不道千景は勇者である   作:幻在

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『結城友奈は勇者である―勇者の章―』放送記念として投稿させていただきます!




彼岸花の章《リコリス》
不道千景


四国。

 

そこにある、とある中学にて、一人の少年が廊下を書類らしき荷物を抱えて歩いていた。

行き先は職員室。

「いやぁ、悪いね来てもらって」

「いえ、大丈夫です」

いわゆるスキンヘッドという髪型の教師に書類を渡す少年。

「それで、修理して欲しいものとは・・・」

「ああ、こっちだよ」

来てみると、教師が箱から出したのは拳銃――――ではなく、マラソンや徒競走などに使われるピストルだ。

「引金を引いても撃鉄が動かなくてね」

「貸してください」

少年は淡々とした口調でそのピストルを奪うように、しかし穏やかに取る。

そして、物色した後、懐から小さな工具箱を取り出し、そのピストルを分解しにかかる。

「ふむ・・・どうやら、詰まっているようですね。・・・・これでいいでしょう」

試しに引金を引いてみる。

すると、撃鉄がガチンッ!と音を立てて振り下ろされる。

「おお、ありがとう。助かったよ」

「他に壊れていたり、修理して欲しいものは?」

「いや、他には無いよ。今日はもう帰っていいよ」

「そうですか」

微笑んでそう返し、職員室を出ていく少年。

少年は、廊下を歩く。

自分の教室に戻れば、そこには誰もいない。

それもそうだろう。放課後で誰もが部活やら帰宅やらをしているのだから。

まあどうでも良いが。

少年はその中で窓側の一番後ろの席に向かう。

そこに置いてある鞄を手に取り、肩にかける。

特に気にする物もなく、少年は校舎を出る。

グラウンドではサッカー部やら野球部やらが試合や練習をしており、なんとも騒がしい。

そんな事を気にせず、少年は校舎を出る・・・・事はせずに何かを思い出したかのように踵を返した。

「忘れてた」

そうぼやき、少年は、走り出す。

 

 

彼の名前は『不道(ふどう)千景(ちかげ)』。

讃州中学二年。特技は機械の修理。趣味はゲーム。

そして、『勇者部』の部員の一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼稚園にて。

「これで、大丈夫でしょう」

と、電気のついたテレビを見て、そう言う千景。

「ありがとうね」

「いえ、これが俺の仕事ですから」

千景はそう返し、幼稚園の職員室を出る。

「そろそろ終わってる頃だとおもうけど・・・」

「まあ、この騒ぎようなら・・・」

と、ある教室の扉をゆっくり開ければ・・・

「勇者キーック!」

「ええええ!?」

そんな騒がしい声が聞こえ、何かがぶつかるような音が響いた。

そこでは、赤毛でポニーテールの少女が、金髪のツインテールの少女の片手におさまっているパペットに自分のパペットをぶつけていた。

「ちょ!?それキックじゃないし、というか話し合おうって言っていた所じゃない!」

「だってぇ・・・」

「こうなったら喰らえ!魔王ダブルヘッドバット!」

「ぐふぉ!?」

金髪の少女の方が反撃といわんばかりに魔王パペットを赤毛の少女の勇者パペットにぶつける。

「やれやれ・・・・」

呆れた様子で千景は、教室の窓側にて、机をおいてBGMなどを担当している二人の少女の元へ向かう。

(いつき)、BGM」

「あ、千景先輩!」

「千景君、修理終わったの?」

パソコン前に座っている、金髪の少女と同じ色の金髪をしたショートカットの少女は『犬吠埼(いぬぼうざき)(いつき)』。讃州中学一年。

一方で、車椅子に座っている黒髪の少女は『東郷(とうごう)美森(みもり)』。讃州中学二年。過去に交通事故に遭い、両足が不自由になった上に記憶にも障害がおきているらしいのだが、その他に問題はない。ちなみにハイスペック。

「ああ。そんな事より、樹」

「樹、ミュージック!」

「あ、はい!ええっと、じゃあこれで!」

と、樹がパソコンを操作する。

すると、スピーカーから魔王のテーマが流れ出す。

「ええ!?ここで魔王テーマ!?」

「フハハハハハ!ここが貴様の墓場だぁ!」

「なんか魔王がノリノリにぃ!?」

なんだか盛り上がって来た。

ちなみに、魔王役の金髪の少女は『犬吠埼(ふう)』。名前の通り、樹の姉だ。三年生だ。ちなみに、この讃州中学『勇者部』の部長でもある。

そして、勇者役の赤毛の少女は『結城(ゆうき)友奈(ゆうな)』だ。二年生であり、美森の一番の親友であり、この部のムードメーカー的存在でもある。特技に父親からは武術、母親からは押し花を教えられている。

「皆、勇者を応援して!」

ここで美森が機転とばかりに園児を先導する。

「ぐーで勇者にパワーを送ろう!がーんばれ!がーんばれ!」

美森に続いて園児たちが頑張れコールをはじめる。

「ぐうおお!?皆の声援が私を弱らせる~!」

「お姉ちゃん、良いアドリブ!」

なんともそれっぽく演じる風。

「今だ!勇者パーンチ!」

「いってぇー!?」

すかさず友奈が拳(勇者パペット)で魔王(パペットの方だよ)をぶん殴る。

すると魔王はぐったりとし、勇者がそれを支える。

「これで、魔王も分かってくれたよね。これでもうお友達だよ」

「よし、締めろ」

千景がそう言うと、美森はナレーションを再開する。

「と、いう訳で、魔王は改心し、祖国は守られました。めでたしめでたし」

すると園児たちの方から歓声があがり、無事に幼稚園での劇は終了したのである。

 

 

そんなこんなで、校外活動を無事終えた勇者部一同。

勇者部とは、福祉的ボランティアを率先してやる事を中心に活動する部であり、その実績はなかなかのもの。

人助けはもちろん、ゴミ拾いやそういった公共の場を綺麗に掃除したりする事が主な仕事であり、簡単に言ってしまえば、困っている人を助ける部活だ。

そこに、機械修理担当である不道千景は入部している。

 

親はいなく、小学校を卒業する時まで施設で暮らしていたのだが、ある日、施設の人間からいきなり施設を追い出され、ついでに施設を出てアパートに住む事になり、現在の讃州中学に入る事になったのだが、ここでクラスメイトだった結城友奈に誘われ、現在に至るのだ。

ちなみに、入部期間ギリギリでの入部だった。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、昨日の演劇は無事、成功したわけだ。

「起立、礼。神樹様に、拝」

「はい、さようなら」

挨拶が終わり、放課後となる、讃州中学。

そこの二年の教室にて、千景は教科書などを通学バックの中に入れ、肩にかける。

「千景。今度、うちのテレビなおしてくれよ」

すると前の席の男子からそういわれる。

「ああ。分かった」

「今日も部活なのか?」

「そうだ。『勇者部』だ」

「いつ聞いてもおかしな名前だよな」

「そうかもな。それじゃあ」

と、千景は教室を出ていく。

「はー、羨ましいなぁ・・・」

「だよねぇ」

先ほどの男子生徒がそうぼやき、隣にいた男子がそう答える。

「何せ、男子部員あいつだけなんだもんな」

 

 

 

 

「昨日は大成功だったねー」

「ギリギリだっただろオイ」

廊下にて、千景と友奈、そして東郷は真っ直ぐに自分たちの部室に向かっていた。

「友奈、東郷、そして千景はいりまーす」

『家庭科準備室』という看板の下にある『勇者部部室』と書かれた部屋の扉を開ける。

「おー、来たかお前ら!」

「友奈先輩、東郷先輩、千景先輩、こんにちは」

先に来ていた風と樹がこちらに気付く。

「昨日は大成功でしたねー」

「どこがよ・・・ほぼNGだったじゃない・・・」

「しかもそれ本日二度目の科白(せりふ)だぞ」

風と千景のツッコミを受けてもめげない友奈。

「まあいいか・・・今日のミーティングを始めるよ」

黒板には、いくつかのネコの写真と、子猫の飼い主探しの文字がある。

「未解決の飼い主探しの依頼がどっさり残ってるわ」

「結構来ましたね」

「いっぱい来たね・・・」

「という訳で、今日から飼い主探し強化月間とするわ。東郷、ホームページの強化は任せた!」

「携帯からもアクセスできるようにモバイル版も作っておきます」

美森が心強くうなずく。

「私たちは・・・」

「どうしましょう・・・」

友奈と樹が唸る。

「お前ら、海岸の掃除に行くだろ。そこで聞き込みしてみたらどうだ?」

千景が修理依頼されている玩具の山を修理しながらそう言う。

「おお!千景君それナイスアイデア!」

「いいと思います!」

「思い立ったが吉日だ。実践してみると良い」

千景は友奈たちに視線を向け、そう微笑む。

「うし、これで全部か・・・」

「強化、終わりました」

『早ッ!?』

ちなみに東郷の強化したホームページはかなり分かりやすかった。

 

 

 

 

 

 

うどん屋『かめや』にて。

良い音を立ててうどんをすする風。

「―――はあ・・美味しい・・・」

「先輩、それ三杯目ですよ・・・どんだけ食う気なんですか・・・」

かけうどんを食べながらドン引きする千景。

「その脂肪は一体どこへ・・・」

「千景ぇ?その話は女性には禁止事項(タブー)よ?」

「ハイスミマセン」

風の黒いオーラに気圧され黙り込む千景。

「ところでさ、文化祭の出し物の事なんだけどさ」

「あれ?もうそんな時期でしたっけ?」

友奈がそう問う。

「夏休みに入る前に考えておきたいのよね」

「去年は間に合わなかったですものね・・・ずずー」

美森がうどんをすする。

「夏休みに入る前に、色々考えておきたいのよねー」

「確かに、常に先手で有事に備える事は大事ですものね」

「今年は猫の手もあるしね」

「私!?」

樹の頭をわしゃわしゃと撫でまわす風。

「うーん、せっかくだから一生の思い出になるものが良いよね」

「なおかつ、娯楽性の高い、大衆がなびくものでないと」

「ついでに、衝撃的かつ他者の考えつかないようなものが良いよな」

「でも何をしたら・・・・」

「それを皆で考えるのよ。はい、これ宿題。皆考えてくる事」

『はーい』

「よし、すみませーん。おかわりー」

『え!?』

「ついに四杯目突入!?」

風の胃袋はまだ入るようだ。

 

 

 

うどんを食べ終わり、全員と別れた千景。しかしスマホにダウンロードされたSNSアプリで会話は続けていた。

 

 

Yuna:日曜どうします?

 

Fu:ゴロゴロする~

 

Yuna:私も~

 

東郷:トドですか!?

 

Chikage:ゴロゴロしてるといずれ牛になるぞ

 

Yuna:牛!?

 

Yuna:本当!?

 

東郷:そうよ。ちゃんと運動しないと

 

 

友奈の反応や美森の対応に思わず笑みがこぼれる。

「前までは、こうはいかなかっただろうな」

入学したての頃のまま、いや、友奈に出会わなければ、一生、人を信じずに、()()()()()()()()だっただろう。

携帯をしまい、自分が住むアパートの階段を上がる。

そして、鍵を開ける。

「ただいま」

返事は、無い。

親はすでに死去、しばらく施設生活の上に、家族と呼べる存在がいない。

低い机に鞄を置き、ソファに座って、机の上に置いてあったゲームのポータブル端末を手に取り、電源を入れる。

ふとスマホが鳴り、取り出して見て見る。

それは個人で送られてきたメール。

送り主は友奈からだ。

それを見た瞬間、気分が高揚するような感覚を感じて、慌てて内容を見る。

『今何してるかな?』

内容はそれだけ。

だが、それだけでも返信するには十分なものだ。

『ゲーム中でござんす』

返信はすぐに帰ってくる。

『いつも通りだね』

『まあな』

『飽きたりしないのかな?』

『飽きない。というか暇つぶしにこれ以上のものはない』

『文化祭の出し物、何にするか決めた?』

『いんやまだ』

『私もまだー』

『何にしようか』

『そうだな・・・というか、相談するなら東郷でも良いんじゃないのか?』

『えー、君に相談しちゃ、ダ・メ?』

『わざわざ色っぽく言うな。それとメールじゃそれほど破壊力はねーぞ』

『うー』

『まあ、だめじゃないけどさ』

『パア!(*^▽^*)』

『わざわざ感情を文字で表現しなくてよろしい』

『あ、お母さんに呼ばれた』

もう終わってしまうのか。

そう思うと心なしか寂しく感じる。

これがメールで助かった。だと声音で感情を読み取られてしまうかもしれない。

何せ、気遣いが上手い子だから。友奈は。

『それじゃあ、また明日な』

『うん』

 

 

 

平和な一日が続けばいい。

 

平和な日常が続いて欲しい。

 

ただそれだけの願いは。

 

 

次の日、いとも簡単に打ち砕かれた。

 




次回予告

『勇者になった日』


(かのじょ)は、また勇者になる。

それが、どんな結末を招こうとも。









キャラ紹介

不道千景

所属
讃州中学二年 勇者部

容姿
黒髪、短髪。
目の色は茶色。
身長 161cm。

概要
本作の主人公。
趣味 ゲーム
特技 機械修理
性格は、以前までは施設で暮らしていたが手ひどい虐めを受けており、影響で人間不信に陥っていたが、友奈や美森と関わる事によって、大抵の人間なら心を開けるようになった。
勇者部の活動をしていくうちにコミュニケーション能力も上達していった。
友奈には得に心を開いている。
機械修理の技能は、ゴミ捨て場に放置してあったストーブなどを修理していくうちに上達。
大抵のものならなんでも治せる。

■■■の子孫。

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