不道千景は勇者である   作:幻在

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星を穿つ

「おぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉおおッッッ!!!!」

「はぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁああッッッ!!!!」

翼と美森が、敵の集団に突っ込んで行く。

目の前には、複数のバーテックスだけではなく、その成り損ないの星屑。

翼が、目の前に出てきたピスケスの頭をぶん殴る。

その右腕についていたボウガン―――バリスタが叩きつけられると同時に、極太の杭がピスケスの頭部を貫通。その中にある御霊まで貫いて爆散させる。

そこへサジタリウスの槍のような矢が飛んでくる。

翼はその矢をいとも容易く弾き飛ばし、お返しとばかりに杭を発射しようとする。

しかし、そこへレオが放った火炎弾が飛んできて、直撃もせずに空中で爆発。

「ぐぅ・・!?」

その余波で狙いが狂い、放たれた杭はサジタリウスの体の一部を吹き飛ばすだけにとどまってしまう。

だがその直後に、レオに無数の砲撃が降り注ぐ。

「翼君の邪魔をしないでッ!!」

美森が戦艦から砲撃を乱射しているのだ。

しかし美森が一体に集中している状態を、敵が逃す筈がない。

美森に向かって、スコーピオが尾を振るう。

「ッ!?」

尾針が直撃、しかし精霊の張る障壁によって貫通はしない。

だが船体は揺れる。

「くッ・・・このぉ!」

だが美森はすかさず砲門の一つをスコーピオに向かって発砲。

直撃し、スコーピオは下がる。

だが、そこへカプリコーンが迫ってくる。

四本あるその足のうち一つを美森に向かって発射。

「ッ!?」

「須美ちゃん!」

そこへ翼が滑り込み、左腕を振りかぶる。

「ゼェアァァアアアッッ!!」

そのまま迫ってくる足に叩きつける。

「スマッシュッ!!!」

叩きつけるのと同時にバリスタから杭打ち機の様に杭が足に叩きつけられその足が爆散する。

だが、本体を破壊するには至らない。

しかしそこへキャンサーの反射板が迫ってくる。

「ッ!!」

翼はそれを両手のバリスタを使って射撃、破壊する。

だが、その一瞬の隙の間に、カプリコーンが残った三本の足を纏め上げてそれを翼と美森に向かって刺しかかる。

「なッ!?」

翼はそれを両手を交差する事によって受け止めるも、防御面で何の力も持たない今の翼の状態では弾き飛ばされるのが―――オチ。

「うわぁぁああ!?」

「きゃぁああぁ!?」

美森もろとも吹き飛ばされ、それと同時に、二人の満開が強制解除される。

「ッ!」

しかし翼はすぐさま態勢を立て直し、三郎の能力で飛行。美森を拾い、追撃してきたサジタリウスの攻撃をかわす。

「須美ちゃん、大丈夫!?」

「ええ・・・」

見た所、身体機能に障害はみられない。

だとすれば・・・・

「胃の感覚が・・・」

「そうか・・・・」

そこへレオの火炎弾が迫る。

「須美ちゃん!投げるよ!」

「ええ!」

翼は、美森を投げ飛ばし、自分は他の敵へ向かう。

その間に美森は狙撃銃とファンネルもどきを使って周囲に星屑を屠って満開ゲージを貯めにかかる。

「ダァアアアアァアアッ!!」

翼はタウラスに襲い掛かり、その巨体に拳を叩きつける。

そして、そのまま駆け上がりながらその巨体に連続して拳を、それと同時に矢を打ち込み続ける。

その間に他のバーテックスから攻撃がしかけられるも、その間に先に美森の満開ゲージが溜まり、再度満開を発動する。

「満開ッ!!」

青い光を巻き散らして再び戦艦を呼び出した美森。

「全主砲、って――――――ッ!!!」

砲撃が全てのバーテックスを襲う。

しかし決定打にはならず、殺しそこねる。

だが、その間に再び翼の満開ゲージが溜まる。

「満開ッ!!」

黄金の光を巻き散らして、再び翼は敵に飛びかかる。

「落ちろぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!」

タウラスにバリスタを叩きつけ、杭を打ち込む。

しかし、直撃にならず。

ならばと、翼は両手のバリスタをタウラスに押し付けるなり、()()()()

間髪無しに放たれる杭の連射は、まるでレーザーのようにタウラスの体を穿つ。

翼は、それを振り上げ、一気にタウラスを両断する。

その先に御霊があったのか、いとも容易くにタウラスの体は爆散する。

その背後からスコーピオが再び尾を振るおうとするが、そこへ無数の砲撃が叩き込まれる。

「消えろッ!!」

美森の言葉通り、スコーピオは跡形も無く消し飛んだ。

御霊が爆散していくなかで、その美森に向かって、カプリコーンが再び足の一撃を加えようとする。

しかし、そこへ翼が横からバリスタを叩きつける。

「うせろ」

ガキンッ!という音と共に、カプリコーンの本体に杭が撃ち込まれ、爆散する。

残るは、レオ、サジタリウス、キャンサーの三体のみ。

「須美ちゃん!」

「ええ!」

だが、それでも二人は止まらない。

レオの一撃で翼の満開が解ける。

「ッ!?」

そこで、翼の体に確かな変化が起きる。

 

両足が動かない。

 

それ以前に、右腕に補助ギミックがついかれているから、これで四肢が完全に死んだ事になる。

翼の満開の代償は二ヵ所同時の身体機能剥奪。ゲージ二つ分の力を使っているのだ。これぐらい当たり前だ。

しかし美森が前線を支え、再び翼が満開すれば、今度は美森の満開が解かれる。

そして、美森は、視界の片方が消えた事に気が付く。

だが、それでも――――

キャンサーの反射板を破壊し尽くし、その頭に翼がバリスタを叩きつけ、杭を打ち込み爆散させる。

美森がサジタリウスに向かって砲火を浴びせ、御霊を破壊して消滅させる。

残るは、レオのみ。

しかし。

「ッ!?さっきよりでかい・・・!?」

そう、レオの姿が先ほどよりも大きくなっているのだ。

「周囲のザコを吸収したのか・・・!」

バーテックスは、融合する事で、本来生物が何十何百何千年とかけて成し遂げる『進化』を促すのだ。

レオは、それを今やって、何かしら自身を強化したのだ。

だが、それで止まる二人では無い。

翼が突っ込み、美森が主砲を放つ。

だが、レオは火炎弾を作り出すや、それを美森の砲撃に叩きつけてかき消した。

「そんな!?」

それに美森は驚く。

 

バーテックスが防御をした。

 

本体バーテックスは防御なんて事はしない。強力な再生能力と現代兵器が効かない彼らは、そもそも防御をするという発想そのものが産まれない。それ以前に、彼らにはそのような危機感を感じる知性は存在しない。

そんな事をした存在といえば、あのオフィウクスしかいない。

ならば、何故、その様な事を――――

「まさか・・・その知性を手に入れたっていうの!?」

そうとしか考えられない。

そう考えている間に、レオが再び火炎弾を発射。

しかも、集束させたものだ。

その軌道の先には翼がいる。

「キャノンボルトッ!!」

しかし翼はその火炎弾を迎撃、相殺してさらにレオをに突っ込もうとする。

だが。

「ッ!?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()

一撃目の影に二撃目を隠していたのだ。

その直撃を、翼は諸に受ける。

「ぐあぁぁああ!?」

衝撃によって満開が解除される。

「翼君!」

美森はすぐさま翼の元へ向かおうとするが、そこへレオが()()()()()()()()()()()火炎弾が襲い掛かる。

「きゃぁぁあああ!?」

それによって美森も満開を解除される。

「くぅ・・・・・!?」

そして、実感する。

 

音が聞こえない事に。

 

(ああ・・・・これで翼君の声を聞けなくなってしまった・・・・・)

美森は、落下しながらそう思いふけり、ファンネルを使って周囲の敵を殺しまくる。

そしてゲージが溜まったところでまた満開。

(それでも、まだ戦える!)

まだ片目が見えるのだ。

だから、まだ戦える。

一方の翼は―――

(参ったな・・・・)

残っていた左耳の聴覚さえも失い、さらには内臓の一部と来た。

だけど、まだ戦う事は出来る。

(頼む、動いてくれよ・・・)

翼は、一反木綿の力を使って、両腕を強制的に動かし、周囲の星屑を葬る。

そして、再び満開『金弓箭』を発動する。

(たぶん、これが最後だ・・・)

そう思いながら、翼は飛び、美森の方へ視線を向ける。

そこには、覚悟を決めたかのように凛とした態度で敵を見据える美森の姿があった。

その美森と、目が合う。

 

 

――――これで、最後だよ。

 

――――うん、分かってる。

 

 

 

美森は、ふと、後ろを見た。

そこにいるであろう、友奈に向かって。

(友奈ちゃん・・・)

 

もし、最後に会えるのなら――――

 

レオが、火炎弾を放つ。

それと同時に、美森と翼がレオに向かって突撃を開始する。

「我―――」

美森は、叫ぶ。

 

「――――敵軍ニ特攻セリッ!!!」

 

砲門にエネルギーを集束させる。

レオが、火炎弾を連射する。

そのほとんどが、美森に直撃する。

「ぐ・・ぅぅぅうぅぅうう・・・・!!!」

苦悶の声を挙げる美森

しかし、美森はそれをお構い無しに、一気にその火炎弾の嵐の中を突っ切る。

「大和魂、舐めるなぁぁぁぁあぁぁぁあぁああああ!!!!」

そして、美森は戦艦と共にレオに激突。それと同時に大爆発を巻き起こす。

「―――我、任務ヲ・・・完遂・・・・セ・・・リ・・・・」

吹き飛ばされ、満開を解除し、落下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――友奈ちゃん。

 

そして、その青い爆発は、うずくまっていた友奈に届いた。

「・・・・とうごう・・・さん・・・?」

顔を上げ、友奈は、その爆発を目撃する。

そして、その中を落ちていく、一つの光を。

「東郷さん・・・!」

その時、友奈の体を、何かの衝動が駆け抜ける。

立ち上がり、友奈は走り出し、その光に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、外角を美森の特攻によって全て吹き飛ばされたレオの御霊は、しかし最後の悪あがきと言わんばかりか周囲の残った星屑をかき集めて、自らをもう一つの太陽として形成した。

そのまま、神樹を焼かんと言わんばかりに突撃を開始する。

しかし、それを逃がす程、翼は甘くなかった。

「させないよ・・・・絶対にッ!!!」

両手のバリスタのありったけの力を込め、翼は、その御霊に突撃する。

周囲の星屑が、それを妨害しようとするが、その外せば確実に()()()()その技は、もはや誰にも止められない。

 

「―――――荒れ狂え、無限の光よ」

 

光が螺旋を描き、その発射台に、強大な光の杭が形成される。

 

「我、楯をもって守られし者。しかし其の楯を裏返し、今こそ反撃の一手を刻む――――」

 

翼は、二丁のバリスタを合わせ、まるで突撃槍のように構える。

 

「括目せよ。これこそ我が生き様―――万人守る、我が信念――――ッ!!!」

 

そして、翼はレオの御霊に向かって激突する。

 

 

 

「――――撃ち抜け『金弓箭・万物必懐(ゴルト・ディザスター)』ッ!!!」

 

 

 

黄金の輝きと赤い太陽が真正面から激突する。

 

「ぐぅ・・・ぁぁああ・・・・!!!」

太陽。

それは、科学的に言えば膨大なエネルギーの塊。

また、神話において、その光はありとあらゆる不浄を振り払う。

レオの御霊によってつくられたその太陽は、神樹こそがその穢れと言わんばかりに突撃を続け、翼をそのまま焼き尽くさんと迫る。

翼は、その圧倒的熱量の前に、今まさに圧し潰されようとしていた。

「ぐぅ・・ぅぅぅ・・・・・!!」

押されている。このままではやられてしまう。

負けてしまう。これに負ければ、全てが終わってしまう。

そして、何より――――美森が―――須美が死ぬ。

「・・・・させるものか」

翼は、さらにバリスタのつけられた腕に力を込める。

「絶対に、それだけはさせない・・・・」

人は、強い。

どんな困難にあっても、どんなに辛い目にあっても、どんなにくじけても、何度だって立ち上がったのだ。

だから、自分もここで立ち上がろう。

逃げろと言われても、絶対に逃げない。この想いだけは、嘘にしたくないから。

だから、だから――――

「――――土居球子さん――――伊予島杏さん――――」

自分の端末に込められた想いの主に、翼は叫ぶ。

「僕に――――全てを守る力をッ――――」

その瞬間、翼の左右に、二体の精霊が現れる。

片方は車輪の中央に炎が燃えている妖怪、片方は綺麗な白い着物をまとった女性。

その二体が、翼の両腕のバリスタに片方づつ入ったかと思うと、右のバリスタからは冷気が、左のバリスタからは火炎が舞い上がった。

それは、まさしく先ほどの精霊の力。

西暦の時代において、二人が使った、精霊の力。

それに、翼は、胸一杯の感謝を込めて叫ぶ。

 

 

「――――うぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉおおッ!!!!」

 

 

冷気によって冷やされた空気が、一気に熱する事によって一気に膨張する。

それに指向性を持たせれば、そのエネルギーは全て、その一定に集められる。

それに加え、黄金の一撃が上乗せされれば――――

 

 

 

――――それは星をも穿つ、黄金の一撃。

 

 

 

黄金の光と共に火焔と吹雪が大きな爆発となって、さらにはその周囲にいた星屑たちまでもを巻き込んで、全て消し飛ばした。

太陽は消滅し、そして、その中にあった御霊までもが撃ち抜かれた。

黄金の光の中で、満開の解かれた翼は、海に落ちていく。

すでに、視界は真っ暗だ。

何も見えないし、何も聞こえない。

そして、意識も徐々に薄れていく。

 

だが、最後まで心配させる訳にはいかない。

 

だから―――――

 

 

「さ・・ぶ・・・ろう・・・・」

残った力を振り絞って、スラスターを展開、点火し、陸に向かって一気に飛ぶ。

見えないうえに、聞こえないのだから、ちゃんと陸に辿り着くかどうか分からない。

だが、翼を襲った衝撃は、彼を陸に辿り着かせたと分からせるには十分だった。

 

これでいい。今は、これで良い――――

 

 

「八神翔琉は・・・任せたよ・・・・夏凜・・・ちゃん・・・・」

そして、翼の意識は、闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、美森は――――

根の上に仰向けに横たわっていた。

その上、彼女の体は少しも動いていない。

そんな彼女に、一人駆け寄る者がいた。

「東郷さぁぁぁああああん!!!」

友奈だ。

友奈は息を切らしながら、そして、その目に涙を貯めながら、美森に駆け寄り、抱き寄せる。

「東郷さん!東郷さん!起きて!」

必至にゆすり、彼女の意識を無理矢理叩き起こそうとする。

「ん・・・」

その中で、美森が確かにその相貌を開いた。

 

しかし、その目に光は無かった。

 

「もしかして・・・・友奈ちゃん?」

美森が、そう言ってくる。

そこで、友奈はどういえば良いのか分からなかった。

「ごめんね・・・・・両目と両耳を持っていかれたから、分からないんだ・・・」

「ッ・・・そんな・・・」

友奈の表情が絶望に染まる。

「友奈ちゃん・・・」

美森は、その手を上に向かって伸ばす。

友奈は、思わずその手を取る。

「ああ、この手は友奈ちゃんだ・・・」

美森はさぞ安心したように微笑む。

それに、友奈は思わず美森の手を握る手に力を込めてしまう。

「友奈ちゃん・・・・怒ってるよね・・・・友奈ちゃんに、酷い事言って、壁を破壊しておきながら、どうして今度はこの世界を守る為に戦ったのかって・・・・・自分勝手・・・だよね・・・・」

「そんな・・・事・・・」

「でもね・・・・それでも・・・・友奈ちゃんには笑顔でいて欲しかった・・・・友奈ちゃんの悲しむ姿を見たくなかった・・・これ以上、皆を苦しめたくなかった・・・・だけど、友奈ちゃんは必ず、私を止めに来るって思った。だから、あんな事、言っちゃったんだ・・・・」

美森の両目から涙が流れる。

それはきっと、心が苦しいからだろう。

「東郷さん・・・」

友奈は、それに、どうしようもないやるせなさを感じていた。

 

「――――ごめんね」

 

美森が、謝る。

「あんな事を、言っちゃって・・・」

「違うよ・・・・謝るのは私の方だよ・・・」

「友奈ちゃんは、いつも他人の事ばっかり優先しすぎるけど、それが、友奈ちゃんの優しさだって信じてる。黙っているのは、友奈ちゃんの悪い所だけど、それは友奈ちゃんの優しさからくるものだって知ってる」

「ダメだよ・・・・こんな私を許しちゃだめだよ・・・」

「友奈ちゃんは、誰よりも優しいって知ってる。友奈ちゃんは、他人の為ならどんな怖い事にも向かっていける。だからね――――」

「東郷さん・・・私・・・・わたし・・・・!」

美森は、微笑んで、告げる。

 

「―――友奈ちゃんは、勇者だよ」

 

その言葉が、友奈の心に突き刺さる。

「がん・・ばって・・・ゆう・・・・な・・・・ちゃ・・・」

それを最後に、美森の体から力が抜ける。

「とう・・ごう・・・さん・・・・」

美森が告げた、最後の一言。

それに、胸が締め付けられ、やがて、その想いは、友奈の両目から溢れ出る。

「ぅ・・・ぅう・・・・!」

 

「――――くだらない」

 

突如、背後で聞こえた声。

「何が勇者よ。何が優しいよ。そんなくだらない事を告げて、わざわざ力尽きる事に、一体何を掛けているのよ」

その声の正体を、友奈は知っている。

襲撃者の中で、唯一友奈と同じ格闘タイプの存在。

 

千景の幼馴染の、稲成幸奈。

 

「そういう奴を、馬鹿っていうのよ」

幸奈は、友奈に向かってそう吐き捨てた。

まるで見下すかのように、そして、小馬鹿にするかのように彼女は友奈を見ていた。

しかし・・・・

「・・・・取り消して」

「ん?」

友奈は、美森を地面に置くと、立ち上がって、振り向いた。

「東郷さんに向かっていった、馬鹿って言葉を取り消してッ!!」

ここで友奈は、初めて『怒り』という激情に駆られた。

それに対して幸奈は――――

「貴方に言われる筋合いは無いわ。命懸けの勝負で命かけない貴方なんかにね」

それは、まさしく正論であろう。

だけど。

「そうだね。私は貴方との戦いで、全力を出してこなかったよ」

友奈は、ポケットに手を突っ込む。そこから、スマホを取り出す。

「だけど、()()()()()()

そこで幸奈は気が付く。

 

友奈の雰囲気が明らかに変わっている事に。

 

「ここで今、貴方をぶん殴るッ!!!」

友奈が、アプリを起動する。

直後、赤い炎が舞い上がり、友奈を包み込む。

その姿が、やがて、山桜を想起させる装束へと変化する。

「――――ぶん殴る、ですって・・・?」

それと同時に、幸奈の周囲を、黒い風が渦巻く。

「それはこっちの科白よ。徹底的に叩きのめしてあげるわ」

赤い炎と黒い風。

結城友奈と稲成幸奈。

双方、睨み合い、やがて、地面を蹴ってその拳をぶつけ合う。

 

 

桜と黒の戦いが、ここで幕を切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

因縁の戦いが始まった様子を、遠くで見ている、例の女性がいた。

しかし、彼女が戦いに参加しない。

「・・・・せめて、因縁にケリはつけるべきよね」

女性は、嫌らしい笑みで真っ直ぐに激戦区を見ていた。

 




次回『究極の聖戦』

その戦いは、神でさも唖然とする、究極の戦い。
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