不道千景は勇者である   作:幻在

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みなさん、新年号もよろしくお願いします(←おせーよ

ですので最近とじともにはまってきてます。


希望VS絶望

ブルーメと対峙した者たちが、全員、地面に沈む。

「これで終わりか。他愛無いな」

ブルーメは、地面に沈んだ者たちを嘲笑い、背を向ける。

「ふむ、他の所はまだ手こずっているようだな・・・どれ、一つ、手伝ってやろうか・・・」

ブルーメが、そう言って、他の場所へ向かおうとする。その時、

「どこに行く気だ・・・!!」

「ッ!?」

信也の後ろ回し蹴りが炸裂する。

しかし、顔面を狙ったその一撃は、掲げられた腕によって防がれる。

「鬱陶しい虫ケラだ」

「ッ!?」

振り返ったブルーメの顔は狂喜に歪んでおり、その顔に信也はぞっとしてしまう。

だが、ブルーメが何か行動を起こす前に、掲げられた腕の反対側の方向の顔面に、幸奈の鉄拳が炸裂する。

だが、その一撃は障壁によって阻まれていた。

「無駄だ」

そう囁かれた直後に、信也の胸に、幸奈の腹に、それぞれの拳が突き刺さっていた。

「ごっ!?」

「がっ!?」

それぞれの方向に吹き飛ばされた二人は口から血を吐き出す。

そのまま地面に落ちる。

「う・・ごはっ・・・」

「が・・がはっ・・・」

さらに血を吐く。

相当ダメージが深い様だ。

「フハハ、どれだけ貴様らが束になって掛かった所で、無駄な事だ。絶望には勝てないのだ!!」

嘲笑うブルーメ。しかし、彼らは立ち上がった。

「仮令、絶望しかなかったとしても・・・」

がくがくと笑う足を無理矢理抑えつけて、二人は立ち上がる。

「その絶望を乗り越えて、私たちは、必ず見つける・・・」

立ち上がって、ブルーメを睨みつける。

「希望は、絶対にあるから・・・アイツは、それに向かって真っすぐ進んでいった・・・だから・・・・!」

 

「「(わたし)たちは絶対に諦めないッ・・・!!」」

 

信也と幸奈はそう叫び、そして地面を蹴る。

「フハハ!!たった二人でこの俺に立ち向かうか!!良いだろう!貴様らの言うその希望・・・この俺が叩き潰してくれよう!!」

「おぉぉぉおおおッ!!」

「ハァァァアアアッ!!」

信也の足払いがブルーメの両踵を狙う。だがそれを飛ばれて躱される。その飛んだ所で幸奈の右拳が飛ぶ。されどそれすら体をのけ反らされて躱され、その右腕を掴まれて、体が回転する勢いのまま背中から地面に叩きつけられる。そのブルーメの背中に向かって信也の後ろ回し蹴りが迫るも、それは前方に飛ばれる事で躱される。

さらに、いつ掴んだのか、その手には地面を砕いた際に出来た破片が握られており、それが音速を超えて投げられる。それを間一髪の所で躱すも、そこへ瞬次に接近してきたブルーメの膝蹴りが砲弾の如く迫る。

その一撃が、信也に叩きつけられる直前、信也がその膝に自らの左足を乗せ、その衝撃を上手く受け流して後ろに飛ぶ。

そして、その横から立ち上がった幸奈がブルーメに殴りかかる。その顔面を狙った一撃は頭を下げられる事で躱され、その腕が掴まれそうになると、入れ替わるように左拳が直撃する。

だが、それすら防がれると今度は蹴りが幸奈の腹に向かって放たれ、その一撃を幸奈はブルーメの肩に手を置く事で体を上方へ動かし、その足に乗り、今度は顔面に向かって蹴りを叩き込む。

「先ほどから同じ場所しか狙っていないな。そこ以外狙う脳がないのか?」

しかし、やはり防がれていて、すかさず足を引っ込める幸奈に向かって、ブルーメの掌打が叩きつけられる。

「ぐぅ!?」

どうにか腕を交差させて直撃を防いで後ろに飛ぶ幸奈。二、三度地面を跳ねるもすぐさま態勢を立て直す。

その間にまた信也が飛び込み、脇腹に向かって渾身の蹴りを叩き込む。

だが、

「無駄だと言っているだろう?」

しかしその一撃も装甲に阻まれ届かず、その足を掴むなり幸奈に向かって投げ飛ばす。

「ぐうお!?」

「え!?」

砲弾のようになげられた信也に幸奈が当たり、地面を転がる。

「何度やっても無駄だ!お前たちに、希望は無いのだァ!!」

高々とそう叫ぶブルーメ。

絡み合って転がった二人は、信也が上、幸奈が下になるように地面に転がっていた。

圧倒的、とはこのことだろうか。

二人とも、真解と切り札が解除されているとはいえ、あまりにも攻撃が通用していない。

他の仲間は全員気絶している。

二人だけで、この状況を打開するのは、あまりにも絶望的だ。

「うる・・・っせえ・・・・」

信也が、そう呟く。幸奈の上から、どうにか起き上がり、ブルーメを睨みつける。

「絶望の中に・・・希望って奴があるんだろうが・・・お前がどれほど絶望絶望言おうがなぁ・・・」

炎が迸る。

「諦めない限り、希望は必ずあるんだよッ!!!」

炎が迸り、信也が地面を蹴る。

「だぁあ!!」

「無駄」

真解を発動した状態での、蹴り。だが、それをハエをはたくようにブルーメは弾き飛ばす。

弾かれた信也は、そのまま吹き飛び、地面に落ちる。

「無駄、無駄、無駄ァ!!」

「くどいッ!!」

叫ぶブルーメの頭頂部に、さらに幸奈の踵落としが決まる。

「だから無駄なのだ」

「~~~ッ!!」

だが、やはりブルーメには効かない。

すぐさまその足を掴まれて、地面に叩きつけられる。

「あぁああ!?」

「幸奈!!」

一度跳ねて、信也の足元に落ちる。

「大丈夫か・・・?」

「ええ、まだいけるわ・・・!」

信也の言葉に、幸奈は頭から血を垂れ流しながらも立ち上がる。

「いい加減、不愉快だ・・・」

流石に、ブルーメも苛立ってきたのか、殺意を膨れ上がらせる。

「もう倒れろ、虫ケラども」

ブルーメの両腕に力が収束する。あれで決めるのが分かる。

(くそ・・・まだ力が足りない・・・)

(スリュムでも力不足だった・・・・)

二人は、必死に考える。

どうすればこの化け物に勝てる?どうすれば、この絶望的状況を打開できる?

一体、どれほどの力が必要なのだろうか?

 

どのような反則技を使えば、勝てるのか。

 

「これで最後だ」

もう、ブルーメの両手に溜まったエネルギーは、今の二人では止める事は不可能。

であるならば、どうする?もう手はない。

 

本当にそうか?

 

何かを見落としてはいないだろうか?

何か、重大なことを、見落としてはいないだろうか?

今、限界を超える可能性がある方法が、あるんじゃないのか?

「絶望の果てに死ねッ!!」

ブルーメが、その両手を前に突き出し、絶望の咆哮を解き放つ。

 

「『魔獣ノ力(ビースト・フォース)』『黒竜の咆哮(バハムート・ブレス)』ッ!!!」

 

虚無の咆哮が、二人に迫る。

(――――あった)

(――――あの、反則技が・・・!!)

 

そして、光が二人を飲み込む――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が舞い上がる中、ブルーメは、自分の勝利を確信していた。

「呆気なかったな・・・くく・・・フハハハハハハハハハ!!!!」

嘲笑い、思わず高笑いをするブルーメ。

だが、

「おい」

「まだ終わってないわよ」

唐突に、声が聞こえた。

「なに・・・?」

その声に、思わずブルーメは高笑いをやめて、そちらを見た。

煙舞う中から、何かが叩きつけられる。

(これは・・・熱い・・・いや、冷たいのか?・・・いや、これは、()()か!?)

その二つの温度に、ブルーメは思わず驚く。

そう、これらは普通はありえないのだ。

 

熱いと冷たい。これは本来なら、両立する事なんてありえないのだから。

 

そう、であるなら、これは――――

 

 

「真解―――『岩漿・炎帝竜(マグマ・ドラゴン)』」

「二体同時憑依――――『霜の巨人と吹雪(スリュム・アンド・ブリザード)』」

 

 

信也の纏う装束は、溶岩を表すかのように緋色と黒を主とした、竜を模したようなものに。

一方の幸奈の纏う装束は、氷壁を表すような紺碧と黒を主とした、どこかの姫を思わせるようなものに。

そして、二人の纏う正反対の熱気と冷気は、明らかにその威力を増していた。

「・・・なんだ?それは?」

その姿に、ブルーメは首を傾げる。

「第三文字・・・かつて、千景の先祖がやってのけたっていう、己の心象心理を元に、御神刀に文字を焼き付ける、奇跡みたいなものだ。救導者の歴史上、それをやってのけたのは、千景の先祖ただ一人みたいでな。真解を初めて発動させたのもその人だけだ・・・でも、俺にもできた」

「私のは、二体の精霊を同時に己の体に憑依するもの・・・だけど、最強の精霊っていうのに疎いかしらね・・・・()()()()()()を憑依させてもらったわ」

二人は分かっていない。

信也は、確かに第三文字である『竜』を呼び起こした。だが、それだけではなく、彼は、己の力の本質そのものを変えた。

彼の力は『炎』だ。それを『岩漿』即ち『マグマ』へと変質させたのだ。

大地の力そのものたるマグマ。それを、彼は今、発言させたのだ。

一方の幸奈は、事象と言ったが、それは言って容易い事ではない。

ブリザードは現象、人々が知覚出来る、形無き自然の力。

人間の力では、自然の力を制御することは不可能。なぜなら、自然の猛威は、どうあっても防ぐことなどできない。

出来る事すれば、それを凌ぐ術のみ。

だが、自然の猛威に意思はない。だからこそ凌ぐことは出来る。だが、それが意思を持ったとするならば?操れたとするのなら?

疑似的なものではなく、吹雪という、強大すぎる猛威を操る事が出来たとするならば?

それは、まさしく、災害ではない――――新たな化け物の誕生である。

 

マグマとブリザード。

 

どちらも、自然の猛威。人が触れてはならない、本質を持つ力。

その力が今、二人の手の中にある。

「ふん、それがどうした?」

しかし、ブルーメは侮る。

たかが人間。その程度が一体なんだというのか。

所詮は、人間の力。恐れるに足らない。

「『魔獣ノ力(ビースト・フォース)』――――」

ブルーメの両手に、光の爪が三本づつ現れる。

それを展開したまま、ブルーメは、音速を超えて二人に接近する。

そのまま二人の首を刈りに行く。

この速度に、反応できる訳がない。なぜなら、人間だから――――

 

 

その侮りが、彼に、初ダメージを与える事となる。

 

 

信也の蹴りが、幸奈の拳が、それぞれ、顔面と腹に叩きつけられる。

 

 

 

纏われていた装甲を貫いて。

「ウラァァァアッッ!!!」

「ハアァァァアッッ!!!」

「ぐごえッ!?」

熱気が腹を突き抜ける。冷気が顔を()()

その二つのダメージをもって、ブルーメは吹き飛ぶ。

「ば、馬鹿な・・・・!?」

信じられない、という表情で、ブルーメは吹き飛ぶ中で二人を見る。

「全力で来い」

信也が、左手でくいくいと挑発する。

「じゃねえと、屈辱にまみれて死ぬことになるぜ」

その顔は笑っておらず、二人は真っ直ぐにブルーメを見ていた。

油断も隙も無い。全力でブルーメを倒すという姿勢だ。

その姿に、立ち上がったブルーメは。

「人間、風情が・・・」

その殺気を明らかに増大させて、立ち上がる。

そう口角を吊り上げて、目を血走らせて叫ぶ。

「いいだろう!!ならばすぐにお前たちを絶望の底に叩き落してくれるッ!!」

「やってみろォ!!」

ほぼ同時に、双方は駈け出す。

そして、衝突と同時に、凄まじいまでの攻撃の応酬が繰り広げられる。

マグマの熱が迸り、吹雪の冷気が叩きつけられ、それを魔獣が喰らうかのような反撃が飛び散る。

もはや、人間の目ではとらえられないような激しい殴り合いが勃発していた。

その最中でブルーメが二人を両の拳で殴って弾き飛ばす。

「うわ!?」

「ぐぅ!?」

弾かれてもどうにか耐える二人。そこへブルーメが神速をもって襲い掛かる。

「ッ―――ァアッ!!!」

だが、それに対して動いたのは信也。右足を煮え滾らせて、その拳の一撃を真正面から衝突させる。

「がぁぁあああ!!!!」

迸る熱は推進力となり、その推進力が破壊と威力を生み、ブルーメの拳を弾き飛ばす。

「な!?」

「ハァァア!!」

そこへ、幸奈の拳が炸裂する。絶対零度の拳が、ブルーメの顔面をかばう為に掲げられた左腕を撃つ。

「ぐぅ――――舐めるなァ!!」

その一撃を耐え切ったブルーメが消える。

そして間髪入れずに背後から二人の後頭部を地面に沈める。

「お前たちが、俺に勝つことなど、あり得んのだァぁああ!!」

床に砕け沈む二人にそう怒鳴り散らすブルーメ。だが、次の瞬間、信也の周囲の床が溶け、逆に幸奈の周りは一気に凍りさらに砕け散る。

そして、それと同じようにブルーメの右手が焼け、左手が凍る。

「なッ!?」

「うるっさいんだよ―――」

「うるっさいのよ―――」

 

「「この獣畜生がァッ!!」」

 

二人の蹴りが、ブルーメの腹に炸裂し、上空へ吹き飛ばす。

「ぬぐぅ!?」

「「ハァァァアア!!!」」

炎と氷が、岩漿と吹雪がその猛威を振るう。

飛び上がった二つのエネルギーは、上空のブルーメに向かって一気に突っ込む。

だが―――

「舐めるなぁああ!!」

絶望の咆哮が二人を襲う。

「ぐぁぁああ!?」

「あぁあああ!?」

それを喰らった二人はたちまち地面に叩き落とされる。

そこへ、ブルーメの伸びる拳が叩きつけられる。

「薄汚い罪人共が・・・なぜ絶望しないッ!?」

二人を飲み込む程の無数のラッシュが、地面に向かって何度も叩きつけられる。

それも、一発逃さず、全て、信也と幸奈に叩きつけられる。

「勝ち目のない、未来の無い世界の為に、何故そこまでして戦う!?何故命を削ってまで戦う!?どうしてそこまでして無意味な戦いを続ける!?」

それが理解できない。分からない。そこまでして、命を懸ける意味が全くと言っていい程分からない。

そこまでして、戦う価値が、一体どこにあるというのか。

この終わりしかない世界に、一体、どんな意味があるというのか。

ラッシュがやめば、そこには、散々殴られてボロボロになった信也と幸奈が倒れていた。

ブルーメが地面に降り立つ。

ここまで滅多打ちにされて、普通なら生きてはいない程のダメージだ。

しかし――――二人は立ち上がった。

「何故だ・・・」

足ががくがくと笑っている。腕も震えている。血も、かなりの量を垂れ流している。

もはや、立ち上がる力など無い筈なのに、二人は立ち上がる。

「何故だァ!?」

その二人に、ブルーメは怒鳴る。

理解できない。何故そこまでして、命を懸けてまで戦う必要があるというのか。

そんな事をしても、無駄だというのに。何故。

「何故立ち上がる!?もうお前たちの世界は終わるというのに、何故お前たちは戦う!?何故絶望しない!?何故お前たちはそうまでして絶望しないんだァァァアア!?」

「うるせえよ」

ブルーメの怒鳴り声の中で、すっ、と信也の声が、冷たい刃の如く届く。

「絶望しないだぁ?そんなもん、してる暇ねえ」

「言ったでしょう?私たちが諦めない限り、希望は必ずあるの・・・それに、どんな絶望的な状況でも、千景君は決して諦めなかった・・・!!」

あの日の事を、自分たちは決して忘れない。

たった一人で、強大な敵に立ち向かった、一人の勇者の事を。

誰よりも、絶望に抗った。たった一人で、強大な敵に立ち向かっていった。

 

いつもそうだ。

 

彼は、いつも一人で戦っていた。

どんな敵にも、必ず一人で立ち向かい、そして一人で勝ってきた。

 

孤独に戦っていた。

 

仲間がいても、彼は、いつの間にか一人で戦っている。一人でどんどん先に行ってしまう。

自分たちの知らない所へ、知らないステージへ、知らないレベルへ。

気付けば、遠い存在になってしまっている。

そして、それに追いつけない自分が、堪らなく悔しくて。

だから、絶望している暇なんてない。

絶望していたら、止まってしまう。もう二度と追い付けなくなってしまう。

だから、戦うのだ。

「だから、俺たちは戦うんだ・・・!!」

「千景君が戦った時と同じように、私たちは、絶望なんてしない・・・!!」

信也の踏み出した右足を中心にマグマが迸る。

幸奈の踏み出した左足を中心に吹雪が巻き起こる。

「「これで最後だ――――」」

煮え滾る熱気と吹き荒れる冷気。二つが混じり合い、とてつもないエネルギーが生まれる。

「煮え滾るは灼熱の海―――」

「吹き荒れるは氷の風―――」

「溢れ出る熱意は勝利を呼び」

「凍てつく闘志は砕けない」

「燃え上がれよ、限界まで」

「激凍心火、その身尽きるまで」

「「想いのままに迸れッ!!」」

地面を蹴り、飛び上がる。そして、燃え上がり、凍りつく足を突き出し、飛び蹴りを放つ。

それはさながら、『ライダーキック』のように―――

 

「「『溢れ出る極激の想撃(ボルケニック・グレイシャル・ブレイカー)』!!!」」

 

マグマとブリザードが螺旋を描いてブルーメに迫る。

「舐めるなぁぁああ!!!」

だが、それをまともに受けるブルーメでもない。

拳を振りかぶり、その腕に、どす黒いエネルギーが収束する。

それは、まさしく、全てを飲み込む虚無の一撃。

絶望の咆哮――――絶望への、終局の拳。

「―――其は最大にして最強の怪物」

込められる魔力はこれまでの比ではなく、彼の感情全てが込められた一撃。

「かの大神を打ち倒し、世を絶望へと陥れる、真なる怪物――――!!!」

ブルーメが、今迫る信也と幸奈に血走った目を向け、拳を振りかぶる。

「ひれ伏せ、慄け、身の程を知れ。彼の者こそ、世界を統べる者ッ!!」

今、神話最大の怪物の一撃が放たれる。

 

「―――『神々の王討ちし怪物の王(テュポーン・タルタロス)』ッ!!!」

 

絶望そのものが、奈落の底から放たれたかのように黒い拳が、二人の蹴りと衝突する。

その瞬間、凄まじいまでの衝撃が迸り、大気がはじけ飛ぶ。

交錯点で凄まじいエネルギーの衝突が起きている事によって、光が輝く。

「オォォォオオオオ!!」

「ハァァァァアアア!!」

「ガァァァァアアア!!」

絶叫を挙げて、己の全力を押し切ろうとさらにエネルギーを増大させる。

だが、その拮抗も、すぐに崩れる。

「「あぁぁぁぁぁあぁあぁああああッッ!!!!!!」」

二人の蹴りが、ブルーメの腕を弾き飛ばす。

「なッ・・・にぃ・・・・!?」

神々の王に匹敵する力を有している怪物の力を弾き飛ばして、二人の必殺の一撃は、ブルーメに突き刺さる。

「ぐあぁぁぁああぁぁああ!?ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁああああ!?こ、この俺が、人間如きにぃぃぃいいぃいいいい!?」

「絶望――――」

「貴方の―――」

 

「「負けだぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!」」

 

ブルーメの絶叫が迸り、そして、その体が、莫大な熱気と冷気によって吹き飛び、二人の一撃は、ブルーメの体を貫いた。

貫いたブルーメの体は、焼けて蒸発するか、凍りついて砕け散り、消滅していった。

「はあ・・・・はあ・・・勝った・・・?」

「ああ・・・・俺たちは、勝ったんだ」

そう呟いた直後に、二人は背中から倒れた。それと同時に、変身も解除される。

「でも・・・もう一歩も動けねえ・・・・」

「そう・・・ね・・・・」

あれほどのエネルギーを操り、そして戦ったのだ。疲れないほうが可笑しい。

岩漿・炎帝竜(マグマ・ドラゴン)』と『霜の巨人と吹雪(スリュム・アンド・ブリザード)』という規格外の力を行使して、まともでいられる訳がない。

だから、これは当然の結果。二人は、ほどなくして気絶する。

だが、生きている。

誰も死ぬことなく、生きている。

 

 

 

 

ブルーメ、死亡――――残り敵幹部、四。

 

 

 

 

彼らの勝利である。

 

 




次回『願いの為に』

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