不道千景は勇者である   作:幻在

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死へのカウントダウン

「アハハハハハ!!」

炎が襲ってくる。

それを風、樹、冬樹は躱す。

「ほらほらぁ!どうしたのぉ?その程度ぉ!?」

「だぁぁああ!!この炎うざい!!」

「そんな事言ってもしょうがないよお姉ちゃん!!」

「うん、無駄」

「あああ!!樹はともかく知らない誰かさんにまで否定されたぁぁあ!!」

喚く風を他所に、炎は相も変わらず襲い掛かってくる。

それはまうで生き物のように、巨大な塊となって三人を襲う。

「なかなかにすばしっこいわね・・・そんなんで、この私を倒せると思ってるの?」

「安心、して、すぐ、終わ、る」

「ハッ!いい大口叩くわね!いいわ・・・やれるものならやってみなさいよ!!」

レジーナが炎を操り、それを彼女たちにぶつける。

「少し、時、間、稼い、で」

「どうにか出来るの?」

「出来、る」

風の問いに、迷いなく答える冬樹。

「そう・・・分かったわ」

風はそう答えて、その火球の前に立つ。

「お姉ちゃん!?」

「今は信じるしかないわ樹。頼んだわよ!!」

そして、風は、剣を巨大化させてその炎を正面から受ける。

「ぐ・・・ぅう・・・」

その熱量に必死に耐え、風は、その炎を支える――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――っしゃぁあぁあああ!!」

「――――っうおぉぉおおおお!!」

雄叫びと共にハイタッチを交わす明日香と将真。

「まずは一勝!!」

「我々のチームワークの勝利だ!」

「「ワーハッハッハッハ!!!」」

腕を組んでくるくると回る二人。

「はッ!そういえば芽吹たちはどうなったァ!?」

「そういえばそうだったぁ!!」

そして今更のように思い出す。

「心配しないで。無事よ」

「おお!芽吹!!」

だが、多少傷つきながらも勝利した風貌で現れる芽吹、そしてシズク。

「・・・てぇ!?なんであの時のオッサンがここにぃ!?」

「今は味方だから安心してくれ」

そして、当然の事ながらさらに後ろにいた真武郎に向かって指差す明日香。

「一応、倒せたみたいね」

「そっちもな」

互いの勝利に喜びつつも当然という感じて見合う芽吹と明日香。

「おーい!さっき優理君たちの所見てきたけど、勝ったみたいだよ」

そこへ、昴が飛んでくる。どうやら、優理達の所に向かっていたようだ。

「だけど夕海子さんが怪我を・・・」

「そう・・・優理は動けるのよね?」

「うん、でもそれでも手傷を負ってる」

「だったら優理には夕海子を引かせ次第、すぐに戻るように伝えておいて。あ、雀は呼んどいて」

「はいはい・・・やれやれ、雀ちゃんも災難だな・・・」

一人、これから起こるであろう雀に対する災難を嘆きながら、昴はすぐさま優理たちの方へと走っていった。

「とりあえず、これで四人撃破って所ね」

「よぉぉし!このまま他の奴らもまとめてぶっ飛ばしてやろうぜぇえええ!!」

明日香の雄叫びと共に、他の者たちも動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉぉぉおおお!!!」

「ぬぉぉおおおお!!!」

剛とブルーメの拳が正面から衝突する。

そこから激しい拳の応酬が展開される。

互いに一歩も引かず、拳を叩きつけ、防ぎ、また反撃し、攻撃を受け止める。

「『大猿ノ(コング)――――」

「ッ!?」

「―――鉄拳(ブロウ)』ッ!!」

銀の内臓をぐちゃぐちゃにした強力な拳打が剛に迫る。

「ぬんッ!!」

「なに!?」

しかし、それを剛は渾身の一撃で真正面から打ち返し、止める。

「ぬぅ・・・罪人の癖になかなかやるな・・・!!」

「そりゃあそうだぜ、何故なら俺は、ドラゴンボールシリーズの大ファンだからな!!」

力を比べをしている拳とは違う拳を掲げる剛。

以前の満開とは違い、『星廻ル紺碧』状態の剛にハンマーは存在しない。その代わり、持ち前の喧嘩スキルによる格闘戦特化の状態となり、それに合う戦闘能力を手に入れている。

そのベースは――――ドラゴンボールだ。

「らぁッ!!」

剛の掌に出現した気弾が、ブルーメに叩きつけられる。

「『犀ノ鎧(ライノメイル)』」

しかし、その一撃はブルーメが展開した防壁によって防がれる。

すかさず、ブルーメの拳が剛に迫るも、それを剛は軽々と後ろに飛んで躱す。

「フハハハハ!!どうした?その程度か!!」

「ハッ!テメェこそ、なんださっきのへなちょこパンチは?まさかそれがテメェの全力って訳じゃねえよなぁ?」

「罪人風情が、ほざくな!!」

瞬足をもって、剛に接近するブルーメ。そして剛はそれを迎え撃つ。

「来いッ!!」

 

 

 

 

その上空では。

「ハァアアッ!!」

翼の蹴りがラヴァンドに迫るも、それをラヴァンドは軽々と避ける。

上に飛んでいくラヴァンドを、翼はボウガンか矢を放つ事によって追撃するも、それはラヴァンドが手にした二対の剣によって弾かれてしまう。

「チッ」

「ちょっとちょっと、君ぃ、本気になり過ぎじゃない?」

「そうですね。少し冷静になるべきですね・・・・ですから、冷静に貴方を殺す」

「だからそれが本気に・・・って聞いちゃいないか」

話し終える前に、翼はすでにラヴァンドの目の前に迫ってきていた。

振り下ろされる拳の一撃を、ラヴァンドは紙一重で回避する。その反撃にラヴァンドは翼の腹に手をあてた。

「『贋作技(フェイカースキル)』―――『斥力炸裂槍(エンドレススクリーム)』」

ラヴァンドの手から生成された斥力フィールドが変形、形を成し、全てを削り取る矛となって翼を襲う―――はずなのだが。

「八つ裂き光輪ッ!!」

それよりも速く、翼の手に展開されたリングが、ラヴァンドを襲う。

「うわっと!?」

それによって砲撃は中断。ラヴァンドは下がる。

「逃がすか――――『スペシウム光線』」

右腕を縦に、左腕を水平に交差させて、平面上の光線を放つ翼。

スペシウム光線、とは言っているが、これはあくまで、ただのオマージュであるためにウルトラマンの攻撃そのもんではない。

だが、今回の戦いにおける満開の強化バージョンは、それぞれが戦いやすいように神樹が改良したもの。その能力の大体は、使用者本人の『戦闘に対する強い情景』というものが反映されており、園子の場合は、無数の刃による多目的援護および()()()()()()()()()()()()という思いの元、作られたもの。

そして、剛の満開は、彼の『ドラゴンボール』のように戦いたいという子供の頃からの情景、そして、その力があれば仲間を助けられるという強い意志の元に展開されたもの。

そして、それは翼もしかり。

ドラゴンボールとウルトラマン。互いに戦士という共通点があり、二人の戦い方に合った戦闘方を持つ空想上の力を、神の力によって実現したのだ。

故に、翼は今、ウルトラマンの()()()()である『スペシウム光線』を放つことが出来るようになっているのだ。

「うわっと!?」

しかし、それすらもかわされる。

「やれやれ・・・・いい加減にしてくれないか?」

ラヴァンドから、どす黒い殺気が放たれる。しかし、翼は動じず、殺気を真正面から受け止めつつ、同じような殺気を返し、答える。

「それはこちらのセリフですよ。いい加減倒されろ」

その答えに、舌打ちが一つ。

「そうか、そんなに死にたいのか・・・・」

くっくと笑ったのち、ラヴァンドの周囲に、無数の剣が形成される。

「だったら苦しみの果てに地獄に落ちろ」

それに対し、翼は、

「『無限大剣(メビュームブレード)』」

腕に装着されているボウガンの先から、光の刃を形成し、答える。

「御託は良い、さっさと来い」

 

 

 

 

 

 

 

「ゼァアアッ!!」

信也の蹴りが、巨大パンダの顔面に蹴りを入れようとする。しかし、それをのけぞる事で躱され、さらにパンダは横から信也を拳で叩き落す。しかし、寸での所で防御に成功した信也は地面に両足で着地して、地面を踏み砕くやすぐさま走り出して追撃をかわす。

そしてすぐさま逆方向に飛んで、再びパンダに回し蹴りを叩き込む。それを左腕によって受け止められ、すさかず右拳による反撃が飛んでくるも、それを足を上に乗せる事で躱し、そのまま腕の上を回転して、パンダの顔の間の前にまで来て、その顔に蹴りを叩き込む。

(野郎っ!)

当たった・・・が、手ごたえが浅い。どうやら直撃の瞬間のけ反って威力を半減させたようだ。

(のんびり癒し系アニマルの癖してなんて反射神経していやがる・・・・ッ!!)

バック転をしたパンダは、そのまま信也を見据えるや、すぐさま飛んでこちらを殺そうと襲い掛かる。

「ガァァアアアッ!!!」

肩の角を突き出して、信也を串刺しにしようとする。しかし、それに対し信也は――――

「『機関銃蹴撃(マシンガンシュート)』ッ!!」

威力に対して手数で勝負した。直撃する瞬間のパンダの角の尖端に無数の蹴りを叩き込んだ。

しかし、パンダ自身の運動エネルギーは消えず、角の直撃を躱した信也に向かった強烈なラリアットを叩き込む。

「ぐぶぅ・・・!?」

胴体に直撃し、血を吐く信也。そのまま建物に激突。何件か貫通していった。

建物が派手に壊れ、起き上がったパンダが、勝利の雄叫びとばかりに咆哮する。

「おい」

粉塵舞う中、しかし声が響き、パンダの懐にすでに信也はボロボロの状態で構えていた。

「勝ちどきあげんのはまだ先じゃねえのか?このエセクマ公がァッ!!」

怒りの一撃がパンダの腹に直撃する。

「『肝臓(レバー)』・・・!!」

さらに二撃、三撃と攻撃が入っていく。

「『腎臓(マメ)』『小腸(ヒモ)』『大腸(シマチョウ)』『直腸(テッポウ)』」

五撃。

「『踵骨(アキレス)』」

脚を叩いて膝を着かせる。

「『頬肉(ツラミ)』ッ!!」

こめかみに爪先が突き刺さる。それも左右両方。

「『(タン)』ッ!!」

続いて顎。

「『(フワ)』ッ!!」

そして両胸、その奥にある肺を叩き、

「『脊髄(セキズイ)』ッ!!『脾臓(タギモチ)』ッ!!」

肩に乗ったと思ったら踵落としの容量で背中を叩き、さらにもう一撃叩き込んだのち、首に回し蹴りを叩きつける。

「『食堂赤筋(ネクタイ)』ッ!!」

そのまままたパンダの前に出ると、今度は四撃、また腹に蹴りを叩き込む。

「『胃撃(マストショット)』―――『一番(ミノ)』『二番(ハチノス)』『三番(センマイ)』『四番(ギアラ)』ッ!!」

もはやパンダの意識は消失寸前。

しかし信也は一切の手加減なしに止めを叩き込んだ。

「『心臓(ハツ)』――――『牛内臓連打(ブーエコンボストライク)』ッ!!」

最後の一撃が、心臓へと突き刺さり、地に沈むパンダ。

「『もう二度と会う事はないだろう(アッディーオ)』」

倒れるパンダに背を向け、立ち去る信也。

 

その一方で、もう一つの戦いも決着を迎えようとしていた。

クマの鍵爪が白露へと迫り、その度に白露はその敏捷性をもって、その爪の嵐を全て躱す。

「ほらほらぁ!どうしたの?その程度!?」

爪の嵐の一瞬の隙をついて、飛び上がる白露。

「『虎爪(トラヅメ)』」

そのまま、すれ違いざまに右手の爪でクマの右目を潰す。

悲鳴を上げ、よろけるも、潰された事による怒りによって動揺を消し去り、背後へと振り向くクマ。しかし、そこにすでに白露の姿はなく、すでに白露は高所からの落下攻撃を仕掛けていた。

「『狩虎(カリトラ)稲妻(イナズマ)』ッ!!」

二対の爪が熊の首をとらえた―――かに見えたが、間一髪の所で両腕を犠牲にされて防がれる。

「っちゃー、防がれちゃったか」

しかし、白露に焦りはない。いや、実際はかなり疲労しているのだが、それでも余裕の表情だけは崩さない。

「グゴォォォォオオッ!!」

両腕が死んだクマの攻撃方法は、もはや牙による噛みつき攻撃しかない。さらに、クマの頭蓋はかなり固く、弓矢などはどれほど鋭利でも簡単に弾かれる。そのクマ本体が化け物クラスなら、その硬度もまさに規格外だ。

そのまま白露に向かって倒れていく。その大口を開けて、白露に今にも噛みつかんと襲い掛かってくる。

「遅い」

しかし、虎の敏捷性には敵わない。

一瞬の内に、クマの首の横を駆け抜け、その肉を食いちぎる。

「―――不味い」

そう吐き捨てるや否や、空中で反転、そして再度、爪と高所からによる強襲攻撃を仕掛ける。

「『狩虎・稲妻』ッ!!」

首の頸動脈を切られ、失血によって絶命するクマ。

血を浴び、白い装束が赤く染まる中、白露は手についた血を舐める。

「んー、まずい。無益な殺生しちゃったか・・・・」

そう吐き捨て、白露はその場を去り、次の場所へと向かう。

 

 

 

 

「オォォオオ!!」

優の拳が、レンリの仕込み杖に直撃する。

「ぐぅ!?」

「ォオッ!!」

さらに、追い打ちをかけるような鋭い右の回し蹴りが叩き込まれ、さらに後退させられる。

「く、このぉ・・・!!」

「無駄ァ!!」

反撃に転じようとしたレンリであったが、それすらも許さず、優の左足が仕込み杖を持つ手を蹴り上げる。

その手から、僅かながら血がこぼれる。

優の一挙手一投足全てが一撃必殺にして刀の如き斬撃を有している。

その、いわゆる『刀人間』と化している優に対して、猛獣がいなければ大した実力も出せないレンリは追い込まれるばかり。

「ふん、三流は三流でも、お前はその下の下、そのさらに下だな」

「ぐ、舐めやがってぇ・・・」

「だからさっさとくたばれ」

間髪入れずの貫手(ぬきて)がレンリを襲う。

それを間一髪で防ぐも、さらに吹っ飛ばされる。そのまま壁に激突、砕け散らせる。

「目障りだ」

「ぐ・・・くぅ・・・」

あまりにもかけ離れた実力差、その事実に、レンリはその思考を、その疑問へと費やしていた。

(なんでだなんでだなんでだ!なんで僕が倒れてるなんで奴が立っている!?地面に伏せて悲鳴をあげんのは向こうだろ!?どうして僕なんだ!ありえないありえないありえない!!)

あまりのナルシスト思考に到底この状況を信じられないレンリ。

もはや意地とプライドだけで戦ってるだけに過ぎないレンリに対して、レンリと同じ意地とプライドを持っているうえに圧倒的技術力と鋼の体を持つ優は、レンリにとってもはや暴れるだけの豚同然。

このまま料理されてしまうのがオチだ。

「うがぁぁあ!!」

半狂乱となって優に襲い掛かるレンリ。

しかし、それすら軽くあしらってしまう優は、最初の一太刀を弾いた直後に、引き絞った左拳をレンリの鳩尾に叩き込んだ。

「ぐげう・・・!?」

吹っ飛び、建物の屋上から落ちて地面に墜落する。

「ぐう・・・げぇ・・・ごほ・・・」

先ほどの一発が効いたのか、血を吐くレンリ。

「へえ・・・人間じゃないと思ってたが、なんだ、赤いじゃないか」

そんなレンリの吐く血を見て、そう冷ややかな感想を述べる優。

「まあ、それで手加減する気は毛頭ないが」

徐々にレンリに歩み寄っていく優。

(くそう・・・ふざけるなふざけるなふざけるな!僕は処刑衆の一人『猛獣刑』のレンリなんだぞ!なのになんであんな余裕そうな表情をしてこっちに来るんだあのガキは!!)

もはや、迷っていられない。

あんな子供に敗北するぐらいなら、獣以下の存在にでもなんでもなってやる。

そんな思いがレンリを駆り立て、その体に、一本、注射をした。

「・・・!?」

一瞬、レンリの体が痙攣によって跳ね上がる。

「許さない・・・もう許さないぞ・・・お前はボクを怒らセタ・・・・だかラ、イマ、こコでシねェェェエエエ!!!!」

体が肥大化し、瞬く間に筋骨隆々な体格へと変化する。その肌も変化し、どこか緑色へと変色している。

「ウガァァアアア!!!」

拳を振り上げて、振り下ろすレンリ。

しかし、そんな変り果てた姿となったレンリを見ても優は少しも動揺せず。

「・・・たかが、そんな変化した所で」

優の手刀が瞬く。すると振り上げられたレンリの腕がまるで肉厚のハムのように肩までスライスされていた。

「ナ、ナァァアアア!?」

「出直してこい―――『十連・瓦割(カワラワリ)正拳』ッ!!」

優の右拳がレンリに炸裂する。

それによってレンリが吹っ飛ぶ。するとどうだろうか。突然、レンリの体がさらに跳ねる。しかし、一度だけにとどまらず、その跳ね上がりは回数を増していき、十回目で、レンリの体が爆散した。

「ふん・・・さて、皆さんはどうなったでしょうか」

肉片と化したレンリに一瞥もくれず、優は、さっさと信也たちの元へと向かった。

 

 

 

 

 

刃が交錯する。

千の刃が降り注ぎ、しかし直撃するもの全てを弾いて無傷でしのぐ。

「ふふ、いくらやっても無駄です。どうあがいても、貴方たちに勝ち目なんてありません」

「そん・・・なの・・・やってみなくちゃ・・・分からないッ!!」

園子の槍が唸って、右薙ぎにヒュアツィンテを打ち据える。

しかし、その一撃はヒュアツィンテの操る剣の一本に防がれる。

「『血欲する婦人(エリザベート)』」

「ッ!?」

死角から、血のように真っ赤な剣が園子に向かって振り払われる。それを園子は状態をのけぞらせて、頬の薄皮一枚にとどめる。

しかし、その掠り傷から漏れ出た血が、急激にその剣に吸い取られていく。

「くっ!?」

「『封印縛鎖』『止血』ッ!!」

そこへ、千景がすかさず園子の傷口を止血、吸血を阻止する。

「ふふふ・・・まだ足掻きますか?」

「当たり前だ」

鎌を構えて、公然と言い放つ。

「こんな所で、諦めてたまるかってんだ・・・!!」

「早々に諦めた方が、身のためですよ?」

ヒュアツィンテの両側から、炎が舞い上がる。一方はわずかにどす黒さを持つ憎悪の炎、もう一方は、龍の形を成す、嘘殺しの炎。

「さあ、処刑を続けましょうか」

 

 

 

 

 

 

剣と槍が交錯する。

「オォォオオ!!」

「ぬぅぅん!!」

辰巳の渾身の振り下ろしをジガは受け止め、反撃といわんばかりに槍を突き返す。

激しい攻防、押して押されての打ち合い。

激しい打ち合いの中で、しかし押されているのは辰巳、ジガの刃は、すでに数十発と辰巳に叩き込まれている。

しかし――――その全てが邪竜の鎧を纏い、元の邪竜の力を全開にしている辰巳の皮膚にはわずかながらの傷を付けさせるだけだった。

「邪竜ファブニール・・・それを浴びた英雄は、無敵の肉体を得たと聞いたが・・・なるほど、まさに伝説の再現だ」

「言ってろ!!」

横薙ぎの一撃を飛んで躱される。

その攻防、その間、わずか十秒。

それによって、すでに数千にも及ぶ剣の打ち合いが行われていた。

「しかし、それでは追い付けないどころか勝てんぞ」

「ああ、そうだな」

ファブニールを纏っていてもこの有様、互角に持ち込めないどころか押され気味だ。

いや、むしろ相手は本気すら出していない。こちらが一方的にあしらわれているだけだ。

(重ね掛け・・・三百年前に一度やったきりだが・・・リスクもあるが仕方がない。すでにこの体はとうの昔に人間をやめている・・・・!!)

覚悟を決め、神樹へのアクセスを開始する。

しかし、

「それをみすみす見逃すと思うか?」

「だろうな」

突き出された神速の突きを、辰巳は己が剣、滅竜剣バルムンクをもって弾き飛ばす。

「戦闘と平行して・・・!?」

「この一撃を防げればいい――――来やがれ―――『ジークフリート』ッ!!」

間髪入れずに、神樹からの情報が辰巳の肉体に叩きつけられ、上書きされる。

肉体は変化し、鎧さえもその形を変え、最適な形態へと。

宿すは滅竜の英雄と黄昏の邪竜。

振るうは英雄の剣技と肉体、そして黄昏の力。

その相反する二つの力をもって、辰巳は、その姿を幻想の英雄へと顕現させる。

「ハァッ!!」

重い一撃がジガへと叩きつけられる。

「ぬぅ・・・」

ぎりぎりの所で槍によって防がれる。紙一重ともいえるその差は、しかし辰巳にとってはさらなる絶望を叩きつけられる事となる。

(その紙一重さえも超えられないのか・・・)

「ふむ、良い一撃だ・・・だが、まだ足りない」

確かに攻撃は直撃した。しかし、それが効いたかと聞かれれば否。

相手は全くの微塵も同様していない。辰巳の渾身の一撃さえも、奴は防いで見せたのだ。

「ジークフリートとファブニールの技術と膂力をもってしてもその程度か・・・!」

ジガが襲い掛かる。それに対し、辰巳はこれから起こるであろう戦いの展開を脳内の片隅に思い浮かべつつ、せまる死のカウントダウンを必死に引き延ばすための努力の準備をした。

 

 

 

 

 

 

戦いは、様々な所で展開していく。

 

 

 

 

 

「―――あと、四体ィっ!!!」

幸奈の拳が、アリエスを落とす。

残るは、鯨型のバーテックスと、ペルセウス、そしてベアーとレオののみ。

「いや、あと三体だ」

そこへベアーに向かって矢の雨が降り注ぎ、その表層全てを削り取って、その御霊さえも破壊する。

「よし、このまま押し切ろう!!」

「うがぁあああ!!!」

ホエールの上では、美紀がペルセウスに対して白兵戦を挑んでいる。

「やぁああ!!!」

美紀のナイフによる突きを丸い盾で防ぎ、右手のハルパーで切り返す。

しかし、横に薙ぎ払われるその一撃を、床に倒れ込む事によって回避、その膝裏を蹴って折って膝を着かせる。

そして、ペルセウスの右側から首を掻っ切りに行く。

しかし、ペルセウスがついたのは、右の片膝のみ、美紀の攻撃が届く前に、そのハルパーを美紀の首へと迫らせる。

(はやい・・・!?)

その速さに驚愕するも、しかし間に合わない。

このままでは、美紀の頭と胴体がお別れしてしまう事になってしまう。

しかし、その時は訪れない。どこからともなく飛んできた矢が、ハルパーを弾き飛ばし、美紀の首切断を阻止した。

その正体は佐奈。すでに落ち行くベアーの上から狙撃してきたのだ。

そのまま、美紀のナイフの一撃は、ペルセウスの首を掻っ切る。バランスを崩したペルセウスは、そのままホエールの上を転がり落ちていった。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

その様子を見届けた後、美紀は立ち上がって佐奈に向かって手を振る。

「ありがとー!佐奈さーん!」

その様子に、佐奈も微笑んで手を振り返す、が、すぐさまその表情が強張り、美紀が首を傾げた所で、声が美紀の耳に届く。

「美紀、逃げて・・・!!!」

それは真斗のつたない声。しかし、美紀は、背後から来るすさまじい殺気を感じ取り、直観のままに前に蹴りだして、背後から振り抜かれた凶刃を回避する。

そして、改めて美紀は背後を見て、絶句した。

空を飛んでいるのだ。

ペルセウスが、翼もなしに、千切れかけている首をそのままに飛んでいる。

まるで、幽霊のように。いや、この表現は正しくない。ただ、そこに、背中に翼があるかのように飛んでいるのだ。

その姿に、美紀は戦慄する・・・も、すぐさま美紀の背後から矢が吹き抜け、ペルセウスはその矢を盾によって防ぐ。

「美紀、飛べ!!ペルセウスはその伝説上、怪物退治に神々から様々な武具を貰っている。空を飛んでいるのはその一つだ!!」

佐奈の声に従い、その後に続く言葉を無視しつつ、ホエールから飛び降りる美紀。そんな美紀を受け止めたのは弘だった。

「その名もタラリア、羽のついたサンダルって聞いてるけど、羽なんてついてないじゃないか嘘つきめ」

そんな軽口の元、弘は取り出した飛行体『ヴィマーナ』によって他の仲間たちを回収する。

「これで残りは三体」

「ああ、一気にかたを―――ッ!?」

しかし、そこで港側の海から大きな水柱が立ち上る。

「何!?」

「あれは・・・」

よく目を凝らすと、巨大な人型とも言い難い形状のバーテックスが、海につかりながら何かを睨みつけていた。そんな真っ白バーテックスに、無数のミサイルやらレーザーやら砲弾やらが叩き込まれていく。

『―――――!?』

形容しがたい悲鳴と共に、爆炎を喰らうバーテックス。

そのバーテックスを打ち据えた存在は、今もなお、その巨大な武装をもってそのバーテックスを追撃しようとしていた。

「海路君・・・」

「あの狙撃手か、凄まじいな」

「・・・皆、前」

『ん?・・・うぉあぁぁああ!?』

気付けばホエールが吐き出した霧状の何かが襲い掛かってきていた。

慌てて回避に成功するも、戦闘はまだ続いているのだと再認識させられる。

「と、とにかく観戦は後回しだ!今はさっさとあのデカブツ共を蹴散らすぞ!ファイアー!!」

『ファイアー!!』

「・・・・って、わざわざ子供向けアニメの幼稚園児家族のような事言う必要ある?」

幸奈のツッコミはこの際無視されて、戦いは続いていく。

 

 

 

 

 

あちらこちらで、戦いが継続していく。

 

 

 

 

 

地面から杭が突き出す。その全てを、夏凜は超人的な身体能力をもって全て躱す。

その一方で、別方向から血の刃が襲い掛かる。リアルタイムで無制限に、そして現在進行形で変形していくその刃は、普通に弾くだけでは防げない。しかしそれすらも夏凜は両手の刀をもって凌ぐ。

が、実際はかなりきわどい。

(極限羅刹は・・・使うにはあまりにもエネルギー効率が悪い・・・!!)

ようはペース配分なのだが・・・正直、このままだと押し切られる可能性がある。

「どうした?その程度か?やはり我々二人を相手にするのは少々荷が重かったようだな」

「ふふ、随分と自信があったようだけど、それじゃあだめよ。自信だけじゃ私たちには勝てない」

ほくそ笑み敵二人に対して、夏凜は歯噛みする。

ダーナの能力は一定範囲内による杭の無限召喚。その召喚される杭の数に限度は無く、その領土の広さもあまりにも広い。

一方のラミアの能力は自らが垂れ流した血による攻撃。弾丸や剣、槍など変幻自在だ。

その上、リサイクルしてくるのでそれほど巨大なものじゃなければ何の問題もないらしい。

非常に厄介な話だ。

こっちは今後の事も考えて力を温存しなければならないのに、相手はとことん本気だ。

もういっその事、力を使ってしまった方がいいのでは。そんな思考が頭を埋め尽くした時。

「何をしている」

次の瞬間、夏凜でも凌ぐのは骨が折れそうな程の数の杭と血の攻撃の嵐が迫っていた光景が、一瞬にして晴れてしまった。

そして、その光景に、新たな影の存在が。

真っ黒な和風装束。足には白い足袋と藁草履。そしてその手には夏凜から見てもかなりの業物の刀。

それは、間違いなく、夏凜の兄、三好春信だった。

「兄貴!?なんでここに!?」

「なんかよく分からないびりびりする奴を片付けて次の敵を探していたらお前を見つけた。思った以上に時間がかかったが問題ない。すぐに片付ける」

「いやいやいや何さぞ当たり前のように言って・・・あぶない!!」

夏凜が悲鳴のような声をあげる。春信の背後からは、先ほどとは比較にならないほどの杭と血の雨が降り注いできていた。

空を埋め尽くす程、大量の。

「いいか夏凜、もし時間が足りないのであれば」

春信の体から、何か、オーラのようなものが揺らめいた。

依然として、春信は、焦っていなかった。

「一瞬の内の全力をもって、すぐに片付けろ」

勝負は一瞬。春信が五秒をもってその杭と血を全て打ち払い、一気にダーナとラミアへと接近する。

「秘奥――――」

「「ッ!!」」

迎撃は不可能と判断したのか、ダーナとラミアは防御姿勢に出る。

しかし、無事防御の構えはとれたが、春信は、その上を行っていた。

 

「―――『蓮華の太刀』」

 

横一閃、二人に叩きつける春信。

それだけで、敵二人の胴体を、横に両断した。

「まさか・・・たった僅かな時間で勝負が決してしまうとは・・・み、見事・・・・」

「う、嘘よ・・・こんな、あっけなく・・・」

言葉、またずして地面に倒れ伏す敵二人。

「は・・・はは・・・」

そして、夏凜は乾いた笑い声しか上げられなかった。

これが、自分の兄。歴代勇者最強の実力を誇る、正真正銘、最強の勇者の実力。

勇者システムなんぞ使わなくても、先ほどまで夏凜が苦戦していた相手を、二人まとめて倒してしまうなんて。

(追い付けるイメージが湧かない・・・)

あまりにも、遠すぎる。

これが、最強。自分が目指しているもの。

「それで、結城友奈は見つかったか?」

ふと、そこで春信から話を振られる。

「いいえ、まだよ。今、東郷を先に行かせた」

「それなんだが、今さっき三ノ輪銀の戦闘不能を確認した。東郷は今、銀を連れて結城を探している」

「え!?銀が!?」

それには流石に驚く夏凜。

「なんで・・・」

「先ほど、巨大な化け物が見えた。三ノ輪銀が以前話していた、『禁じ手』だろう。おそらくそれを使って力を使い果たしたといった方が妥当だろう」

「なるほど・・・」

とりあえず、これで納得はした。

しかし、だからと言って友奈が見つかったわけではない。

「お前は俺と一緒に行動しろ。今は乱戦状態。何が起こるのか分かったものじゃない」

「いいわ。行きましょう」

そうして、二人は行動を共にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは続いていく。しかし、徐々にその戦況は傾いてきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、だんだんと、襲撃してきた軍勢の数が減ってきている。

今の所、防衛側の被害は最小限に収められている。このままいけば、勝てるだろう。

そう、状況は勇者側の優勢で進んでいる。

ああ、だからこそ、敵は――――

 

 

 

 

 

――――起死回生の一手を打つのだ。

 

 

 

 

 

 

 

それは一番早くに察知したのは、今、強大な敵との戦闘をしているものでも、味方の援護の為に動こうとしている者でも、今、敵に勝つための準備をしている者でもなく―――

 

 

―――唯一戦闘に参加していない彼女だった。

 

 

 

おもむろに、路地から出て、彼女は、空を見上げた。

その体は、もはや人間の皮膚のほとんどが剥がれ落ち、右腕は全てが赤黒い肌を晒し、顔の一部など、体中の様々な所も、その赤黒い肌を晒し続けている。

しかし、彼女は、それすらも忘れて、これから()()()()()存在に、怯えずにはいられなかった。

「・・・・来る」

そう、呟いた直後に――――

 

 

 

空が、砕け散った。

 

 

 

 




次回『完全生命体』

それは、可能性(IF)を全て消し飛ばす存在。
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