不道千景は勇者である   作:幻在

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勇者は根性

七人に分身した千景たちが、翔琉たち襲撃者たちと戦闘を開始した頃。

風は、空中で黄色い光を背景に、変わった勇者装束をいつの間にか着込んでいた。

「お姉ちゃん・・・・まさか・・・」

樹が、倒れ込んだ状態で姿の変わった姉の姿を見上げていた。

「溜め込んだ力を開放する・・・それが勇者の切り札・・・・」

「そう、満開だ」

「!」

空中にたたずむ風に、翼が飛んでくる。

「翼・・・あいつらは?」

「千景君が食い止めています」

「一人で?大丈夫なの?」

「どうやら、大丈夫みたいです」

と、翼の見る先。そこでは、同じ装束を着た六人の人物が、襲撃者たちを食い止めていた。

「・・・・あいつ、六つ子だったっけ?」

「なんでも、彼の切り札というものらしいですよ。それに、あれは満開じゃない」

「満開じゃないって・・・!」

そこで、レオが風に向かって攻撃をしかけていた。

放たれた炎球を軽々と回避した二人。

「風先輩の能力は剣を巨大化させ、敵を両断する事!ならば、満開によってその力は――――!」

「大幅に強化されてるって訳ね!」

「その通りです!行って下さい!」

風が突っ込む。そのままレオに突進する。

すると、今まで歯が立たなかったレオが、いとも容易く吹き飛ばされ、地面に落ちる。

「行ける!」

「流石です・・・!」

風を賞賛する翼。

 

その直後、神樹の方向で青い光が放たれる。

「「!?」」

「あれは・・・!」

樹を救出していた剛が、そう声を漏らした。

その光の中心にたたずむは、巨大な船のようなものに乗る、東郷美森だ。

その船につけられた左右四門ずつ、計八問の砲門がある姿は、まるで『戦艦』。

「もう・・・・許さない・・・!」

額に、日ノ丸印のハチマキをする美森。

「我、敵軍ニ総攻撃ヲ実施ス!」

目の前に現れたピスケス。

それに対し、美森は戦艦の砲門全ての砲撃を――――無慈悲にピスケスに叩き込んだ。

その強力な攻撃は、ピスケスの体全てを吹き飛ばし、御霊をむき出しにさせる。

「この程度の敵なら、封印の必要もないみたいね」

八門の砲門のエネルギーを集約して放つ。

その一撃は、ピスケスの御霊を一撃で貫き、爆散させる。

「いつ見ても妙な散り方・・・」

その様を、なんとも冷めた目で見つめる美森。

だが、突如美森の目の前に何らかのモニターが映し出される。

「!? 何!?」

それは、神樹を中心としたレーダー。

そこには、今さまに神樹に向かって近づく一つの光点が示されていた。

「神樹様に近い・・・!?このバーテックス・・・何故気付かなかった!?」

地面を恐ろしい速度で走る、上半身を晒し台のようなもので拘束された状態で、二足のバーテックス。

 

ジェミニ・バーテックス―――双子座の名を与えられたバーテックスだ。

 

「こいつ・・・・小さくて速いッ!」

すぐさま追撃を始める美森。

だが、ジェミニは身軽に優雅にその砲撃の嵐をかわしきる。

「軽やかにかわした!?このままじゃ・・・神樹様が・・・・!」

やられてしまう。そこから先は言葉にはならなかった。

言葉が詰まったからじゃない。すぐそばで緑色の光が輝いたからだ。

 

その輝きの正体は、満開を発動させた樹だ。

 

「私たちの日常を・・・壊させない・・・・!」

「樹ちゃん!」

美森は、それに歓喜する。

「樹ちゃんまで・・・」

だが、翼の表情は浮かないものだった。

「樹!」

風が、レオの攻撃をかわしながら叫ぶ。

「そっちに行くなぁぁあああああああぁぁぁああああ!!!!」

絶叫と共に、背中の輪から、通常時とは比較にならない程のおびただしい数のワイヤーが伸ばされる。

その無数のワイヤーが、ジェミニに襲い掛かり、絡めとる。

そしてそのままの状態で浮かされ、樹の目の前まで引っ張られる。

「お仕置き!」

樹がギュッと拳を握ると、全身をワイヤーで巻かれたジェミニの体が、ワイヤーが引っ張られた事で、その圧力に耐えられず、粉々に切られる。

「えげつな!?」

剛がそういう。まさしく、えげつなく恐ろしい子だ。

粉々にされたジェミニの中から、小さな御霊が現れ、樹はそれを一本のワイヤーで貫く。まさしく千変万化の名に相応しい能力だ。

これで、残りはレオ・スタークラスターのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な・・・・!?」

遠くで、佐奈が眼を見開く。

 

スタークラスターとなったバーテックスの力は、今の勇者システムでは歯が立たない筈だ。それなのに、ただ姿が変わっただけであの力とは、佐奈には思わなかった。

 

「すごいな。流石俺達の部長だ」

佐奈の前に立つ千景がそう喜びを混じらせた声で言う。

「満開・・・・想像以上に厄介だ・・・・!」

そう確信する佐奈。

狙撃したいと思うも、今目の前にいる男を、排除しなければならない。

「させるかッ!」

「チィ!」

鎌が振るわれる。

佐奈が距離を取ろうと常に後ろに下がる。

矢を三本つがえ弓を引き絞り、放つ。

二発弾かれるも、最後の一本は千景の眉間に突き刺さる。

だが、ものの数秒もしないうちに矢はすり抜けるように落ちる。

そして、千景は無傷の状態で佐奈に襲い掛かる。

だが、これで佐奈は一つの確信に至る。

「致命傷に至らなければ、生き返る事はない・・・・!」

ならば、狙うべきはどこか。

矢を二本つがえる。千景は構わず佐奈に突っ込む。

矢を放つ。

「ッ!?」

そして、千景はその軌道に目を見開く。

例え防御しなくても生き返るので防ぐ必要はないのだが、それでも生き返るには僅かな時間を要する。

まあ、正確には()()()()()()()()()()()()()のだが。

とにかく、常に急所に対する防御は怠らなかった千景だったが、その攻撃が急所ではない事に驚いた。

その二本の矢は、千景の脚を正確に貫く。

「ぐッ!?」

足に走る激痛。

それに思わず膝を地面につけてしまう。

さらに両手を射貫かれる。

「しばらくそこで寝てろ」

佐奈は、二体のバーテックスをことごとく倒した敵を見据える。

「・・・仕方が無い」

佐奈は、二本の矢を弓につがえる。

そして、そのまま引き絞る。

その矢先は、天空を向いていた。

「―――喰らえ・・・!」

佐奈は、その二本の矢を、上空に向かって天高く撃ち上げた。

何故その様な事をしたのか。

その理由は、次の瞬間に起こった事で否応なく理解させられる。

 

 

 

 

 

 

「!? 何!?」

突如、上空が金色に輝き出す。

「・・・あれは・・・!?」

夏凜が、驚愕に目を見開く。

空の先、雲一つ見えない空、そこから見える、無数の金色の星々。

 

否、それは星では無い。

 

「あれは・・・矢!?それも、とんでもない数の・・・!?」

美森が、戦艦の能力を使って、その光の正体を見破る。

 

 

佐奈が行った事。

それは、一種の信仰行事。

矢を二本、上空に撃ち上げ、祈祷する事で、天の神より、裁きの鉄槌の如き、()()()()()()()()()()()()事を願う儀式。

それは、特定範囲にいる敵集団を一瞬にして殲滅する範囲攻撃。その規模と密度、そして威力は、遮蔽物を使った程度では防げるものでは無い。

 

 

その飽和攻撃を、避ける手段はない。

完全に逃げ遅れた状態では、回避はまず無理。

完全なる、万事休すだ。

「私が・・・!」

樹がワイヤーを操る。おそらく、ワイヤーで網を作り出し、それであの矢の雨を防ごうというのだ。

「いや・・・・・僕がやるよ」

「翼先輩!?」

だが、そんな樹を翼が片手で制する。

「こうなったら、僕も腹をくくるしかないか・・・」

翼は、しっかりと上空を睨み付ける。

「いくぞ、傘」

左脇腹にある満開ゲージ。そのゲージは、すでに満タンだ。

「満開ッ!」

翼が叫んだ途端、翼を中心に青い光が巻き起こる。

「あれが・・・翼様の満開・・・!」

夏凜が、その姿を地上から見上げる。

満開した翼の姿は、やはり他のみなと同じ、服装が変わっており、その両肩辺りから、武骨なアームが伸び、その先には半透明の巨大な楯が備えられていた。

そして、翼は、その二つの楯を重ね、上空に向ける。

だが、それではあまりにも範囲が狭すぎる。全てを防ぐには至らない。

「翼君・・・・」

美森が、翼を見守る。

その時、翼は美森に向かって微笑む。

「大丈夫」

そう呟き、翼は、その力を遠慮なしに開放する。

神屋楯比売(かむやたてひめ)ッ!」

突如、翼を中心に巨大な光の膜が出現。それは、勇者部全員の上空に広がり、広大な天蓋として出現した。

そして、上空から降り注ぐ無数の矢の雨が、その天蓋に叩きつけられる。

「ぐ・・う・・・!」

その威力と密度に翼の顔が苦悶に染まる。

だが、それでも翼は引かない。引くわけにはいかない。

「この・・・程度・・・あの時と・・・比べれば・・・・!」

輝きが、増す。

「どうってことないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉおおおおお!!!!」

矢の雨が降り止む。

翼は、守り切った。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・・」

強大な力の使用。それによって翼を激しい疲労を襲う。

「翼君!」

そんな翼に美森が飛んで寄る。

「あはは・・・どうにか防ぎ切ったよ・・・す・・東郷さん」

「ええ。すごいわ。だけど・・・・」

「大丈夫、僕の満開は他の人よりは持つ。もともと防御特化だからね。僕のは」

と、なんでもないかのように微笑む翼。

だが、その表情に、美森はその笑顔に隠れる哀しみを感じずにはいられなかった。

次の言葉を紡ごうとした美森。だが、それよりも大きな緊急事態が起こる。

「あれは・・・・!?」

それに、美森と翼は絶句する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな馬鹿な・・・・!?」

佐奈は茫然としていた。

天の驟雨(ヘヴンズ・カタストロフィ)を、防ぎ切っただと・・・!?」

佐奈には信じられない事実だ。

天の驟雨と名付けられたあの技は、佐奈の()()()()切り札の片方。

敵の殲滅に特化したあの技をいとも容易く、とは言い難いが防がれるなど思っていなかったのだ。

「どうした?」

「!?」

ふと背後で、すでに再生した千景が鎌を肩に担いで笑っていた。

「自分のとっておきが防がれて驚いたか?」

「貴様・・・何故・・・・」

「鎌で心臓を刺した。腕は動くからな、無理矢理握ってやったんだ」

「・・・・なるほどな・・・」

佐奈は納得する。なるほど、確かに心臓を刺せばそれは致命傷だ。

だが、そんな事は関係ない。千景にとっては。

「勇者部を舐めるなよ」

そう言い、千景は佐奈を襲う。

 

 

 

 

一方で、こちらは弘の方では。

「なんで邪魔するんだよ!お前だって虐められてたんだろ!だったらこんな世界いらないだろ!壊した方が良いだろ!お前を虐める奴が生きてていいのかよ!お前はそれで良いのかよ!」

「やかましいわ・・・・」

弘が喚き散らしながら、二刀のレイピアを振るう。

それに対して、千景はたいしてダメージを負わずにその攻撃を迎撃する。

「どうして助けようとする!どうして救おうとする!お前を貶める奴がいるこの世界をどうして守ろうとするんだよぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉおお!!!」

「そんなの友奈や勇者部の皆がいるからに決まってんだろうがこのシスターコンプレックス。正直お前の事情なんて知らねえし気に掛ける気にもなりもしない。俺にとっては皆を守る方が大事なんだよ。お前の事情なんか知った事か」

「僕の気も知らないでぇぇええええ!!」

弘の形相がどんどん歪んでいくのと比例するかのように、剣劇が激しくなる。だが、千景はそれを冷静に対処して弾き続ける。

まさに、子供が大人に喧嘩を仕掛けているみたいだ。

「くそ!くそくそくそ!そんな澄ました顔しやがって!どうして僕の妹たちが殺されなくちゃならなかったんだ!?どうして大赦は妹たちを守ってくれなかったんだ!?どうしてお前たちはこの世界を守ろうとするんだぁぁあああ!!!」

「・・・・・」

もはや答えるのも面倒くさい。

「騙されてる!お前たちは騙されている!大赦は良い人ぶってる癖に、本当は僕ら庶民を騙して()()()()()を隠し続けてる!そんな事許されて良い訳が無い!そんなの偽善者のする事だ!僕は殺す、世界を殺す。大赦が守るこの世界を壊す!大赦を潰してやる!絶対に、絶対に――――ッ!?」

突如、明後日の方角が明るく輝く。

思わず二人は距離を取り、その方向を見る。

そこには、レオが巨大な炎球、否、それは小さな太陽ともいうべきものを作り出していた。

「あれは・・・」

「・・・ハハ、アハハ!終わりだ!もう終わりだ!あれが落ちればいくら精霊のバリアがあるからって防ぎきれる訳が無い!お前たちはもう終わりだ!アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「オイ、高笑いするのはいいけどさ」

千景は、心底つまらなそうに、言う。

 

 

「・・・・うちの勇者部を舐めるな」

 

 

直後、その場を眩い輝きが襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数秒前。

レオが、巨大な炎球を作り出している最中。

「何・・・?この元気っぽい球・・・・」

風が顔を引き攣らせてそう呟く。

だが、その直後にレオがその炎球を風に向かって放つ。

「いけない!」

「お姉ちゃん!」

「避けて下さい!風さんッ!」

美森、樹、翼が叫ぶ。

「風先輩!」

そこへたった今駆け付けた友奈が叫ぶ。

「避けなさい!」

夏凜も叫ぶ。

だが、その中で、その様子を見守っている七人目の千景は、落ち着いた様子で呟く。

「いや、大丈夫だろ」

その言葉通り、風の傍で新たな輝きが放たれる。

「何!?」

驚く風。だが、その脇を誰かが通り抜ける。

「こんじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおッッ!!!!」

「剛!?」

巨大なアームに巨大なハンマーを握らせた姿に変化した剛が、そのハンマーのジェット噴出口部分にエネルギーを溜め込む。

そして、最大にまで溜め込んだエネルギーを一気に開放し、そのまま叩きつける。

「オオオオオォォォオオッ!!!」

絶叫。叩きつけたハンマーは、その太陽を確かに受け止めていた。

だが、その圧倒的エネルギーの塊を、どうにも押しかえす事が出来ない。

「剛せんぱぁぁあああい!!」

樹が絶叫する。

「勇者部一同ッ!封印開始ィィィィィイイイッ!!!」

だが、そんな剛に、風が大剣を持って手助けする。

「風!?」

「アタシにも背負わせなさいよね!」

それに驚く剛だったが、風が笑って返す。

それに、剛も笑って返す。

「おっしゃあ!人間様の根性って奴を見せてやろうぜぇぇえええ!!」

「やったろうじゃないのぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

二人が、全力で、ハンマーに、大剣に、力を籠める。

「これがぁぁああ・・・」

「俺たちのぉぉぉぉ・・・」

「「『(たましい)』って奴よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおッ!!!!」」

次の瞬間、炎球が弾き飛ばされる。

その軌道上。そこには、弘と真斗、そして二人の千景の姿が。

次の瞬間、真っ赤な火柱をあげて、大きな爆発が巻き起こる。

そして、風と剛が、まるで力尽きたかのように満開を解除し、地面に落下していく。

「お姉ちゃん!」

「樹!」

そんな二人を助けようとする樹だったが、風がその名を呼ぶ。

「アタシたちの事は良いから・・・・・ソイツを倒せぇぇぇえええええ!!!」

絶叫、そして、落下。

「お姉ちゃん・・・・うん!」

うなずく樹。

「行くぞ、友奈!」

「うん!・・・てあれぇ!?さっき向こうに・・・・!?」

「説明は後だ!早く!」

「わ、分かった・・・!」

友奈と千景が走り出し。

「美森ちゃん!」

「ええ!それと東郷って呼んで!」

「ごめん東郷さん!」

翼と美森が飛んでいく。

「全く、私にもいいとこ、残しときなさいよね!」

夏凜が飛び、剣を地面に突き立てる。

全員で取り囲み、封印を開始する。

 

 

 

 

 

また一方で。

「ッ・・・なんて事だ・・・!」

佐奈が、そう呟く。

そこでは、先ほどの爆発でダメージを負い、地面に倒れ伏す真斗と弘の姿があった。

精霊バリアを持たない状態では消し飛んでもおかしくない一撃。おそらく、真斗がミョルニールで威力を相殺し、だがその余波で吹き飛ばされたのだろう。

まだ生きてはいる筈だ。

ただ、最も悪夢なのは―――――あれほどの攻撃を受けて、すぐさま復活した千景の事だろう。

「奴の復活能力は・・・単純な再生ではないのか・・・?」

「だったら、矢がすり抜けるように落ちる訳がないだろ?」

「・・・・」

千景が、鎌を構えたままでそう言ってくる。

だが、佐奈はそれには答えない。

(このままではレオが倒される・・・だが、この七人に分裂した敵に抑えられては向こうにいく事もできない。おそらく、幸奈も抑えられている。この中で最も可能性があるとすれば・・・・・)

と、レオの方向を向いた佐奈。

そして、思わず絶句してしまう。

「・・・・・なんだあれは?」

千景もつられてそちらを見る。

「・・・・なんだあれ?」

思わず、千景も絶句する。

 

それは、あまりにも巨大すぎた。

 

何から何まで規格外すぎる、その大きさ。それは、巨大なサイズの御霊だ。

あまりにも大きく、あまりにも果てしない。

しかも出現場所が宇宙ときた。

そんなものを、どうやって破壊すればいいのか。

 

 

 

否。

 

 

 

「あの少女なら、やりかねない・・・・!」

幸奈から持たされた、結城友奈という少女の満開。

暴力という暴力を集結させたかのような、あの巨腕を使えば、あんなもの、粉砕する事など造作もないだろう。

今、それを止められる存在。それは――――

「美紀ッ!」

「!?」

佐奈が矢をつがえ、今、美紀と戦っている千景の脚を射貫く。

「行け!あのピンクの少女を仕留めろッ!」

「う、うん!分かった・・・・!」

「まずいッ!」

佐奈の意図を察した千景が慌てて美紀を追いかけようとする。

だが、突如として千景は吹き飛ばされる。

「!?」

佐奈が蹴り飛ばしたのだ。

「邪魔はさせないぞ」

「この野郎・・・・!」

千景は佐奈を睨み付ける。

一方で、佐奈に射貫かれた千景はすぐさま自殺。再生し、美紀を追いかける。

だが、美紀のあまりの早さに、追いつく事ができない。

「だめだ・・・・速すぎる・・・!」

どれだけ加速しようとも、美紀の圧倒的速さに、千景は焦る。

このままでは――――友奈が殺される。

「だめだ・・・そんなの・・・!」

焦る焦る焦る。もし誰かがいなくなったら?誰かが死んでしまったら?自分は正気でいられるのだろうか?

 

無理だ。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

絶叫する。

だが、それで、相手が――――――止まった。

 

 

 

吹き飛ばされる形で、突如、何の前触れもなく。

横から、伸びた、棒の様な物で、美紀が真横に吹き飛ばされた。

「な・・・!?」

思わず立ち止まる千景。

「ごめんね~。本当はこのまま見ているつもりだったんだけど、流石にそうも言っていられなくなったからでてきちゃった~」

「・・・・・」

余りにも、間の抜けた声。穏やかで、緩やかで、優しい。そんな声が聞こえた。

視線を、その声の元へ向ける。

そこには、金砂の髪をなびかせ、紫色の、バラを想起させる勇者装束を着こんだ、()()()()()()()()()少女が、如意棒よろしく伸びた槍を元に戻していた。

「―――――」

そして、千景は絶句する。

少女は、そんな事をお構いなしに、千景の前に降り立った。

「こんにちは~、紅い勇者さん」

と、馴れ馴れしく話しかけてくる少女。

その柔和な態度に、物凄い違和感を感じるも、千景は、包帯を巻かれていながらもその顔立ちに似ている人物を、知っていた。

そして、思わず、呟いてしまった。

「―――――乃木・・・さん・・・・?」

それに、少女は驚いたかのように目を見開いた。

「あれれ~?名前を名乗った覚えはないんだけどな~?まあいっか」

だが、その少女は特に気にした様子もなく、一部ほどけた包帯を金紗の髪と一緒になびかせ、微笑む。

 

まるで、『彼女』のように。

 

「お前は・・・一体・・・?」

故に千景は問う。

彼女は何者なのか。彼女は誰なのか。彼女は―――『彼女』なのか?

そして、少女は一回、くるりと回って、千景を見て、言う。

 

「私、乃木(のぎ)園子(そのこ)って言うんだよ。一言で言って、先代勇者って奴かな?まあよろしくね~」

 

少女、『乃木園子』は、そう名乗った。

 

 

 

 

 

圧倒的神格を見せつけて。




次回『乃木園子』

少女は戦う、守りたい者の為に―――――その逆鱗に触れてはならない。
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