不道千景は勇者である   作:幻在

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に、二万字・・・・書きすぎた・・・


救導者VS防人&襲撃者

正道明日香。

幼少期より、親より聞かされた勇者という存在に憧れを抱き、常日頃から異常なほどに体を鍛えてきた少年である。

その鍛え方はまさしく普通の学生の域を超えており、逆立ちで腕立てをするほどである。

さらに、運動神経も他人よりすさまじく、喧嘩でも負けた事が無い。

ただ、それ以外はからっきしで、成績は常に最底辺だった。それでも親は彼を見捨てる事はせず、常に最上の愛をこめて彼を育てた。

そんな彼に、大赦より招集がかけられたのは、まさしく彼の運命を左右するに至っただろう。

 

当時、大赦では『防人計画』というものを立てており、その為に必要な元勇者候補たちを集めていた。

 

その中にいる男子数名を選抜し、『悪魔』と契約させて、防人たちの生存率を上げる為の企てを、乃木及び白鳥、そして足柄辰巳は画策した。

 

そして、その中で最も悪魔との相性が良かったのが―――勇者適性率0%だった、正道明日香だった。

 

 

 

故に――――

 

「ウオラァア!!」

「くッ!」

大剣を振るい、冬樹を追い詰める明日香。

否、そう見えてるだけであって、冬樹は明日香の射程の外から様子見をし、反撃の糸口を探っているのだ。

それに明日香が追い縋っているだけだ。

(攻撃が途切れない・・・どれだけ底なしの体力なの・・・?)

なかなか明日香の攻撃に隙ができない。明日香の攻撃は、一見雑に見えて、かなり洗練されているのだ。一刀一刀に最大限の力が込められており、一足一足の踏み込みが深く思い切りが良い。

このまま後手に回り続けていれば、やられる。

隙が無いのなら、作るしかない。

ここで冬樹は初めて構成に出る。

振り切られた右手の大剣。その瞬間に冬樹は左の剣が迫るのもお構いなしに踏み込む。

「ッ!」

それに目を見開く明日香だったが、構わず刃を左から薙ぐ。

迫る刃。対し冬樹は刀を、迎え撃つように振るう。同じ左からの薙ぎ、交差法。刃と刃が衝撃を巻き散らし、両手で振っている筈の冬樹の一撃よりも、明日香の一撃が上回っている。だが、一瞬だけ、その勢いがそがれる。その一瞬で十分。その間に冬樹は明日香の腹に蹴りを一発叩き込む。

「ぐッ!?」

うめき声をあげつつ下がる明日香。その一瞬の隙の間に、冬樹は自身の御神刀『水誠刀』の能力『水』の力を発動する。

「『水刃』」

水をチェーンソーのように振動させて、万物を両断する高周波ブレード。

だが、その本当の思惑は、()()()()()()()()

「『水蛇』ッ!」

突きの構えから、僅かに距離を空けた状態で、刀を突く。すると、纏われていた水が蛇のように伸び、明日香に向かって迫る。

さらに、それは突然、木の枝のように分裂し、計四つ、水の刃が明日香に迫る。

だが―――

「うおらァ!!」

一重に明日香が大剣を振るえば、その実体無き刃は切り裂かれ、やがて地面に落ちて染みていく。

「やっぱり・・・・()()()()()()()

本来、切り裂かれたとしても、冬樹が操った水は()()()()()()()()だ。本当なら、あの水は空中でもう一度明日香を狙い、貫くはずだったのだ。

だが、あの剣に斬られる。否、触れた瞬間、繋がりそのものが()()()()かのように動かせなくなった。

つまりは、そういう事だ。

(あの剣には、私たちの能力を無効化する力が備わっている・・・!!)

冬樹は、そう推察し、そしてまたそれは、正解だった。

 

 

 

明日香が契約した悪魔は『正』。

 

 

 

能力は、『ありとあらゆる現象を、()()()姿()()()()()()』。

 

 

 

神によって起きた奇跡を正し、妖怪の手によって変えられたものを正し、また、人間の手によって変えられてしまったものを、正す。

 

ありとあらゆる、この世界となんの関係もない、あまねく全ての『異能』『超常』『魔法』全てを()()()()()()()()

 

変えられてしまったものを、正す、人類の新たな切り札。神によって変えられた世界さえも正す事の出来す可能性を秘めた、新たな希望。

 

 

それが、明日香の力。

 

 

「へへ、どうした。もうおしまいかァ!?」

「まだ、まだ、行ける・・・!!」

明日香と冬樹が同時に地面を蹴り、ぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で。

放たれた漆黒の矢を、千景は苦も無く弾く。

だが、その間に接近してきた銃剣使いの攻撃が、迫る。

「オッラァ!」

二重人格者、山伏しずく、その裏人格たる『シズク』の荒々しい攻撃を、『文字連鎖(イディオムチェイン)』によって変化した刀によって捌く。

突撃そのまま後ろにすれ違っていく。

「チッ、夕海子!」

シズクの後ろから、今度はブロンド髪の少女がやってくる。武器は同じ銃剣。しかし、今度は銃弾を放ってくる。それを体を僅かに移動させてかわし、次に来る銃剣による突きを刀の腹で受け止める。しかしそのまま押し合いに発展させず刃を滑らせて後ろに受け流す。

「―――『鎖刀』」

続けて刀を()()させて、その形状を鎖に繋がれた双剣へと変える。

そして、右半身を前にした状態での背中から奇襲してくる、楠芽吹の攻撃に備える。

芽吹は、近くにあるコンテナの上から、銃剣の刃を振り下ろす。

それに対して千景は反時計回りに回転、左の刀で迎え撃つ。

「ハアッ!!」

「セッェイッ!」

刃一閃、反撃一閃、刃が交錯し、火花を散らす。

芽吹は着地待たずにそのままの状態から蹴りを放ち、それを千景は左足を軸に今度は時計回りに体を回してかわす、そのまま芽吹の鎖骨と首の間に刃を突き入れようとするが、何時取り出したのか腰に常備されていたナイフを抜いて防御。地面に着地、銃口を千景に向けようとするがそれは未だ密着したままの千景の左手の刀によって動きを阻害されて不可能。であるならば下がって撃つ。

距離を取った芽吹が、銃口を千景に向け、その一連の動作の前に千景は『文字連鎖(イディオムチェイン)』を発動し、『刀』から『砲』へ変更。その手に拳銃を出現させ、芽吹に向ける。さらにもう片方の手で後ろから接近してくるシズクに向かって発砲。

「うわっと!?」

その隙で芽吹が発砲、一拍遅れて千景が反撃の一発。

二つの弾丸がすれ違い、千景の弾丸は芽吹の右肩の装甲を吹き飛ばし、芽吹の弾丸は千景がよろけるようにかわした事でかすりもしなかった。

(まずは分散させて各個撃破・・・・といきたいが)

千景はその武器を鎌に変化させて、飛来してきた黒い矢を弾き飛ばす。

千景はそちらに視線を向ける。

そこには、積み上げられたコンテナの上で堂々と弓を引く少年の姿があった。

(あの狙撃手が邪魔だ)

現在、千景は芽吹、夕海子、シズクとあの弓兵と四体一で戦っていた。

あの明日香と呼ばれていた少年とは冬樹がサシでやりあっており、真武郎は大槍を持った少年と楯の少女、そして銃剣を持っているあの爆撃を生き残った少年とやりあっている。

本当なら、もう少し引き受けても良かったが、目の前にいるこの四人の連携や個々の強さが、その余裕を削り取っていた。

「隙あ―――」

「ねえよ!」

「きゃ!?」

鎖を飛ばし、コンテナの上で背後をとっていた夕海子の放った弾丸を弾き飛ばしそのまま鎖を叩き込もうとしたが、後ろに倒れ込むようにかわされる。

最後に「ふぎゅ」とおおよそ少女らしからぬ声が聞こえた気がしたが、この際無視して、最も警戒率の高いに芽吹へ視線を向ける。

案の定、芽吹は突進してきた。その銃口から二、三発、発砲し、追撃に銃剣を突いてくる。

最初の弾丸を鎌で叩き落し、次の銃剣による刺突を鎌の柄で反らし、鍔迫り合いに持ち込む。

「・・・答えなさい。貴方たちは一体何が目的なの!?」

「端的に言って異世界の神の打倒及びこの世界の防衛、かな。本当ならお前らとも協力したいところだがな・・・」

「そりゃいいわね。私もそう思っていたところよ!」

芽吹が千景を押し返す。

「だったらこんな事してないでさっさと撤退してくれると嬉しいんだがな!?」

「そうしたいところだけど、貴方を捕えないといけないから、大人しくお縄につけ!」

「それで終わるならいいんだけど、お生憎様、今はそういう訳にはいかない!」

「だったら交渉は決裂よ!」

「まだ予知はあると思うんだがな!?」

芽吹の銃剣と千景の鎌が火花を散らしてぶつかり合う。

「オラァッ!」

「ッ」

コンテナの上からシズクが襲い掛かる。千景はシズクが振り降ろしてくる銃剣の切っ先を鎖を巻きつけた左手で弾き飛ばし、そのまま右手のみで鎌を薙ぐ。シズクは転がってその射程から逃れる。

「チッ!隙がねえっ!!」

「落ち着いてシズク、この人数差よ。必ず隙は生まれるわ」

「そうなる前に俺がお前らを倒してやんよ」

千景がそう言い切った時、背後から殺気を感じた。

「倒されるのはお前だ。阿呆が」

「ッ!?」

放たれる無数の漆黒の矢。

「『鎖撃結界(カウンターシールド)』ッ!!」

鎖が渦を巻き、矢を弾き飛ばす、が、その内の一矢が、千景の肩を貫く。

「グッ!?」

(いつの間に・・・!?)

予想外の事に、千景は目を向いた。

「まずは一撃だ」

そこには、眼鏡をかけた大弓を持った少年が立っていた。

 

 

亜門優理。

大赦の名の知れた赤嶺と並ぶ名家、亜門家の子息であり、幼少より英才教育を受けてきた才児。頭脳明晰、容姿端麗、運動万能の三点セットで、右に並ぶ者はいない存在だった。親の期待を一身に背負い、常に完璧であり続けた、一人の少年であった。

しかし、そんな優秀な彼でも、素質はあっても勇者になる事は出来なかった。

理由は無く、ただ単純に、神樹に選ばれなかった。ただ、それだけ。

彼は何も気にせず、ただ受け入れるだけであったが、もし、と思う事はあった。

そんな彼に、ある機転があった。

 

大赦が立案した、『完成型勇者計画』。

 

先代の端末を後継に継がせるという計画に、優理は呼ばれた。

それは、過酷なもので、当初数十人もいた候補者たちは、一夜にして、その大半が減らされていった。

そして、選抜が続いて、最終選抜の時、優理は、他の追随を許さない程の成績を叩き出していた。彼に次ぐ、楠芽吹と三好夏凜には、迫られていたが、それでも彼が勝っていた。だが――――

 

―――どういう訳か、最後まで残った三人の中で、最も成績が低かった夏凜が選ばれた。

 

ありえない、と優理は思った。

優理は、この人生を全て、己の為に使ってきた。親の期待など関係無く、ただ自分の為に、使ってきた。だが、負けた。平凡も良い所の、ただの努力家である、三好夏凜の負けたのだ。

何故、自分が負けたのか。それが一切、分からなかった。

だから、納得できず、芽吹と共に直談判をした。だが、当時、最終選抜をした当人である、六道翼と勝負をして、二体一、それも相手は片腕と片目が見えないというハンデがの上で、完膚なきまでに叩きのめされて、こういわれた。

 

『君たちが、夏凜ちゃんに負けた理由が、さっぱり分からないなら、残念だけど君たちには彼女の勇者システムを継がせる訳にはいかないよ。()()()()()()()

 

 

六道家における、苗字呼びは、相手を軽蔑した時にのみ、使われる相手の呼び方であり、そして改めて優理は、自分がただの秀才で、六道翼は本物の天才だという事を思い知らされた。そして、また、夏凜の合格に、まだ納得がいかなかった。

 

そうして数ヶ月、親に見放されて生活してきた中、また大赦から呼び出しがあった。

 

それが、防人計画。結果――――彼は悪魔と契約した。

 

 

 

 

亜門優理が契約した悪魔は『霊子』。

 

空気中に漂う、別次元の原子、『霊子』を操り、物理限界を超えた動きと、霊子による攻撃を可能とする、万能型能力を有する悪魔。

 

 

「―――貴様を滅却してやろう」

「あ、そうかよ・・・」

千景は、穿たれた傷口に鎖で止血を施して、鎌を構える。

「悪いが、そう簡単にやられてやるつもりはねえよ」

千景は、その笑みを崩さず、襲い掛かる敵を迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

「オオオオオッ!!」

「うぐお!?」

猛烈な槍のスイングに、真武郎は思わずさがる。

「ぬぅぅぅうんッ!!」

「その掛け声、は、中学、生が、出す、ような声じゃ、ないと、思うん、だが!?」

途切れ途切れに真武郎は激しい翔真の連撃を、その射程に外れつつかわしまくる真武郎。

「なんのこれしき、俺は農家の人間故に、こんな掛け声でなぁあ!!」

「元気がいい事は大変よろしいこと、で!だけどオジサンにとってはその暑苦しいテンションは勘弁願いたい、ね!」

「ぬあ!?」

反撃の一刺し、しかし、そお一撃は脇をすり抜けてかわされる。

「なかなか当たらないな」

「うおぉおお!」

「チッ!」

さらに、コンテナの上から奇襲してくる一人の少年。銃剣の一撃をバックステップでかわし、槍を薙いで反撃する。

「うわぁあ!!」

だが、そこで悲鳴をあげて楯をもった一人の少女が割り込んできて、少年への反撃を容易に防がれる。

「くそッ!」

「助かったよ雀!」

「ひぃいい!」

感謝する少年、羽村昴がすぐさま走り出し、それに追随するように加賀城雀も走り出す。

「セェイッ!」

「ぐお!?」

その間に翔真が真武郎に向かって大槍を振り下ろしてくる。その重い一撃を真武郎は正面から受け止める。

「ぬぐ・・・重い・・・・!?」

「我が父直伝の、鍬打ちだ!」

「舐めるな、よ!」

片足を挙げた真武郎は、そのまま地面にその足を叩きつける。

次の瞬間、翔真の足元が爆発、吹き飛ばされる。

「ぐあああ!?」

「翔真!?」

「翔真さん!?」

吹き飛ばされて、地面に叩きつけられるも、翔真はすぐさま立ち上がる。

「心配するな!まだいける!」

「頑丈な奴め・・・」

「それが取り柄だからな!だが明日香には敗ける!ワッハッハ!」

高笑いをする翔真。

「笑い事じゃないよ翔真!」

「うむ!分かっている!」

構える翔真。

「そちらが能力を使ったのならば、俺も使わなければ失礼というもの」

「こんなオジサン相手に礼儀はいらないんだけどね」

「であっても遠慮なく使わせて頂く」

槍を手の上で踊らせて、突如謎の構えを取る。するとどうだ?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な!?」

「喰らえ!『双拳(ダブルハンマー)』ッ!!」

巨大な二つの土の拳が、左右から真武郎を襲う。

「チッ!」

それに対して、真武郎は槍を一瞬のうちに振り回す。その切っ先が土の拳に直撃した瞬間、爆発して木端微塵になる。

「『爆撃付与(ボムエンチャント)』」

「ぬう・・・」

それを見て、唸る翔真。

 

 

前田将真。

白鳥家所有の土地の農家に生まれた長男。

彼を筆頭に、その家は子宝に恵まれており、彼を筆頭におおよそ八人の子供に恵まれていた。しかし、家は裕福とは言えず、いたって平凡。しかし八人の子供を養うには、いささか無理があった。

故に、翔真や他三人の上の弟たちは必然的に家の手伝いをする事になってしまっていた。

そんな時に、大赦から召集がかかった。その時、翔真はある一つの条件を出した。

 

『家に生活にする事において、不自由のない程の援助をしてほしい』、と。

 

防人計画において、使い捨て、という前提条件があったが、悪魔との契約が可能な者でもあったために、それは飲まれた。故に――――

 

 

 

翔真が契約した悪魔は『土』。

 

大地と密接にかかわっていた翔真だからこそ扱える悪魔であり、その能力は、土に関するありとあらゆる超常を引き起こす。

 

その能力は、大地を踏みしめる『舞い』によって強化される。

 

 

 

「『弾岩(ロックバレット)』ッ!!」

舞いを舞い、岩石を叩き出し、大地を踏みしめ、その岩石を弾丸の如く放つ。

「爆ぜろ」

それに対して、真武郎は左手を前に出して、その掌から爆発を引き起こし、礫を全て吹き飛ばす。

爆風に思わず顔を庇い、それによって視界が一瞬遮られる。

爆発によって巻き起こった黒煙の中から、真武郎が飛び出し、翔真に接近する。

「しまっ・・・」

「悪いねッ!」

そのまま隙だらけの翔真の腹に槍を突き立てる、その寸前。

「うわぁああああ!!」

雀が泣きながら割り込んで、槍を受け止める。

しかし、その槍には未だ『爆撃付与(ボムエンチャント)』が発動したままなので、切っ先が擦れた瞬間、爆発を引き起こし、吹き飛ばされる。

「ぎゃぁあああ!?」

「うぐぁああ!?」

耳をつんざくような悲鳴が響くも、どうにか二人は無事。

しかし、それでは終わらない。舞い上がる黒煙の中、真武郎の横から、昴が銃剣を突いてくる。

「うおおおお!」

「ぬあ!?」

不意打ちにおどろきつつもバックステップでかわす真武郎。だが、避けられたと悟るや否や、昴は銃剣の銃口を真武郎に向けて、引金を引く。

「うおあ!?」

顔を傾ける事で難を逃れる。そのまま無理な態勢のまま、真武郎は昴を蹴っ飛ばす。

「うぐあ!?」

蹴り飛ばされた昴は地面を転がり、翔真たちの元へ。

「大丈夫か昴!?」

「ああうん大丈夫大丈夫。ちょっと腹に響いてるだけだからね、うん」

どうにか起き上がり、無事だという事を伝える。だが、腹にくる鈍痛はかなり痛そうだ。

「ひぃいい、楯まだ壊れてないよね?ひびとか入ってないよねぇ!?」

「安心しろ雀、ヒビは入っているが壊れてはいない」

「ひぃいい!?じゃあ次で終わりって事じゃん!?助けてぇえぇええ!!メブゥゥウ!!」

やはり悲鳴をあげるのは雀であり、翔真がいった通り、楯には先ほどの爆発によってヒビが入っていた。

御神刀は、人間自体は傷つけないが、物は破壊するのだ。

その間に、真武郎は構える。

「来なよ。引けない理由があるんだろ?」

その額に冷や汗を流して、真武郎は告げる。

(さあて、向こうはどうなってるかなぁ・・・?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脚は、体全身を支える為に、腕の三~四倍の力を有していると言われている。

さらに、ボールを蹴るなど、常に足を酷使するスポーツであるサッカーをしている者の脚力は、いかようなものになっているのか。

答えはこのすぐ後。

拳と脚が衝突する。

「ぐっぁ・・・」

「オラァッ!」

拳に激しい衝撃が走り、苦悶に顔を歪める幸奈。そこへ、すかさず、直蹴りを繰り出した右足を引っ込めつつ体を回し、左足で回し蹴りを幸奈の顔面に叩き込む。

幸奈は、間一髪のところで右腕で防ぎ、同時に吹き飛ばされる方向にわざと飛んで威力を削いで吹き飛ばされる。

 

讃州市公共の道路の上で、幸奈と信也は激突していた。

 

格闘技で戦う幸奈に対して、信也は足技のみ。しかし、筋力(パワー)で圧倒的に劣っている幸奈は、今まさに押されていた。

「『馬兎蹴(バットキック)』ッ!!!」

まるでバットを振るうかのように薙がれる右足を、幸奈は交差させた両腕で防ぐ。

しかしすかさず飛び上がった信也の両足の連撃が襲い掛かる。

「『魔進(マシン)(ガン)(キック)』ッ!!!」

「く、ぅう・・・!」

どうにか捌き防いでいく幸奈。

「どうした!?その程度かよ!」

「そんな訳、ないでしょ!!」

左手に黒風を集束させ、圧縮、それだけで、風の爆弾の出来上がり。

「ハアッ!!」

「ッ!?」

風圧の爆弾を持った左手による掌打。

それに対して、信也はその左手に右足を叩きつけて、大きく後ろに跳んだ。

(蹴ってショックを・・・!?)

衝突の際の衝撃を、全て足のバネを使って殺したのだ。

地面に着地した信也は、そのまま地面を蹴って、幸奈に突っ込む。

「ッ!」

迎え撃つ幸奈。信也はすさまじい速度で蹴りを連続で繰り出す。

「オラオラオラァッ!!」

「せっぇぇええいッ!!」

互いに拳と脚がぶつかり合い、衝撃が巻き散らされる。

「オッラァッ!!」

「ッ!?」

何度か打ち合った後、信也は左足を幸奈の顎目掛けてサマーソルトキックを繰り出す。

それをすれすれでかわす幸奈だが、風圧が襲い掛かり、仰け反った体に負荷がかかってバランスを崩す。

だが、追撃させない為に信也の背中に風を叩きつける。

「ぐぅ!?」

案の定吹き飛ばされるも、信也はすぐさま態勢を立て直して靴底を擦り減らしながら地面に着地。

(追撃を阻止された)

(かわしきれなかった)

一瞬の思考、のち、駆け出す。

反応が遅れれば、やられる。

だから、考えるのは一秒以下にして考える。

「「オオオオオッ!!!」」

咆哮が炸裂し、信也が左足で飛び蹴りを放つ。それに対して幸奈は右手で迎え撃つ―――と見せかけて信也の脚を抱え込み、回転して投げ飛ばす。叩きつける筈が、信也は態勢を立て直して吹き飛ばされた先の壁に着地、そのまま蹴って幸奈に向かって飛来。弾丸の如く迫る信也に幸奈はギリギリまで引き付けて飛び上がり、上空から拳で叩き落す手段に出る。目論見は成功。信也は地面に叩きつけられる。アスファルトが砕かれ、呻き声を挙げる間もなく幸奈は信也に馬乗りになり、そのまま拳を叩きつけようとする。だがその前に幸奈の首に信也の脚が組み付き、無理矢理引きずりおろす。そのままブレイクダンスさながらに逆立ちになって、踵落としを振り下ろし、それを幸奈は横に転がってかわす。

アスファルトがさらに砕かれる様子に恐怖を感じつつ、幸奈は信也を睨み付け、また信也も幸奈を睨みかえる。

(なかなか攻めきれない・・・!!)

(懐に入れない・・・!)

互いに攻めきれない事に歯噛みする。

しかし、幸奈の中にあるのは、ある意味の清々しさだった。

(ああ・・・・信也君が、私を蹴り飛ばしてくれてる・・・)

 

 

 

稲成幸奈。

彼岸花の章(リコリス)において、千景にこれまでにない程の執着を見せた少女。

だが、その本質は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に過ぎなかった。

そう、千景はあくまで()()()()。本当に幸奈が見ていたのは信也だったのだ。

幸奈にとって、信也は光だった。

親に捨てられたショックで塞ぎ込んでいた幸奈を、一番に励ましたのが信也だったのだ。だけど、それがある日、突然変わってしまったのが、千景が百合籠に来てからだった。

人が変わったように千景を虐めるようになってしまった信也を、どうにか止めたかった。

だから、幸奈は信也と対立した。そんな溝を作ったまま、幸奈はアモルに引き取られてしまった。

それから、ずっと会っておらず、また、アモルの洗脳によって、幸奈の認識を変わってしまった。

神樹によって千景の事を頭の中からすっぽりと抜かれてしまった幸奈ではあるが、それ以外の記憶はちゃんとあった。

 

だから幸奈は、ほっとした気分になっていた。

 

間違っていた事をしていた事に対する、罪。

その罰が、彼なのだと、幸奈は確信していた。

だけど、それでも、負ける事は許されず、幸奈は信也を殴らなければならない。

だから――――

(もっと、もっと私を傷つけて。私の間違いを、あなたの蹴りで正して。私を、徹底的に虐めて・・・!!)

もはや一種の被虐性質になってしまった幸奈は、信也に蹴り飛ばされるために殴りかかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

空中に無数の剣を装填し、それを一気に射出する弘。その先には、今ビルを()()()()()()()()雅の姿があった。

「喰らえッ!!」

殺到する無数の剣。それを雅は鳥、否、鳥ともいえぬ凄まじい空中機動力で全て躱し切った。

重力(グラビティ)展開(オン)

躱し切った雅は反撃と言わんばかりに自身の周囲に黒い球体を展開する。それら全てが、強力な重力によって作られた、ありとあらゆる全てを喰らうブラックホール、光さえも喰ってしまう、宇宙の絶対危険地帯。

「『重力砲』ッ!!」

それを、雅は指向性を持たせて解放。全てを飲み込む闇の光線が、弘に襲い掛かる。

「くっ!」

弘はそれを体を捻る事でかわし、ならばと思い、剣を呼ぶ。

 

大赦の計らいによって、襲撃者たちは神樹より、それぞれに合った精霊をその身に宿している。

それによって、以前よりも強力な力を振るう事が出来るようになっている。

故に―――

 

「――――『万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)』ッ!!」

 

それはシュメールの戦の神ザババが使用した、『水平線』の概念を持つ大剣。

そのサイズは尋常では無く、巨人であってもまともに振れるかどうかわからない程の巨大さを誇っていた。その本体からは、炎が複数の刀身を形成しており、まともに喰らえば、まず間違いなく消し炭にされてしまう。

「なぬッ・・・!?」

その巨大さに目を向く雅。

「薙ぎ払うッ!!」

弘が腕を振るえば、炎の大剣は、雅に向かって振り下ろされる。

「くっ、だったら――――」

しかし雅も反応が早い。

重力(グラビティ)展開(オン)―――黒刃・断割ッ!!」

閉じた鉄扇に重力を集束。光が喰われ、鉄扇の周囲が黒くなる。さらに、その範囲が拡大し、雅の体の二倍の大きさになる。

「アァァアアッ!!」

絶叫と共に、全てを焼き尽くす、暁の大剣に向かってその黒刃を叩きつける。

炎が全て黒い大剣に吸い込まれ、拮抗を生む。だが、吸い込みきれない。

「まずっ・・・・!?」

あまりのエネルギー量に、黒刃の吸収が間に合っていない。

「だったらぁ!!!」

雅は、さらに黒刃を生成、それを暁の大剣に叩きつける。

すると、『万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)』が、その勢いを弱める。

そこへ雅はすかさず『重力砲』を叩き込んで弾き飛ばす。

「くッ!?」

その衝撃に思わず吹き飛ばされる弘。だが、それで追撃をやめない弘ではない。

「扉を開けろ、宝物庫ッ!!」

次の瞬間、弘の周囲に空中に穴が空き、そこから剣の刀身がその身を覗かせる。

重力(グラビティ)展開(オン)――――重力砲ッ!!」

対して雅は無数のブラックホールを作り出し、それの標準を全て、弘に向ける。

「喰らえッ!」

「落ちろォ!」

剣と重力が、空中で衝突する。

 

 

 

 

ビルの中を、佐奈は自身の瞬足を持って駆け抜ける。

そんな佐奈に向かって、突如、壁、天井、地面から『射』の文字を備えた光の輪―――砲門が出現。

その砲門から、光の弾丸が飛び、佐奈を襲う。

「くッ!」

その計三発の弾丸を巧みな動きで全てかわして、佐奈は新幹線さながらの俊敏さを持って、ビルの廊下を駆け抜ける。

(遮蔽物、例え視線を遮ってもどういう訳か正確に私の位置を割り出して射撃してくる――――どういう事だ・・・?)

そんな中で、佐奈は考えていた。

六道家での訓練によって培われた勘と身体能力によって、どこからともなく飛来してくる射撃をかわしている。

「建物に逃げ込んだつもりが、逆に追い詰められたか・・・」

やはり、襲撃者のリーダーだからか、彼女は至って冷静だった。

「打って出るか」

 

 

しかしその様子は、あらかじめ撃ち込まれた『射』の能力によって筒抜けだった。

「来るか・・・」

狙撃銃を、佐奈が逃げこんだビルに向け、うつ伏せに倒れている海路。

彼の使う御神刀『射堕填』の能力の元である『射』の能力によって、『目』と『耳』をビルのそこらじゅうに『射』ちこんだのだ。

だから、佐奈の動きは筒抜け・・・の筈なのだが、佐奈の走る速さが尋常では無く、事実、音しか拾えないのだ。

海路の打ち込んだ『目射(もくし)』は、いわばただ映像を映し出すだけの監視カメラ。スローどころか録画も出来ないのだ。

だからこそ、海路は冷静に佐奈の姿をどうにか捉える事出来た位置に向かって『銃口』を()()()

狩るか、狩られるか、そんな勝負を、二人はしている。

接近される前に撃ち抜く事が出来れば海路の勝ち、接近する事が出来れば佐奈の勝ち、ただそれだけで、この戦いの全てが決まる。

二人の戦い方は、そんな感じなのだ。

 

 

 

 

「うぅぅぅああああぁあああ!!」

真斗が振り上げたハンマーを、白露はその俊敏さを持ってかわす。

ここは信也と幸奈が戦っている場所とは違う道路。

その路上で、真斗と白露がぶつかっていた。

真斗の力は、かの雷神の下位互換。だがそれは人間にしてみれば、十分脅威となる力。

一方の白露の力は、『虎』の力であり、密林の覇者の力。こと俊敏さとパワー、そしてテクニックにおいて、凄まじい能力を発揮する。

さらに、野性の勘も相まって、白露は、真斗の強力で速い攻撃をすべて間一髪でかわしていた。

右斜め上から振り下ろされる鉄槌を、白露は真斗の右脇に潜り込んで、その脇腹に爪を立てる。

だが、応えている様子が無い。

真斗が、あまりにも痛みに対して鈍いのだ。

だが。

「オオオオオッ!!!」

走る走る、速く走る。虎の、神速にまで達する速さでもって、真斗を翻弄する。

真斗が反応出来ない速さで、真斗の体に爪を立てていく。

だが、真斗の学習能力は、常軌を逸していた。

「そこッ・・・!」

「なッ!?」

たった五撃。それだけで真斗は白露の速さを見切って今攻撃しそうだったその右腕を掴んだ。

その反応も凄まじき事この上なく、しかし驚いたのは一瞬。このままでは右腕が握り潰されてしまう事を悟った白露は足を振り上げて、真斗の顔面に強烈な蹴りを叩き込む。

「ヴっ・・!?」

それによって真斗の手が離れ、その間に白露は距離を取る。

そして、白露は、相性の悪さを痛感していた。

(コイツ・・・雅姉に任せるべきだった・・・)

雅の能力なら、真斗に有効な攻撃を与えられるかもしれなかった。

だが、それをいまさら考えても仕方が無い。

「コイツとぶつかったのは私の運の無さが原因。でもコイツとぶつかった以上、やらないのは七つの大罪の名折れだよね!」

白露は不敵に笑って、真斗に向かって、神速を持って飛ぶ。

それに対して真斗はハンマーを振りかぶる。

雷鳴がとどろき、虎が駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

そして―――優は一方的に攻められていた。

殺気の操作によって、位置を掴ませぬ美紀は、持ち前の速さと殺しの技術を持って、優を責め立てていた。だが、硬い。

(なかなか刃が通らない・・・・)

その事実に、美紀は少なからず驚いていた。

優は、腕を交差させてその場に仁王立ちしているだけで、避けようとしないのだ。

それが証拠に、優は未だに微動だにしないのだ。

さらに、美紀が何度も斬撃を叩き込んでいるのに、優の体には、一行に傷がつかない。

まるで、その体が鋼であるかのように―――

(体は、鋼。何者にも、壊されない・・・!!)

それは実際その通りであり、優の御神刀『虚像布』の能力でもある。

椿の御神刀であった優の御神刀は、布を纏う事で、ありとあらゆる能動的行動を補助し、物理保護を促す力を有していた。

しかし、創代によって別の形に強化されたこの虚像布は、優の身体能力を、椿のものへと変化させ、さらに、その鋼の体の硬度を底上げしているのだ。

故に、優の体には傷は一切つかない。だが、椿最大の強みである『自動反撃(オートカウンター)』は、未だに発展途上であり、まともな反撃は出来ない。

だが、敵の動きを見切る時間は、ある。その打たれ強さゆえに、相手の攻撃に耐える事が出来るからこその、強み。

『覚えたかァ?』

「うん、もう大丈夫」

防御の構えを解く優。そこへ、美紀は飛び込む。

狙うは、鳩尾。誘いと分かっていても、構えを解いた瞬間であるなら、すぐには反撃出来ない筈だ。そんな即決即断する美紀故の結論だが――――相手が悪かった。

優の右の手刀が、振り抜かれる。

その瞬間、美紀の右手のナイフが砕かれ、脇腹に鋭い激痛が走る。

「ッゥ!?」

バランスを崩し、床を転がる。

「もう、動きは見切った。貴方はもう、私に勝てない」

美紀は、空手の独特の構えを取り、美紀を威圧する。

鋼鉄の体を前に、殺人鬼の刃は通らない。

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの場所で、激しい戦闘が繰り広げられている中で、拮抗する戦況。

 

 

 

 

 

 

だが、その拮抗の中では必ず、変化が訪れる。

 

 

 

 

芽吹の一撃を鎌で受け止め、飛来してくる漆黒の矢に対しては鎖で防ぐ。

されど防ぎきれず結局、動いて躱さなければならず、間に合わずに矢が体に突き刺さる。

足を貫かれ、思わず膝をつく。そこへシズクと夕海子が放った弾丸が飛んでくるので転がってかわす。

誰がどうみても、追い詰められているのが分かる。

体は何度も矢で穿たれ、その度に『鎖』で止血し、失血を抑える。だが、そのささやかな抵抗にも、限界は来る。

しかも、今度の足への矢の直撃は致命的だ。

「諦めなさい」

芽吹が、千景の目の前に銃剣の銃口を向ける。

「これ以上戦っても、無駄に傷を作るだけよ」

確かに、千景は確実に追い詰められており、とてもではないが、勝算は無いに等しい。

どの武器を使おうが、三人の銃撃と一人の弓が、千景を襲い、そして確実にその体を穿つ。

さらに、優理の能力が脅威的だった。

一瞬で別の場所へと移動してしまう瞬間移動、翼の『機関弩(マシンガンボルト)』の様に矢を無数に連射してくる射撃、さらに彼の腰に携帯された柄から出る霊子の刃。

そんな武装をした優理の存在があるからこそ、千景は追い詰められていた。

だから、芽吹は彼の降伏を推す。これ以上、戦って欲しくない。これ以上やれば、()()()()()()()()()()()

「・・・・・はっ」

だが、それに対しては、鼻で笑った。

「・・・何がおかしいの?」

「お前、考えないのか?ゲームとかよくある、()()()って奴をさ」

「ッ!?」

その言葉に、芽吹は目を見開く。

それに、千景はその笑みをさらに深めて、鎌を掲げる。

「今更気付いてもおせぇよ」

『行くわよ』

体の中で、郡が叫ぶ。そして、千景は、自身の御神刀『天鎖刈』の力を、開放する。

 

「真解―――『解限咎乃鎖』ッ!!」

 

その瞬間、千景の装束の金属防具が全て弾け飛ぶ。

天鎖刈の第二の文字は『解』。その能力は、使用者本人の限界突破。

身体能力、思考速度、五感、物理限界、人間としての限界を突破する事で、通常じゃありえない行動を引き起こす、千景の奥の手。

巻き起こる、威圧の風圧に、芽吹は思わず後ずさり、夕海子とシズク、そして優理は呆然としていた。

「・・・構えろよ」

身をかがめる千景。

「じゃないと、訳が分かんないまま終わるぞ」

次の瞬間、無数の鎖が引き千切れるかのような音と共に、千景がその場から姿を消した。次いで、風圧が巻き起こる。そして―――

「がぁぁあああ!?」

「ッ!?」

「優理さん!?」

夕海子の目の前に、優理が落下してきた。

それもうつぶせ。何かに蹴り飛ばされたかのように。

どうしてそうなったのか。そう、思考する前に、夕海子、シズクの意識が吹き飛ぶ。

「あっ・・・!?」

「何・・が・・・!?」

何が起きたのかわからず、倒れ伏す夕海子とシズク。

「弥勒さん!?シズク!?―――ッ!?」

その異変に芽吹も気付くも、二人が倒れ切る前に、芽吹も、吹き飛ばされる。

「うあああ!?」

地面を数度跳ね、夕海子、シズクの傍に倒れ伏す。

「ぐ・・ぅ・・・」

「上手く防いだな」

先ほどまで、芽吹がいた場所に千景が立っていた。

芽吹は、意識を保っている。通常、御神刀でやられたのなら、体に損傷はなく、意識だけ刈り取られる筈なのだ。その理由は、御神刀には、相手の精神体のみを斬る状態と、肉体を斬る状態の二つの形態があるからだ。

だが、芽吹は意識を保っている。御神刀の精神喪失を逃れる方法はおおまかに二つ。

まず一つ目は御神刀の攻撃を受けない。これは当たり前。二つ目は、精神が刈り取り切れない程の精神力を発揮する。

後者はほぼ不可能と言っていいが、例外がないわけではない。救導者の歴史において、御神刀の精神の刈り取りを耐えきった魔器使いは数知れない。

だが、芽吹が意識を失っていない理由は前者。寸前で千景の攻撃を防いだのだ。しかし、それでも先ほどの攻撃がかなり重かったようで、すぐには立てないようだった。

「さっきの攻撃に対応されるとは思っていなかったが、もう動けないようだな」

千景は芽吹に近付く。

「ぐ・・・」

(この・・・ままじゃ・・・・)

確実にやられる。そんな恐怖が、芽吹を襲う。

あの日、夏凜に負けて、全て無駄になってしまって自暴自棄になってしまったあの日から、今日この日まで。

芽吹は、全ての経験が無駄ではなかったと感じる事が出来た。努力は、必ず結果を見せてくれると、そう実感する事が出来た。だが、それに気付けたのは、果たして誰のお陰か。

(明日香・・・・!)

いつも破天荒で、無茶ばかりをして、バカで、諦めの物凄く悪い、防人の切り込み隊長。

だけど、誰よりも強くて、皆を引っ張っていく、頼れる存在であった。

だからこそ、芽吹は誰よりも彼を頼った。

その所為で、彼が大怪我をする事があった。瀕死の重傷を負う事があった。その度に、泣いている自分がいた。

そうだ。そうなのだ――――

(諦め・・・ない・・・!!)

諦めない。諦める訳にはいかない。

(春信さんが・・・言ってた・・・三好さんに出来るなら、私にも、出来るはず・・・・!!)

右手には、自分の銃剣。左手のすぐ傍には、夕海子の銃剣。

(借りるわよ。弥勒さん・・・!!)

突然、千景がその歩みを止めた。そして――――

「っァ!?」

飛来してきた弾丸を、間一髪でかわした。

「―――おいおいおいおい・・・」

そして、引きつった笑みを浮かべた。

そこには、芽吹がしゃがんだ状態で、銃剣を二丁構えていた。

だが、その雰囲気は明らかに違っていた。

「・・・『鬼気・極限羅刹』」

春信と夏凜にしか出来ない筈の、武術の究極系。無意識、無思考で、ありとあらゆる攻撃に対応し、反撃する、全自動戦闘を可能とする力。

それが、『鬼気。極限羅刹』。

「お前、夏凜の従姉妹かなんかか・・・!?」

「はっ、笑えない冗談ね」

千景の問いを笑って蹴って、ふと、芽吹は思う。

(こいつ・・・なんで三好さんの名前を・・・?)

だが、そう思考する前に、千景が構える。

芽吹も構える。

「・・・そういや、名前聞いてなかったな」

「・・・・楠芽吹よ。間違っても三好さんの親戚とかじゃないから」

「そうかい。俺は不道千景。救導者だ」

双方睨み合い。

(さぁて、どこまで行けるかな・・・・)

(速攻で片づける・・・)

地面を蹴る。

「来いッ!」

「行くぞッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、戦況は別の場所でも。

金属音が響き合い、大剣と刀がぶつかり合う。

冬樹が振り下ろした一撃を明日香は左の大剣で弾き、右の大剣で薙ぎ払うも、冬樹はそれを体を水平にして飛んでかわす。巨大な刀身の上を転がり、その回転のままに剣を薙ぐ。その右胴を狙った一撃を明日香は左の大剣を振りかぶった右腕の上に回して、その右脇腹を庇うように構えて受け止める。

防がれたと知るや否や、刀を引いて、距離を取る。

「ハア・・・ハア・・・」

(攻め切れない・・・)

相手の反射神経もさることながら、冬樹の動きを覚えたのか、どんどん動きが良くなってきている。

さらに、あの剣には、御神刀の力を封じる何かがあるようで、能力を使って攻撃しても悉く防がれる。

刃は能力を切り裂き、剣の腹は力を弾き返す。

ただ、御神刀そのものは切れないようで、どうにか拮抗を保てているものの、このままでは、動きを完全に追い抜かれて負ける。ならばどうする?どうやったら相手に勝てる?

「・・・・これしか、ない」

冬樹は、刀を、御神刀『水誠刀』を正眼に構える。

「?」

その行動に首をかしげる明日香だったが。

 

「真解―――『水底之武士(みなそこのもののふ)』」

 

冬樹が羽織っていた浅葱色のだんだらが水となり、その下にはノースリーブの浴衣のような服装と、手甲、脛当てのみとなり、その手にある刀は、先ほどまでとは違う、刀としての美しさを放っていた。

「なん・・・っだ・・・!?」

その、異様さに、明日香は武者震いを止められなかった。

(すっげぇ・・・)

同時に、感激した。これほどまでに、凄い存在と戦えることを――――

「―――行くよ」

そう一言呟いた瞬間、明日香は身の毛のよだつような殺気を覚え、慌てて大剣を掲げた。

次の瞬間、明日香は空中に投げ出されていた。

「―――な!?」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。だが、明日香は本能のままに大剣を振るった。

返ってくるのは、熊にでも殴られたかのような衝撃。

同時に、明日香の右腕は大きく跳ね上げられ、さらに空中で躰を回される。

「ぐぅお・・・!?」

そのまま、ただ本能のままに剣を振るい、()()()()()()()()()()()()()()()()全てを防いだ。

そして、地面に落ちて、すぐに立ち上がる。

「―――――次元超越―――」

だが、冬樹は、すでに明日香の懐に潜り込んでいた。

「しまっ――――」

「―――『三武斬』」

頭上、右、左からの、()()()()()()

ほぼ同時に飛んでくる三撃の斬撃が、明日香を襲う。

「ぐ――ぉあ!?」

しかし、明日香の超人的身体能力は、その三撃の隙を見つけて、どうにかそこに飛び込んで躱した。

地面を転がり、しかしすぐさま立ち上がって冬樹を睨みつける。

(何が起きやがった・・・!?)

明日香には、訳が分からなかった。

先ほどの、完全同時の斬撃。

三発連続でやるならわかる。だが、あの攻撃は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

まるで、別々の次元から攻撃してきたかのように――――

「―――真解。私達、の、力を、あげる、御神刀の、もう一つ、の力。さっき、まで、私、は、水、を操っ、て、いたけど、今の私は、『武士』、の、力も、ある」

 

冬樹の真解。

それは、『武』。

その文字は、冬樹の『武術』を根底から底上げし、冬樹の剣技を極限以上に高める事が出来るのだ。

それが証拠に、彼女は今、()()()()()()()()()()()()()

それが、あの完全同時攻撃。次元すらも超越して、別の三つの次元、および可能性から三撃同時に明日香に向かって攻撃したのだ。

 

「・・・へへ」

その答えに、明日香はどういう訳か、笑った。

「つまり、さっきの攻撃は、異能とは全然関係ねえんだな・・・だったら尚更面白えじゃねえか」

「・・・貴方、今、の、状況、分かって、るの?剣技、じゃ、私、には、かなわ、ない」

「そんなのやってみなきゃ分かんないでしょーが」

「やら、なくて、も、無駄、諦め、て」

「へっ」

冬樹の言葉を鼻で笑い、明日香は言い切る。

「諦めないのが、俺の勇者道だッ!!」

明日香は、突然、右手の大きい方の大剣を投げ捨てる。

「!?」

それに目を見開く冬樹。しかし明日香はそんな冬樹を置いて、左手の剣を右手に持ち変え、自身の目の前で水平に構え、その刃に左手を添える。

「ふぅー」

深呼吸を一つ。そして、自分の中をめぐる力の存在を感じ取る。そして、その循環を早め、増幅させ、やがて――――

 

 

――――表に出す。

 

 

「ッ・・・!?」

突然、明日香の姿が変化し、剣を持っていた右手を中心に、何か、がうごめく様に黒い痣が右腕を覆っていた。さらに、こころなしか右肩甲骨あたりから悪魔の羽のようなものが片翼、突き出ていた。

そう、その姿はさながら――――悪魔だった。

「・・・・この、際、その力の事は、聞かない」

「おう。実は俺もこれがどういうものかあんま理解してないんですわ。でもまあ・・・・」

身をかがめる剣を持った右手を引く明日香に対して、冬樹はすぐさま正眼に構える。

「この力で、お前を倒すッ!!」

「やって、みろ・・・!!」

明日香が飛翔する。冬樹が地面を駆け抜ける。

まるでロケットのように突き進む明日香に対して、冬樹は弾丸のように。

刃と刃がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

爆発する槍を振り回し、真武郎は将真の放つ土の攻撃を凌いでいた。

「どうした!?その程度か!?」

「ったく、俺君たちより年上なんだけどなッ!?」

飛来してきた岩の弾丸を飛んで躱し、突きあげるかのように盛り上がってくる土の拳を槍の穂先で爆破して砕き、砕けた土がまた真武郎に向かって飛来してくる。それをさらに槍を振り回して破壊しても、今度は銃剣の銃弾が飛んでくる。

「チッ!」

それをどうにかという事で防いで、地面に着地する。

「このままじゃ埒があかない・・・」

数の不利もさることながら、相手の技量も高く、能力も強力だ。このままでは、確実に負ける。

ならばどうするべきか。

「やるっきゃないでしょ・・・」

しゃがんでいた状態から立ち上がり、真武郎は槍を改めて構える。

一方の将真たちの方では。

「ま、まだ降参してくれないのぉぉおお。もうやだぁあああ」

雀は相変わらず涙目で喚いていた。

「ぬう。ここまでしぶといとは・・・」

将真も細い目をさらに細めて真武郎を睨みつける。

「でも、確実に押して言ってるよ。このまま行けば、きっと勝てる」

昴は、恐怖を振り払うようにそう言いながら、銃剣を構えていた。

だが、そう警戒している間に、真武郎は、この御神刀『爆撃槍』の力を開放する。

 

その瞬間、周囲を熱気が叩く。

爆撃槍の真解は、使えばここら一体が更地になってしまうほど強力で、だからこれまで、一度も使用してこなかった。そして、今回も使えば、その近くにいる千景や冬樹だけでなく、信也たちまで巻き添えを喰らってしまう。だから真武郎は、この御神刀の真解を使わない。

だが、()()()()()()使()()()()とは言っていない。

爆撃槍は、大軍使用で、殲滅力に優れている。放てば、そこにいる者たちを纏めて一網打尽に出来る反面、仲間まで巻き込んでしまうデメリットを背負っている。故に、真武郎は、動きながら戦った。

出来るだけ、二人から離れられるように。

「悪いな・・・お前らはここでリタイアだッ!!」

「ッ!」

将真が慌てて土で壁を作ろうとする。

「無駄だァ!!」

真武郎が叫ぶ。そう、それはまさしくその通りだ。

打ち込めば、ひとたび轟音と共に、全てを吹き飛ばす。

 

「標的確認、方位角固定―――我は全てを吹き飛ばし、全てを消し去る者、故に我は不滅也――――

 

 

―――核爆弾頭(アンクリア・エクスプロージョン)』、吹き飛びなァッ!!!

 

瞬間、真武郎がいた廃工場周辺が、吹き飛ぶ。

それは、核にも等しい爆発であり、しかし威力は抑えていたためか、千景たちの所まで広がらず、ただ、そこにあるもの全てを吹き飛ばした。

だが、一つだけ、真武郎が覚悟していた事があった。

 

それは、自分も爆発に巻き込まれるという事を――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真武郎が引き起こした爆発によって、地面が揺れる。

些細なものではあるそれは、信也と幸奈には関係無かった。

「ああ!?」

顔面を蹴り飛ばされ、建物の壁に叩き付けられる幸奈。

「く・・・・ぁ・・・」

蹴られた胸の前で腕を交差させる幸奈。立っているのがやっとなのか、足ががくがくと震えている。

一方の信也は・・・・

(な、なんだ・・・この気持ち悪い感覚は・・・)

蹴る度に、何故か幸奈の口から悲鳴ではなく嬌声のような声が漏れてるのだ。

「は・・・ぅ・・・ぅぁあ・・・・」

実際それは事実で、幸奈は悦んでいた。もはや変態である。ついでに言って折角の雰囲気が台無しである。

「ッ・・・」

(そうそうに片づけないとまずい事になりそうだ・・・)

そう思い、すぐに攻撃を仕掛けようとするが。

「だめ・・・・」

「ん・・・?」

「これじゃあ、ダメ・・・私は、まだ・・・・罪を・・・」

気付けば、無風だった筈の周囲に風がそよいでいた。その風は、だんだんと強さを増していき、同時に、肌寒さを増していく。いや、実際に()()()()()()()()()()()

「な・・・!?」

それに驚く信也だが、幸奈はすでに準備を終えていた。

 

「来なさい―――『スリュム』」

 

吹雪が吹き荒れ、幸奈の姿が変化する。

「―――ッ!?」

「ごめんなさい信也君、でも私は、戦わないといけないの・・・!!」

吹雪が吹き荒れる。息を吸う度に、肺が凍りそうになる。それほどまでに、空気が冷たいのだ。

息が白くなる。体に霜が降りる。手がかじかむ。このままでは、凍傷になってしまう。

「幸奈・・・」

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

幸奈は、殴ってこない。しかし、彼女を中心に吹き荒れる吹雪は、信也を徐々に凍らせていく。

そんな、泣いている彼女を前に、信也は・・・・

「――――そうかよ」

右足を前に出して、叫んだ。

 

「真解―――『炎帝之蹴馬(えんていのしゅうば)』」

 

突如として信也の足元から炎が舞い上がり、火柱となって立ち上る。

信也の御神刀『剛蹴脚』の第二の文字は『炎』。

自身の前に立つ全てを、蹴って焼く、二段構えの攻撃方法を手に入れる。

ついでに、炎のエネルギーによって、攻撃の威力もあがり、その威力は、岩盤をも溶かし砕く。

装束が変化し、黒かったコートが赤くなり、ロングブーツからは、炎がゆらゆらと燃え続けていた。

「しん・・・や・・・く・・・・」

「俺にだって、譲れないものの一つや二つはあるんだよ・・・だから覚悟しとけよ、幸奈」

信也は、幸奈に向かって指を突き付ける。

その、死刑宣告とでも言わんばかりの言いように、幸奈は、胸を抑える。

吹き荒れる吹雪の中で、真っ赤な炎が燃え上がる。

それはまさしく命の輝きであり、信也は、今、魂を燃やしてそこに立っていた。

信也が地面を蹴り、幸奈に向かって、その脚を振り下ろす―――

 

 

 

 

 

 

それぞれが、それぞれの思いを持ってぶつかり合う。

 

 

 

あまりにも全力で戦っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その様子を、眺めている者が一人。

 

 

 

 

 

「つくづく、人間というものは醜いですねぇ。同じ目的を持ったもの同士で戦うなんて、おろかにも、程があります。そう思うでしょう?救導者の巫女、神代奏さん?」

激戦地より、遠いビルの上で、黒いドレスに身を包み、仮面をつけた、金髪の女性。豊かに膨らんだ胸や、躰のラインは、身体にぴったりとくっついたドレスの上からでも十分に見え、扇情的とまで言えた。

だが、そんな事は関係なく、奏は、彼女と対峙していた。

「貴方が、千景君が言っていた、敵の幹部の一人、『憎悪のヒュアツィンテ』ですね」

「ええ。私こそが、マギアルクス様の忠実なる(しもべ)にして、罪の名を与えられた、使徒の一人、ヒュアツィンテです」

仮面の奥で、ほくそ笑むのが分かる。

「ああ、憎い、憎いです。何故このような醜い争いをする生命体がいるのでしょうか?どうして人間などという害虫がこの世を跋扈しているのでしょうか?私にはそれが理解できない。故に私は憎い。この人間という存在が。私も、人間と同じ姿をしている事がこれ以上な程に忌々しい。貴方に分かりますか?私のこの身を焦がすような憎悪を」

「分からないし、知りたくもないわね」

「あら、そう」

瞬間、奏に向かって、いつの間にか真っ黒な剣が飛来してきていた。

「ッ・・・!」

思わず体が硬直する。しかし、その刃は奏に届く事はなく、寸前で弾かれてしまう。

「ふふ、驚きましたか?貴方が、貴女方が信仰する神によって守られている事は知っています。私程度の力では、その結界を破る事は出来ませんからね」

ふふ、とまるで子供のように笑うヒュアツィンテ。

奏の周囲には、『完全防御』『絶対不可侵』『不朽』『不滅』などの文字が無数に空中にあらわれ、それがバリアのように展開されていた。

仮面の奥で、笑っているのかは分からないが。しかし、奏は直感していた。

(こいつ・・・笑っていない)

この女から、笑ってる時に感じる、陽気な感覚がしない。むしろその逆。全てを圧し潰すかのような、冷たく、深海のような場所にいるかのような、そんな威圧を感じていた。

そう、これこそが、深淵の如し憎悪。ヒュアツィンテに与えられた、『憎悪』の名の通り、彼女は、憎悪のままに、感情を燃やしていた。

「ああ、忌々しい、忌々しい。人間がこんなにもいるというだけで、こうも胸糞が悪くなるとは、思いも寄りませんでした」

美しいとさえと言える、夜景を見下ろしながら、呪詛ともいえない呪詛を吐くヒュアツィンテ。

「・・・何故、貴方はここに来たの?」

奏は聞いた。そこまで人間を憎んでいるなら、その眼に納める事さえも嫌う筈だ。なのになぜ、彼女はここにいるのか。

その問いに、彼女は―――

「さて、なんででしょうね」

そう、あっけらかんと答えた。

「そう・・・」

あくまで、答えない。

「貴方こそ、まさかそんな事を聞く為にここに来たんですか?」

「冗談、単純な話。貴方が彼らを攻撃しようとしたらそれを阻止する為にここに来ただけよ」

「ふぅん、私を止めに・・・・具体的にはどうやって?」

「こうするのよ」

奏が答えた瞬間、突如、ヒュアツィンテの周囲に、『拘束』『束縛』『不動』などの文字が出現し、光の檻としてそこに展開された。

「これは・・・」

「創代様特製の檻よ。そう簡単に出られるとは思わないでね」

「なるほど。これは力づくでは出られそうにありませんね」

檻の壁に触れ、そう結論付けたヒュアツィンテは、大人しくその場に座った。

「良いでしょう。ここで楽しく傍観させていただきます」

「そう・・・」

意外にもすんなりと大人しくなった彼女に、奏は違和感を覚えつつ、千景たちのいる方向を見た。

(これで、いいのよね・・・千景君)

ヒュアツィンテは気付かない。

 

 

その結界に、『集中肉体調査』という文字がある事を。

 

 

 

 

 

戦いは、まだまだ続く。




次回『負けず嫌い』

皆、負けたくないから。



ヒュアツィンテ―――とある花の、とある国での呼び方。その花言葉は――――
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