不道千景は勇者である 作:幻在
千景が与えた一撃は、確かにヴァルゴ・バーテックスの体を両断した。
だが、それでも再生していく。
「えええ!?また治っちゃうよ!?」
「どうすればいいんだか・・・・」
「えっと・・・風センパーイ!」
「バーテックスは『封印の儀式』っていう特別な手順を踏まないと絶対に倒せないの!説明するから避けながら聞いてね!」
「ふえぇえ!?そんなハードだよぉ・・・!!」
風の指示を受け、回避に徹する三人。
やがて説明を聞き終え、行動に移す。
「俺が動きを止める、他三人は封印の儀式をお願いします」
「「「了解!」」」
「・・・・って千景の奴、なんか急に冷静になってない?」
千景はヴァルゴの前に出る。
そして、勇者化によって強化された身体機能でヴァルゴを撹乱する。いかにも
何やら友奈たちがスマホを見ながら何かを言っている。
あれが祝詞なのだろうか。
と、思った矢先、風が上空から剣を振り下ろす。
「おとなしくしろコンニャロォ!」
「「ええ!?それでいいの!?」」
「魂込めてれば言葉は問わないのよ」
「早く言ってよお姉ちゃぁん・・・!」
「そんな簡単に済むなら速く言えよ・・・・てなんか出たな・・・」
ふと、ヴァルゴの下に大きな魔法陣らしきものが出現した途端、ヴァルゴが何か四角推の様な何かを吐き出した。
「封印すれば『御霊』がむき出しになる。あれはいわば心臓よ!」
「ならあれを破壊すれば」
友奈が大きく跳躍し、その御霊を上空から落下の威力を使って拳を振り起す。
もの凄く大きな音が鳴る。が。
「かったぁぁあああい!!?固すぎるよコレェ!?」
「友奈のパンチで壊れねえほどに固いのかあれ・・・」
「ん?お姉ちゃん、なんだか数字が減ってきてるけど・・・」
樹の言葉通り、なんだか陣の中心に描かれている漢数字が減少している。
「それ、アタシ達のパワー残量!それが無くなるとコイツは二度と倒せなくなるわ!」
「ええ!?それじゃあ・・・・」
「こいつが神樹様に辿り着き、全てが終わる!」
風が飛び、大剣を振り上げる。
「喰らえ!アタシの女子力を込めた渾身の一撃をォ――――ッ!!」
それが御霊に直撃、僅かにヒビを入れる。
その時、周囲の巨根が風化を始めた。
「これは・・・枯れてる?」
「始まった!長い間封印してると樹海が枯れて、現実世界に影響が出るの!」
「だったらさっきのでもう一度だ」
今度は千景が飛ぶ。
電光石火の如き速さで御霊に急接近し、また変形した血色の鎌から光の刃を出現させる。
「ッ!」
大きく左側に振りかぶり、すくい上げるかのように斬り上げる。
千景の渾身の一撃は、見事に御霊を真っ二つにする。
「どうだ・・・!」
そのまま落下、着地する。
砕け散った御霊から、何やら光があふれ出たと思ったら、次の瞬間、ヴァルゴは砂となり、その形が崩れ去った。
「終わった・・・・」
「よくやったわ千景――――!」
「いて!?」
バンッ!と風に背中を叩かれ、賞賛を浴びる千景。
だが、すぐさま周囲は光となって、周囲を包み込んだ。
「ここは・・・」
「学校の屋上、だね」
気がつけば、千景達は讃州中学の屋上に立っていた。
変身もいつの間にか解け、いつもの制服姿に戻っていた。
「一応、終わったのか・・・」
「そうよ!お手柄だったわね、千景!」
「はあ・・・ありがとうございます」
なんとも釈然としないし実感もわかない。
ただ、勝ったという事実だけが、そこにあった。
「守れた・・・・」
屋上から街を見渡す。
「そうよ。皆この事に気が付いてないけど、確かにアタシたちは守ったのよ。皆の日常を」
「そうか・・・なら良かった・・・」
ホッと胸をなでおろす。
何はともあれ、何事も無く終わったのだ。
これを喜ぶ以外、何も言う事は無い。
「ただ現実の時間は止まったままだから、今はモロ授業中だと思うわよ」
「うえぇえ・・・!?」
「それはそれでマズイな・・・」
風のカミングアウトにげんなりする一同。
ただ、その中で一人、浮かない顔がしていた者が一人。
そして、遠い場所、別の場所にて。
「・・・・なんだったんだ・・・」
一人の少年は、先ほど起きた事に困惑していた。
次回予告
『勇者のお役目について』
楽しい楽しい説明会。