不道千景は勇者である 作:幻在
今回の勇者の章ですが、
救いを下さい。
そして次回予告の友奈の『結婚します』って何!?ついに同性結婚成立?なにこれ百合だっけ?友情の物語じゃなかったっけ?
と、次回が気になる所ですが、本編をどうぞ!
いやまじで救いを下さい。
翌日――――。
千景の教室にて、黒板に、三文字の漢字が書かれていた。
人名だ。
「今日から、お前らの仲間になる、『
「よろしくお願いします」
昨日の少年が、彼の教室に来ていた。
「・・・・マジで・・・?」
千景は茫然とした様子で件の少年、六道翼。
「翼は昔、事故にあって左腕と右目、そして右耳が聞こえねえらしいから、なんかあったら手伝ってやれ。いいな」
『はーい』
「そうなのか・・・」
意外な事実に千景は目を丸くする。
だが、翼は気にした様子もなく、千景に微笑んだ。
放課後、勇者部部室にて。
「そうきたか」
風がそう呟いた。
「転入生のふりなんてめんどくさい。まあ、私と翼様が来たからにはもう安心ね。完全勝利よ!」
グッとガッツポーズを取る夏凜。
「何故、このタイミングで?どうして初めから来てくれなかったんですか?」
美森が最もな事を言う。
「私だってすぐに出撃したかったのよ。だけど大赦は二重三重に万全を期しているの――――
―――最強の勇者を完成させるためにね」
夏凜が、ニヤリと笑う。
「最強の勇者?」
「そ、アンタたち先遣隊の戦闘データを得て、完璧に調整された完成型勇者、それが私と翼様」
スマホを取り出す夏凜。
「私と翼様の勇者システムは、対バーテックス用に最新の改良を施されているわ。その上、アンタたちトーシロとは違って、戦いの為の訓練を長年受けてきている」
ガタン、と手に持って振り回した箒の柄の先端が黒板に当たる。
「黒板に当たってんぞ」
剛がツッコむ。
「躾がいのありそうな子ね」
「なんですって!?」
「ああ、喧嘩しないでぇ」
風の言葉に喰いかかりそうな夏凜をなだめる樹。
「ふん、まあいいわ。とにかく大船に乗ったつもりでいなさい」
そこで友奈が立ち上がる。
「そっか、よろしくね、夏凜ちゃん」
「!?いきなり下の名前!?」
「あれ?嫌だった?」
「ふん、どうでも良いわ。名前なんて好きに呼びなさい」
それに対して友奈は、満面の笑みで、言う。
「ようこそ、勇者部へ」
「・・・・・は?誰が?」
「夏凜ちゃんと翼君」
「部員になるって話、一言も言ってないわよ!?」
きょとんとする友奈。
「違うの?」
「違うわ。私たちは貴方達を監視する為にここに来ただけなのよ」
「え?もうこないの?」
「・・・また来るわよ」
「じゃあ部員になっちゃった方が話しが早いよね」
「そうだな」
「確かに」
友奈の言葉に同意する千景と美森。
「まあいいわ。そういう事にしておきましょうか」
夏凜は仕方が無いといった風に答える。
が、すぐまら高圧的な態度になる。
「その方が貴方達を監視しやすいでしょうしね――――」
直後、彼女の顔の横を何かが霞め、黒板に当たり、砕け散る。
「・・・・」
それは、チョーク。
数秒をもって、夏凜はその顔を真っ青にする。
そして、ギギギ、とまるで錆びたブリキ人形の様に頭を回転させる。
そこには、
「夏凜ちゃん」
「は・・・はい」
「上から目線な態度はやめようって言ったよね?」
「は・・・・はい。すいませんでした・・・・翼様・・・」
「それと様はつけなくて良いって言ったでしょ?」
「で、ですが、こればかりはどうしようも・・・・・」
「う~ん・・・どうしてこの子だけは・・・」
どうやら翼には頭があがらない様子の夏凜。
「あれ?そういえば夏凜ちゃんはどうして翼君の事を様って呼んでるの?」
「言われてみればな。お前ら同い年なんだろ?」
友奈と千景は思った疑問を口にした。
「知らないのアンタたち?」
「え?何?知ってなきゃいけないような事?」
「六道家はね、大赦の中でも最高位の発言力を持つ上里家の直系の分家なのよ」
「え、じゃあ翼君、大赦の中で偉い人なの!?」
「次期当主だから、まだそこまでの力はないよ。それに、上里家は元来、優秀な巫女を排出している家系なんだけど、僕ら六道家は、その血を引いておりながら、武術に精通した家なんだ。僕は二年前に夏凜ちゃんの訓練の指導教官として配属になった時に会ってるんだ。その時から何故か羨望の眼差しで見られてるんだけど・・・・」
「貴方は私の憧れ。六道家の神童とまで言われた貴方から指導を受けられるなんて、光栄の至りなんです」
と、自慢げに言う夏凜の言葉を聞いた翼の眼に、陰が指す。
「・・・・僕は、神童でもなんでもない。ただの一人の人間だよ」
その瞬間、勇者部の部室が重い空気に包まれる。
だが、その時、ムッシャムッシャと何かが何かを食べる様な音が聞こえた。
それに一同が視線を向けた瞬間、夏凜が絶叫する。
「
そこには、さっきから出ていた夏凜の武士の様な恰好をした精霊『義輝』が友奈の牛鬼に喰われていた。
「何すんのよこの腐れ畜生!」
無理矢理引き離す夏凜。
『外道メ!』
「外道じゃないもん。牛鬼だもん」
と、ムスッとした表情になる友奈。
「ちょっと食いしん坊なだけなんだもんね」
「自分の精霊の躾もできないの!?やはりトーシロね!」
「皆牛鬼に食べられちゃうから、精霊を出しておけないのよ」
「じゃあこの精霊を早く引っ込めなさいよ!?」
「勝手に出てきちゃうんだよ。どうにもならねえ」
剛がそうツッコム。
「ハア!?アンタのシステム、壊れてんじゃないの!?」
『外道メ!』
「そういえばこの子喋れるんだね」
それを聞いた夏凜がどや顔する。
「ええ、私の能力に相応しい、強力な精霊よ」
「でも東郷さんには三匹いるよ」
その友奈の言葉に、美森は慌ててスマホを操作し、精霊を出す。
東郷の精霊は『刑部狸』『青坊主』『不知火』の三匹。
「出ました」
そこで夏凜は悔しそうな顔をすると風は予想したのだが、何故か夏凜は鼻で笑う。
「ふん!その程度なのね!翼様の精霊は六体よ!」
『ええ!?』
それに驚く一同。
なんと美森の二倍の数。
「別に自慢する事でもないんだけどね」
そう言って、翼は右手だけでスマホを操作し、精霊を出す。
「僕の精霊の『
「おお!」
「すっげぇ・・・・」
「どーよ!」
「でもね、夏凜ちゃん」
突然、破れた傘の精霊、
「はうあ!?」
「虎の威を借る狐の様に、他人を使って人を攻撃しないように」
「は、はい・・・すみません・・・」
「尻に敷かれてる・・・・」
「あ、この子も喋るんですね」
「うん、そうだよ。そうだ」
ふと翼は思い出したかのように立ち上がった。
「千景君・・・だったね」
「あ、ああ。そうだが」
突然、話しかけられ、たじろぐ千景の前に、何故か日本の戦闘機部隊が出撃時に来ていそうな服装をした精霊、三郎が、彼の前にスマホを差し出す。
「君のだよ」
「ああ、ありがとう」
それを受けとった千景は、試しに起動してみて中身を確認してみたところ、以前のものと全く変わりの無い事に安堵する。
「気を付けて」
「え?」
「それは旧型のもの。それもかなり古いタイプのものだ」
「それだと、なんかまずい事でもあるのか?」
「ああ。その型は、精霊の加護を受けられないんだ」
「加護?」
「精霊の加護がないと君をバーテックスの攻撃から守ってくれないんだ。見た事あるんじゃないかな?例えば牛鬼が友奈ちゃんを守った時、バリアを張って守ってくれた時とか」
「あ、ああ・・・・まさか、俺にはあれがないのか?」
「うん」
「という事は・・・昨日の戦いでもし千景君が前に出ていたら・・・・・」
「ガスで死んでいただろうね」
美森の推測を翼が肯定した瞬間、場の空気が凍る。
だが、翼は構わず続ける。
「システムのアップデートも出来なかった。だから、千景君はあまり前に出ないでほしい―――」
「断る」
千景が、真っ先に拒否した。
「ハア!?あんた何言ってんの!?死にたいの!?」
「死ぬ気はないし、戦って負ける気もない。俺は勇者部部員不道千景だ。他の仲間が戦ってんのに、なんで俺だけ後ろで指をくわえて見ていなくちゃいけない?」
夏凜の怒声に引く事無く、千景は言う。
「それに、要するには攻撃を受けなければいいんだろ?例え加護がなくたって、それなりにやれる事はあるはずだ。例えば、アイツらの足止めなんかな」
「危険過ぎる。精霊がいない君じゃ、無理が・・・」
「でも戦えた」
「!?」
それは、千景の持つ、一撃必殺の絶技。
「俺でも、奴らと戦える。だから・・・」
「それでもダメよ」
だが、そこで風が口を挟む。
「貴方がどれほど強力な武器を持っていようとも、守りがなっていなくちゃ話にならないわ。ここは大人しく、後ろで様子見してなさい」
「ッ・・・だけど・・・」
「千景君」
「友奈・・・・」
それでもなお食い下がろうとする千景に、友奈が歩み寄る。
「大丈夫だよ。千景君は私が守る。だって、千景君が怪我するの、嫌だから」
「・・・・俺は―――」
友奈の言葉に反論しようとする千景。
――――そう、
「づぁッ!?」
「千景君!?」
突然の鋭い頭痛が千景を襲う。
だが、それもすぐに収まり、何事もなかったかのようになる。
「大丈夫?」
「ああ・・・少し頭痛がしただけだ。最近多くてな」
すでに引いた痛みに若干の心残りを感じるものの、とりあえずこの案件は受け入れる他なさそうだ。
「・・・・わかりました。ですが、もし誰かが危険だと俺が判断した場合は―――迷わず前に出ます」
「ええ。わかったわ」
承諾する風。
だが、翼はまだ不安そうだ。
「・・・なんだよ」
「いや・・・・頼むから、死なないでくれよ」
「?・・・ああ」
妙に深く釘を刺してくる翼に疑問を持ちながらも、千景はそれを承諾した。
夜。
千景は、自分の家にて、ベッドに寝っ転がり、自分のスマホを持って見ていた。
「・・・・・」
精霊の加護がない。
それは、敵の攻撃から守ってくれるものがないという事。
そんな状況下で戦えば、死なないまでも、まず無事ではすまない。
「・・・何をいまさら」
千景はそれを心の中で一蹴する。
「
そう、それはずっと昔の事。
五人と一人の仲間と共に、激動の日々を駆け抜けた、あの一年。
一人は盾を砕かれ貫かれ、一人はそれの巻き添えを喰らい、一人は死ぬ直前に神樹に取り込まれた。
どれも大切な人だった。
だけど、初めの二人は力不足、最後の一人に至っては
道を踏み外した代償があれだ。
だけど、今は違う。
戦える。
前みたいな過ちはもう犯さない。
もう、誰も失わせやしない。
「ッ!?」
そこで我に帰る千景。
「くそ・・・・混じってきてる」
あの変身に続き、症状は軽微なものだが、明らかに記憶が混乱してきている。
まるで、別の誰かの記憶を刷り込まれていくかのような、そんな感覚。
「これは・・・・進行すればまずいかもな・・・・」
結局、自分も友奈と同じだ。
周りに迷惑をかけたくない。誰にも傷付いて欲しくない。だから自分が戦う。
例え、自分の何もかもを犠牲にしようとも。
「せめて・・・『アレ』を使えれば・・・・」
使えるかどうかわからない。
だが、きっとあれは決め手になる。
「・・・・どうにかして精神鍛えねえと」
そう呟き、千景の意識は闇に落ちた。
「わっしーの様子はどうだった?」
「楽しそうだったよ」
「なら良かった~」
安心したように顔を緩ませる包帯だらけの少女。
その少女に、微笑む翼。
「君も行ければよかったんだけどね」
「う~ん、それは無理だな~。だってこんなんなっちゃったからね」
「ハハハ・・・・僕より持たないからね、あれは」
「そうだね~。でも、わっしー元気そうで良かった」
「それは僕も同じだよ。まあ、夏凜ちゃんはまだ馴染めないみたいだけど」
「君自慢の弟子なのにね~」
「戦いのセンスはずっと良いんだけどね。どうにも集団に馴染むのが苦手みたいで・・・・」
「それに君の事を翼様って呼んでいるみたいだしね~」
「う・・・本人にはやめるように言ってあるんだけどなぁ・・・・」
「良いんじゃないかな?それで」
「僕は困るんだよ。同い年なんだから、もう少し親しくして欲しい所なんだけどね」
困ったように頭を掻く翼。
「アハハ」
それに笑う、少女。
「さて、そろそろ・・・」
「うん。また明日~」
椅子から立ち上がり、帰る翼。
少女のいる病室を出て、廊下を歩く。
ふと、廊下の途中で立ち止まる。
「・・・・山さんか」
「はい、ここに」
闇の中から声が聞こえる。
「大赦の様子はどうだい?」
「不道千景を排除しようとする動きが出始めております。
「そうか。調べの方はついたか?」
「坊ちゃまが持ち帰った写真から、特定しました。しかし、所在は不明です」
「バレる事は分かっていたか・・・・分かった、引き続き監視と調査を」
「分かりました」
気配が消える。
翼は、ポケットからスマホを取り出し、起動する。
そして、写真のアプリを開く。
そこには、四人の子供が映っていた。
黒髪の少女。
麹塵色の髪をした少女。
黄色の髪をした少女。
そして、翼を幾分か小さくした少年。
「・・・大丈夫。君が守った世界は、僕が守る。須美ちゃんの事も、僕が守る」
その瞳に、確かな決意を込めて。
翼は歩き出す。
次回『情報交換』
キャラ紹介
六道翼
所属 六道家次期当主 讃州中学二年 勇者部所属
容姿
黒髪碧眼
身長160㎝
概要
趣味 囲碁
大赦で暗部を務める六道家の次男にして次期当主。
神童と呼ばれる程、武術の才に秀でており、その強さに、右に出る者はいないと言われている。
美森の事を妙に気に掛ける。
歴史に少なからず興味があり、特に陸軍の事に関しては最も知っている。
外国の歴史も少なからず理解している。
趣味の将棋は軽く大会を優勝できる程の実力を持つ。
もろ事情により、左腕、右目、右耳が機能していない。実は他の部位も機能していない。
更に、夏凜の訓練指導官
勇者として
武器は着装型ボウガン。
自動装填、連続射出など、様々な機能がついている。
得意技は『ボルトパンチ』
ボウガンの射出と共に拳を叩き付ける技。威力は圧縮装填の度合いによる。
精霊は『
■■の方で■■をやっていた■■■■。
機能していない部位は■■に影響によるもの。
満開可。