スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIIIー1「クロスゲート」

 

 

 封印戦争から一ヶ月。

 途切れることのない砂嵐に閉ざされた超古代遺跡、バベルの塔。

 かつてはファースト・サイコドライバー、バビルの眠っていた場所であり、悪の秘密結社BF団の本拠地でもあった場所。

 現在はバビルの後継者、バビル二世ことイング・ウィンチェスターとその仲間が住まう彼らの本拠地である。

 

 新しく整備された居住スペースの一室。朽ちた外観とは裏腹に、航宙艦の内部を思わせる近未来的な内装の広々とした部屋。

 銀髪の少年――このバベルの塔の現在の主であるバビル二世、イングは自室の執務机で資料を読みふけっていた。いつものクロークはハンガーにかけ、半袖状のボディスーツ。

 その傍らには、漆黒の毛並みを持つ大きな豹、バビルのしもべ、アキレスが静かに侍っている。

 

「ったく、目の前に悲劇があるのがわかってて防げないってのは悔しいよな」

 

 「ラダム樹」と呼ばれる侵略機構についてのレポートを読みつつ、イングは眉をひそめた。

 目の前のデスクには、「シグナライト計画」及び宇宙探査艦「アルゴス号」についての資料が乱雑に積まれている。

 外なる世界――神の領域からの視点を持つ彼は、その資質と相まって高い精度で未来を予知・予測できる。

 だが、あまりにも大規模で強引な因果への干渉は、無限力のみならず“番人”からの攻撃をも誘発する。故にイングは封印戦争後、可能な限り()()()()に沿った事象の改変に努めてきた。

 力を持ちすぎた弊害というべきか、今のイングは無限力に監視されており、かつてテンカワ・アキト、ミスマル・ユリカ夫妻を救ったときよりも身動きが取りにくい状態が続いていたのだ。

 

「ご主人しゃま……さま!」

 

 不意に扉が開き、少女が飛び込んでくる。諸葛亮孔明――このバベルの塔の制御コンピューター、その対話用アバターである。

 イングが顔を上げた。

 

「ん、孔明か。どうした、そんなに興奮して」

「当該宙域に、クロスゲート出現に伴う次元震を関知しましたっ」

「! ……ついに、か」

 

 火急の報告に、イングは目を伏せる。

 

「ですが、これで我々も本格的な活動を開始できるということでしゅ……です」

「無限力の……イデの試しが始まった今なら、シナリオに対する直接的な干渉も出来るんだな?」

「はい。出来るかどうかは別にしても、運命にあらがうことは彼らの望みでもありますから」

 

 主の問いに軍師はすらすらと解答する。

 僅かに考える仕草をするイング。その脳裏には、ここ一ヶ月の間に観測、準備した“因子”が思い浮かぶ。

 因子とはすなわち“因”、『直接的原因』であり、『間接的条件』、“縁”との組合せによってさまざまな『結果』、“果”を生起する。アズラエルとの接触はそのうちの“縁”に当たり、アカシックレコードに記された因果(シナリオ)を変化させる波紋となりうる。

 さまざまな運命が交錯するこの宇宙には、本来ならあり得ない因果が頻繁に発生する。しかし、変えることが困難な定めというものも思いの外多い。

 イングは、そういったアカシックレコードの絶対運命を覆そうと足掻いているのだ。

 

「孔明、ガルーダとネプチューンは?」

「“B.Z”氏の協力の下、鋭意改修作業中です。当面、ご主人さまの護衛がアキレスだけになってしまいますが……」

「んー……ま、アキレスがいれば十分だろ」

 

 孔明の懸念に、イングはあっけらかんと答えた。もともと彼は、深く物事を考えない楽観的な質であるし、自分としもべの力を信じている。

 そのアキレスだが、相も変わらず主の足元に寝そべっている。

 

「んじゃま、相方さんと妹様を呼びに行くかな。孔明、アキレス」

「は、はいっ」

 

 立ち上がったイングに従い、軍師としもべが続く。

 テンプレートな執事風の男性に姿を変えたアキレスは、トレードマークとも言える黒いクロークをハンガーからとって、腕時計型通信端末を装着するイングに着せる。

 当初は嫌がっていたイングも、最近は素直に着せられている。諦めたとも言う。

 

 

 バベルの塔、格納エリア。

 オーバーホールを終え、返還された《エグゼクスバイン》と《ビルトファルケン・タイプL》がメンテナンス・べッドに横たわっている。

 また、奥のスペースには六〇メートル弱の真紅(あか)い厳めしい特機(スーパーロボット)が鎮座していた。

 

「クロスゲートとやらが現れれば、また戦争が始まる……そうなんだな、イルイ」

 アーマラが、いつものように腕を組んだ挑戦的なポーズでクールに立っている。

 

「うん……宇宙が、銀河がざわめいてるの……」

 一方イルイは、儚げな容貌に微かなおびえを浮かべて言う。

 

「だいじょぶですよ、イルイちゃん。イングさんとアーマラさんがなんとかしてくれます」

 イルイに抱えられたエクスは、いささか脳天気な発言で勇気づけていた。

 

 少女とロボットの微笑ましいやりとりをちらりと見やり、アーマラはイングに向き直る。

 

「しかしイング、やはりイルイまで連れて行くのは危険ではないか?」

「このバベルの塔の防御システムを疑ってるわけじゃないが、オレたちの手元に置いといた方が何かと安心だって」

「だが……」

 

 イングに諭されるアーマラの表情は苦い。存外、妹分には過保護なようだ。

 

「つーか、バルマーの連中には塔の存在はバレてるんだろうし、事実何度か探りに来てんのはお前だって知ってるだろ。そんな場所に留守番なんてさせられるかよ」

「む……」

 

 イングの指摘にアーマラが黙る。

 バルマーと思わしき集団に対しては、あえて姿を見せず静観に努めてきた。未だ彼ら新生BF団の存在を掴ませるわけにはいかないのだ。

 

「ありがと、アーマラ。わたしのこと、心配してくれてるんだよね」

「んっ、ああ」

 

 イルイの屈託のない笑みを前に、アーマラはバツが悪そうにそっぽを向く。その耳は真っ赤に染まっていた。

 こういうところはかわいいんだけどなぁ。イングは失礼なことを考えつつ、気を取り直す。

 

「さて、孔明。後のことは任せる」

「はい、ご主人さま」

 

 イングの言葉に、孔明が一礼した。

 

 

 《エグゼクスバイン》のコクピット。

 《ヒュッケバインEX》から改修に次ぐ改修を経て、もはや原形を留めていない、けれども馴染むシートに身を預けるイング。グラビコン・システムの改良により、ノーマルスーツを身につけなくなったのも久しい。

 メインコンソールに誂えた台座には、エクスがぴったり納まっている。

 

「緊張、してるんですか?」

「……ちょっと、な」

 

 これから赴くのは。宇宙の命運、それを背負っていると思えば尚更だ。

「だいじょぶです」エクスが明るく言う。

 

「だって、イングさんだけじゃなく、この世界にはたくさんのヒーローがいるんですもん! みんなで力を合わせれば、きっとどんなことだってできるはずですっ」

「……! そっか、そうだよな」

 

 一人で気負うなど、自分らしくもないなとイングは自嘲した。

 と、《ファルケン》からの通信が入る。サブモニターに挑戦的な笑みを浮かべたアーマラと、心配そうなイルイの顔が映った。

 

『どうしたイング、ビビってるのか?』

「び、ビビってねーしっ」

『ふんっ、どうだか』

「あ、お前今笑ったな? 鼻で笑ったなっ!?」

『ふふっ。お兄ちゃんとアーマラ、仲がいいのね』

「『よくないっ!」』

 

 

「ぃよしっ!」相方(アーマラ)とのコントでいつもの調子を取り戻したイングは、自分の両頬を叩いて気合いを入れ、コントロール・レバーを握り直す。

 

「行くぞ、エクス」

「はいっ、トロニウム・レヴおよびブラックホールエンジン、ミドルドライブ。――全機能、正常に稼働中ですっ」

 

 TーLINKシステムを通じてエクスがイングの念を感知し、トロニウム・レヴをドライブさせる。機体の全システムを掌握している彼女の自己診断が終了し、《エグゼクスバイン》の準備は完了した。

 メンテナンス・ベッドの固定が解除され、それと同時に頭上にある扉が開き、カタパルトが起動。テスラ・ドライブが甲高い音を立ててアイドリングする。

 

「イング・ウィンチェスター、エグゼクスバイン、出るぞ!」

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八九年 ×月×日

 地球、某所

 

 日本地区に向けて移動中、襲撃をかけてきた機動兵器部隊を蹴散らした。

 《チャクラム・シューター》を思わせる特徴的な武装を装備したオレンジ色の機動兵器群、封印戦争後から何度か交戦しているコイツらはおそらくバルマーの手の者。狙いはイルイか、あるいはオレか。

 今回は、隊長機らしき《サイバスター》に似たそこそこ手強い機体が出張っていた。

 やけにアーマラに突っかかっていたんだが、やっぱそういうことなのか?

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月○日

 地球、極東地区日本 サンジェルマン城

 

 クライン・サンドマン主催のパーティーに潜り込んでみた。

 おハイソな感じでやや場違いである。

 会場には万丈さん、ネルガル重工現会長のアカツキ・ナガレ、フィッツジェラルド上院議員や北斗の祖父である西園寺氏。それからアズにゃんもといアズラエルもいたが、珍しく家族連れだった。娘さんは相変わらず洗濯板以下略。

 

 破嵐財閥を解体して身軽になった万丈さんだが、どうも竹尾ゼネラルコンツェルンに就職したらしい。営業担当で。

 それとは別にアズラエルとの関係を何気なく聴かれたので、包み隠さず答えておいた。

 あこがれの万丈さんに感心されて、鼻高々である。

 あと、葵さんとくららさんもいたな。二人ともお仕事だったらしいけど。

 

 さておき、突如現れた「ゼラバイア」の侵略兵器を《ゴッドグラヴィオン》が撃破した。言うなれば、「超重神グラヴィオン」第一期第一話のエピソードってとこだな。

 オレらは、その後現れたラダム獣どもを駆逐して(《グラヴィオン》は重力子限界で撤退した)颯爽とその場を離れる、つもりだったのだが、サンドマン氏に打診されてサンジェルマン城への逗留することに。

 

 喧嘩腰な(しぐれ)エイジをあしらったり、ミヅキ・立花の素性をそれとなく示して警戒されてみたり。ふふん、国際警察機構の特A級エキスパートワンゼロワンの名は伊達ではないのだ。

 斗牙? 今のあいつは、オレが相手をしてやるレベルじゃあないな。

 

 とりま、リアルメイドさんごちそうさまでした。

 ただ、あんな美女美少女おまけに美幼女に囲まれているのにあんま羨ましい感じがしないのが不思議だが。

 

 なお、大方の予想通りアーマラが(ぐすく)琉菜(ルナ)と衝突していた。アイツ、ほんと期待を裏切らないよな。

 まあ、さすがにプロ子は出ないだろうが。フラグじゃないぞ?

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月△日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 宇宙に上がる《ナデシコC》に便乗してロンデニオンにやってきた。

 ヤマダさんとゲキガンガーのメディアを見て過ごしたが、あのひとやっぱディープすぎだわ。オレはわりと節操ないからな。

 

 ちなみに、民間人メンバーはさすがに退艦している。

 とはいえ、「次の決戦にも呼んでくれ(意訳)」とのこと。まったく、フリーダムなひとたちだ。

 なお、テンカワ夫妻(まだ籍は入れていない)だが、ソフィア・ネート博士の元で治療に専念していたりする。

 目には目を、歯には歯を、ナノマシンにはナノマシンを、といったところか。

 

 で、その道中、妙なものと共闘した。

 あれだ、Dボゥイ。まあ、ラダムがいるなら間違いないわけだが。

 等身大の《テッカマン》は厄介と言うほかないな。

 さて、彼の鬱フラグをどうやって粉々にするか、それが問題だ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月□日

 地球圏、衛星軌道上 オービット・ベース

 

 イカロス基地周辺に出現したクロスゲートと、ゾンダーの親玉「機界31原種」によるGGGベイタワー基地破壊を受け、かつての仲間たちがGGGの新たな拠点、オービット・ベースに召集された。

 αナンバーズ再集結である。

 

 とはいえ、封印戦争決戦時よりかは大分戦力が目減りしているな。

 主な不参加者は以下の通り。

 オルファンとともに銀河に旅立ったノヴィス・ノアのメンバー、同じく外宇宙に出たアイビスら《ハイペリオン》チーム、ロゼの導きでズール皇帝に支配された星々を解放しに向かった《コスモクラッシャー》隊、契約が切れた《トライダーG7》。《キング・ビアル》と《ザンボット3》も仇敵を倒したことで不参加だ。

 マオ社に戻ったリョウトらと別任務らしいゼンガー少佐とレーツェルさん、ヴィレッタ大尉。《ダンクーガノヴァ》、《ゼオライマー》、《サイバスター》、《グランゾン》、《ヴァルシオーネ》のパイロットたち。それから、どこぞでパン屋をやってるシーブックとセシリーだ。

 なお、目的を果たして解散した宇宙海賊だが、トビアとベルナデットらは参加している。どうやらあの後、宇宙の運び屋をやっていたらしい。

 《X1》と《X3》を(大破したわけでもないのに)ニコイチにした《スカルハート》を新たな愛機にしていた。

 そういえば、ケーンたちは結局軍から抜けられなかったんだな。

 あとはググれ。あるいは攻略本でも読んでくれ。

 

 さておき、まず重要なのはクロスゲートから現れた《ヱクセリオン》とタシロ提督、副長さんについてだろう。

 お二人は、バルマー戦役の雷王星宙域での決戦で自沈する《ヱクセリオン》と運命をともにしたはずであった。

 おそらくは役者を揃え、シナリオを円滑に推進するために無限力が手を加えたのだと思われる。

 で、シラカワ博士とかマサトがいないため、オレが代表してクロスゲートの成り立ちと仕組み、無限力の存在、そして銀河の終焉「アポカリュプシス」について可能な限り説明した。

 え?早くもぶっちゃけすぎだって? 回りくどいのは嫌いなんだ。

 つか、あれを設置したのはバビルたちなんだから、そのへんの事情は知ってて当然である。

 

 さて、ここで重要メンバーについて書き連ねよう。

 

 クォヴレー・ゴードン。

 ロンド・ベル隊に新たに編入さ れることになっていた火星基地所属の新人パイロット……らしい。乗機は《量産型νガンダム》。

 現在クォヴレーは記憶喪失とのことで、アラドとゼオラと即席チームを組んでいた都合上、オレとアーマラが面倒を見ることになった。

 可能な限り経歴を洗ったが、怪しいところが一つもなくて逆に怪しい。だいたい、αナンバーズに新人パイロットってないだろ。素人ならまだしもさ。

 彼が乗っていたという謎の機動兵器《ベルグバウ》だが、どことなく《アストラナガン》を思わせる機体だ。

 これはかつて、《ガリルナガン》に搭乗していたアーマラも同様の発言をしている。無理を言ってコクピットを見せてもらったのだが、あの人の残留思念は感じられなかった。

 ……あるいは、クォヴレーに?

 クォヴレーの動向には、今後も注目していきたいと思う。

 

 トウマ・カノウ。

 炎のアルバイター、成り行きでスーパーロボット《雷鳳》のパイロットとなった青年である。

 《雷鳳》の開発者であるミナキ・トオミネとの参加だ。

 ズブの素人だが、その心根には見所がある。オレなんかは、バビル譲りの念動力があってこそここまで戦ってこられたって自覚があるから純粋に尊敬できるし、今後の彼のノビには期待を寄せたいところだ。

 格闘ロボ乗りということで、さっそく銀河と北斗にまとわりつかれていたな。火星にいる一矢さんに会わせてやりたい。

 

 セレーナ・レシタール。

 連邦軍の特殊部隊「チーム・ジェル バ」の生き残り、潜入工作及び格闘が得意な女スパイだ。《アサルト(A)スカウター(S)ソルアレス》を乗機としている。

 実は、新生BF団のメンバーとしてスカウトしようとして目を付けていた人物だったり。ウチの幹部にぴったりじゃん?いろいろと。

 とりま、前回接触したときに「ヴィレッタ・バディムはあんたの復讐対象じゃないぜ」と情報を流しておいた。

 そのときは袖にされたのだが、「あんたの言うとおりだったわ、ワンゼロワン」となかなかの好感触だった。

 もう一押しかな、と機会をうかがっている次第だ。

 ちなみにウチのエクスが、彼女の連れたサポートメカ、エルマと早速意気投合していた。

 

 なお、お馴染みクスハとブリットだが、《グルンガスト》シリーズの後継機と言える鋼機人(ヒューマシン)で参戦している。

 《龍王機》《虎王機》は封印戦争でのダメージを癒すためにテスラ研で療養中だ。

 

 テスラ研といえば、甲児が留学してたんだっけ。

 オレのクロスゲートについての説明を理解していた模様だ。さすが、科学者家系と言わざるを得ない。知的分野で相方に置いてかれた豹馬はご愁傷様だな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月◎日

 地球圏、アステロイドベルト周辺宙域 《ラー・カイラム》の自室

 

 アステロイドベルトで機界31原種を迎え撃ったオレたちだが、連中を取り逃した。痛恨である。

 乱入してきた《オーガン》と追っ手のイバリューダー、そしてラダム獣に邪魔されたのだ。

 ゼラバイアといいラダムといいイバリューダーといい、どうしてこう忙しいときにやってくるのか。

 いや、正規軍のみなさんも防衛網構築にがんばってはいるんだ。ただ、大半が《ジェガン》のような平凡な量産機で連中と正面からやり合うのは難しい。《ドラグーン》や《量産型F91》はいい機体なんだが。

 星間連合も本格的に再侵攻をかけてきたし、いよいよもってきな臭くなってきた。

 

 

 新西暦一八九年 ×月※日

 地球圏、アステロイドベルト周辺宙域 《ラー・カイラム》の自室

 

 クロスゲートでの帝国監察軍との戦闘から一夜あけて、現在αナンバーズ艦隊はアステロイドベルトに身を潜めている。激戦の傷を癒すためだ。

 

 異変を聞きつけ、クロスゲートを目指すオレたちを阻むギシン星間連合の再侵攻部隊はかなりの規模で、手を焼かされた。

 ズールは本格的に地球の武力制圧を目論んでいるらしく、支配下に置いた文明から相当数の戦力を差し向けてきた。

 新顔は、円盤型戦艦《マザー・バーン》と円盤獣が主力のベガ艦隊と、三隻の戦闘母艦と戦闘メカベムボーグからなるザール艦隊だな。さらに、ムゲの小型戦闘機や《ゼイファー》などもいた。

 つか、ムゲとズールってよくよく考えると嫌な組み合わせだよな。

 

 さておき、星間連合を辛くも撃退したαナンバーズはクロスゲートにたどり着く。

 そこには帝国監察軍、ゼ・バルマリィ帝国によって大破に追い込まれた《SRX》の姿があった。

 

 親友の、リュウセイの危機でオレってばひさびさにブチ切れた。

 サイコドライバーの力を全開にして、《ジュデッカ》を思わせる念動兵器《ヴァイクラン》のカルケリア・パルス・ティルゲムに外部から強制干渉、行動不能に追い込んでやった。サイコドライバーなめんな。

 やりすぎて、余波を受けたアーマラの《ファルケン》やクスハ、ブリット機のTーLINKシステムまで不具合が出ちまったけどな。

 大人げなかったと今は反省している。

 

 動けない《ヴァイクラン》撤退のために現れたバルマー軍の中には、グラドスのSPT部隊が混じっていた。

 事情は知らんが、ズールの一時敗退を受けて離反でもしたんだろう。元々はバルマーの支配下だったらしいから、元サヤといったところか。

 

 つーか、ル・カインうっぜー!

 《レイズナー》に猛攻する黄金のSPT《ザカール》と死鬼隊の相手をしたのだが、あのサイズの小ささと機動力はかなり厄介だった。

 《VーMAXレッドパワー》を使ってこなかっただけマシだがな。

 

 戦闘後、《SRX》から救助されたのはリュウセイとライ少尉のみだった。

 アヤ大尉は生死不明。トロニウムエンジンとともに浚われた可能性もある。

 今は彼女の無事を祈るばかりだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月☆日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》の自室

 

 マジでやりやがったよ、プラント。

 空気よめよー。これだからコーディネーターは嫌いなんだ。わかっていても失望感が強い。

 クソっ、今からアプリリウスに乗り込んで評議会ぶち壊してくるか?

 

 本題に入る。

 再び攻め寄せるズール星間連合に対抗して、地球連邦は「地球絶対防衛線」と称して防衛線を構築、αナンバーズもそこに参加して迎え撃った。

 が、そこに地球連邦に対して宣戦布告したプラント軍、ザフトが襲いかかってきたのである。

 さっき知ったが、その理由は「ユニウス7に対する核攻撃の報復」と「地球連邦の不当な扱いへの抗議」。核攻撃を防げなかったのはこちらの完全な落ち度だが、後者の言い分は支離滅裂だ。やはり、ゲシュタルトが暗躍しているようだ。そうに違いない。

 ちなみに時代遅れというか、時代錯誤なバッテリー駆動、実弾メインのザフトのモビルスーツだが、思ったよりは手強かった。つーか、核融合枦機と互角ってのはいくらなんでも理不尽じゃね?

 

 ともかく、プラントの狙い澄ましたかのような横やりにより絶対防衛線は脆くも崩壊、星間連合とザフトの地球降下を許してしまった。

 さらには、ラダム獣の群の本格的な地球降下まで招いてしまった。おそらく地球各地にラダム樹が発生しているだろうな。

 

 ここでは本格的にムゲ――、ムゲ・ゾルバドス帝国の戦力が姿を現した。

 どうやらズールとムゲは対等の同盟者のようで、デスガイヤーがベガ艦隊のガンダル司令やザール艦隊の三将軍を顎で使っていた。奴らの名称が「星間連合」なのはこのためだろう。

 つーか、敵の中に忍者くさいのがちらほらいたんだが。

 あれか、トラウマ忍者くるか?ランカスレイヤー=サンくるのかー? 

 いや、ランカいないけど。まだ生まれてもないだろ、多分。

 

 アカシックレコードにアクセスしてカンニングしたいところなんだが、このところプロテクトが堅くて全く情報を読みとれないんだよな。

 

 とりあえず、星間連合を地球から叩き出すのはもちろんだが、プラントの連中には特に目にもの見せてやるつもりである。

 まずはアズラエルに連絡を取ってGATシリーズの仕込みから始めるか。オレを本気にさせたことを後悔しろよ、変態仮面。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月*日

 地球、某所 バベルの塔の自室

 

 絶対防衛線が崩壊してから、αナンバーズは地球各地に散って星間連合や三度姿を現した地底勢力の残党、そしてザフトと激しい攻防を繰り広げている。

 オレとアーマラ、イルイは一端αナンバーズを離れて、本拠地に帰還した。

 ウチの軍師に、今後のことを相談するためだ。

 

 で、その孔明からの情報だが、やはりラダム樹は地球各地で発生してしまっているようだ。

 国際警察機構を通じて宇宙軍のミスマル提督に詳細を伝えてあったが、防げなかった模様。あるいは対応しきれなかったか。

 

 ここで、この宇宙においてのラダムについて記すことにしよう。

 ラダム、本能のみを高度に発達させた知的生命体、及びその種族の名称。

 虫状の生物で、頭脳(脳髄)のみを高度に発達させたため、肉体そのものは非常に脆弱であり、僅かな環境変化や外因性ショックに対しても抵抗力を持たない。

 その為、専ら他の知的生命体の体内に寄生し、その知的生命体の「脳」をラダムの強い「本能」で支配する事によって生態系の上位を維持してきた。

 ここまでは“原作”と同じだが、続きがある。

 ラダムの進化は宇宙の滅びを逃れるためのもの、らしい。事実、ラダムは知性体とは認められず、宇宙怪獣にも襲われないようだ。

 とはいえ銀河自体がリセットされれば元も子もないし、連中はもともとああいうエゴの権化のような生き物だったようだが。

 なお、情報源はバベルの塔に蓄積されたデータベースからである。

 

 あと、傭兵組織ミスリルの“トイボックス”とアマルガムに動きが見られたと孔明から報告があった。

 アマルガム。所詮、地球人類の組織だとあまり重要視していなかったが、この状況下でちょろちょろされるのは目障りだ。

 

 それからいくつか、未確認情報だが、気になる話がある。

 クロスゲート出現に前後して《ライディーン》の拠点、ムトロポリスに現れたという“白い《ライディーン》”。オレの記憶が確かなら、それはおそらく《ゼフォン》もとい《ラーゼフォン》だ。 なぜあれがこの宇宙に現れたのか、早急な調査が必要である。

 

 また、宇宙科学研究所の宇門大介の動向にも注目したい。彼の正体は十中八九、デュークフリードだろう。

 因果の“因”は揃っているのだから、彼の出番も近いということか。

 

 どちらにも、接触する必要があるな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月@日

 地球、極東地区日本某所

 

 現在中学生として生活しているマサトと会うため、オレたちは日本のとある町を訪れた。ちなみにマサト、美久と同棲しているらしい。羨ましい。

 《ゼオライマー》は簡単な封印を施され、ラストガーディアンに眠っている。

その戦力を当てにしているというわけだ。

 

 で、マサトの引き入れに成功した(本人も元々そのつもりだった様子だ)のはいいのだが、厄介な事態になった。

 白い鬼――、“マキナ”《ラインバレル》の登場である。

 マサトのクラスメートとして「早瀬浩一」の存在と、JUDAコーポレーションの存在は確認していたので驚きは少ないが。しかし、この“ラインバレル”の原典はどっちだ?

 

 ともかく、早瀬浩一の件はプリベンターというか、カトルとディオ、それからマサトたちに任せてオレたちは引き続き、地球各地を回ることにする。

 αナンバーズのみんなには悪いが、表面化した敵対勢力の相手は丸投げしてしまおう。今は雌伏の時だ。

 

 追記。

 現在バベルの塔に滞在中の協力者、“博士”からの伝言をマサトに伝えた。

 マサトがずいぶん驚いていたのが印象的だったな。さすがの天才様も、同じ天才の行動までは予測できないようだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月♬日

 地球、極東地区日本 ムトロポリス

 

 予定通り、ムトロポリスを訪れた。

 星間連合の部隊をちょちょいと蹴散らし、目的の白い《ライディーン》、《ラーゼフォン》と接触した。やはりと言うほかない。

 

 さておき、洸とはイージス事件以来の再会である。

 お互いの無事と再会を喜びつつ《ラーゼフォン》について訪ねたわけだが、どうもややこしい事態になっているようで。

 

 洸の案内で引き合わされたのは《ラーゼフォン》の奏者、神名綾人、紫東遙、如月久遠の三名。《ラーゼフォン》の物語における最重要人物たちだ。

 彼らから事情を聞き、オレが知りうる限りの情報を伝えた。

 

 それらを統合すると、彼らは「MX」に近い世界から来たようであり(洸は元より、他作品の情報を持っていた)、その世界は《ラーゼフォン》による多次元世界の調律がなされたらしい。

 調律により神となった綾人曰く、「とても大きな力が宇宙を覆って、全て無くなってしまったんだ」とのこと。

 要するに、その結末を認めない無限力によりアポカリュプシスが発動して、宇宙がリセットされたのだろう。

 

 その後、おそらはく無限力によりこの地球に招かれた彼らは洸に発見され、ムトロポリスに保護されていたそうだ。

 なお、発見した際には綾人が遙さんに熱烈なキスをされていたと洸が苦笑混じりに教えてくれた。

 諸々の経緯を鑑みれば頷けるのだが、イルイはともかくアーマラまで顔を真っ赤にしていたのはなぜだ。妙にウブなんだな、ウチの相方さん。

 

 彼らにこの地球の現状を説明すると、協力を快諾してくれた。元の世界には帰れないと薄々わかっているのだろう。そも、彼らの宇宙はすでに終わってしまっているのだから。

 当面は、洸と一緒にムトロポリスを守っていてもらおう。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月◇日

 地球、極東地区日本 《ナデシコC》

 

 現在、《ナデシコC》に乗って各地の混乱を鎮圧中である。

 今日は外宇宙開発機構から発展した民間の対ラダム組織、スペースナイツに保護されたDボゥイこと《テッカマン・ブレード》と共闘した。

 もちろん相手はラダム獣。まだ《ペ ガス》は作られてなかった。展開的には、序盤も序盤だな。

 意外?な繋がりとしては、CCCの母体が外宇宙開発機構だったことか。

 

 Dボゥイとの面会については割愛する。オレ個人としては今更聞き取るべきこともなかったしな。

 アーマラがかたくなな態度に憤慨していたが、さておき。最初から知ってるオレはともかく、イルイも彼が記憶喪失であることに感づいたみたいだが、黙っているように言い含めておいた。武士の情けだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月♪日

 地球、極東地区日本 《ナデシコC》

 

 今日も今日とて、治安維持活動に東奔西走である。

 

 国際警察機構経由で懐かしい人物の動向が届いた。

 カサレリアに赴いた大作少年がウッソたち旧リガ・ミリティアメンバーと共闘したらしい。

 さすがにマーベットさんは子育てがあって参戦できないそうだが、ウッソたちはそのまま大作たちに協力して。

 シンジたちネルフのチルドレンたちはイカロス基地にいるらしいし、バルマー戦役を駆け抜けたSDF艦隊のメンツが勢揃いしそうな予感だ。

 そのときが楽しみだな。

 

 ほかには、アフリカ戦線、エル・アラメインの情報が舞い込んだ。

 月下の狂犬は砂漠の虎の前に破れたらしい。某モビルタンクならともかく、今時戦車部隊というのもどうかと思うが。

 凄腕の傭兵、サーペントテールの動向も聞こえてくるし、アストレイ勢の参入もあり得るか。

 

 

 

 新西暦一八九年 ×月#日

 地球、極東地区日本 宇宙科学研究所

 

 クスハ、ブリット、甲児たちマジンガーチームと合流して星間連合、ベガ艦隊とやりあった。

 ここでは宇宙の王者《グレンダイザー》の登場が登場した。

 

 ちゃちゃっと敵をやっつけて、宇門大介ことデュークフリードとの初接触に挑む。詳しい内容は割愛するが、大変有意義な会合だった。

 

 その情報をまとめて記する。

 彼の故郷、フリード星を結果的に滅ぼしたのはギシン星間連合だ。

 様々な星に攻め入り、勢力を伸ばしていたベガ星は原作通りフリード星を我がものにしようとして侵攻していたが、当時同盟関係にあった星間連合に裏切られて壊滅。星間連合はそのままフリード星をも支配下に置いた、とのこと。

 ベガ大王はすでに故人らしいが、ズールに関わったのが運の尽きか。

 

 デュークフリードからは、宇宙の情勢について深く聞くことが出来た。

 彼の知る限り、ギシン星間連合はバルマーことゼ・バルマリィ帝国、ゾヴォークこと恒星間国家共和連合、ガルラ大帝国、他の銀河系の軍団(おそらくバッフクラン)などの勢力との星間戦争を長年に渡って続けているらしい。

 また、星間連合により滅亡した惑星国家の名前にはエリオス星、エリオス王国の名もある。元祖ライオンロボ《ダルタニアス》も出番を待っているということだな。

 

 さすがフリード星の王子というだけあって、そのあたりは教養の範囲だそうだ。

 

 ちなみに、封印戦争時には戦いを望まないデュークフリードは事態を静観していたらしいが、見覚えのある円盤獣の姿を見てついに戦うことを決意したのだとか。

 

 なお、この戦闘では神ファミリーが《ザンボット3》、《キング・ビアル》で参戦した。彼らもまた第二の故郷、地球を守るために立ち上がったようだ。

 神ファミリーの神北兵左衛門老はデュークフリードと異星人繋がりで知り合いだった模様で、その縁もあって今回の参戦に至ったのだろう。

 

 サンドマンも含め、彼ら様々な星の住人たちがこの地球に集ったのはナシムの気まぐれによるものだが、こうして星の垣根を越えて力を合わせる、それは無限力の望んだことだ。

 オレに託されたのは、そんな人々の志をひとつに束ねること。

 ヒーローってのはそういうもんだ。

 

 

   †  †  †

 

 

 どことも知れない無人島。

 曇天から雨粒がしとしとと降り始めている。

 

 地球各地の混乱、修学旅行先から急ぎ戻る最中、陣代高校の生徒と教職員はハイジャック拉致事件に巻き込まれた。

 

 その中にいた“ミスリル”の兵士、相良宗介は護衛対象者である千鳥かなめを連れてテロリストの手から逃れることに成功した。

 だがしかし、二人は現在追いつめられていた。

 

「そ、宗介っ」

「くっ!」

 

 《Rk-92 サベージ》。アームスレイブと呼ばれる機動兵器が目の前に立ちふさがっている。

 巨大なアサルト・ライフルの銃口を向けられ、身動きを制される二人。このままでは早晩、再び捕らわれるのは目に見えていた。

 絶体絶命の危機、その時だ。

 

 紫電を伴った一筋の光が《サベージ》の腕をライフルごともぎ取る。

 宗介は、咄嗟にかなめを連れて物陰に飛び込んだ。

 

「セイヤーーーッッ!!」

 

 さらに、上空から翠緑の閃光を伴った人影が乱入した。

 両足による跳び蹴りが直撃した《サベージ》のカエルに似た頭部がひしゃげる。

 ひらりと宙返りした人影は、自由落下しながらどこからか両手に光る刀剣を取り出して《サベージ》を瞬く間に解体した。

 

 人影が軽やかに二人の前に降り立つ。

 いつの間に現れたのだろう、黒い大きな豹が傍らに侍っていた。

 

「何者だ!」

 

 かなめを背中に庇いながら、宗介は乱入者――銀髪の少年に拳銃を向けて誰何する。

 その額には、じわりと汗が浮き出していた。

 裏社会に生きるものならばその名を知らぬものはいない、かつて権勢を振るったBF団の十傑集。

 宗介自身は直接遭遇した経験はなかったが、彼ら十傑集は人智を超えた力で機動兵器を生身で粉砕すると聴く。

 得体の知れない相手に、プロフェッショナルの兵士は静かに警戒していた。

 

 緊迫した雰囲気を破ったのは、ある意味空気を読まない無敵の現役女子高生だった。

 

「えっ、子供っ?」

「……子どもって、失礼だな。これでもオレは一七歳だぜ」

 

 銀髪の少年――イングは、かなめの思わず漏らした感想に憮然とする。

 そんな子供じみた態度に緊迫した空気が不思議と弛緩した。

 

「あんたがミスリルのウルズ7だな。オレは国際警察機構のワンゼロワン、故あって助太刀するぜ」

「!」

「ウルズ7って、宗介のことよね?」

「肯定だ。……ワンゼロワン、あなたが自分たちの味方と判断して間違いないか」

「おう。あんたんとこの上司から作戦は聞いてる。“エンジェル”はウチでもマークしててね、ドーリアン外務次官の身の安全もかかっているなら介入せざるを得ないさ」

 

 二人に事情を説明するイング。

 宗介の態度が中途半端に改まっているのはあくまで正体不明の相手であり、軍の階級上、上官に相当するイングに畏まっているためである。

 

「こちらワンゼロワン、ウルズ7とエンジェルの保護に成功。以降は作戦通り、敵テロリストの排除を――」

「あっ!」

 

 身につけた腕時計型の通信端末で仲間に連絡する。

 かなめは取り乱した様子でイングに詰め寄る。

 

「ミナト先生やクラスのみんなが人質になってるの! 早く助けなきゃ……!」

「ああ、それなら心配いらない。全員解放済みで安全なところに避難させてある」

 

 予想外、ノータイムのレスポンスにかなめかが「へ?」と抜けた声を上げた。

 と、そのとき、彼方から灰色の空を切り裂いて飛来した赤黒い光線が、遠目に見える《サベージ》を撃ち抜いた。

 続いてテスラ・ドライブ特有の光跡を残し、紅い隼が戦場に進入する。

 

「お、来たかアーマラ」

 

 イングが空を見上げて笑みを浮かべる。

 《ビルトファルケン・タイプL》が猛スピードで《サベージ》の背後を取り、《バスタックス・ガン》を振りかぶる。哀れ、《サベージ》は原型を留めないほど粉々に粉砕された。

 さらに遙か天空から飛来するのは白熱化した翼を広げる青い天使、《ウィングガンダムゼロ》。代名詞の《ツインバスターライフル》を抜くまでもないと、《ビームサーベル》のみで《サベージ》たちを斬り捨てていく。

 

「ま、ミスリルからのプレゼントが届く前に、奴らは全滅しちまうかもしれねーけどな」

「プリベンターの告死天使に、国際警察機構のレディ・マグナム……陸戦歩兵(サベージ)では航空機の相手にならないか……」

「そーゆーこと」

 

 宗介の呟きを、イングは軽妙な口調で肯定するのだった。

 

 

 イングの先導で、指定されたランデブーポイントにたどり着いた一行。

 《ファルケン》と《ウィングゼロ》は作戦を把握しているのだろう、指定ポイントから離れるように敵アームスレイブ部隊をさりげなく誘導している。

 と、《コダール》とは明らかに違う正体不明のアームスレイブが出現し、両機を相手に圧倒し始めた。

 

「敵のリーダー格……出来るな。しゃーない、オレもいっちょ暴れるか」

 

 イングはそう不敵に嘯いて、腕時計型の通信端末を眼前に構えた。

 かなめが疑問符を浮かべるが、事情を多少なりとも知る宗介が僅かに顔をひきつらせた。

 そしてイングは、そんな二人を尻目に高らかに宣言する。

 

「コール・ヒュッケバイン!」

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八九年 ×月¥日

 地球、極東地区日本 《ナデシコC》

 

 リリーナ、ミナトさんを含めた陣代高校の生徒と教職員が、テロ組織にハイジャック拉致された。

 下手人はアマルガムだ。

 とはいえ、連中は大半が戦死するか拿捕されて鎮圧済み。保護された人質を連れ、《ナデシコC》は日本に向かっている。

 

 彼らは地球の混乱を受け、修学旅行先から帰国する最中だったらしい。

 偶然、旅客機に同乗していたリリーナを隠れ蓑に本命の千鳥かなめから目をそらせたかったのだろうが、無駄なことだな。馬鹿め、ネタは割れているんだぞ、と。

 

 生徒として潜入していたミスリルの兵士、ウルズ7こと相良宗介、リリーナの危機に宇宙から強襲してきたヒイロと協力し、テロリストは殲滅された。ミスリルの新型AS《ARXー7 アーバレスト》はなかなかイケメンなロボだったな。あとでプラモ作ろっと。

 なお、主犯の戦闘狂の戦争屋と《プラン1056 コダール》は《エグゼクス》で始末した。因縁のある相良軍曹には悪いが、ああいう外道は見つけたら即抹殺するのがセオリーだ。

 ラムダ・ドライバ?念動力を機械的に再現してるだけだろ。指鉄砲やり返してやったよ。

 ただ懸念なのは、戦争屋の死体を確認できていないことか。まあ、出てきたら出てきたで返り討ちにしてやるだけだがな。

 

 そろそろ目障りなので、近い内にアマルガムを叩き潰そうと思う。上役?のゼーレと違って、社会的にもシナリオ的にも影響は少ないはずだ。

 孔明がBF団を使って集めていた連中に名簿を国際警察機構に流して社会的に吊し上げ、かつオレらが秘密裏に直接攻撃する両面作戦。原作の流れを鑑みればまさしく“因果応報”だろう。

 

 まだまだ仕込みは続く。

 本格的な戦いの始まりは三ヶ月後、GATシリーズのロールアウトを待つことになるだろう。

 さてさて、次はどこに行こうか。アーマラたちと相談でもするかな。

 


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