物事が言えるものがいると話がスムーズに進む。霊夢に言わせれば何も考えていないということになるが。

 

「……来たからにはきっちり働いてもらうわよ」

 

「はいはい。それで、私は何をすればいいのかし……ら!」

 

話してる途中に弾幕が飛んでくる。三人の会話が終わるのを待つほど今の聖は優しくない。むしろ新たな邪魔が入った事により先程よりも怒りが増している。噛み締めた唇から血が出るほどに。

 

「貴方達は……どれほど私を苛立たせたら気が済むの!」

 

その怒りに呼応するかのように弾幕の量が増える。一刻前の戦闘に比べより隙を無くして。そんな弾幕が霊夢たちを襲っている。その勢いはもう付け入る隙を与えないと言っているようだった。

 

「気をつけて下さい咲夜さん!避ける場所は自分で作らないと当たります!」

 

「見れば分かるわそんなもの!」

 

今まで経験した事の無いその質量に戸惑いつつも上手く交わしていく。伊達に異変に身を投じていた訳では無い。

 

「咲夜!アンタは船の中にいる寅丸を助けなさい!」

 

「それはいいけどまず中に入れないんだけど!」

 

「今からその道を作んのよ!早苗!」

 

「は、はい!秘術「忘却の祭儀」」

 

「霊符「夢想封印」

 

霊夢と早苗がスペルカードを使う。それによりどんどんと弾幕は相殺されていく。だが、船の中に行くには少し足りない。船に近づけはすれど中に入るまでに被弾してしまう。

 

「これならどうだ?恋符「マスタースパーク」」

 

そこに一輪との戦闘を終えた魔理沙が強引に割ってはいる。全てを飲み込むようなスペルカードを放ったことで船の一部の弾幕の数が極端に減った。咲夜はその一瞬を逃さない。一気に船へと近づき甲板を破壊しようとする。霊夢も咲夜に合わせて船に施していた結界を解く。結果人一人が入れるほどの穴が空き、咲夜が侵入しようとする。

 

「何をしている!」

 

当然聖がそんなことを許すはずが無い。咲夜に手をかざし人間のみを拒絶する壁で押し出そうとする。

 

「どこ見てるの?」

 

それを霊夢が阻止する。いつの間にか聖のそばに行き、お得意の近接攻撃を繰り出した。その攻撃が当たることは無かったが妨害には成功し壁が咲夜に突撃することは無かった。

 

「……何故」

 

聖は小さく呟いた。霊夢達は知らないが聖は今自分の周りを囲うように壁を設置していた。先程の戦闘で近接格闘になれば自分に勝ち目がないと知ったから。もう近づかれないために、近づかれても平気なように。しかし霊夢の攻撃はこの壁をすり抜けた。人間を拒む壁をだ。

 

「……あぁ、そういう事ね」

 

しかしその謎はすぐに解けた。霊夢に力を貸すように朱雀が霊夢の近くを飛んでおり、霊夢の腕が、体が炎で包まれていた。それを見れば聖の壁をすり抜けたのは霊夢では無く、朱雀の炎だということが分かる。確かに霊夢の拳は壁に拒まれた。しかし獣である朱雀の炎は壁をすり抜けられる。

 

「これならアンタに泣きっ面かかせられそうね」

 

「でも船の結界を解いたのは悪手だったんじゃない」

 

今まで船を結界で覆っていたのは船からの攻撃が半端では無かったからだ。そのため攻撃が飛んでこないようにするために蓋のようにして覆っていた。

 

「だったらこうすればいいじゃない」

 

そう言うと霊夢は聖や自分達を囲う結界を張った。今までの弾幕を出させないための結界では無く、弾幕から身を守るため、そして聖を逃がさないための結界だ。

 

「……最初からそうすれば良かったんじゃないか?」

 

「聖の近くにいて弾幕が止んでる時が無かったから無理よ」

 

弾幕が張られている状態で結界を張っても自分の逃げ場を無くすだけと。スペルカードを発動しても同じだ。確かに発動している間は弾幕を消せるが効果が切れた瞬間また襲ってくるだろう。

 

「それに今なら厄介な弾幕をアンタ達が処理してくれるでしょ」

 

霊夢が今のように結界を張らなかった理由の1つ。たとえ無理やり弾幕を消し近接格闘に持ち込んだとしても弾幕の対処で追われると考えていた。しかしここには魔理沙と早苗がいる。霊夢を援護してくれる者達が。紆余曲折はあれど実は今が一番聖とマトモにやり合える状況と言える。

 

「弾幕は任せるわよ魔理沙、早苗!」

 

「任せろ!」

 

「霊夢さんは聖さんに集中して下さい!私達で抑えてみせます!」

 

「……思い上がるな!人間!」

 

四人で戦うにはあまりにも狭い空間で最終決戦が始まった。

 

♢

 

「……ふぅ、案外警備がしっかりしてるのね」

 

船の中に入った咲夜は自分が思っていたよりも前に進めないでいた。外だけにあると思ってた弾幕を吐き出す装置が中にも設置されてたからだ。しかも一つ二つの話ではなく、壊しても壊しても次々に現れるそれに嫌でも神経を向けなければならない。

 

「こんな船に備わっているものでも無いだろうに……」

 

外観は古来の作り。こんな厄介な装置が付いているなんて一目見ただけで想像する者はいないだろう。けどそこは咲夜。被弾などはすること無く、確実に対処出来ている。

 

「で、寅丸は何処にいるのか……」

 

ただえさえデカい船なんだ。一体どこを目指せばいいのか。……だが咲夜は大体の検討がついていた。

 

(こういうのは一番奥にいるのが鉄則よね)

 

大事な物はなるべく目のつかないところ……ここでいえば入ってから一番遠いところにあると睨んだ。それを踏まえて迷うことなくどんどんと前に進んでいるのだ。

 

「……これは当たりね」

 

船を侵略した先に現れたのは他の物よりも一層強固な見た目の扉。そして扉の向こうから肌で感じとれる嫌な気配。咲夜は間違いない、ここだと確信した。

 

「とっとと終わらせましょう。奇術「幻惑ミスディレクション」」

 

スペルカードを発動して一気に扉を突破する。普通に入った場合罠があった時に対処しにくいと考えたからだ。

 

「おいおい、だいぶ手荒だな」

 

扉の向こうにいたのは聖輦船を操縦する船長__村紗 水蜜。そしてその後ろに機械のようなものに繋がれているのが毘沙門天の代理人__寅丸星だ。

 

(何あれ?寅丸を助けろって言ってたけどあれから取り出せばいいのかしら?)

 

「船もあちこち壊して、どう責任とるんだい?」

 

「責任?そっちこそ、幻想郷を破壊しようとしてるくせに」

 

「違うよ。私達は人間に復讐しようとしてるだけだ。結果として幻想郷が無くなるってだけで」

 

悪びれる様子もなく当たり前のように語る。そこには人間……ましてや幻想郷の事など微塵も思ってはいない。

 

「同じことよ。分かっててやってるならね」

 

咲夜は臨戦態勢をとる。ただ黙って寅丸を取り返させてはくれない。今まで同様戦闘になるだろう。

 

「分かってないのはそっちだ。今こうなってるのも全部人間が生み出したエゴのせいなんだからさ!」

 

高まった感情と共に攻撃が咲夜を襲う。怒りを発散するように、自らの心を埋めるように。

 

「見てて苦しいわ。安心しなさい、すぐに終わらせるから!」

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