不道千景は勇者である 作:幻在
上里ひなた。
足柄辰巳の恋人にして、辰巳が生涯、唯一愛した少女である。
三百年前、百年の停滞の為に火の海へその身を投げ出した巫女であり、巫女でありながら勇者と同じ『精霊』を使う事の出来る唯一の人間でもあった。
その少女が、今、千景と園子の前に立ちはだかっていた。
「そんな・・・」
「三百年前の敵の神が要求した生贄・・・その理由は自らの戦力の増強だと俺たちは予測している・・・くそったれな事をしてくれぜ、異世界の神とやらはよ・・・」
マジに切れているのか、千景の額に青筋が浮かび上がっている。
『本当に許せない・・・』
それは、郡も同じだった。
かつて、共に戦った仲間の一人であり、友達でもあった少女を、このような事に使うなど。
しかし、一方のひなた―――ヒュアツィンテは、何のことだがさっぱりなのか首を傾げていた。
「先ほどから、何を言っているのでしょうか?上里ひなた?誰ですか?それは」
「あんたの本当の名前だ」
「なんとも笑えない冗談ですね。私が『上里』?あの罪深き、多くの罪と血を被ってきた一族と同じ名前なんて、へどが出ますね」
「ッ・・・・」
その返しに、千景は歯噛みする。
彼女は、ひなたという名前ではなく、上里という苗字の方に注意がそれている。名前なんてどうでもいいかのように。そして、その苗字を忌み嫌うかのように。
「本当に、虫唾が走りますね。貴方たちに人間に、まさか仮面を破壊されるなんて。ああ、憎い、憎いです」
黒く艶やかだった髪は、麦畑のような黄金色に輝いて風に靡き、その瞳は憎悪を映す。
かつて見た、彼女の面影はなく、その誰にでも向けていた慈母のような笑顔は、もはや、憎悪に塗り潰されていた。
「あ、あの・・・」
ふと、園子が彼女に話しかける。
「乃木若葉・・・高嶋友奈・・・土居球子・・・伊予島杏・・・足柄辰巳・・・白鳥歌野・・・この名前に、覚えはありませんか・・・?」
それは全て、勇者の名前。初代に活躍した、勇者たちの名前だ。
彼女が上里ひなたであれば、それに多少の反応は見せてくれるだろうか。
それとも――――
「くどいですよ」
ああ、と千景は思ってしまう。
「どれも憎き勇者と名乗っている
やはり、彼女は、何もかもが憎悪で塗り潰されている。
「う・・・あ・・・」
彼女の放つ圧倒的憎悪に気圧されて後ずさる園子。
「無駄だ」
その後ろから、千景が前に出る。
「今のあの人は記憶が抜き取られている状態だ。おそらく人格そのものを抜いて、そこから別の人格を植え付けたんだろうが・・・本当に、ひでぇよ」
あまりにも、彼女の笑顔は憎悪に包まれていた。それはすなわち、彼女の行動原理は憎むことであり、彼女の戦う力もまた憎悪だという事。
「今は戦うべきだ。その上で、抑え込んで記憶を取り戻す。今の行動目標はそれとしよう」
千景はその手に持つ鎌を構える。
彼の体からあふれるのは怒気。憎悪とは違う、純粋な怒りを込めた感情を、彼は体から滲み出していた。
その矛先は、目の前にいる
その奥、もっと深くにいる、全ての元凶。
そうだ。
もとより、自分は、その為にここに立っている。
友人を脅かす者、師の想いを踏み躙り、その願いを奪おうとする者、そのあまねくすべてを排除する為に、自分はあの日、この槍をとったのだ。
もう園子に迷いは無い。
(あの人に対抗するには、これしかない)
突如として、園子の体が光りだす。
「これは――――」
その光に、ヒュアツィンテは顔をしかめる。
そして、千景は、その光の正体を知っていた。
その力の名は――――
「――――『満開・
光の中心に立つ園子の装束は大きく変わり、さらに武装も変化していた。
槍の穂先は無数の刃で構成され、さらに彼女の周囲に浮遊するものも刃。
その数は大が十本、中が十二本、小が二十本、合計三十二本もの刃が彼女の周囲に展開されていた。
「・・・準備、良いよ」
園子は、ヒュアツィンテを睨みつけて、槍を構える。
「手数で来ますか・・・いいでしょう。ならば私は力で押し通るのみです」
彼女の持つ刃、否、剣は八本。
その一撃が、破壊力抜群の威力を持つ剣を持って、ヒュアツィンテは・・・ひなたは彼らを殺す気でいるのだ。
すでに戦いの準備は整っている。
ならばあとは、ぶつかるのみ。
合図、待たずして、三人はぶつかった。
筈だった。
「――――ひなたぁぁぁああぁあああぁぁあぁああ!!!」
その間に割り込んで、落ちてきた一人の男がいた。
「え!?」
「なんですか・・・!?」
「・・・遅い」
その男を、千景と園子は知っている。
そして、本来なら、目の前にたつ彼女も知っているはずの男。
今は三百年の時を経て老け、しかしその強さは健在の、初代勇者最強の男。
足柄辰巳。
「
「俺が呼んでおいた」
「なんで!?というか
園子の渾身のツッコミを無視して、千景は辰巳の後ろ姿を見る。
その後ろ姿からでも分かる通り、彼は今、とてつもなく憤っており、そして、困惑している。
「・・・なんでお前がここにいる?」
「はて、なんでと言われましても、それはあなた方が一番分かっているのではないでしょうか?」
ひなたは心底不思議そうに首をかしげる。
(足柄さんを使って記憶に揺さぶりをかけようと思ったが、姿を見ただけじゃダメか・・・?)
心の中でそう思案しつつ、千景はそれでもひなたを見据える。
「どういう事だ?」
「はあ・・・・これだから罪深き人間どもは・・・もはや私たちがここに来た意味さえも見出せないなんて・・・・」
その目は本当に憐れむようで、そして、嘲るような冷たい視線を放っていた。
「そういう事を言っているんじゃない・・・なんでお前が・・・・ひなたがそこにいるんだ!?」
次の瞬間―――辰巳の腹を黒い剣が貫いた。
「ぐぼあ!?」
「
「くどいですよ」
鮮血をまき散らして吹き飛び、やがて地面に落ちる辰巳。
その様子に顔を青ざめながらも駆け寄る園子。
その一方で、千景は案の定という感じでひなたから一瞬外してしまった視線を戻す。
「ひなたひなた、と・・・一体誰の事ですか?もしかして私ですか?なら心底不愉快です。なぜ、私の知らない名前で私を呼ぶ意味が分からない上に、人間如きにそんな名前で呼ばれなければならないのですか?理解不能です」
本当に、本当にうんざりとでも言わんばかりに、ごみを見るような目でひなたは倒れ伏す辰巳を見下す。
しかし、その目はすぐに驚嘆へと変わる。
「あら?」
それもそのはず。なぜなら辰巳の体は、その体質が空想上の生き物である『竜』そのもの。
その再生力は人間を凌駕し、その生命力はそこらの生物とは比べ物にならない。
そして、そのスケールが大きい分、その数分の一サイズである辰巳の体にその力が収まっているのだから、その生命力や治癒力は過剰に発揮される。ゆえに、ひなたが与えた
「あら、確実に仕留めたと思ったのですが・・・・ああ、そうですか。あなたが足柄辰巳ですか」
ひなたは思い至るように呟き、
「あの、三百年生きてなお死ねない哀れな
もはや、ひなたの頭の中では辰巳は人間と認識されてすらいない。
(残酷、だな・・・)
最愛の人であるはずの人に、人間ではないもの呼ばわりされる気分は、さぞ最悪な事だろう。
もはや、裏切られたと思えるレベルで衝撃的だ。
(でも、だからこそ・・・)
辰巳は、どうにか起き上がろうとしている。
「
「ぐ・・・だが・・・・」
「諦めてください」
「「!?」」
ふと、辰巳とひなたの間に、千景が立つ。
「あなたは・・・!?」
「お前・・・」
「もう、上里さんの記憶を取り戻すのは現状では無理です。ここでは戦って倒し、かつ拘束するべきが賢明かと思います」
鎌を構える千景。
「今は戦いましょう。そのうえで記憶を取り戻すというのなら勝手にしてくれていいです。ですが、それで俺は止まりませんよ」
その言葉に、辰巳たちは茫然とする。
「・・・しっかりしろ。足柄さん」
「・・・・!!」
千景のつぶやきに、辰巳は目を見開き、やがてすっと立ち上がる。
「
「その通りだな・・・ありがとう。いいかつが入った」
辰巳は、背中の剣を引き抜く。
かつて、辰巳とともに、いくつもの苦難を乗り越えてきた、彼の愛剣、滅竜剣『バルムンク』。
その神秘は、いまだ保たれ、三百年たっても錆びず欠けずのその剣は、それ相応の輝きと威光を放っていた。
今の辰巳は勇者ではないが、それでもその身体能力は勇者のそれに匹敵する。
「構えろ園子。今までの相手とは勝手が違うよ」
「・・・うん。
園子も、槍を構え、敵を見据える。彼女の周囲には無数の浮遊する刃が浮かんでいる。
「ふふ、たかが三人で私の相手を出来ると思っているとは、本当に、貴方たち人間は私を不愉快にさせてくれますね」
その笑みからは考えられない程の殺気と憎悪を感じながら、千景、辰巳、園子はひなた―――ヒュアツィンテと対峙する。
一方で―――実は、先ほど襲い掛かってきた完成型バーテックスたちではあるが、
「まあ、そんな上手くいくとは思っていなかったけどね」
そう一人呟きつつ、幸奈は、新たに壁の穴から入ってくる完成型をみすえる。
「第二ラウンドといったところか」
「敵はすでに奴らを吹き飛ばした奴らを抑えているはずだ。しかし・・・・」
問題は、その完成型バーテックスの数だった。
十二星座に加え、さらに増えているのだ。
他のバーテックスよりもさらに巨大で、鯨のように巨大な鯨座―――ホエール・バーテックス。
その上に、人影のようなものがあり、丸い盾とハルパーを持った甲冑を来たペルセウス座―――――ペルセウス・バーテックス。
その傍らには翼をはやした馬のペガスス座――――ペガサス・バーテックス。
さらには巨大な熊のおおぐま座――――ベアー・バーテックス。
などなど、大量の完成型バーテックスたちが存在していた。
「前までは奴らを守る側だったのに、今じゃ、倒す側なんてね」
なんという皮肉か。しかし、不思議と悪い感じはしない。
「私たちに封印の儀は行えない・・・でも、それなら中の御霊ごと破壊すればいい」
佐奈の言葉に、他の襲撃者も頷く。
「今や神樹と契約して、その恩恵である精霊を使えるようになった。ならば、その力を存分に振るわせてもらうぞ!」
「もう僕たちには戦う以外の選択肢なんてないからね」
「うう・・・倒す、全部、全部ぅぅう!」
「もう間違えないよ。みんな、切り刻んでやる!」
「ええ。絶対に守るわ・・・それが、私の贖罪だから」
そう、それぞれの意気込みが呟かれたあと、佐奈の号令と共に、襲撃者たちがその身に精霊を纏う。
「行くぞぉ!」
「ぶっ壊せ―――『スリュム』!」
「威厳を示せ―――『ギルガメッシュ』!」
「つぶす―――『トール』!」
「やっちゃうよ―――『ジャック・ザ・リッパー』!!」
「我に力を――――『アタランテ』!!」
それぞれの装束が変化し、人ならざる力が宿る。
幸奈が宿すは、かつて北欧の神々に反逆せしめし、霜の巨人の長。
弘が宿すは、世界最古の王にして、この世の財宝全てを牛耳る英雄。
真斗が宿すは、雷の神にして、凄まじい力を有する闘神。
美紀が宿すは、かつて倫敦の街を恐怖に陥れた、世紀の
佐奈が宿すは、神に拾われ、ギリシャ最高の狩人となった、神速の女狩人。
それぞれがそれぞれに見合った精霊を宿し、五人は今、強大な敵に立ち向かう。
さらに、開幕速攻で佐奈が大技を放つ。
「――――『
撃ち放たれた二本の矢が天上にまで飛び、そこから無数の矢の雨を降り注がせる。
それが全てのバーテックスに直撃し、その装甲を削っていく。
「先制はとった!各自、それぞれのバーテックスを仕留めろ!」
『了解!』
そして、彼らはぶつかっていく。
「ば・・・ばかな・・・・」
地面を転がる機械人間を見下しながら、春信は刀を払う。
勇者のそれよりも防御力は低く、力もない。しかし、敵を殺すには十分な力を持つこの刀と装束は、敵の幹部を余裕であしらう程の恩恵をもたらしてくれた。
だが、春信に喜びはない。
「次はどこにいる・・・?」
「な!?ちょ、きさままて―――」
もはや鉄くずと化した敵の頭部を踏み砕いて殺し、春信は次の敵の元へ走る。
味方の合流はともかく、今は一人でも敵を減らすべきだ。
その判断の元、春信は走る。
追いかけてくる炎。
まるでこちらを呪い殺すといわんばかりにしつこく追ってくる。
「最悪ね!私たちにはあれに対抗する手段がない!」
「そう思うならそれなりの作戦考えてよぉ!」
今度は樹がワイヤーを使ってスパイダーマンよろしく三次元的ににげているのだが、まるで鳥の群れのように炎は空中にまで追ってくる。
ただ、風は空中で、その目に与えられた全てを見切る目をもって、炎を操っている犯人を捜していた。
(こんだけ精密に追いかけてくるなんて、普通はありえないわ・・・きっとどこかに炎を操っている奴がいるはずよ・・・・!)
逃げるのを樹に任せながら、風は敵を探す。
「あ・・・!?」
「え・・・」
しかし、とあるビルの所を曲がろうとした所で、先回りされたのか、目の前から炎が襲う。
「しまっ・・・・」
樹は、その事実に思わず硬直し、反応が遅れてしまう。
そのまま、炎が、樹と風を飲み込んでしまう・・・・その直前に、水を纏った何かが、樹と風を攫う。
「がぼぼぼぼ・・・!?」
「んごあ・・・!?」
いきなりの事に気が動転してしまう二人。
しかし、そのおかげで炎に呑まれるのは回避され、そのまま、ビルの屋上に投げ出される。
「げほっ、ごほっ・・・!」
「がはっ・・・た、助かった・・・」
「大、丈、夫?」
彼女たちを助けたのは、薄水色の髪をした少女だった。
「え、ええ・・・ありがとう・・・貴方は・・・」
「貴方、たちの、事は、聞い、てる。私、は、水霜冬樹。貴方、達、の、味方」
そう、冬樹が説明した直後に、逃げた三人を追いかけるかのように炎がビルの淵から飛び上がって、上から襲い掛かってくる。
「無駄」
冬樹が、水の壁を作り、炎を防ぐ。しかし、炎はその壁を蒸発させんばかりにその勢いを強める。
しかし―――
「無駄」
冬樹は、その壁に向かって突きを叩き込む。すると、水の壁から水弾が発射され、炎の勢いが僅かに弱まる。
「無駄」
再度、突く。
「無駄、無駄・・・」
その速度は徐々に上がっていき――――
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄――――無駄ァ!!」
どこぞの高慢でプライドが高くて頭脳明晰なくそったれな吸血鬼の如き水弾のラッシュを炎に叩き込み、炎を完全に霧散させる。
「すっご・・・」
「わあ・・・」
何故かやりきったと言うかのように誇らしげな顔をする冬樹と、その圧倒的な光景に唖然とする風と樹。
「そこ」
「え?私?」
するといきなり冬樹が風を指差したかと思うと、
「探して」
それを促した。
「え・・・ああ!」
「私、が、おさえ、とく」
「諒解!えっと冬樹だったっけ?よろしく頼んだ!」
風はビルの縁に立つと、すぐさま魔眼の力を開放した。
必ず、どこかにいるはずだ。だから、この高い場所へ来たのだ。
「無駄ァ!」
再度、勢いを取り戻して三人を襲う炎を、冬樹が抑える。
その間、風は必至に敵を探す。
「お姉ちゃん、頑張って・・・・!」
そんな姉を、樹は静かに応援する。
(どこだ・・・どこにいる・・・・)
とてつもなく高い動体視力と視力を有する今の風なら、ここら一帯の景色を全て見通す事など造作もない。
故に・・・
「いたぁ!」
「じゃあ、行こう」
「へ、まだ心の準備がぁぁあああ!?」
「うわぁああああ!?」
風の報告を聞くや否や、冬樹が二人を抱えて、ビルの屋上から身を躍らせた。
「どこ?」
「ああ、もう!十一時!あのビルの上ぇ!」
「分かった―――『
すると、冬樹は水を纏い、一気に風が指差した建物の屋上へ一気に飛んでいく。
そして、その建物の屋上に激突し、冬樹は、その屋上にいた女性を睨みつける。
「・・・・お前が、炎を操って・・・」
そのゴシックドレスに身を包んだ赤髪の女性を冬樹は睨みつける。
「・・・不敬よ、
冷たい声が響く。
「この火刑のレジーナ様を、そんな目で見るなど不敬。不敬罪で、焼き殺してあげるわ」
「あいにく、私、は、燃や、され、ない」
刀を構え、冬樹は言い返す。
「チッ、人間風情が・・・」
「あんたね・・・さっきから私たちをしつこく追い回していたのは・・・お陰で焼き鳥になる所だったじゃない!」
「お姉ちゃん・・・その例えはどうかと思うよ・・・?」
うがー、っと怒りをあらわにする風に樹は呆れつつ、しかしそれでもレジーナに対する敵意はむき出しにする。
「ふふ、不敬不敬、ふけーい。だから、今ここで死ね!」
レジーナが鞭を振るう。すると、背後から巨大な火球が出現し、それが冬樹たちに向かって叩きつけられる。
豪炎が舞い上がり、三人を包み込む。
「ふふ」
その光景に、思わず笑ってしまうレジーナ。だが、
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
「
「やぁあああ!!!」
水弾の連発によって対応する冬樹、半ば狂乱状態で剣を振り回す風。そしてワイヤーによって風を巻き起こして炎をどうにか凌ぐ樹。
「なんッ・・・」
「まぁた私の樹を焼き鳥にしようとしてくれたわねぇ!許さない!もう許さない!今の私の精神状態は樹が声を奪われて暴走した時と同じよ!今すぐぶっ殺してやるぅ!」
「・・・・あれ、この人こんな人だったっけ?」
「たぶん、ありえない事が連続で起きたからおかしくなってるんだと思います」
暴走している状態の風に引いてしまう冬樹と樹。
「・・・・はっ」
その様子を、嘲笑おうとするレジーナ。しかし、
「次に貴方は『たかが私の炎を凌いだからっていい気になるんじゃないわよ』という!」
「たかが私の炎を凌いだからっていい気になるんじゃないわよ!・・・・ハッ!?」
なんと、樹がレジーナの次の言葉を当てたのだ。
「おおー」
それに冬樹が驚いて感心する。
「さらに貴方は『どうして私の次の言葉わかったのよ』というでしょう!」
「どうして私の次の言葉が分かったのよ!?・・・ハッ!?」
思わず自分の口を覆うレジーナ。
「どうしましょう・・・ただ漫画のネタを使ってるだけなのに、とても楽しんですけどこれ」
「うん、羽目、を、外し、過ぎない、ように、ね?」
何故か笑いを抑えきれない樹。
「こ、このぉ・・・」
怒りに体を震わせるレジーナ。
「怒りますか?ならそれで結構!人は簡単に怒りを抑え込めませんからね!逆にこっちは予想が当たってとってもハッピーな気分でこの戦いを楽に勝てそうにです!」
もう半ば調子に乗っている樹。
「いいわ、いいわ、もう怒ったわ・・・お前たち全員、不敬罪で全員死刑にしてやるッ!」
「やれる、ものなら、やってみろ」
「がぁあああ!死刑になるのはお前の方じゃぁぁああ!!!」
「いくらでも貴方の心の中なんて呼んでやりますよ!占い師舐めないでください!ヘルトゥーユー!」
各所にて、戦いが巻き起こる。
「みんな・・・」
戦場の外れにて、奏は、戦いを見ていた。
「心配?」
その傍らには、街に出現した兵器の操作に集中している雅がいた。
「ええ・・・とても・・・」
「そうよね・・・何せ、戦うのは貴方たち巫女ではなく私たち救導者・・・いいえ、戦う力を持つ者たちだからね」
雅は、思い出すかのように、そう呟く。
「・・・私も、戦う事が出来たなら、ていつも思っています」
「知ってるわ」
「でも、私には私の役割があって、彼らにも、与えられた役割がある・・・・それを考えると、その役割を与えられた責任というものを守らなければならない。だから、私はここにいるんです」
「・・・そっか」
納得したように、雅は前を向く。
突然、目の前に何かが落ちた。
「・・・!?」
「何・・・!?」
それによって巻き起こった風圧をその身に受けながら、二人は、目の前に現れた存在に驚く。
「・・・・あーらら」
「これは・・・!?」
それは、バーテックス。
どの星座、文献にも載っていない、さらに全く異質なバーテックスが、そこにいた。
「キルルルル・・・」
青い双眸、人のようにも見えるその手足は同じ長さであり、その全身は他のバーテックス同様、真っ白。口はギザギザ、人とは思えない顔に、その背中には円錐のような突起物が縦四つ横二列に並んでいた。
「とうとう気付いたか」
「ええ、そのようですね」
雅は、今、その力のほとんどを兵器の操作に割いている。故に、戦闘に参加する事は出来ない。
さらに奏は非戦闘員。
即ち、絶体絶命なのだ。
だというのに、二人は、酷く落ち着いていた。
一方のその正体不明のバーテックスは、そのギザギザの口を開ける。その中から現れたのは、砲門。赤い光が収束し、今、まさに雅たちに打ち込まれようとしていた。
しかし、それが発射されるまえに、そのバーテックスの周囲に突如出現した光の陣から放たれた砲弾によって、滅多撃ちにされる。
「ナイスよ、海路」
雅の言葉に答えるように、そのバーテックスと二人の間に、一人の男が降り立つ。
「敵性個体、仮称を『キルル・バーテックス』とします」
「それ鳴き声よね?」
「だって面倒くさいんですもの」
「そうか・・・まあいい」
奏の言葉をあえて無視して、海路は、目の前の敵―――キルル・バーテックスを睨みつける。
「結構強いわよ?」
「分かっている。お前たちはそこで見ていろ」
「あ、そう、使うのね」
雅のその問いに、海路は、言葉の代わりに行動で返事をした。
「真解――――『
海路が光輝いたかと思うと、彼の体に、数多くの武装が身に纏われていた。
背中には巨大なミサイルポッド、その両側には四丁のガトリングガン、その上下の間にはレールガンに加え、超素粒子砲など、様々な未来兵器が彼の体を覆い尽くしていた。
「本当、いろいろと反則な真解よね」
雅は、かなりの畏怖と敬意をもって、その真解を見た。
「さあ来い化け物。俺が塵も残さずに消し飛ばしてやろう」
海路は、キルルを睨みつけながら、そう告げた。
次回『アタシの兄貴』
幼い頃からの憧れは、