不道千景は勇者である   作:幻在

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怪物となった少女

「―――銀ちゃん!」

翼が、叫ぶ。

しかし、返事をしようにも、上手く声が出ない上に、今は落下中だ。

もう、痛みも感じない。

そんな、叩かれて落ちていく感覚の中、突然、何かに支えられたと思ったら、視界の端に、見知った顔が見えた。

「翼・・・」

「くそ、くそっ・・・僕がついていながら・・・!」

翼は、悔しそうに顔を歪めながら、敵に背を向けて逃げる。

だが、そんな翼を狙いすましたかのような、巨大な矢の一撃が、翼を打ち据える。

「ぐあぁぁあ!?」

肩を掠っただけなのに、凄まじい衝撃が翼の体を叩きつけ、落下していく。

そのまま巨大な蔓や根の間に落ちる。

そして、アタシが投げ出された。

「ごふ・・・」

血が、口からあふれ出る。

ああ、畜生。あのサソリ野郎、ぜってーゆるさねえ。

でも、もうダメみたいだ。

「銀ちゃん!!」

翼が駆け寄ってくる。

「つ・・・ば・・・」

「喋るな!頼む!喋らないでくれ!」

翼が、必死に、アタシの腹から溢れ出る血を止めようとする。

だけど・・・

「ゔ・・・ごふ・・・!」

「ッ!?銀ちゃん!」

ああ、だめだこりゃ・・・・これじゃあ、どっちにしろ、アタシは助からないかも・・・

「しっかりしろ・・・死ぬな銀ちゃん・・・こんな所で死ぬようなタマじゃないだろ・・・!弟がいるんだぞ・・・生まれたばかりの弟がいるんだろ!?園子ちゃんに料理を教えるんじゃなかったのかよ!認めない。こんなの認めねえぞ!」

翼が、喚くように、何かを呟いてる。でも、それを理解する事は今のアタシには理解できない。

せめて、何か、言わないと・・・・

「つ・・・ば・・・さ・・・・」

「ッ!だからしゃべるなって・・・」

 

「―――ありが・・・とう・・・さよな・・・ら・・・」

 

 

本当に、ありがとうな。翼。お前と一緒にいられて、須美や園子と一緒にいられて、アタシ、幸せだったよ。

だから―――だか――――ら―――――

 

 

 

 

 

 

そこで、三ノ輪銀は一度死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、銀は、今度は冷たい感触の中で目を覚ました。

 

 

 

(ん・・・んぅ・・・?)

意識が、覚醒するも、目を開ける事は出来ず、ただ、肌から感じる感触を感じ取っていた。

(なんだこれ・・・なんだか、めっちゃつめたい・・・・匂いも感じないし・・・ふわふわしてる・・・ひんやりだ・・・それに、なんだか頭冴えてるな。暗い・・・なんでこんなに暗いんだ?・・・ああいや、アタシが目を閉じてるだけなのか・・・・)

そこまで自覚した所で、銀は、おもむろに目を開けた。

そして、自分がどこにいるのかを、最初は理解できなかった。

(え・・・・?)

そこは、どこかの水槽の中だった。

丸い、詰めれば大人十人は入れるだろうサイズの円柱状の水槽の中に、銀はいた。

(なんだこれ!?どうしてここに?アタシは一体・・・どうしてこんな所に・・・!?)

銀は、思わず水槽のガラスを殴る。だが、水中じゃ上手く力を込められず、その上、勇者としての力がない故に、割る事が出来ない。

(くそ!どうなってるんだ!)

「アモルさん、被検体50番の意識が覚醒しました」

「あら、やっと起きたのね」

水槽の外、そこに立っている、同じ年と思われる少女が目の前に立っている事に気付き、その少女が呼んだ女性が、改めて水槽のガラスに触れ、銀を見た。

「お目覚めはいかがかしら?三ノ輪銀ちゃん」

『だれだお前!』

「私?私の名前は倉科愛里、ここじゃアモルって呼ばれてるわ」

ピンク髪の女性は、妖しく嗤う。

『ここはどこなんだ!?』

「それは言えないわ。だってここは所謂、私の秘密基地なんですもの。その秘密の場所を教える奴なんていると思う?」

『ぐ・・・』

銀は歯噛みする。

(くそ、なんなんだこの女は・・・気持ち悪い・・・それに、本当にここはどこなんだ?アタシは、一体、どうしてここに・・・あれ?でも何か、体に違和感が・・・)

そこで銀は、水中の中にいるのに酸素マスクらしきものをされていない事に気が付いた。

『がぼっ・・・!?』

「安心なさい。その液体の中なら呼吸をしていなくても生命活動は停止しないし意識もあるわ。なぜなら皮膚に触れている液体から直接酸素と養分を送っているからよ。だからその中ならマスクをつけなくても大丈夫って事。心配しないで」

確かに先ほどは慌ててしまったが、冷静になると確かに息苦しくない。だが違和感ありありで、空気ではなく水で呼吸しているのだから、なんともいえない気分になる。

それに、左腕に僅かに痛みを感じる。見てみれば、酸素マスクはないのに何かしらのチューブが自分の左腕に針を通して突き刺さっているではないか。

それに、ひんやりしているから風邪をひきそうで怖い。

「これで()()()()()全個体の覚醒を確認したわね」

「はい」

アモルの言葉に、少女が答える。

「さあて、今日も試験に取り掛かるわよ」

(試験?一体何をする気なんだ・・・?)

そう、思った直後。

『いやだぁぁあぁああああ!!!』

突然、どこからか男の悲鳴が聞こえた。

気付けば、自分の他にも、いくつもの同じような水槽が一定の間隔で設置してあり、液体の入っている物の中には、決まってまだ若い少年少女が入っていた。その中の一つに入っている男子が、ガラスの中で暴れていた。

『やめて!やめてくれ!ば、化け物に、化け物になりたくないぃぃぃいいいい!!!』

(化け物・・・・?一体なにを言って・・・・)

銀には、何がなんだか分からなかった。

だが、それが何かを理解する前に、アモルは、その男子の入っている水槽の横にある装置に、何か、筒状の何かをセットし、そして、何かしらのボタンを押した。

『やめ、やめて・・・・やめろ、入ってくるな、俺の中に入ってくるなぁぁああ!!』

そう、叫んだあと。

『うごあ・・・ぎっぁぁぁぁぁああああ!!!』

突如として男が呻き出し、やがて凄まじい悲鳴と咆哮と共に、その体から真っ黒な毛が溢れ出し、顔の形が変わり、体が膨れ上がり、やがて異形の存在へと変り果て、水槽を突き破る。

その姿は、さながら狼だった。

「あら、今度は比較的安全な狼男の因子を入れてみたんだけど、だめだったのね」

「グルァァァァアアアア!!!」

狼人間へと変貌した男子は、そのままアモルに襲い掛かる。

だが――――

「ハッ!!」

「ぐぎゃぁああ!?」

いつ移動したのか、先ほどまで銀の水槽の前にいた少女が狼男の上にいて、そのまま右拳で狼の頭を殴り、地面に叩きつけた。

恐ろしい膂力である。いや、それだけじゃない。

(なんだ・・・いつ着替えた!?)

少女の服が、まるで黒百合を想起させるかのような装束へと変貌していた。

まるで、勇者システムのように。

そう考えているうちに、すぐさま立ち上がった狼が今度はその少女に襲い掛かろうとしたが、それよりも速く、アモルが背後から剣を突き刺した。柄も握っていないのに、まるで、見えざる手に掴まれているかのように、その剣は狼の背中を貫いていた。

「がふ・・・・」

狼は、血を吐いて地面に崩れた。

「やれやれ、また失敗ね。死体は処理しておきなさい」

「わかりました」

少女は承諾すると、その自分の倍以上に大きくなった狼を片手で軽々と持ち上げて、どこかに行ってしまう。

その、あまりにも短い時間で起きた出来事に、銀は、何も理解できなかった。

(な・・・ん・・・だよ・・・あれ・・・・)

何が起きた?なんでああなった?人間が狼に、いや狼なのかあれは?二本足で立ってた。人間っぽいのに、人間じゃない・・・あれは、なんだ?分からない。化け物?怪物?そんなものが存在するのか?いや、バーテックスがいるからあんなのもいて当然・・・?

考えれば考えるほど、訳が分からなくなる。

どうして自分はここにいて、どうしてあの人はああなって、それでいてあいつらは一体なんなのか。

それがさっぱり分からない。

本当に、何が何だか分からない。

元々、考えるのもそんなに得意ではない。

だからどんどんこんがらがってくる。

頭を掻きむしり、銀は今自分が置かれている状況を整理しようとするも、あり得ない程の情報量によってすでにパンクしかけているのだ。

正直いうと、考えるのを放棄したくなってきているのだ。

だが、ここで考えるのをやめると、何かを失うようで怖い。

だから、考えるのをやめられない。

そんな時だった。

『驚いたでしょ?』

ふと、そんな声が聞こえた。

『え・・・』

『人があんな化け物になっちゃうなんて』

見れば、そこには短く切り揃えた髪型の銀と同い年ぐらいの少女がいた。

その顔は少しやつれていて、目も僅かにうつろ。まるで、諦めているかのような目だった。

『私、『川越(かわごえ)遥香(はるか)』っていうの。貴方は?』

『・・・三ノ輪銀』

『そう、銀、ていうんだ。どうしてここにいるか分かる?』

『さあ・・・アタシ、死んだ筈なんだけど・・・』

あのサソリ型のバーテックスの持つ毒にやられて、銀は死んだはずだった。

サソリの、スコーピオの針の右腕の肘から先を吹っ飛ばされて、死んだはずだった。

なのに、どうして・・・

『実はね、わたしも死んだの。首を絞められてぽっくりってね』

『首って・・・殺されたのか?』

『そ。あなたは・・・どっかの工事現場で鉄骨にでも貫かれたのかしら?』

『いや、ふっ飛ばされた』

『アハハ!一体どうやったら腕なんてふっとぶのよ!』

遥香と名乗った少女は愉快そうに笑った。

『そ、そんな事より!ここはどこなのか教えてくれ!』

『ここはあの女の研究所よ。まあ、場所はわからないけど、良い所じゃないのは確か。だけど今問題なのはそこじゃないよ。あの化け物たちの事』

『ああ、そうだ。それを聞きたかったんだ。なんだったんだあれは』

遥香は、そのうつろな表情に笑みを浮かべて、言う。

『あれはこの国で言う所の『妖怪』って呼ばれてる存在の因子を、植え付けられた化け物』

『妖怪・・・?』

『そ。実在する訳ないって思うかもしれないけど、実際にあんなものを見せつけられたら、信じるしかないよ。だって、今さっき、私たちの前であれは化け物になったんだよ?』

遥香は語る。

 

妖怪は、民間信仰における、怪奇現象や非現実的な存在の事。

その存在たちの因子を、自分たち人間に移植し、増殖させる事によって、自分たちを人の外の存在へと進化させようとしているのだ。

それがこの実験。

今さっきやられた男は、銀よりも十四番も前、遥香は銀の一番手前の番号だ。

その男が投与されたのはいわゆる『狼男』の因子で、それによって男の細胞が書き換えられ、その力が男の本来の精神を凌駕、浸食して消し飛ばし、そして暴走へと至らしめたのだ。

この、四十七回にも及ぶ実験の中で、成功例はほんの六人。

超人的な身体能力に加え特殊能力を操る・・・聞こえはいいかもしれないが、その成功率はあまりにも低いとの事だ。

六人であってもここまで行けたのは奇跡らしい。

 

『それで、失敗した奴らは例外なく皆殺し・・・だからわたし、諦めたの』

『諦めるって・・・・このまま死を受け入れるって事なのかよ・・・?』

『ええ。だって、わたしじゃこの水槽割れないし、割った所で奴らにつかまって連れ戻されるのがオチだし。だからここで大人しく死なせてもらう事にするわ』

遥香は、とことん諦めたかのように乾いた笑みを浮かべた。

それに対して、銀は、

『・・・いやだ』

『ん?』

『アタシは嫌だ!弟がいるんだ!まだ生まれたばかりの弟がいるんだ!それに、友達の事も放ってはおけない。すぐにでもここから出てやる!』

銀がガンガンと水槽のガラスを殴り始める。

『やれやれ、そんな事しても無駄なのに』

『ぐっ!このぉぉお!!』

体当たりや頭突きをしても壊れる気配がない。

しかしそれでも銀はやめない。

 

この現実から、少しでも目を逸らすために――――

 

 

 

 

 

やがて明日が来て、次の犠牲が出た。

『今回はろくろ首か・・・うえ、首が無駄に長いのって実際に見ると気持ち悪いわね』

遥香がそう軽口をたたく横では、銀が未だ水槽のガラスを叩いていた。

『まだやるか。いい加減諦めなよ。その水槽はわたしたちには絶対に破れないよ』

『・・・・勇者は、根性』

『またそれ?勇者勇者言ってるけど何?あんたどこぞのヒーローにでもなり切ったつもり?』

銀は無視してガラスを叩き続ける。

『はあ・・・・ねえ、どうしてそこまでやんの?どうせ帰ったって、貴方幽霊扱いされるだけよ?』

『それでも・・・帰らなくちゃいけないんだ・・・』

寝てないからか、声にはきがない銀。

『どうしてそこまで帰りたがるの?』

『家族に、会いたいから・・・・』

『あっそう。・・・・貴方、本当に家族に愛されてたって思ってるの?』

『・・・・』

『温かいご飯を与えられて、欲しいものを買ってもらった?自分が欲しいものを買ってもらえた?わたしは一切なかったよ』

そこで銀の手が止まる。

『正直言って、わたし、貴方のような奴大っ嫌いなのよ。私は一切家族に愛されなかったわ。親父は酒に飲んだくれ、母親は他に男を作って出てった。兄にはストレス発散の為のサンドバックにされて、姉には使用人のようにこき使われたわ。正直言ってへどの出るような人生だった。友達なんていなかったし、わたしにはない幸福を持っている奴が妬ましかった。だからここにいる奴らを見てると気分がよくなるのよ。普段は幸せそうな家庭に暮らしてるやつが、今は絶望に顔を歪めるのがね!』

うつろな目で、狂ったように笑う遥香。

その姿に、銀は信じられないような顔になる。

『せいぜい足掻くといいわ。どうせいくらやったって無駄なんだからね』

周囲は、表情を絶望に染めて、呻いたり叫んだりしている者がいた。

もう、何十回と見せられる光景になれる者もいれば、現実逃避している者もいる。

いくらか脱出を試みた者もいたのだろう。だが、無駄だったのだろう。

だれも、助からなかったから――――

『・・・・友達、いなかったのか?』

ふと、銀がそう話しかけた。

『・・・・さっきの話聞いてた?』

『・・・なってやろうか?』

何気ない、言葉のつもりだった。

だが、そういった瞬間、遥香の銀に向けられる視線が、酷く冷たくなった気がした。

『・・・同情なら、やめろ』

その声に銀は怖気づき、遥香は、それっきり黙ってしまった。

 

 

翌日、また次の犠牲者が出た。

銀は、ガラスを破る事に力が入らず、ずっと虚空を見ていた。

しかし――――

『あ―――!!暇だぁ―――――!!』

突然、叫んだ。

『なあ遥香!何かしよう!』

『・・・・なにかって何するのよ?』

『え?えーっと・・・しりとり?』

『・・・』

『ああ!なんか期待外れって感じて向こう見ないでくれぇ!』

思わず涙目になる銀。

『うるさい。わたしに話しかけるな』

『そんな事言わずにさ!』

『だから黙れって・・・』

『じゃあアタシから!』

『人の話を聞けぇ!』

『りんご!』

『え!?あ、っと・・ご、ゴリラ!』

『ラッパ!』

『パンドラ』

『らくだ』

『団子』

その日は、それで一日を過ごした。

また、次の日は、自分の好きなアニメや特撮物について語り合った。

『特撮と言ったらやっぱ仮面ライダーだろ!』

『スーパー戦隊に決まってんでしょ』

『いいや仮面ライダーだね!』

『スーパー戦隊!』

何故か白熱した。

また別の日は、好きな食べ物について話し合った。

『なに?醤油味ジェラートって・・・変な味しそう・・・』

『何おう!?このアタシがおすすめするんだぞ!絶対美味いっての!』

『あっそう・・・・ま、期待しないでおくわ』

『期待しろー!』

次の日も、そのまた次の日も、何かを話し合った。

それがどうしようもなく楽しくて、だけど、ふと疑問に思ってしまった。

『ねえ、銀』

『ん?なんだ?』

『・・・貴方は怖くないの?これから化け物になっちゃうのに』

もう、自分たちの番が近づいてきているのだ。それなりに覚悟しなければいけない時だっていうのに、どうしてこの少女は笑っていられるのか。

しかし、遥香は見る。銀の手が、震えている事に。

『・・・・怖いよ』

初めて、銀の声が震えた。

『とっても怖い・・・もし、このまま、家族や、友達に会えなくなるって思うと、なんだか、すげえ怖くなるんだ・・・まだ生きてるのに、せっかく、生きてるのに・・・また、死ぬなんて・・・怖い・・・怖いじゃないか・・・』

銀は、震える拳を、もう一方の手で覆って、それを額に当てて、歯を食いしばる。

それっきり、銀は喋らなくなってしまった。

彼女も、年頃の少女だ。

怖いものは怖いし、辛いものは辛い。それを、持ち前の気力と胆力で乗り切ってきただけだ。

だけど、やはり、目に見える死に対する恐怖はそう簡単に拭えるものじゃない。

だから、銀は、何かを言い続ける事でそれを凌いできた。

だが、それを改めて遥香に確認された事で、とうとう銀を保ってきた何かを壊してしまった。

きっと、銀が水で満たされた水槽の中にいなければ、涙を流しているのが分かっただろう。

だが、そうなってはあとの祭りだった。

 

 

 

そして、とうとう遥香の番が来てしまった。

『今日はとうとうわたしかー』

『・・・・』

遥香が、空笑いをするも、銀は膝を抱えたまま動かない。

それを見て、遥香は嘲笑する。

『なに?今更怖くなったのかしら?手が震えてるよ?』

確かに、銀の手は震えている。

しかし、手が震えている理由は、怖がっている理由は()()じゃない。

『・・・・違う』

『ん?』

『違う・・・アタシが怖いのは・・・それじゃない・・・・』

『じゃあなんだっていうのよ?』

思わず聞き返す遥香。

『・・・・お前が消えるのが怖い・・・』

『・・・は?』

「はいはい、おしゃべりはそこまでね」

『『!?』』

そこでアモルの声が聞こえた。

見れば、銀と遥香の水槽の間の前にアモルが立っていた。

「これ以上時間をかけるわけにはいかないから、今日は二人一緒にいくわ」

見れば、背後にはいつもの少女の他に、もう一人、青い装束を着た少年が立っていた。その背中には、剣が一本。

『あーら意地悪な事・・・当然、わたしが先なんだよね?』

「当然、順番は守らないと」

アモルが遥香の水槽の前に立つ。

「あなたには、女郎蜘蛛の因子を打つわ。覚悟しておいてね」

『あら、それは楽しみね』

若干、ひきつった笑みを浮かべる遥香。その最中に、銀の事を盗み見た。

銀は、こちらを見ていて、その目には、懇願の色が見えた。

それを見て、遥香は――――

『・・・・銀』

アモルの手が、スイッチに触れる。

『・・・・ありがとう。最後に貴方に会えてよかった』

銀の目が、見開かれる。

『・・・・友達になってくれて、ありがとう』

 

直後、

 

 

『――――やめろぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!』

銀は、絶叫した。

『―――――SHAAAAAAAAAAAA!!!』

体中に縞模様の体毛を生やし、体の骨格が変形し、遥香は、この世ならざる者へと変貌を遂げた。

そのままガラスを破り、変化したことで複眼となった目で、周囲を見る。

もう、その表情は人間のそれではない。

『HUSHLLLLLLLLLL・・・・・!!!』

「あら、また失敗」

アモルは興味なさげにその怪物を見る。

「片付けて頂戴」

「分かりました」

少女が動く。

『ッ!?おい、やめろ、やめてくれ!頼む!やめてくれ!』

水槽の中で、銀が叫ぶ。水槽をガンガンと叩くも、壊れる気配は無い。

しかし、

「引っ込んでいろ」

その声は届かず、少年の方がいち早く、遥香の首を斬り飛ばした。

それだけじゃなく、関節にそって、全身をバラバラにした。

「昆虫の体のあちこちには発達した脳神経節がある。ゴキブリが良い例だ。ゴキブリは頭を切断されても、動き続ける上に、いずれ動かなくなった時の死因は『餓死』だそうだからな」

事実、カマキリも交尾の際はオスの頭部はメスに食いちぎられる事が多々あるが、その時、頭部を失ったオスの体は暴走してより激しい交尾となる。

即ち、昆虫は頭なくても生きられるのだ。

しかし――――それは銀にとっては関係ない。

「次は貴方の番よ」

アモルが銀の前に立つ。

そして、カプセルに入ったアンプルを取り出す。それを機械にセットする。

『・・・・る』

「ん?何かしら?」

アモルがボタンに触れる寸前、銀が何かを呟いた。

『――――殺してやる・・・・!!』

「あ、そう」

そう言って、アモルはボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

「―――ハッ!?」

目を覚ます銀。頭には、鈍い痛みが響く。

「く・・・つぅ・・・アタシは、一体・・・?」

頭を押さえつつ、銀は起き上がる。周囲には崩れた瓦礫がそこら中に散らかっていた。

だが、視線の先にいる存在に気付いた時、銀は全てを思い出す。

「ほう、生きていたか」

その男は、一言で言って獣のような男だった。

上半身に衣服は纏わず、目立った武器は無く、体が大きく逞しく、その三白眼からはすさまじい程の殺気を感じた。

「罪人の身でオレの攻撃を耐え切るとは、敬意を表する。が、罪人は必ずしも殺さなければならない」

恐ろしい嗤い顔を銀に向ける。

「そうだ、兄貴・・・!」

一方の銀は、自らの兄の安否を探した。

そして、見つけたその先では、建物の壁を貫通してぐったりとうなだれる剛の姿があった。

「兄貴・・・!!」

「あの男は死んでいない。気絶しているだけだ。だが、すぐに殺す」

気付いた時には、男は巨大な瓦礫を片手で持ち上げていた。

そして、そのまま剛に向かって投げ飛ばす。

このままでは、剛に直撃してしまう。しかし――――

「強化骨格―――脚力強化ッ!!」

プラスチックがひび割れるような音が響くのと同時に、男が投げた瓦礫が真っ二つに割れる。

「ほう、貴様、その姿は・・・」

男が、興味深そうに、今瓦礫を叩き割った銀の姿を見た。

正確には、銀の足だ。白骨が体の中から突き抜け、それがまるで鎧のように纏われている。

「なるほど!それがアモルの研究の成果か!骨によって足を補強し、操作する事によって通常の数倍もの身体能力を得ているという訳か・・・・面白い」

男が身をかがめる。

「我が名は『絶望』のブルーメ!少しの間、遊んでやろう!」

瞬間、男の姿が消えた。

「は――――」

「ここだ」

声が聞こえた時には、銀は、何かが折れる音と共に横に吹っ飛ばされていた。

「ガッ―――!?」

折られたのは、首。

銀は何が起きたのか理解できず、そのまま地面を転がる。

「フハハハハハ!脆い!脆いぞ人間!やはり人間は脆い!」

訳の分からないまま吹っ飛ばされた。何も出来ずに殴られた。

「そこの男はオレの攻撃を察知して上手く防ぎ、()()()()()()のダメージで済んだというのに、お前は何も出来ずに吹っ飛ばれた。つまり貴様は弱いという事だ」

ブルーメは銀を嘲笑い、背を向ける。

しかし、パキパキという音が聞こえたかと思ったら、声が響いた。

「誰が・・・弱いって・・・?」

ブルーメが振り返れば、そこには首をさすりながら起き上がる銀の姿があった。

「ほう、首を折られて即死かと思ったが、生きていたか」

「二度目の死は老後って事にしてるんだ。悪いな・・・・」

銀はそういいつつ、近くの瓦礫を口にいれて噛み砕き飲み込む。

銀の体は今、がしゃ髑髏のそれになっている。周囲にある無機物を取り込む事でそれを自らの肉体に変換して再生する事が出来るのだ。

(今は事前に腹の中にいれといた瓦礫のお陰でどうにかなったが、これがいつまで持つか・・・)

思考しつつ、銀は立ち上がって戦斧を構える。

敵はあまりにも速い。風の魔眼をもってすれば見切れるかもしれないが、今はその風はおらず、剛は気絶しており動けない。

つまり、この状況を銀一人で対処しなければならないのだ。

だが、そう結論をつけた直後に、

「悠長に考えている場合か?」

「ッ!?」

いつのまにかブルーメが背後に立っていた。

速い、あまりにも速い。

「がッ――――!?」

蹴り飛ばされて正面に吹っ飛ぶ。さらに、その吹っ飛ぶ最中の銀を追い抜き、その先でさらに銀を上空へ吹っ飛ばす。

そして止めと言わんばかりに両手を組んで銀を地面に叩き落とす。

声を上げる間もない、()()()()()()()で行われた三連撃。

「がっは・・・・」

(み、見えない・・・・!?)

銀は何が起きたのか理解できず、今地面に降り立ったブルーメを見る。

その顔はなおも獣のような笑みを浮かべており、こちらを嘲笑うかのように見ていた。

「どうした?その程度か?」

「―――ッ!!」

歯を食いしばり、攻勢に出る銀。戦斧に備わったブースト機能を発動させて、回転しながらブルーメを強襲する。しかし、その攻撃は、戦斧を素手で掴まれる事で未遂に終わる。

「無駄だ」

「――――『強化骨格(ボーンメイル)』―――『脚力強化(レッグポイント)』ッ!!」

銀の両足が、まるで恐竜の足のように骨が纏わりつき、それによって作られた仮想筋肉の稼働によって、数倍の威力で繰り出された蹴りが、ブルーメの顔面をとらえる。

しかし――――

「『獣ノ力(ビースト・フォース)』―――『犀ノ鎧(ライノメイル)』」

何かの装甲によって、阻まれていた。

「なに・・・!?」

銀は驚愕し、ブルーメはその笑みをさらに獰猛にする。

「『獣ノ力(ビースト・フォース)』―――『大猿ノ鉄拳(コングブロウ)』」

ブルーメの拳に何か、魔力のようなものが収束し、形を成し、ただでさえ巨大なブルーメの拳を、一回り大きな光の膜が覆う。

それが、恐ろしい速度を持って銀に叩きつけられる。

「―――『腕硬度強化(アームハードポイント)』ッ!!」

掴まれていない戦斧の方の腕を骨で多い、その一撃を防ぐ。しかし、その盾はいともややすく砕かれ、腕をへし折り、さらには銀の体を紙屑のように吹き飛ばす。

そのまま、天高く打ち上げられ、地面に落ちる。

「が――――っはぁ――――」

「ほう、生きていたか」

あらかじめ内臓などの重要機関を骨によって覆っておいたが、それでもそれを上回るほどの威力で叩き潰された。

今は、胃の中にある瓦礫で再生しているが、それで完全再生できるかどうかは難しい所だ。

むしろ、体の中がぐちゃぐちゃのスクランブルエッグになっていて生きているという事実に驚きたい所だが、今はそんな事はしている暇がない。

(た、たった一撃で・・・)

あの『大猿ノ鉄拳(コングブロウ)』とかいう技を一発貰っただけでこのありさまだ。

もう一度喰らえば、次はないかもしれない。

そして、敵は今、こちらに止めを刺そうと歩いてきている。

すぐに立ち上がらなければならないのに、体を動かす事ができない。

再生が、間に合わない。

(ち・・・・く・・・・しょう・・・・!)

こんな、こんな現実を、知りたくはなかった。

一度死んで、他人に迷惑をかけて、がしゃ髑髏の力を手に入れて、それでこの有様。

兄の役に立とうと家事を覚えて、弟たちの面倒を見れるようになって、何も出来なかったあの頃からは完全に決別したと思った。

(なのに・・・何も、変わってないじゃないか・・・・!)

泣き虫で、弱虫だった自分。その自分から、一体どれほど変わったか。

結局、自分は弱いじゃないか。

そう思うと、次から次へと、涙が溢れてくる。

(遥香・・・アタシは結局、何がしたかったんだろうなぁ・・・?)

ふと、視界の端に、兄、剛の姿が見えた。

(兄貴・・・こんな役立たずな妹でごめんな・・・・)

 

 

 

―――だから、せめて。

 

 

 

(怪物になった、アタシを、許してくれ・・・・)

どうにか動かせる右手を、持ち上げる。そして、それを顔に近づけて―――――

 

 

 

 

 

 

――――その手に噛みついた。

 

 

 

 

 

 

 

―――禁じ手『怪物暴走(モンスターモード)

 

 

 

 

 

突如として銀の体が爆発、したのではなく、爆発したかのような蒸気が溢れ出した。

「ぬぅ!?なんだ・・・!?」

その蒸気の熱さに、ブルーメは思わず片腕で顔を庇う。

その溢れ出る蒸気の中で、ブルーメは一つの影を見た。あまりにも巨大な、その影を。

やがて蒸気が張れると、そこにいたのは、ただの一人の少女ではなかった。

その巨躯は悠に十メートルを超え、その体を構成する物全てが白い骨。

目からは赤い光が輝き、その口は深淵の闇の如く暗い。

敷き詰められるかのように、人間の形ですらないそれは、まさしく、ただの白い怪物。

 

伝承において、その骨一つ一つが死んだ人の怨念。怨念を常に吸収し続けるその怪物は、人の悪意を吸い取り続け、巨大化を続けていく。

怨念を溜めにため込んだその怪物は、誰にも対処できなくなり、やがては厄災へと成り果てる。

 

故に髑髏、恒河沙の髑髏、がしゃ髑髏。

 

其は、がしゃ髑髏、也。

 

 

 

『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』

咆哮と共に、怪物がブルーメに向かってその腕を振り下ろす。

その質量は、凄まじいものだろう。それがブルーメに直撃し、地面が砕け散り、粉塵が舞う。

「・・・・なるほど」

しかし、ブルーメは押し潰されていなかった。

むしろ、両腕で受け止め、あわよくば押し返そうとしていた。

「それがお前の奥の手か・・・笑止ッ!!」

押し返され、よろける怪物。だが、よろけたところで胸から無数の骨の槍を射出する。

「『獣ノ力(ビースト・フォース)』―――『狩猟豹ノ疾走(チーターズムービング)』ッ!!」

だが、ブルーメは足に魔力を纏うと、その巨躯に見合わぬ速さで全ての槍を避ける。

「『兎ノ跳躍(ラビットジャンピング)』ッ!」

そして、跳躍。そのまま怪物の顔面の前に立つと、また拳を握りしめて――――

「『大猿ノ鉄拳(コングブロウ)』ッ!!」

怪物の顔面を殴った。怪物の巨体が浮き、その顔が半分、砕け散る。

しかし怪物は手をついて堪え、その吹き飛んだ顔を修復しながらブルーメに再び攻撃を仕掛ける。

『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

咆哮し、その開かれた口をブルーメに向ける。

「ぬっ」

瞬間、怪物の口から巨大な砲撃がはなたれた。

それは骨を生成し、動かす際に使われる熱。その熱エネルギーを、口の中にある砲門にかき集めて砲弾として放ったのだ。

だが――――

「フハハハハ!無駄ァ!」

しかし、その一撃は容易く弾かれてしまう。

それでもなお、怪物は攻撃をやめない。

口からではなく、新たに作った四つの砲門から、計五個の砲弾を放つ。

だが、それすらも弾かれ、最後の一発に限っては弾き返される始末。

直撃を喰らい、仰向けに倒れる。

「銀!」

そこで、声が聞こえた。

「銀!銀!」

その声と共に、怪物に駆け寄るのは、青い、朝顔を想起させる青い装束を着た少女、東郷美森である。

美森は怪物の頭部付近に駆け寄り、必死に、怪物の本当の名を呼びかける。

「銀!しっかりして!銀!」

『OOOO・・・』

今の怪物には、まともな思考は残っていない。あるのは相手をどうやって倒すか、低下した知能で考えうる最善策で戦う事のみ。

そして、誰が敵か、味方かを認識するのみ。

突如として怪物が骨を生成。それで美森を覆う。直後、その骨の壁に無数の剣が突き刺さる。

「!?」

「あーららー、なんで防いじゃうかねぇ」

それはすぐに光と共に消える。そして、その剣を放った本人も、ブルーメの隣に降り立つ。

それは、ボロボロのローブを着た、一人の男性だった。

「おいラヴァンド。邪魔をするな。アレはオレの得物だ」

「もちろんだブルーメ。僕の目的は元からあの子一人だよ」

ラヴァンドと呼ばれた男が、ブルーメと話し合っている間に、怪物が起き上がる。

『OOOOOOOO・・・・・』

「ッ!?だめよ銀!これ以上は・・・・!」

『OOOOOOOOOO!!!』

美森の制止は、怪物の方向によって掻き消される。

そして、大地を揺らしながら怪物は二人に向かっていく。

「やれやれ、言っておくけど、僕らにもそれなりに縦社会的なシステムってものがあってね。僕ら『第三の罪科(サード・シン)』を筆頭に、四神官、処刑衆っていう感じになってる。僕は『不実』のラヴァンド。何事にも不誠実に生きてるよ」

その瞬間――――

「『贋作技(フェイカースキル)』―――『劣・怒り狂う邪竜の咆哮(ファブニール・ブレス)』」

ラヴァンドの掌から、黄昏色の砲撃が迸り、怪物を吹き飛ばす。

「――――ッ!?」

その一撃は怪物の胴体を吹き飛ばし、うなじ当たりにいた本体を引きずり出す。

「今だよ」

「させないッ!!」

引きずり出された本体に止めを刺そうとするブルーメを食い止める為に、美森が狙撃銃を顕現させてその引き金を引く。

だが、その弾丸はブルーメの皮膚に容易く弾かれる。

「そんな・・・っ!?」

「終わりだ」

「ッ!?ダメ!」

叫ぶも、間に合わない。

ブルーメが落ちていく骨を足場に、一気に怪物の本体に――――銀に接近する。

「『獣ノ力(ビースト・フォース)』―――『鷹ノ爪(ホーク・クロウ)』ッ!!」

その手に纏われる魔力が、その指に合わせてまるで爪のように伸びる。

美森が、すかさずブルーメに向かって狙撃銃を向けるが、それよりも速く、ラヴァンドが美森の狙撃銃を弾く。

「『贋作技(フェイカースキル)』――『金弓箭』」

その手には、黄金に輝くボウガン。

「やめてぇぇええ!!」

美森が叫ぶ。しかし、それを聞くような相手ではない。

「死ね、罪人!」

銀は、気絶していて動けない。

空中に投げ出されたまま、そのまま、鷹の爪の餌食になるのか――――

 

 

 

「――――満開」

 

 

 

その直前に、黄色い光が迸り、ブルーメが地面に叩き落とされた。

「「「!?」」」

その突然の事に、その場にいた者たちが、二人を除いて驚愕した。

「ぬう!なんだ!?」

地面に叩き落とされたブルーメが見上げた先には――――

「・・・・剛先輩!」

三ノ輪剛が、銀を抱えて空中に佇んでいた。

その服装は、先ほどの勇者装束とは一線を駕し、より神々しく、より猛々しい姿へと変貌していた。

その色は――――青。

大海と天空と同じ色。地球の色。青き星と呼ばれた星と同じ色。

そう、それが剛に与えられた新たな満開。その名は―――

 

『満開・星廻ル紺碧(ほしめぐるこんぺき)

 

「銀・・・」

剛は、ボロボロになった銀の姿を、悔しそうに眺めた後、すぐさま美森の元へ降り立つ。

「悪い東郷、銀を頼む」

「分かりました・・・」

美森は銀を受け取る。

そして剛は、敵二人に向きなおる。

「なるほど、先ほどの状況から再び立ち上がったか。誉めてやろう」

「うっせえ。でもさっきは悪かったな。一撃で気絶しちまってよ」

正確には、吹き飛ばされた際に瓦礫に頭をぶつけたのが原因なのだが。

「でも今は、一味も二味も違うって所を見せてやるよ」

「フハハハハ!面白い!では見せてもらおうか、その力とやらを!」

ブルーメと剛が睨み合う。しかし、その間にラヴァンドが入り込む。

「はいはい、僕もいる事忘れないでよね」

そう、今の状況は、二対一であるのだ。

美森は銀を抱えて戦う事は出来ない。

だから剛一人で対処しなければならないのだ。

だから、剛は冷静に、この状況を打開する方法を探していたのだが――――

「ええ、そうですね。僕がいる事を忘れては欲しくはないですね」

「ッ!?」

突如、ラヴァンドが横に吹き飛ばされた。

どこからか飛んできた、青い流星によって。

「翼!」

「すみません、遅くなりました!」

六道翼である。

「いたた、酷いねえ君ぃ」

「黙れ。貴方が須美ちゃんを狙っていた事を、僕は許す気は無い。

翼が、明確な敵意をもってラヴァンドを睨みつける。

「翼、満開しておけ。こいつら、舐めてかかれる相手じゃねえぞ」

「分かりました――――満開」

剛の言葉を受け、翼が満開を発動する。

翼が纏うのは、黄金。

太陽の光。世界を照らす、天の恵み。暗闇を打ち払う、黄金の光。

その名は―――

 

『満開・天照地恵光(あまてらすちめぐみのひかり)

 

前の満開である『岩盤貫く黄金の弓箭(ゴールデン・ブライト・バリスタ)』の時にあった巨大なボウガンは無く、いつものサイズのボウガンが、翼の腕に装着されている。

その装束は、なおも神々しく、そして清々しいほど美しいものだった。

髪も金色に染まり、彼の輝きを一層強くしていた。

「覚悟しろよくそったれども」

「無事に帰れるとは思わないで下さい」

「フハハハハ!罪人の癖に、粋がるな」

「覚悟するのは君たちの方だ」

三ノ輪剛、六道翼、ブルーメ、ラヴァンドの四人が今、対峙する。

 

 

 

 

 




次回『最高司祭(アークビショップ)

最高、故に最強。
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