不道千景は勇者である   作:幻在

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究極の聖戦

それはまさしく、ただの人間には認識できない、神速の戦いだった。

剣が錯綜し、斬撃が飛び交い、血が舞い上がる。

二人の戦いは、そんなものだった。

「うぉぉぉぉぉおおおおおぉぉおおおッ!!!」

「はぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああぁああッ!!!」

夏凜と翔琉の、神速ともいえる戦いは、たった数百にも及ぶ剣の衝突が、たった()()()()で行われていた。

否、互いに数十回剣を振る間に時間はたった()()しかたっていないのだ。

威力と速さのある両手持ちの夏凜に対して、手数で押す双剣の翔琉。

その二人の実力は拮抗していた――――否。

「遅いッ!!」

「ぐお!?」

夏凜が圧倒していた。

夏凜の下段から一撃が翔琉を仰け反らせ、その間に腹に一閃。

翔琉はどうにか腹を引っ込めるも、その一撃は当たっており、腹から血が噴き出る。

「ぐぅ・・・!?」

「ハァアアッ!!」

『鬼気・修羅領域』を使わずにこの速さ。

この『昇華』という力は、確かにすさまじい。もはや満開など必要ないだろう。

しかし、この力は夏凜と春信にしか扱えないと言われている。

それもそうだろう。

 

満開は力の上限を介抱し、その力を上乗せする力。

 

対して昇華は、力を無理矢理、圧縮してその力を一気に開放する力だ。

 

満開は、外側が強化したようなものだ。そして昇華は内側の強化する力。

だが、その内側強化は、自らの体を摩耗させるだけ。

その摩耗の度合いが比較的、全く無かったのが、春信だけ。

夏凜も同じなのかどうか分からないが、今、夏凜は夏凜を圧倒していた。

「ハア・・・ハア・・・」

翔琉は腹を抑え、膝を着いている。

「どうしたの?さっきの威勢はどうかしたのかしら?」

「パワーアップしたぐらいで調子に乗るなッ!!」

翔琉は立ち上がり、夏凜に斬りかかる。

しかし、夏凜はそれを軽々とかわし、その隙をついて斬りかかる。

だが、翔琉はそれをどうにか防ぐ。だが威力は大きく、下がらせる。

「・・・・煩わしい・・・・」

「ん?」

「貴様如きに、本気を出さなければならないとはッ!!!」

突如、翔琉がそう咆哮したかと思うと、明らかに先ほどまでとは段違いの速さで夏凜に迫ってきていた。

「ッ!?」

それに目を剥き、夏凜が反応する前に、その横を翔琉が通り過ぎる。

「・・・・・!?」

その頬は、斬られていた。

 

先ほどまで、全くの本気では無かった。

 

「・・・どんだけの自己中心者よ・・・・」

だが、これで分かった。

 

翔琉は、今、本気になった。

 

「貴様は殺す、三好夏凜」

「それはこっちの科白よ八神翔琉。叩き斬ってやるわッ!」

双方、沈黙。

しかしその沈黙は間もなく破られる。

同時に地面を蹴り、第一刀を互いに叩きつける。

次の瞬間、二人の姿が消えた。

その直後、周囲の根が蔓が両断され、空気が無数にはじけ飛び、耳が痛い程に大きな金属音が響く。

二人が、もはや肉眼では捉えられない程の速さで動き回っているのだ。

「はぁぁぁああぁぁあああぁあッ!!」

夏凜が右から横に薙ぐ。しかし翔琉はその一撃を左手の剣で弾いたかと思うと、反撃と言わんばかりに右手の剣を薙ぐ。夏凜は、弾かれた勢いを利用して高速回転。一回転したところで柄頭を剣先に叩きつけ、その軌道を逸らす。

その激しい攻防は、止まる事をしらない。

互いの剣が、互いの体に届き、その身に傷を増やしていく。

その姿は、さながら手を取り合って踊っているかのように見えるが、内心互いに本気で殺す気でかかっている。

そこに愛など好感などの感情は一切無い。

 

あまりにも激しすぎる攻防。

 

互いに、力も速さも拮抗している中で、突如として翔琉の剣が光り出す。

「な・・!?」

 

「―――『血肉を喰らい尽くす暗黒の魔剣(ダーインスレイヴ)』『抜けば死を求め続ける呪剣(ティルフィング)』」

 

そして、剣はまるで導かれるかのように夏凜に向かって、先ほどとは全く違う速さと恐ろしさで斬りかかってくる。

「くッ!!」

夏凜はその二撃を弾き飛ばすも、その剣は弾かれたにも関わらずすぐさま切り返して襲ってくる。

その連撃に、夏凜は防戦一方になってしまう。

「ッ―――そっちがその気なら―――満開ッ!!!」

瞬間、夏凜の中で赤い光が輝く、しかし翔琉はそれすらお構いなしに斬りかかる。

だが、夏凜も夏凜で先ほどとは段違いなスピードでその双剣を弾き飛ばす。

「ッ!?」

夏凜の姿に、変化はない。

しかし、その体に満ちる力は段違いだ。

本来、『外側』に纏われるべき力を、昇華によって『内側』に閉じ込める事によって、通常の数倍の力を発揮しているのだ。

また剣劇の応酬。

しかし今度は拮抗している。

あまりにも、激しい攻防。

互いの体に沢山の傷を作り出し、血が剣を振るい、体を動かす度に飛び散る。

やがて、二人はその場から消え、樹海の中を駆け抜けながら剣を交える。

夏凜は兄の力と、翼に教えてもらった技術で。翔琉は自身の剣の才と与えられた力で。

 

まさしく神さえも唖然とする、究極の戦いが繰り広げられていた。

 

剣を打ち合わせる度に空気が爆ぜ、地面が砕け散る。

剣を振るえば空気が裂け、大気が震える。

その全てが、行動した事さえも認識できない程に、速く、ただただ、耳が痛くなるような金属音が響くだけだった。

 

 

翔琉の剣が夏凜を後退させる。その夏凜に向かって、翔琉は()()()()()()()迎撃。夏凜はそれを横に回って回避。すぐさま夏凜も()()()()()()()応戦。それをたやすく回避した翔琉は今度は一気に接近、夏凜にさらなる一撃を入れる。しかし夏凜はそれを回転して回避。その回転の勢いのまま反撃するも翔琉はそれをもう一本の剣で防御。そのままもう片方の剣を引き戻して反撃し、夏凜はそれを僅かに後退して回避。しかしすぐさま踏み止まって剣を上段から振り下ろす。それを弾き返し、余ったもう片方の剣で下段から斬り上げる翔琉。だが、夏凜がありえない勢いで剣を引き戻しその剣を弾き飛ばす。その瞬間、互いの剣が一瞬霞んだかと思いきや金属音が一秒間に十回響き、互いに後退する。

 

 

「「ッ!!!」」

もはや、互いに譲らぬ一進一退の攻防。

恐ろしい程の速さで繰り広げられる剣劇は、互いにのみ認識できない争いだった。

だが、その拮抗は、長く続くはずが無かった。

 

その拮抗を破ったのは――――翔琉だった。

 

「ッ!?」

下段から繰り出された一撃が、夏凜を大きく仰け反らせる。

「しまッ――――」

そのまま、翔琉は自身の放てる最大の攻撃を繰り出す。

 

 

片腕十回、計二十回で繰り出される、超神速攻撃。

 

 

その二十連撃が、夏凜を襲う。

その全てが夏凜に直撃し、夏凜の体からおびただしい程の血が舞い上がる。

「あ・・・が・・・・!?」

「終わりだ・・・」

夏凜が、よろめき、翔琉とすれ違うようによろよろと前に足を踏み出す。

翔琉は、そのまま自分の勝ちを信じたまま、歩き出す。

さらなる敵を探し出し、殺すために。

 

果たして、そうだろうか?

 

倒れ行く夏凜。

体中に斬撃を浴び、その意識は、確かに飛んでいた。

だが、飛んだ意識の中で、彼女は聞いていた。

 

 

風の叫びを、樹の足音を、剛の咆哮を、翼の絶叫を、美森の決意を、園子の信頼を、銀の覚悟を。

 

 

今更来た、千景の声を。

 

 

あの日の、兄の慟哭を――――

 

 

 

 

 

 

 

ザッ、と夏凜は、その場に踏み止まった。

「――――」

その音に、翔琉は、驚愕する。

そして、ゆっくりと振り向けば、息を上げ、こちらを睨み付ける、血まみれの夏凜がそこに立っていた。

「ハア・・・ハア・・・」

既に、戦う力は残されていない筈なのに。その身に、無数の斬撃を受けた筈なのに。

それなのに、夏凜は立っていた。

「―――何故だ」

翔琉は、狼狽する。

「何故そこまでして立ち上がる。何故そこまでして戦うとする。こんな無意味な世界を、何故そこまでして守ろうとする」

「ハア・・・・無意味・・・・ですって・・・・?」

血を滴らせ、夏凜は答える。

「何言ってんのよ・・・全然無意味じゃないわ・・・・勇者部に出会った事、勇者になった事、誰かの為に働く事、誰かを助ける事、兄貴の妹に生まれた事。そんな沢山の『意味ある事』の中に、今のアタシのがいるの」

今までの思い出があるから、今の自分がいる。沢山の、誰かの『意味ある事』が、今の自分を作っている。その意味の中に、友奈がいて、千景がいて、翼がいて、美森がいて、風がいて、樹がいて、剛がいて、園子がいて、銀がいて、そして、兄である春信がいる。

そんな、沢山の意味ある事を成し遂げている人がいるから、今があるのだ。

今日まで、世界は繋がって来たのだ。

だって―――

「だって、無駄な事なんて、何一つないのだから―――――ッ!!!」

それは、夏凜が見つけ出した、自分だけの答え。

 

今までの事に、無駄な事なんて、何一つ無い。

 

それが、夏凜の見つけた答えだ。

「だから、アタシはアンタを倒すッ!!」

この世界を、無意味などと言う、この馬鹿を叩き斬る。

「・・・・ふざけるな」

その時、翔琉の殺気が、濃密に膨れ上がった。

「ならば俺の母さんがした事はなんだったんだ。俺の父さんがした事はなんだったんだ。少しでも世界の為に頑張ってきた俺の両親のしてきた事はなんだったんだ。否定され蔑まれ、挙句の果てには()()()()()()。それに絶望した俺の両親は自殺し、家に火をつけ、全てを無かった事にしようとした!」

翔琉は嘆く。

「無駄だったのだ!何も残せずに死んでしまったのだ!偉業ともいえる行為を、たかが()()()()()()という理由で揉み消されたのだ!なんなのだこの理不尽は!この不条理はッ!!賞賛されるべき者が死に、そうでないものが生きる!!こんな世界を無意味だと言って何が悪いッ!!」

翔琉の二対の剣が、一つにまとまる。そして、その刃に濃密なエネルギーを宿す。

「だから俺はこの世界を殺し、全ての人間の存在意義を無にするッ!!その為ならば、この命捨ててやるッ!!」

それは、ありとあらゆる伝説のおいて、その名を知らぬ者はいないと言われるほどの、伝説の聖剣。

 

「―――束ねるは我が憤怒、蹴散らすは有象無象」

 

しかしその剣に込められるのは、憎悪と憤怒、そして暴力。

 

「―――その黄金の身を漆黒に染めてもなお、我は敵を討つ為身を滅ぼさん」

 

自らの持てる力の全てを持って、翔琉はその闇に染まった聖剣を抜く。

 

「―――全ては、この世の全てを無に帰すため。常世全てを破滅へと導くために」

 

その名は――――

 

「―――『されど悪意を纏いし星の聖剣(エクスカリバー)』ッ!!!」

 

そんな、あまりにも有名で最強の剣を前に、夏凜は何で対抗するべきか。

 

「―――我が御手を持って、神の領域に踏み入る事を赦し給え」

 

それは、一人の鍛冶師がいきついた、剣製の最奥。

 

「―――一つの間違いなく槌を打ち、一刻のずれも無く火にくべる」

 

かつて天下を治めた一族を脅かした妖刀を作り出した、刀鍛冶の一族の始祖の、全てを込めた最高の一品。

 

「―――それはまさしく神の一刀、神の剣、願わくば、その刀を創る事を、赦し給え」

 

その名は――――

 

「――――『都牟刈村正(ムツカリムラマサ)』ッ!!!」

 

夏凜の手に、焼けるような熱さが伝わってくる。

その手に握られるのは、刀身が焼かれた鉄のように輝いている刀だ。

それは、まさしく最高の状態を保った、究極の刀。

釜戸の火を纏い、一寸の狂いも無く、一刻のズレも無く創り上げた神域に辿り着きし刀。

 

立ちはだかるは、星が創り上げた呪われた最強の聖剣。

 

相対するは、人が到達し創り出した究極の神剣。

 

されど雌雄を決するのは剣の力では無い。

 

 

 

すなわち、使い手の技。

 

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉおおおッ!!!!」

「望むところだぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁああッ!!!!」

二人がぶつかる。

音速を超え、光速を超え、神速を超える。

斬撃が斬撃を呼び、それと同時に血が舞い上がる。

しかし、それでも二人は剣を振るう事をやめない。

走る二人。その最中にぶつかれば耳が痛くなる程の金属音が鳴り響く。

踏みしめた大地は砕け散り、剣を振るえば大気が裂け、空へ飛べば、そこでも剣戟が始まる。

翔琉が夏凜の胸倉を掴めば地面に叩き落し、夏凜の肺から空気が全て吐き出される。

しかし、ほぼ無意識化で夏凜は蹴りで翔琉の顔面を蹴っ飛ばす。

吹き飛ばされるもすぐさま態勢を立て直し、再び夏凜に斬りかかる。しかし夏凜も同時に立ち上がって地面を蹴って翔琉に斬りかかる。

またぶつかり合い、剣閃と血が舞う。

「ハァアアッ!!!」

夏凜が剣を振り上げ、一気に振り下ろし、翔琉がそれを受け止める。

「三好春信―――すでに役目を終えた勇者(けんし)が最後の障害とは・・・これも因果かッ!!」

「うぅぁああ!!」

夏凜が翔琉を弾き飛ばす。

そして、弾いた所でさらに一太刀入れる。

「ぐぅッ!!」

「ハァアアッ!!!」

今度は横からの鋭い一閃。

しかし翔琉はそれを下に剣を滑り込ませて上に逸らし、がら空きの腹に一撃を入れる。

「ぐぅ!?」

血が舞い上がる。しかし、夏凜はそれでも止まらない。

もとより、翔琉もそれで止まるとは思っていない。

同時に斬りかかる。

互いに同時に放った一撃が互いの体に入る。

それだけで血しぶきが舞う。

すぐさま反撃に転じたのは翔琉。

蹴りが夏凜の腹に入り、夏凜を後ろへ吹き飛ばす。

それに血を吐く夏凜。しかし踏み止まり、反撃。

片手を剣から離し、その拳で翔琉を殴り飛ばす。

そのまま追撃に入り、翔琉が態勢を立て直し、そのまま鍔迫り合いに持ち込まれる。

互いに押し切らんとありったけの力を込めて地面を踏みしめる。

しかし、どちらかが押し切るよりも先に、擦り合う事で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()されど悪意を纏いし星の聖剣(エクスカリバー)』と『都牟刈村正(ムツカリムラマサ)』の接触部分が爆発した。

「ぐぅああ!?」

「がぁああ!?」

お互いに吹き飛ばされ、ここでたった一時の剣戟は終わった。

しかし、それでも、二人は立ち上がる。

互いの持つ願いの為。そして、自分に与えられた役割(ロール)を果たすために。

 

 

 

 

目の前の敵を、討つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雌雄を決するは、たった一振り。

 

 

 

 

 

 

 

同時に、地面を蹴る夏凜と翔琉。

互いに選んだのは、一方から斬りかかり、一方から斬り抜ける斬撃。

そして夏凜は、ここで『鬼気・極限羅刹』の上に『鬼気・修羅領域』を上乗せした。

己の全てを一分の間に使い切る、失敗すれば自滅する諸刃の剣。

その力を、たった今使用したのだ。

己が全てを掛けて、相手を斬る為に。

 

これが最後の一撃(ラスト・チャンス)

 

だから、二人は咆哮する。

 

 

互いに切り出すのは自身の持つ、最高の一撃。

 

翔琉が放つのは自身が最も得意としている、右手のみでの、右斜め上からの斬り下ろし。

 

対して夏凜が放つのは、同様に、両手で持った刀での、右斜め上からの斬り下ろし。

 

しかし、その勝負。その速さは―――――翔琉が勝っていた。

 

その軌道上、翔琉が今まさに斬ろうとしているのは、夏凜の首。

夏凜の首を斬り飛ばす事で、この戦いを終わらせてようとしているのだ。

このままでは、確実に翔琉の剣が先に到達する。

だが、()()()()()()()

もとより、相手がこちらを殺しにかかっているのは当たり前。

ならばこちらは引くのか?否、全力で迎え撃つ。

この一撃は、夏凜が―――春信が最も得意としていた剣技。

 

 

 

 

 

自分が、兄より劣っているのは、すでに分かり切っている。

 

ならばどうする。簡単だ。

 

足りないなら搔き集めろ、至らないなら振り絞れ。一分は惜しい、一秒もいらない。

 

ただ一刀。ただ一振りに、己の全身全霊、魂、全てを掛けて、振り抜くのだ。

 

そして駆け抜けろ―――――極限の、(おれ)の最強の一瞬をッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘奥『蓮華の太刀』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果たして、決着は着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属音が、響き渡り、鮮血が、舞い上がり、折れた刀身が、宙を舞う。

果たして、その刀身はどちらのものか。

結果は、見れば明らかだった。

「ば・・・か・・・・な・・・・・」

 

ずるり

 

そして、

 

べちゃり

 

そんな音が聞こえた。

そこにあるのは、一人の男の、肩から脇腹にかけて真っ二つにされた、無残な姿だった。

そして、立っている勝者は、その姿を、決して余裕の無い表情で、見ていた。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・・」

その手に、焼けた鉄の刀は無く、ただの普通の刀がその手にあった。

だが、彼女もそこまで持たない。

何故なら―――――己の全てを使い切ったのだから。

「う・・・」

仰向けに倒れ、夏凜は空を仰ぎ見る。

遠くから聞こえる轟音。

飛び散った血の匂いはしないが、それでも、誰かが戦っているのは明白だった。

それに、一つの安心感を覚えながら、夏凜は、空に向かって、拳を突き出す。

 

「――――勝ったわ、兄貴」

 

 




次回『貴方にだけは負けたくない』

たった一人の男を掛けた、全力の戦い。
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