不道千景は勇者である   作:幻在

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こんにつは、幻在です。

少し遅れてしまいましたが、まずはじめに、勇者の章についての感想を。

東郷さんの友奈呼び捨て。

戦闘時の園子の勇姿。

そして歴代勇者たちの登場(光だけど)。

ラストの友奈の大満開。

怒涛の展開に、もはや言葉はありません!

と、こんな風に興奮している訳ですが、今回は少し短め。

本編をどうぞ!


決別

熱も下がり、一昨日ぶりの学校へ行く千景。

「大丈夫なの?一応、病み上がりなんだから、無理しないでよ?じゃないと友奈が心配するわよ?」

「なんでそこで友奈が出てくるんだ?」

思わず聞き返してしまう千景。

「まあ、一応全開ってところかね。東郷のぼた餅が効いたんだろ」

「なんだかぼた餅が万能薬が聞こえてきそうね・・・」

「甘いものは体力回復や気分の高揚に結構役立つんだぞ?友奈曰くだが」

「本当に東郷のぼた餅好きよね友奈は」

「そうだな」

と、二人で楽しく会話し、通学路を歩く二人。

ただ、ふと、千景と夏凜の横を、ガタイの良い黒のボロコートを来た男がすれ違った。

そう、恰好からしても、何の違和感もなく通っていた男だ。

特に気にする特徴の無い、ただの何の変哲もない、ただの男。

 

だが千景は、その男が通り過ぎっていった瞬間、勢いよく振り向いた。

 

「―――ッ!?」

あの人は―――。

自分はあの男を知っている。誰だ?どこの誰だ?

そう千景が模索している中、

「千景、どうかしたの?」

夏凜が、そう聞いてくる。

それによって我に返る千景。

「いや・・・知り合いに似た人が居たな、と思って・・・」

「知り合いって・・・さっきの反応からしてアンタを虐めてた施設の悪ガキの事?」

「いや・・それとは・・・・」

関係無い。そう言おうとした。

 

気付かぬ間に、千景と夏凜の背後に、一つの気配が立って、こちらに視線を向けていた。

 

殺意にも似た、感情を。

「「ッ―――!」」

二人の反応を早かった。

前に飛び出し、地面から足が離れている間に反転。後ろにいる人物を睨み付ける。

「あんたは・・・!」

「・・・幸奈」

そこには、白いシャツのどこかの学校の制服を来た、黒髪の少女が立っていた。

それは、紛れもなく、千景の幼馴染の少女、稲成幸奈だった。

「何の用よ」

出来るだけ声を低くしてそう問いかける夏凜。

二人とも、ポケットに手を忍ばせ、いつでも変身出来るように身構えている。

だが、幸奈は、夏凜から視線を外し、千景に言った。

「・・・こちら側にきて、千景君」

それに、僅かにでも驚く二人。

「・・・・どういう意味だ?」

聞き返す千景。

「意味はそのままよ。千景君。お願いだから、私たちの所へきて」

「断る」

即答。

何故、世界を壊すと言っている者達の所へ、自分が行かなければならないのか。

訳が分からない。

「そう・・・・まあ、何の説明も無しに言えば、断るのは当然」

「あんた達の目的は一体何?神樹様を破壊して、貴方達にはどんなメリットがあるっていうの?」

夏凜がそう問いかける。

そして、幸奈は、こう返した。

「・・・・世界を作り変えるの」

「世界を・・・」

「作り変える・・・・?」

何を言っているのか分からない。

「この神樹の世界を壊し、新たな世界を作る。それが私たちの目的。誰も苦しまず、誰も不幸な思いをしない世界。苦痛もない、争いも無い、血も流れない。そんな世界を、私たちは作るの」

「何を・・・言って・・・・」

まるで、子供の幼稚な夢物語だ。

「この世界は醜いわ。争い、怒り、憎み合い。挙句の果てには殺し合う。そこに、相手の幸福なんてものはない。だから作り変える。誰もが幸せになれる世界を」

幸奈は、まるで狂信者のような事を口々に述べる。

それに、二人は絶句するほかない。

「私たちは、天の神と契約する事で、この力を得た。この世界を壊す手助けをする為に。そして約束された。新世界に、私たちを連れて行ってくれると」

そして、幸奈は、千景に向かって手を差し伸べる。

「ただ、私にとって、その事は()()()()()()()。私は、ただ、()()()()()()()()()()()()()の」

「「!?」」

あまりにも予想外な事に、驚く二人。

 

「貴方を救わない世界なんて、私はいらない。だから一緒に来て。千景君」

 

「「・・・・・」」

立ち尽くす二人。

それは、あまりにも壮大で、無謀で、叶う事のない、絶対不可能な業。

それを、彼女は自身に満ち溢れた口調で言ってのける。

まるで、本気でそれが実現できるかのように。

 

誰も傷付かず、不幸にならない世界。

 

それは、誰もが求めた、理想の世界だ。

好きなものは簡単に手にはいる。

やりたい事は自由に出来る。

そんな、そんな夢みたいな世界を―――――

 

 

 

 

 

(かのじょ)は欠片一つも求めていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だ」

真っ直ぐに、そう言った。

「不道・・・!」

「・・・・何故?」

幸奈の声は、僅かに動揺していた。

「お前・・・それ、今ここにいる人たちを見捨てて新しい世界に一緒に行ってくれって、そう言ってるんだよな?」

「ええ。そうよ」

「だったら嫌だ。俺は行かない」

千景は、幸奈を睨み付ける。

「まだ、この四国では沢山の人が精一杯生きてるんだ。時には他人を騙す事もあるかもしれない。時には誰かを傷付けてしまう事があるかもしれない。だけどそれでも、ここにいる人たちは『今』を全力で生きてるんだ」

 

あの人は言った。大切な誰かの為に、天敵と戦おうとする人がいることを知っていると。

 

あの人は言った。助けを求める誰かの為に、自らの身を危険に晒してでも手を伸ばす人がいることを知っていると。

 

あの人は言った。もし家で何かに怯えていても、目の前で子供が交通事故に遭いそうになった時、恐怖を跳ねのけて助けに行く人がいる事を知っていると。

 

あの人は言った。皆が皆、天敵に立ち向かう勇気を持つ、勇者なのだと。

 

あの人は、確かに勇者だった。

 

あの人は、誰もが認める勇者だった。

 

あの人は、誰よりも勇者だった。

 

その人が守り、そして、いずれ必ず人の世界を取り戻してくれると、未来を託したこの世界を、(わたし)は守ると誓った。

 

そう、これは誰の為でもない。これは(わたし)自己(エゴ)

 

 

 

 

これは、(わたし)悲願(ねがい)だ。

 

 

 

 

「誰かを見捨てて手に入れる幸せなんて俺はいらない。悪いがお前の要求は受け入れられない」

そう、きっぱりと言い放った。

「・・・・・そ、う・・」

俯き、震える声で、幸奈は、呟いた。表情は、分からない。

「・・・分かったわ。貴方の答えは確かに聞いた。だけど、これだけは覚えておいて」

踵を返す幸奈。

 

 

 

「貴方達に、勝ち目はない」

 

 

 

瞬間、どこからともなく影が降り、彼女と共に消え去った。

二人は、その空間をいつまでも睨み続けた。

ただ、その僅かな沈黙の中、夏凜が、口を開いた。

「まあ、見直した、と言っておくわ」

「それはどうも」

互いにうなずき合う。

「さ、早くしないと遅刻だ!少し急ぐぞ!」

「ええ!」

そうして走り出す二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、時が止まった。

 

 

 

 

 




次回『花を纏いし勇者VS星の名を持つ魔物と新世界を望む魔族』

双方、激突。

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