不道千景は勇者である   作:幻在

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こんにちは、幻在です。

ついに決戦に突入します!


花を纏いし勇者VS星の名を持つ魔物と新世界を望む魔族

樹海の中、千景、友奈、翼、美森、樹、夏凜の六人は、壁の向こうからやってくる敵を見据えていた。

「残り七体、全部来てるんじゃいの、これ?」

夏凜が、携帯の画面を除く。

そこには―――

 

魚型―――ピスケス・バーテックス

 

水瓶型―――アクエリアス・バーテックス

 

牡羊型―――アリエス・バーテックス

 

牡牛型―――タウラス・バーテックス

 

天秤型―――リブラ・バーテックス

 

双子型―――ジェミニ・バーテックス

 

獅子型―――レオ・バーテックス

 

 

「総攻撃・・・最悪の攻撃パターンね」

夏凜がそう呟く。

「やりがい在り過ぎてサプリが増しましだわ」

と、ポケットからサプリのケースを取り出して、それを口にほおりこむ。

更に何を思ったのか、そのケースを樹に差し出す。

「樹も決めとく?」

「その言い方はちょっと・・・・」

苦笑いする樹。

「・・・・来てるな」

千景が、携帯の画面から、来ているだろうもう一方の敵を確認する。

 

全部で、六体。

 

「あれ、なんで攻めてこないんだろう?」

友奈が疑問を口にする。

「さあ、どのみち神樹様の加護の届かない壁の外にでちゃいけないっていう教えがあるから、アタシたちの方から攻めないけどね」

「・・・・」

夏凜のその発言を聞いて、千景はふと疑問に思う。

 

 

(たしか、あの頃は結界の外でも勇者としての力は使えたような・・・)

 

 

そう思うも、気にしている暇は無さそうだ。

千景は端末を覗き込む。

そこには、今進行してきているバーテックス以外は、何も表示されていない。

「ステルス仕様か・・・・」

「アプリじゃ、奴らの位置は確認できないみたいだね」

厄介な事だ、と翼は呟く。

「奴らは、精霊のバリアを無効化する手段を持っているみたいだから、気を付けた方がいいね」

「そうだな」

そこへ、偵察に行っていた風が戻ってくる。

「敵さん、壁ギリギリの位置から仕掛けてくるみたい」

風がそういう。

「決戦ね。皆もそろそろ準備を」

そう断言した時、一同に緊張が走る。

特に、樹は不安そうな表情になる。

そんな時だ。

「んあ!?アハハハハハハハなんですか友奈さん!?」

いきなり友奈にくすぐられ、大笑いする樹。

そんな樹に、友奈は自信たっぷりに言う。

「緊張しなくても大丈夫。皆いるんだから」

そう言われ、振り向くと、夏凜はそっぽを向き、剛は笑ってサムズアップ、千景は鼻を鳴らし、翼と美森は微笑んだ。

それに、安心したかのように、樹は返事をする。

「はい!」

それに風は安心し、声をあげる。

「よし!勇者部一同、変身!」

それを合図に、全員が携帯の変身アプリを起動する。

 

 

千景は彼岸花。

友奈は山桜。

翼はブルースター。

美森はアサガオ。

剛はアフェランドラ。

樹は鳴子百合。

夏凜はレンゲツツジ。

 

 

それぞれが想起させる戦装束に着替え、敵を見据える。

進行を開始した敵。

「敵ながら圧巻ですね」

美森がそう呟く。

「逆に言えば、アレ全部殲滅すれば、戦いは終わったようなもんでしょ?」

「そうだと、いいんだけどね」

夏凜の言葉に、翼が重ねる。

(今回の戦い。おそらく、誰かが満開を使う事になるかもしれない・・・・だけど・・・)

翼は、一つの最も引っかかっている疑問を心に浮かべ、友奈を見た。

(友奈ちゃん。君は一体何を()()()んだ?)

ふと、風が前に出る。

「皆、ここはアレ行っときましょう!」

「アレ?どれよ?」

と、夏凜が疑問に思っている事を他所に、肩を組み始める一同。

いわゆる、円陣だ。

「円陣!?それ必要!?」

「気合入れるのには必要だよ夏凜ちゃん」

「う・・」

「夏凜ちゃん」

友奈が呼ぶ。

「しょ、しょうがないわね」

夏凜も渋々といった形で円陣に加わる。

「アンタたち、勝ったら好きなもの奢ってあげるから、絶対に死ぬんじゃないわよ!特に千景!」

「よーし、好きなものいっぱい食べよ!肉ぶっかけうどんとか!」

「言われなくても殲滅してあげるわ!」

「守りたいものの為にね」

「私も、叶えたい夢があるから!」

「やってやるよ、全力で!」

「頑張って皆を、国を、守りましょう!」

「平和な日々、変わりの無い日常、俺は、この世に生きるただごく普通の日常を送る人々を守る。それだけの為に、俺は戦う」

全員の心意気を受け入れ、風は声を挙げる。

「よーし!勇者部ファイト、」

 

『オォー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『出陣!』

夏凜の義輝が、法螺貝を鳴らす。

それと同時に、どこからともなく無数の矢が飛んでくる。

それを全員が飛んで回避する。翼を除いて。

「翼君!?」

「翼!?」

美森と剛が驚きの声をあげる。

だが、そう言っている間に矢はがただ突っ立っているだけの翼の脇を通り過ぎ、唯一直撃コースだった矢を右手で受け止める。

そして、片手の握力のみで、その矢をへし折る。

「打ち合わせ通り!僕と千景君、剛さん、そして夏凜ちゃんで襲撃者を抑える!他の皆はバーテックスを一体ずつ確実に倒して!」

「オッケー、くたばんじゃないわよ!」

「任せておけ風!」

そうして二手に分かれる。

「決して一人も行かせないで。邪魔されると、バーテックスを倒せなくなる可能性がある。いいね!」

「分かった!」

「了解です!」

「了解!」

返事を返す剛、夏凜、千景の三人。

一方で、襲撃側の方では。

「・・・六道翼、三好夏凜、三ノ輪剛、不道千景がこちらに来たな」

佐奈が、強化された視力で敵を見据える。

「そうか・・・・予想通りだな」

翔琉が、背中の剣を引き抜く。

黒い片手直剣だ。

「ううう・・・敵・・・・倒す・・・」

真斗が、体を震わせてそう呟く。

その間に佐奈はまた矢を放つ。

だが、それは全て避けられてしまう。

「ダメだな・・・やはり迎撃か」

「そうか・・・行くぞ!」

翔琉が一番に出る。

「あ!ずるーい!」

美紀もその後を追い、弘と真斗も追いかける。

「来た・・・!」

「先行を・・・・!」

「待て!」

夏凜が前に出ようとしたところを、翼が止める。

「一反木綿ッ!」

翼が、一反木綿を出現させる。

その直後に、一反木綿が左腕に巻き付く。

すると、動かない筈の左腕が、動いた。

一反木綿を使う事で、左腕を無理矢理動かしているのだ。

「猫又、傘!」

さらに二体呼び出し、右腕と左腕にボウガンを装着する。

そして、両腕を突き出す。

弓の部分が収納され、光が集束される。

そして、圧縮されたエネルギーが矢として撃ち出される。

「まずは貴方だ。佐奈さんッ!」

まずは、敵の狙撃手を抑える。

「ツインボルトカノン」

撃ち放たれる二本の山をも穿つ必殺の矢。

「やはりそうくるかッ!」

佐奈が、すぐさま弓を二本つがえる。

直後、二本の矢が、その輝きを増し、圧縮され、放たれる。

四本の矢が正面衝突し、光と衝撃波をまき散らす。

だが、その間に、二勢は数秒立たずに激突する。

「ハァ!」

夏凜が両手の刀を投げつける。

狙いは、美紀だ。

空中であるため、回避は出来ない。

だから迎撃しようとした瞬間、夏凜の刀が爆発する。

「きゃ!?」

吹き飛ばされる美紀。

「翼様!」

「分かった!気を付けて!」

「そちらも、ご武運を!」

互いに声を掛け合い、翼は吹き飛ばされた美紀を追いかける。

夏凜の刀は、爆発する特殊能力を持つ。

そのタイミングは自由自在だ。

「美紀ちゃん!?」

「みき・・・」

「オォォ――――ッ!」

「「!?」」

突如の気合の一声。

次の瞬間、振り向いた真斗の胴体に、凄まじい質量の一撃が叩き込まれる。

「うげぅ!?」

そのまま大きく吹き飛ばされる真斗。

彼を吹き飛ばしたのは剛。

その戦槌(ハンマー)は、片方が変形し、ジェット噴出口の様な形状していた。

剛の戦槌は、両手持ちであるうえに、千景と同じように変形し、ジェット噴射による強力な一撃を放てるようになっているのだ。

「ついでにテメェもだぁぁあああ!!!」

「な―――うわぁああああ!?」

そのまま一回転して、隣にいた弘まで真斗と同じ方向に吹っ飛ばす。

「掴まれ夏凜ッ!」

「せぇい!」

剛に言われ、ハンマーの柄を掴む夏凜。

そのまま、ジェット噴射し、二人を追いかける。

それぞれがそれぞれの獲物を見つけた所で、千景と翔琉もぶつかる。

千景が鎌をふるい、翔琉が右手の剣を薙ぐ。

重い金属音が、樹海に響く。

互いに樹海に降り立つ。

そして睨み合う。

(おかしい・・・・)

その中で、千景は悟られぬように周囲を見回す。

(幸奈の姿が無い・・・どこにいるんだ?)

ここにいるであろう、少女を探す千景。

「無駄な足掻きを・・・」

ふと、翔琉がつぶやいた。

「無駄?」

「そうだ。お前たちのやっている事は、せいぜい人類の生存を長引かせているだけ。どうせ神樹が力尽きれば、この世界はいとも容易く壊れ消える。そんな世界、守ってどうする?」

そう、冷めた目で言ってくる翔琉。

「どうせ終わるとか壊れるとか、そんな事、どうだって良い」

それに対して、千景は言い放つ。

「世界は取り戻す。新世界なんていらねえ。俺達は、ただ、この世界を取り戻すために戦ってんだ。壊れるとか終わるとか、そんなの俺たちがいる限り絶対に起こらねえような事を、夢物語に語るな」

鎌を構える。

「どちらにしろこれが最後だ。だから、ここでお前を食い止める!」

真っ直ぐに、翔琉を睨み付ける。

「・・・・最後、だと?」

突然、首を傾げる翔琉。

そして、その冷たい視線は、まるで何かを憐れむ様なものになる。

「なるほど、信じているものから騙されているという訳か・・・・」

「?」

その声は、まるで蚊の鳴くかのように小さいため、千景にはとどかなかった。

「良いだろう・・・・ならばその無価値な幻想をこの俺が叩っ斬ってやる!」

殺気が増大する。

「ッ―――!」

それに一瞬、気圧される千景だったが、すぐに落ち着きを取り戻し、身を沈め、構える。

(今は、幸奈がどこにいるのか分からない。だけど、今はコイツを抑えるのが先だ!)

同時に地面を蹴る。

金属音が、樹海に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美森は、自らが持つスナイパーライフルのスコープを覗き込み、敵の進行状況を見ていた。

「バーテックスの侵攻速度にばらつきがある・・・・」

携帯に表示されている敵の動きには、確かにばらつきがある。

最も速いのは、アリエス・バーテックス。牡羊座の名を与えられたバーテックスだ。

まるで地面をうねるかのように動いて、まるで迂回するかのように神樹に向かって侵攻している。

だが、それよりも注目すべきは、最も奥にいる、巨大なバーテックス。

「あの巨大な奴、明らかに別格ね・・・・」

レオ・バーテックス、獅子座の名を与えられたバーテックス。

「だけど、まずは・・・・」

しかし美森は最初にソイツを狙わない。

 

まずは、確実に倒せる奴から確実に倒していく。

 

「行くわよぉぉぉぉお!!」

風が大剣をアリエスに叩きつける。

頭部に直撃する。

その直後に、美森が狙撃。アリエスは、沈黙する。

「他の敵が来る前に、コイツを倒そう!封印の儀、行くわよ!」

「「了解!」」

風、樹、友奈がアリエスを取り囲み、封印を開始する。

すると、アリエスの尾らしき部分から御霊が出現する。

だが、それが出現した途端、まるでドリルのように高速回転し始める。

「これは・・・・!」

風が眼を見開く。これでは、回転によって攻撃が全て弾かれてしまう。

「私が行きます!」

友奈が飛び出す。

「東郷さぁぁああああああん!!」

右拳を振り上げ、高速回転する御霊に叩きつける。

強力無慈悲な鉄拳が、御霊の回転を一撃で止める。

回転によるの防御が出来なくなった御霊。その御霊に情け無用と言わんばかりに美森の狙撃が叩き込まれる。

それによって、御霊は粉砕される。

「ヒュー!ナイス連携!」

「ありがとー!東郷さーん!」

友奈が美森に向かって手を振る。

それに微笑む美森。

だが、その表情はすぐに真剣なものに変わる。

「だけど、さっきの奴の動き・・・まるで叩いてくれと言わんばかりの突出・・・・」

それらの情報を、整理、分析、理解し・・・・答えを導く。

 

 

(トラップ)だ。

 

 

直後、先行していた友奈たちを襲う、あまりにもうるさく、鼓膜が破れてしまいそうな程の音が鳴り響く。

「ぐうう!?」

タウラス・バーテックス。牡牛座の名前を与えられた、超音波を放つバーテックス。

あまりの音に、耳を塞がるを得ない三人。

「これぐらい・・・・勇者なら・・・!」

どうにかして耐えようとする友奈。だが、動く事ができない。

「皆!・・・あのベルか・・・・ッ!」

美森はすぐさまタウラスの上部にある大きな鐘を狙い撃とうとする。

だが、そんな彼女の傍に、地面から巨大な敵が姿を現し、彼女の上をイルカ飛びよろしく飛んでいく。

「!?」

ピスケス・バーテックス。魚座の名を与えられた、地面を潜る事の出来るバーテックス。

ピスケスが地面に潜る。その振動によって、狙撃が出来なくなる。

「狙撃が・・・!」

美森が抑えられる。

その状況は、タウラスの超音波の餌食になっている彼女たちにはこれ以上にない痛手だ。

「このままじゃ・・・!」

すでに、天秤のリブラ・バーテックス、水瓶のアクエリアス・バーテックス、そしてレオが接近してくる。

動けない三人。

万事休すか?

 

その答えは、否だ。

 

「音は・・・皆を・・・幸せにするもの・・・!」

だから、許せない。

こんな騒音は、全ての音に対する冒涜だ。音を、誰かを苦しめる為に使うなど、言語道断。

 

決して許してはならない。

 

だからこそ、この場で最も予想外な人間が動いた。

「こんな音・・・・」

初めて感じる激情。心の奥からふつふつと湧き上がってくる、怒りの感情。

樹は、初めて怒りに声を張り上げる!

「こんな音はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁあぁあああああッ!!!」

絶叫。右手にあるリングからワイヤーを出現させ、そのワイヤーで、タウラスのベルを絡め、騒音を止める。

「樹!」

叫ぶ風。

そこは流石リーダーともいうべきか、行動は早かった。

飛び上がり、後ろにいる二体を見据える。

「まずは、お前らぁあああ!!!」

風の剣の能力は、サイズの倍加。

大きさを自由自在に変える事が出来、その大きさは、山をも断ち切る。

最大サイズで振るわれる大剣。その一撃が、タウラスの背後にいたリブラ、アクエリアスを両断する。

「お姉ちゃん!」

「頼りになります!」

樹と友奈が歓喜する。

「よし、三体まとめて・・・・」

「うわぁああ!?」

「樹!?」

突然の樹の悲鳴。

まだ絡み付けたままだったタウラスにひっぱられているのだ。

「樹ちゃん!?」

「早くワイヤー解いて!」

慌ててワイヤーをほどく樹。

「この・・・・!?」

そんなタウラスに一矢報いようとした友奈だったが、すぐさま異変に気付いた。

タウラスが後退していくのだ。

タウラスだけではない、リブラやアクエリアスまでも、下がっていくのだ。

「後退・・・?」

そう、思う風だったが、ふと、リブラから何かが降りてくるのを、風は見つけた。

それは、黒い弾丸のように真っ直ぐにこちらに向かってきていた。

 

 

友奈を狙って。

 

 

「!? 避けて友奈!」

叫ぶ風。

それには、友奈も気付いていた。

両手を交差させ、防御の構えを取る。

「ハァ!」

短い掛け声。

それと同時に、友奈の両腕に重い衝撃が走り、体が浮き、後ろに大きく吹き飛ばされる。

「うわああ!?」

「友奈先輩!」

「友奈!」

その黒い弾丸の正体。真っ黒い戦装束は、幸奈だ。

「思ったよりも早かったわね・・・・まあいいわ」

突如、レオが光を発する。

まるで太陽のように光り輝き、下がっていく三体のバーテックスを吸収していく。

一方で、美森は、ピスケスに連続で銃弾を叩き込んでいた。

撃ち込まれるたびに、ピスケスのタコのような頭に穴が開いていく。

そこで後退を選んだのか、地面に潜るピスケス。

「潜った・・・今のうちに狙撃を・・・・」

援護を再開する為に、友奈たちが戦っているであろう敵に向かってライフルを向ける。

「あれは・・・・合体している!?」

光が収まり、そこにいたのは、レオではなかった。

否、レオではある。だが、その姿は最初の時とは形状が大きく変わっていた。

一方で、風と樹は変形したレオを警戒しつつも、視線を幸奈へと向けていた。

「アレになった以上、貴方達に勝ち目はないわ」

「そんなの・・・やってみなきゃ分からないわ!」

風が叫ぶ。

だが、幸奈はそれを犬の遠吠えか何かのように軽く聞き流し、彼女たちに告げた。

「バーテックスはね、この世に生きる生物が、何十年何千年とかけて遂げてきた『進化』というものを、融合という形で、一瞬で成し遂げるの。あれは、いわば、バーテックスをさらに進化させたものよ」

「バーテックスが・・・進化?」

樹と風が、信じられないというように表情を強張らせる。

 

レオ・スタークラスター(獅子の星の集団)。それが奴の名前よ。手も足も出せずに、死になさい」

 

そう言い、幸奈は友奈の後を追った。

「何を言って・・・」

「お姉ちゃん!」

「!?」

樹の叫び声に、風はレオを見る。気付けば、レオはその周囲にいくつもの炎球を作り出していた。

そして、それを一斉に放ってくる(フルファイア)

「く!」

樹と風は、それを回避しようとするも、その炎球は彼女たちを追尾する。

必死に避けようとするも、樹が被弾してしまう。

「きゃあぁああ!?」

「樹!」

叫ぶ風だがそんな暇があるなら回避に徹するべきだった。

炎球全てが風に殺到する。

「みんな!?・・・・己・・・!」

美森が仕返しとばかりに狙撃する。

だが、それはレオの装甲に弾かれてしまう。

「効かない・・・!?」

すぐさまレオからの報復の一撃が迫る。僅かに威力を集束させただけの炎球は、しかし、風や樹たちを襲っただけのものが彼女たちを動けなくしたものが、その倍で迫ってくる!

足も動かない、機動力が最も無い美森では、それを回避する事は――――不可能に等しい。

「ああああ!!」

悲鳴をあげる美森。

 

 

 

 

その数分前。

 

「オオオッ!」

「ゼァアッ!」

鎌と剣がぶつかり合う。

金属音が鳴り響き、斬撃の応酬が繰り広げられる。

だが、僅かに千景が押されている。

「くッ!」

頬を切っ先が掠める。

その剣を弾き、距離を取る千景。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・くそ・・・!」

確かに拮抗はしてはいる。だが、それだけだ。

敵は本気でこちらを殺しにかかっている。対して自分たちは、まだ殺人に躊躇がある。

「・・・何考えてるんだか・・・」

自分だって人を殺し掛けたのだ。今更こう思っても仕方が無い。

 

本気やらなければ殺される。

 

身を沈め、刃を後ろへ。

地面を蹴り、翔琉に向かって走り出す。

翔琉は、それを迎撃するかのように左半身を前に出し、剣を後ろに置く。

千景が、右から鎌を振り抜く。リーチの差を利用した敵の射程外からの攻撃。

だが、翔琉はそれに動揺する事無く、むしろ自分から踏み出してきた。

右手を跳ね上げ、肩を軸に右手の剣を、右斜め上から叩きつけるように斬りかかる。

懐に入られれば、鎌のリーチでは不利だ。

だが、千景は構わず鎌を振り抜く。

しかし、千景よりも速く、翔琉の剣が、先に到達する。

それに対して、千景はまだ振り切っていない鎌の柄で防いだ。

「!?」

これに翔琉は目を見開く。

そのまますれ違う二人だが、千景は着地待たずして体を反転させ、地面を蹴る。

翔琉は、振り抜いた反動でまだ態勢を元に戻せていない。

背中ががら空きだ。

千景は、その背中に容赦無く刃を、下段から振り上げた。

だが、翔琉はそれに間に合わせた。

体を時計回りに回転させ、どうにか鎌の軌道を反らし、上空へ。だが、同時に翔琉の剣も大きく弾かれ、胴体を晒す形になる。

(取ったッ!)

そう確信する千景。鎌を変形させ、光の刃を出現させる。さらに変化して両刃の鎌へと変貌させる。

これによって、鎌の刃の向きを変える事なく振り下ろせる。

「これで――――!」

終わりだ。そう言おうとした。

だが、千景は見た。

刃を当てようとしている胴体。その胴体に隠れるようにそこにいる翔琉の左手。

それに、猛烈な忌避感を覚える千景。

だが、()()()()

「・・・・・え?」

気付いた時には、千景の腹は裂かれていた。

「な・・・に・・・・?」

気が動転している中で、翔琉は体を今度は反時計回りに回し、左足で直進蹴りを千景に叩きつける。

悲鳴をあげる事すらできない。地面を転がり、うつ伏せになって地面に倒れ伏す。

「ぐ・・・う・・・」

痛い熱い焼けるようだ内臓はどうなったそんな事より立たないと血を流し過ぎた止血をそんな事してる暇は立つんだ動かない―――

あらゆる思考が千景の中で巡り巡って混乱を生み出す。

まともに考える事ができない。

口からは血を吐き出し、斬られた腹からはまるで湯水のように血があふれ出る。

臓腑も裂かれているだろう。

どこからどうみても、致命傷だ。

そんな中で、千景は見た。

翔琉の左手には、千景の血で赤く濡れたもう一本の長剣がある事を。

おそらく、今まで隠していたのだ。

片手のみで倒せるならそれでよし。しかしダメな場合は、奥の手を使う。

始めから全力でやればいいものを。と千景は思うが、それどころではない。

翔琉は真っ直ぐにこちらに近付いてくる。

早く立たなければ殺される。早く立たなければ死んでしまう。

死ぬのは嫌だ。死にたくない。

とにかく立たなくては。

腕に力を込め、立ち上がろうとするも、力が入らない。

「終わりだ」

気付けば、もう目の前。

翔琉は、右手の剣を逆手にもち、その切っ先を千景に向けていた。

間違いなく、止めの一撃。

それでも千景は抗おうとする。

まだ、まだ死ぬ訳にはいかない。

(友奈を・・・残して・・・・逝けるか・・・ッ!)

「ぎ・・・あぁぁああああ!!!」

絶叫する。

だが、無慈悲にも。

 

 

 

 

翔琉の剣は千景を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ――――!!」

戦闘中であるにも関わらず、ありえない事に、目を見開く翼。

翼の視線の先には、他のバーテックスを吸収し、変化したレオの姿があった。

「余所見していいの?」

「!」

背後を美紀に取られる。だが、そこは神童とまで言われた少年、反応は速い。

「ハァ!」

「きゃ!?」

横薙ぎされたナイフを大きく身を屈める事で回避し、さらにその反動を使って片足を後ろに向かって蹴り上げる。

「ぐう・・!」

腹に直撃し、上空へ飛ばされる美紀。

空中では身動きが取れない。その大きな隙を逃す翼ではない。

体を捻って、上空へボウガンを向ける。

「終わりだ・・・ッ!」

一閃の煌きが美紀に迫る。だが、その矢は、どこからともなく飛んできた矢によって弾かれる。

「佐奈さん・・・・ッ!」

「そうはさせんぞ、翼」

戦況は二対一。

それも相手は手練れなうえに、遠距離と近距離のしっかりとした組み合わせとなっている。

その為に、決定打を打てない。

美紀を倒そうとすれば佐奈が妨害し、ならば佐奈を倒そうとすれば美紀が妨害する。

(本当に良い連携だ―――!)

美紀のスピードは異常だ。

周囲をまるでゴムボールの様に跳ねまわり、それは跳ね返る度に加速していく。

それは、隻眼の翼にはきついものと言えるだろう。

 

翼が、戦闘のド素人だったらの話だが。

 

「うあ!?」

回避して、裏拳を叩き込む。

その一撃は美紀の顔面を捉え、吹き飛ばす。

(このまま行けば・・・)

少なくとも足は止められる。

そう確信する翼。

だが、翼の左の耳に、確かに聞こえた。

 

悲鳴が。

 

「ッ!?」

思わず振り返る。

そこには、黒煙をまき散らして、根に倒れ伏す樹と風の姿が。

「樹ちゃん!?風さん!?」

思わず叫ぶ。

だが、それでも、無慈悲な一閃が翼を襲う。

「く!」

それを右腕で弾き飛ばす翼。

「相も変わらず・・・お前という奴は・・・」

「く・・・何故だ、佐奈さん!」

翼は、佐奈に向かって叫ぶ。

「貴方ほど()()()()()が生きていたこの世界を愛していた人が、何故この世界を壊そうとするんです!」

翼は、いたって真面目に叫んだつもりだった。

だが、彼は知らなかった。

 

それが彼女の地雷だという事を。

 

「何故・・・・だと・・・?」

「ッ!?」

その瞬間、佐奈の顔が、まるで鬼の様な顔に豹変する。

「その世界に、私は裏切られたんだぞッ!」

咆える佐奈。その姿はさながら怒り狂う狼の様に。

佐奈が弓を引き絞る。

その光が、鮮やかな緑色から、どす黒い赤へと変化する。彼女の怒りを表現しているかのように。

「まずい・・・!」

すぐさま回避に移ろうとする翼。だが、その横で輝く光に、思わず目をそちらに向ける。

そこで、変化したレオが、強力な一撃をもって、狙撃姿勢だった美森を撃ち抜いた。

それに、翼は脳内で何かが焼き切れる音がした。

「須美ちゃあぁあぁああああぁあああああああんッ!!!」

その直後、佐奈の矢が翼を撃ち抜いた。

 

 

 

 

「ミョルニぃぃぃルぅぅぅぅうう!!」

「うおおぉぉぉぉおお!?」

真斗の雷撃の一撃。

それを、剛はジェット噴射をもってどうにか回避する。

「くっそ!なんだよあの雷!?」

ハンマーの柄の端をもって、剛は真斗に接近する。

「オラァア!!」

そのまま、遠心力と力任せにハンマーを振る。

その一撃は、真斗の腹に直撃し、衝撃波が突き抜ける。

だが。

「ぐふふ・・・・」

「な!?」

効いていない。むしろ、笑っている。

まるで、嘲笑うかのように。

真斗は、片手のハンマーを振り上げ、剛に振り下ろす。

「うおわ!?」

それを、横に転がって回避する剛。

空ぶったハンマーは、神樹の根に叩きつけられると、そこに大きなクレーターを作り、地響きを引き起こす。

それによって、剛の体が浮く。

「それはそれで、好都合だぁああ!!」

ハンマーを振りかぶる。そして、変形し、ジェット噴出口を露出、点火する。

「ジェットハンマーぁあああ!!」

先ほどの一撃とは比べ物にならない一撃が、真斗を襲う。

「どうだ―――ッ!」

「・・・・ぐふふ、効かない・・・もんね・・」

「なッ!?」

もう一度ハンマーを掲げる真斗。

「まず―――ッ!」

「みょるにぃぃぃるぅぅぅぅぅううううう!!!」

極太の電が、剛を襲う。

「ッ!?」

それは、すぐそばで弘を迎え撃っていた夏凜の眼にも映っていた。

雷撃によって大きく吹き飛ばされた剛は、まるでぐったりとし、体のところどころを焦がしていた。

夏凜が目を離した隙に、弘がレイピアを突く。

「く!」

回避したものの、手首を切られる。

「精霊の障壁(バリア)があまり働いていない・・・・大赦の言った通り・・・ッ!」

精霊のバリアが使えない。それはすなわち、致命傷であっても、精霊は自分たちを守ってはくれない。

「厄介ね・・・!」

ついでに、弘の技量もすさまじい。

互いに二刀流。その技量は、全くの互角。

(認めたくないけど・・・これは・・・・才能・・・・ッ!)

そう、才能だ。弘は、その体から見える筋肉量は、決して多いとは言えないし、剣術をやっていても、まだ初心者レベル。

だが、それでも、その反射神経と剣の振りは、達人のソレだ。

正直、夏凜と互角だ。

だが、だからこそ。

 

夏凜はそんな相手に負けたくなかった。

 

「舐めるなァアアアア!!」

「ッ!?」

夏凜の剣速があがる。

才能でいつも比べられてきた。才能でいつも優劣をつけられた。才能で、まわりから押し付けられた。

そんなもので価値を決められたくない。そんなもので、簡単に諦めたくない。

自分は他の誰でもない。

「アタシはアタシ!三好夏凜よぉぉぉぉおおお!!」

「くぅ!」

右手の一撃が、弘を仰け反らせる。

「これで・・・!」

そのまま左で斬りかかろうとした時、不意に、視界が急激に切り替わった。

「・・・・・え?」

理解する間もなく、何かに叩きつけられる。

「ガハァ!?」

喉の奥から、熱い何かを吐き出す。

ずり落ち、地面に腰を下ろす。

(な・・・に・・・・が・・・)

夏凜は、自分が吐いたものが血だと理解するまで、数秒を要した。

そして、夏凜の目の前に、敵が降り立つ。

「助かったよ。真斗君」

「どう・・・いたし・・・まして・・・」

そこには、長身と大柄の二人。

弘と真斗だ。

夏凜が、弘に一撃を入れようとした瞬間、真斗が背後から夏凜を吹き飛ばしたのだ。

(ま・・・ず・・・い・・・)

すぐさま、そばに落ちている剣を右手で拾おうとする。だが、その右腕に、レイピアが突き刺さる。

「あぁああああ!?」

凄まじい激痛が右腕から走る。

「下手に動くな。楽に殺せないだろ?」

弘がレイピアを投げ、夏凜の右腕を縫い付けるように突き差したのだ。

夏凜は、弘を見る。

そして、絶句する。

その表情は、まるでゴミでも見るかのように、無表情だったからだ。

「確か、大赦に言われてこの戦いに参加したんだったんだよね?可哀想に。騙されている事にも気付かないで。今僕が楽にしてあげるよ」

レイピアが、妖しく光る。

(やだ・・・・助けて・・・翼様・・・・不道・・・・!)

夏凜は、恐怖に、涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、こちらは、友奈と幸奈。

そこでは、格闘技のぶつかり合いが巻き起こっていた。

拳と拳が応酬し、蹴りが飛び、決定打を狙おうと、何の間もなく何かがぶつかり合う音が響く。

否、それは、一方的な戦いにも等しい。

友奈が、一切の攻撃を躊躇っているのだ。

「もうやめて!私は貴方を傷つけたくない!」

「そんな綺麗事、今更言っても無駄よ!」

容赦なく攻撃を浴びせる幸奈に対し、一切の攻撃をしない友奈。

巧みに攻撃をかわし続ける友奈。それに苛立ちつつも攻撃の鮮度が落ちない幸奈。

不意に、互いに組み付く形になる二人。

「こんな事をしても意味ないよ!ちゃんと話し合って・・・」

「意味ならあるわ!この世界を壊す、そして新しい世界に千景君と行く!それが私が戦う理由よ!」

「何を言って・・・!」

「だからその為に、貴方を殺す!結城友奈ッ!」

離れる幸奈。一時距離を取ったところで、また踏み込む。

(これは受けちゃだめだ!)

友奈の感がそう告げ、どうにか体を捻る事で、その正拳突きを避け切る。

「チッ!」

それに舌打ちする幸奈。

だが、それでも拳の応酬は止まらない。

「お願い!話を聞いて!」

「何も話す事なんて無いわ!」

必死に呼びかける友奈だが、それでも幸奈は攻撃するのをやめない。

「やめて!」

とうとう、友奈から切り出す。

幸奈に吹き飛ばされる事で距離を取り、右足を後ろに下げる。

「勇者ぁ・・・!」

「ッ!?」

友奈が、満開によって得た、新しい力。

力を増幅させるのが牛鬼の他に、新しく精霊となったもう一つの力。

炎をその身に纏い、死人を地獄へ誘う、地獄の獣。

 

その名は『火車』。

 

「キィィィィィィック!!」

瞬間、友奈の脚に炎が燃え盛り、振り抜いた足から、炎の一撃として放たれる。

「く!?」

幸奈は、思わず飛んで回避する。

そして、少し離れた根の上に降り立つ。

「炎の・・・!」

「!?・・・・まさか!?」

友奈が、離れた状態で拳を振りかぶる。

 

その手に炎を纏わせて。

 

「勇者パァァアアアンチ!!!」

真っ直ぐ撃ち出した拳から、炎が放たれ、幸奈に向かって飛んでいく。

それを幸奈は回避する。

「まさか、炎を飛ばせるなんて・・・」

「終わりにしよう!」

「!?」

立ち止まる幸奈。

「私は、この距離から貴方を攻撃できる。だけど、貴方はその為の攻撃手段を持たない。もう、勝負はついたも同然だよ!」

だから、と友奈は付け加える。

「もう、やめよう。私は貴方を傷つけたくない・・・」

それは、友奈の心からの本心だ。

誰も傷付く姿なんて見たくない。だからこそ、友奈は彼女の降参を求める。

だが・・・・・幸奈は、それを断った。

「・・・・ふざけないで」

そしてそれは、彼女の逆鱗を逆撫でする。

「ふざけないでッ!!」

突如、彼女の周囲で黒い風が巻き起こった。

「!?」

それに驚く友奈。

「何が終わりにしようよ・・・・何が傷付けたくないよ・・・・」

拳を握りしめる幸奈。

「――――ッ」

友奈は、思わず下がる。

その風が、あまりにも禍々しいものだから。

「千景君を、奴らは傷つけたじゃないッ!!!」

身を屈め、そしてありえない速度で友奈へと接近する。

「―――ッ!?」

「吹き飛べッ!」

反応出来ず、その拳を受ける友奈。

根の叩きつけられ、その根にクレーターを作り、大量の血を吐き出す。

「ガハァア!?」

意識が一瞬飛ぶ。

胸が焼ける、お腹が痛い、背中が痛い、体が重い、動かない。

だが意識が消える事はなかった。

直後に、幸奈を膝蹴りが友奈の腹に突き刺さったからだ。

「がはっ・・・・!?」

容赦無い一撃が、友奈を現実に無理矢理引き戻す。

そのまま地面に倒れる筈の友奈の体を、胸倉を右手で掴む事で持ち上げる。

「終わりよ・・・・」

「う・・・うう・・・・」

意識が朦朧とする友奈。

あまりの痛さに、まともな判断が出来ない。

幸奈は、左拳を引き絞る。その手には、真っ黒い風が纏わりついていた。

「死ね・・・!」

そして、そのまま拳を友奈に叩きつけようとした、その直後。

 

 

 

 

 

 

 

 

(まばゆ)い黄色の光共に、紅白の刃がその場に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 




次回『彼岸花の覚醒』

失われし古き力、その名は・・・
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