不道千景は勇者である   作:幻在

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桔梗と彼岸花の人には言えない事である

不道千景は郡千景の血を引く人間である。

ついでに、その記憶を引き継ぎ、その経験までもを受け継いでいるために、その経験は百年相当となっている。

さて、一方、そんな子孫を持っている郡千景というと・・・

 

「私のような女を娶る男が一体どこにいるっていうの!」

その経験上、悲惨な子供時代を送ってきた千景には、にわかには信じられない事だろう。

だが。

「また千景の奴が何か言ってるぞ」

「そんなに信じられないのでしょうか・・・?」

叫ぶ千景を遠目で見る球子と杏の二人。

「だって私よ!?根暗でゲームが得意な事以外取柄のない私を、一体どこの誰が嫁に貰うっていうの!?」

「そんな男がいるから不道さんがいるんでしょう?」

喚く千景を諭すようにひなたが含み笑いで言う。

「そ、それはそうだけどぉぉお・・・・!!」

どうやら、かなり信じられないようだった。

「何してるんだか」

その様子を、件の郡の子孫である不道千景は呆れ顔で見ていた。

「ねえねえ不道君不道君」

「ん?どうした高嶋さん?」

そんな不道に声をかけたのは、郡の親友ともいうべき存在である高嶋友奈である。

「ぐんちゃんのお婿さんってどんな人なの?」

「そうだなぁ・・・」

「高嶋さん!聞かないで!」

しかしそこで郡の妨害が入る。

「ええー!?なんで!?」

「私が恥ずかしいからよ!どうせろくでもない男なんでしょ!?」

「ええー、ぐんちゃん綺麗だから、きっと良い人だと思うよ?」

「こんな根暗女を一体誰が貰ってくれるのよ・・・」

(今思うと、勇者時代のご先祖さまってかなり根暗だったっけ・・・)

不道が内心そう思いつつ、横からひょこっと出てきた結城の言動に少し悶える。

「千景君がこんなに恰好良いんだからきっとぐんちゃんの旦那さんも格好良いよ!」

「やめて結城さん貴方まで加勢しないで!」

ダブル友奈の猛攻を受けてその表情を思いっきり赤面させる郡。

その様子に苦笑いしつつ、ふと不道はその様子を面白くなさそうに見ている人物を見つけた。

(・・・・え、なんで乃木さんそんな顔してんすか?)

どうにも浮かない顔をして郡の事を見ている若葉。

「んー?どうしたのご先祖様~?」

「ん、ああ、すまない園子、少し考え事をな」

自分の子孫である乃木園子(小)からの視線を躱しつつ、若葉はそれでも郡から目を離さない。

その様子に不道は首を傾げていると、ふと後ろから何か悪い笑い声が聞こえた。

「・・・どうした、園子?」

「ふっふっふ~、私、分かっちゃったんよ~」

「何が?」

「ご先祖様があんな顔している理由~」

「ああ、何が分かったんだ?」

そこは不道も知りたい所。

「ご先祖様は~、ちーちゃんに恋してるんよ~」

「・・・・・」

その言動に、不道はしばしフリーズ。その後、若葉の方を見て、魔眼系統『読心』を発動させる。

「・・・マジか」

「だからさぁ、ふーくん」

「いやいやそれはまずいだろ非常に!?」

「ええー、良いと思うんだけどなぁ」

「この部室にさらに桃色部員を増やす気か!?」

「・・・・それ、自分も入ってるって自覚してる?」

「どうかしたの二人とも?」

そこで美森が介入してきた。

「ああいや、なんでもないぞ東郷」

「う、うん、ちょっとこの間の依頼について話し合ってたんよ~」

「そういえばこの間の依頼って二人で行ってたんだっけ、分かったわ」

美森はそれだけを言い残してさっさと翼の元へ向かい、すぐさまその腕に抱き着く。

「・・・本当にナチュラルにイチャイチャするよなあいつら」

「もうリトルつばくんやリトルわっしーがいてもおかまいなしだよね」

件の小学生の二人はやはり拒絶反応を起こして気絶していた。

そこまで嫌か。

「でさでさぁ、どうする~?」

「チィッ!上手く話しを反らせたと思ったのに!」

「さっきから何の話をしてるんだ」

と、そこで小学生時代の不道(小)がやってくる。

「おおう俺か」

「やっほー、リトルふーくん」

「だからそれやめてくださいよ・・・それで、一体なんの話してるんですか?」

「いやなんでもな・・・」

「実はねぇ」

「っておい!」

不道(中)の叫びを無視して園子が不道(小)に説明した所・・・

「・・・いや、やめたほうがいいんじゃないでしょうか・・・」

「ガーン、こっちのふーくんにも止められたー」

渋い顔で止められショックを受ける園子。

しかし、それは想定済みだったようで。

「ふーんだ!それなら私と一緒にやるもんね!」

「あ、おい!やめろそれは!?止めるぞ!」

「え!?あ、はい!」

わーぎゃーと騒ぎ始める園子ズと不道ズ。

それによって注目を集めてしまうが、気にした様子は無い様だ。

 

結局、その騒ぎは辰巳の威圧一発で園子ズが竦みあがって収まった。

 

 

 

 

 

「すまないな千景、手伝ってもらって」

「別に・・・あれ以上高嶋さんたちの質問攻めに耐えられる自身がなかっただけだから」

「あー・・・」

あの後、春信に借りた器具を返してきてほしいといわれ、それに若葉が買って出て、郡が友奈たちの質問攻めから逃げるように名乗り出たのだ。

ふと、若葉は、隣にいる千景の姿を盗み見る。

「・・・なあ、千景」

「何かしら?」

「お前はどう思っているんだ?その、未来の旦那の事について・・・」

瞬間、郡から氷壁の如き視線を向けられる。

それに背筋がゾッとする若葉。

「ああ、いや、その・・・」

「・・・・貴方には関係ないでしょう。私の事なんて」

「・・・」

どういう訳かその返事にムッとしてしまう若葉。

そのまま黙り合ってしまった二人。気付けば器具庫で、持っていた器具を置く。

器具庫の中は暑く、持っていた器具がどこに置いてあったかを聞くのを忘れたために、片付けるのに少し難航してしまったが、無事に片付ける事が出来た。

「さて、戻りましょうか・・・」

「・・・何が関係ない、だ」

「え?何か言った・・・」

次の瞬間、郡――――千景は壁に背中を押し付けていた。

「・・・・え」

顔の横には、若葉の右腕。肘まで壁につけて、千景の目の前に、その女性にしては凛々しい顔を、ほんの数センチ手前まで近付け、その眼光で不機嫌そうに千景を睨む、若葉がいた。

「・・・・乃木さん?なに、してるの・・・?」

「・・・お前はこんなに綺麗なのに・・・」

「ふえ!?」

突然の称賛。

「なのにどうしてお前はそんなに自分を卑下にするんだ」

「ど、どうしたの乃木さん!?なんか怖いんだけど!?」

「その黒い髪もさらさらで、肌はほどよく色付いていて、良い匂いもする・・・・お前を嫁にとる男が羨ましい・・・・・」

「ちょ・・・なん・・・ええ・・・!?」

「私が男であったなら・・・」

季節は、夏。そしてここは二人以外誰もいない、完全な密室。その上、密閉されてたから、熱が逃げる事はなく、空気は肺を焼き、熱は脳の機能を低下させる。

そして、生物であるなら、必ず起きる生理現象が起きる。それは発汗。

主に、躰の体温を下げる為のものだが、それすら若葉の理性を崩すのに十分。

若葉が、千景の肌を滴る汗を舐めとる。

「ひゃん!?」

鎖骨の当たりだったか、素っ頓狂な声を上げる千景。

「の、のぎさ・・・やめて・・・」

「ああ、欲しい・・・欲しいよ、千景・・・この汗も、涙も・・・」

「や、やぁあ・・・」

いまだ若葉は千景の首あたりに顔をうずめたまま。さらに理性が崩れかかっている若葉の甘い言葉攻めに、千景の腰は砕けそうになる。

いつの間にか、若葉の左手が千景の胸を掴む。

「ん、やぁ・・・」

「ここも、小振りに見えて、柔らかいんだな」

「ひう・・・」

若葉が胸をもむたびに、千景の口から甘い声が漏れる。服が、乱れる。

「や、やめて・・・のぎ、さ・・・」

「いやだ、離してやるものか・・・千景はだれにもわたさん・・・千景は、私だけの・・・」

「~~~~勝手な事、いうな!」

「わ!?」

ここでどうにか千景が反撃。若葉を押し返し、足元にあった箱に足を取られた若葉が、千景もろとも床の上に倒れる。

「う・・・ううん・・・・・うひゃ!?」

その数秒後に、今度は若葉の方から素っ頓狂な声があがる。

「ち、ちかげ・・・?」

「ん・・・あら、汗って美味しいのね」

若葉からマウントをとって見下す千景の目は、サドのそれ。

若葉に顔を近づけ、その顎をくいっと持ち上げる千景は、とても意地悪な笑顔を若葉に向ける。

「さんざん言葉攻めにしてくれたわね・・・私の髪が綺麗だとか、肌がどうだとか・・・・ふふ、貴方、私をそんな目で見てたのね」

「ち、ちかげ・・わ、私が悪かった・・・だ、だからどいて・・・・」

押し倒された事で僅かながらに正気に戻った若葉。さらに、若葉は例えるなら『酒を飲んで酔ってもその時の記憶が残る』タイプだ。故に、先ほどの事を覚えている訳であり、千景の性格上、自分に対抗心を燃やしているのも知っている訳であり、そしてこれからされることも簡単に予想出来てしまう訳であって、だからこそ若葉はすぐさま千景に弁明しようとしたが、この蒸し暑い密室の熱にやられたのは、何も若葉だけではない。

「ふふ、いーや」

小悪魔のように笑う千景に、若葉は一瞬、くらっと来てしまう。

その表情が、あまりにも、可愛かったから。

「私からも言わせてもらうけど、貴方だって綺麗な肌をしてるじゃない。それに、髪を纏め上げているから、後ろから見るうなじが、どうしようもなく理性を崩しに来てるの、貴方、自覚あるのかしら?それだけじゃないわ。何かの目標を真っ直ぐ見据えているその瞳も、貴方の凛々しい顔も、耳が弱い所とか、いつも格好いい貴方のイメージを崩して、可愛いギャップを出すから、もっとそういう所を探したいって思っちゃうの」

一度にいわれ、急に恥ずかしくなる若葉。

「ああ、貴方を嫁に貰う男が羨ましいわ」

「え・・・」

「私が男だったら、貴方の可愛いところ、もっと見つけられたのに・・・」

千景の意地悪な笑顔が、いっそうその感情を表に出す。

そして、仕返しと言わんばかりに、若葉の右胸に、自分の左手を押し当て、揉みしだく。

「ん、ひ・・・あ・・・」

「あなたをにゃんにゃん鳴かせて、大事なところ全部いじくりまわして、可愛いペットにしてあげるのに・・・・」

・・・・一つ、千景に誤算があるとすれば。

「・・・・・そうか」

「え・・・きゃ!?」

突然、景色が反転する。気付けば千景は組み敷かれ、若葉が千景の上に覆いかぶさっていた。

「たとえお前が男でも、ペットにするのは私だ」

若葉もサドっ気があったという事だろうか。

「・・・へえ・・・・いうじゃない・・・」

「なんならここで勝負してやろうか・・・どっちが互いを鳴かせられるか」

「いいじゃない、望むところよ」

そう、意気込んでいる二人だが。

(何を言ってるんだ私はぁぁぁあぁあああああ!?)

(何を言ってるのよ私はぁぁぁぁああぁぁぁあ!?)

内心、荒れ撒くっていた。

「言ったな、どうなっても知らないぞ」

(まって!待ってくれ!お願いだから待ってそんな事になったら私止まれなくなる止まれなくなるからぁ!?)

「ふふ、経験もないのに、ずいぶんと自信があるのね」

(ちょ、何口走ってるの!?経験無いのは私も同じなのに!)

このままいけば、確実に何かが切れる。切れたら終わる。

「お前だって経験ないだろう?接吻の一つもしたことないのだろう?どうだ?私の初めてをくれてやってもいいぞ?」

(初めてってなんだ!?何を自信満々に言ってるんだ!?馬鹿なのか!?私が馬鹿なのか!?)

「あらあら、良いのかしら?大事な旦那様の為にとっておかなくていいのかしら?そっちこそ、私の初めてをあげてもいいのよ?」

(何張り合ってんのよぉ!?の、ののの乃木さんと、き、きき・・・キスなんてできるわけないでしょぉ!!)

「ほう、つまり互いに初めてという事か」

(そう、そうだ!だからやめようこんな不毛な戦いなんて!」

「そうなるわね・・・」

(そうよ!ここでやめましょう!お願いやめて!)

(千景とキスなんて・・・)

(乃木さんとキスなんて・・・)

ふと、そこで互いの顔が目に入る二人。

「ふ・・・なんだ嬉しそうに。そんなに私の唇が欲しかったのか?」

「貴方こそ、嬉しそうにしちゃって。そんなに私のファーストキスが欲しかったのかしら?」

((・・・え?))

互いに言われて、改めて気付く。

 

笑っている。

 

それも、何かを待ち遠しそうにするような、そんな、渇望するような笑顔。

餌を目前に出された犬のように、はしたなく。

(私、こんな顔で笑っているのか・・・?)

(私、こんな顔で笑っているの・・・?)

それと同時に。

(千景が、私を求めている・・・?)

(乃木さんが、私を求めている・・・?)

なんとも都合の良い解釈(そうとも限らない)。

「ちか・・・げ・・・・」

「のぎ・・・さ・・・」

そう、思うと、体の熱が跳ね上がる。

相手が自分を求めている。どうでもいい筈なのに。好きじゃ無い筈なのに。相手が自分を求めてくれていると思うと、躰が、腰のある特定部分が、きゅう、と締まるような感じがして。

そして、そう思うと、だんだんと相手の事しか考えられなくなって。

「ちかげ・・・・」

「のぎ・・さ・・・わか・・ば・・・」

まずい。これは非常にまずい。

(だ・・・・だめだ・・・・)

(だ・・・だめぇ・・・)

「んん・・・」

「んあ・・・」

どうにか気を紛らわすために、何か、逃げる方法を模索していたら、いつの間にか伸ばした左手が、相手の右胸をひっつかんでいた。

((ひゃぁぁああぁああ!?))

「な、なんだ千景・・・?そんなに私の胸が気に入ったのか?」

「あ、あなたこそ、そんなに私の胸が好きなの?」

もう、限界だった。

(ああ、もうどうでもいい・・・・)

(このまま女同士経験するのも悪くないかも・・・)

無自覚の恋心ほど、訳の分からないものは無い。

好きでもないのに気になる。好きでもないのにその人が他人と話しているとイライラする。好きでもないのに傍にいると安心する。

そんな矛盾した感情である無自覚の恋心とは、実に厄介なものだ。

しかし、すでに二人の目には互いしか映っていない。

(ちかげちかげちかげちかげちかげちかげちかげちかげちかげちかげ・・・)

(わかばわかばわかばわかばわかばわかばわかばわかばわかばわかば・・・)

すでに二人の理性はピーク。互いの名前を呟かなければ最後の一線を越えてしまうかもしれないほど、否、もはや互いの事しか考えられないからこそ、二人は名前を呟くこといがい何も出来ないのだ。

二人の顔が、近づく。

部屋は密室、セミの音すら邪魔にならない。夏の日差しは、欲望(エンジン)を温める要因にしかならない。

二人の欲望はすでに、ピークに達している。

あと一押し。それがあれば、二人の理性が完全に粉砕され、獣のように入り乱れる事だろう。

二人の顔が、唇が、触れ合うまで、あと、一センチ。

「ちかげぇ・・・」

「わかばぁ・・・」

(あ、だめだ。もう止まらない)

(名前呼ぶなんて・・・反則・・・・)

そして、触れ合う―――――その直後。

 

 

「おおい、少し遅くないかお前ら・・・・」

 

 

一歩、遅かったのか、そうじゃなかったか。

 

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「あらあらぁ、どうりで帰りが遅かったと思ったら、こんな所で盛ってたんですねぇ、若葉ちゃん♪千景さん♪」

たつひなが、そこに立っていた。

「・・・すまん、邪魔した」

ばたん、と扉が閉じられる。空気を読む、精神年齢三百歳の男。

「「・・・・・」」

黙りこくり、フリーズする二人。

そして、先ほどまで、していた事を思い出して、そして、互いのファーストキスの瞬間を見られたと自覚して、その顔を急激に赤くして――――

「「いやぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあああぁああああああ!!!!」」

その日、一番の悲鳴が上がったという。




わかちかはイイゾ。もっとはやってイイゾ。

乃木若葉
暑さにやられちゃった女の子一号。
それによって自覚してなかった感情が爆発。意中の相手に襲ったり襲われたりなSでMなオンナノコ。
あと一歩で一線と越えて・・・いたのか?そうじゃないのか?
事後、しばし千景の顔が見れなくなっちゃった弱点だらけの武人ちゃん。
一応、本来の旦那ともイチャイチャしてはいたらしい。
つまりは、男性は男性で、女性は女性で愛せる二刀流女でもあるのだ。
肝心なところを一番見られたくない相手に見られ、悶絶する。

郡千景
暑さにやられちゃった女の子二号。
若葉の感情爆発に誘爆して自身の感情すらも爆発させたゲーマーちゃん。意中なのかそうじゃないのかわからない相手に襲われたり襲ったりしたSでMなオンナノコ。
未だに自分が結婚する事に納得できていない様子。
肝心なところを一番見られたくない相手に見られ、悶絶する。
しばらく若葉の事を見られなくなった気丈でツンデレなゲーマーちゃん。
情報が流れて自分の子孫に生暖かい目で見られるようになった。

足柄辰巳&上里ひなた。
わかちかの大事な所を見てしまった精神年齢人外夫婦。
辰巳は大人の対応を見せてみなかったことに、ひなたはその時の事を園子ズに流出。完全に反応を面白がる。

園子ズと不道ズ。
自分たちのご先祖様たちの事後を聞いて生暖かい気分になった者たち。
特に園子ズは興奮を隠せずメモを書くペンが止まらなくなった。



わかちかはイイゾ。
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