スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIIIー3「凶鳥を継ぐもの」

 

 

 新西暦一八九年 △月♬日

 地球、オーブ首長国連邦 《アークエンジェル》の一室

 

 《アークエンジェル》はまだオーブに留まっている。どうもエンジンの調子が芳しくないらしく、整備班のマードック軍曹もお手上げとのこと。

 仕方なしに、オーブの国営企業、モルゲンレーテに修理を依頼した。

 おかげでオーブ政府に足元を見られて《ストライク》の稼動データの譲渡、さらにキラが新型MS《M1アストレイ》のOSをブラッシュアップする羽目になったが。

 オレもいくらか手伝ったが、さすがにプログラミングに関してはキラにはかなわなかったな。

 ちなみにこの《M1》、赤枠青枠の“プロトアストレイ”と違ってミノフスキー核融合炉で動いている。オーブもきちんと考えているようだ。《アストレイ》のコンセプトが先守防衛に相応しいかどうかはともかく。

 

 あ、今更だけどカガリもいるぞ。

 どうもオレたちについてくるつもりだったらしいが、オーブに寄ると聞いて

 で、あんまり我が儘がウザったかったから正体を暴露して無理矢理連れてきたんだ。身分がある立場なんだから、少しは国元のことも考えろっての。

 そんなんだから、アスカにバカガリって呼ばれるんだぞ。

 

 

 

 新西暦一八九年 △月¥日

 地球、オーブ首長国連邦 《アークエンジェル》の一室

 

 まだオーブだ。

 イザークやカガリをからかうのも飽きてきたので、《アークエンジェル》の入っているドックをぶらついていたら、久々にジャンク屋一行と顔を合わした。

 デブリベルトにあるグレイブヤードを探索したり、大気圏近くで金色のモビルスーツに地球へたたき落とされたりして大変だったらしい。

 友好を深めつつ、以前はじっくり見れなかった《エグゼクス》を見学させた代わりに、《ガーベラストレート》を見せてもらった。

 オレはベタに西洋剣派だが、やっぱカタナもかっこいいよなぁ。

 

 いいものを見せてもらったお礼に、《戦国アストレイ頑駄無》のイラスト(プラモを作る前に書いた仕様書のようなものだ)を進呈した。

 ロウはそれをいたく気に入ってくれたようで、本気で《レッドフレーム》を改造するか悩んでいたな。マジで造ってきたらどうしよう、と今更ながらに後悔している次第だ。

 あのジャンク屋ロウだもんなぁ、やりかねないぞ。マジで。

 

 

 新西暦一八九年 △月@日

 地球、オーブ首長国連邦 《アークエンジェル》の一室

 

 まだまだオーブだ。

 そろそろ月の方の戦闘も佳境のようで、《ナデシコC》が援軍に向かった。

 あれは攻防に優れた重力兵器に単独で大気圏を突破できる特殊な推進機関、なおかつボソンジャンプによる奇襲も可能という地球圏有数の戦艦だ。

 《ドラグナー》チームと《レイズナー》チーム、ダバたち《エルガイム》チームがそれに同行している。

 さらに宇宙科学研究所から《グレンダイザー》の支援メカ、地球製《スペイザー》三機、光子力研究所から《ダイアナンA》、《ミネルバX》用の《スクランダー》の支援物資を搭載している。

 《ミネルバX》はともかく、《ダイアナンA》用の《スクランダー》ってなんか聞いたことがあるような?

 

 で、こっちの状況なのだが。

 大破した《ブルーフレーム》と大怪我を負った劾が運び込まれてきた。

 戦闘用コーディネーター、ソキウスと戦い、敗北したようだ。

 

 アズラエルにコンタクトをとったところ、自分は関知していないと明言していた。まあ、孔明の情報網にも引っかかっていないし、信じてもいいだろう。

 ソキウスに、ブーステッドマン。どちらもヒトの人権に喧嘩を売った鬼畜外道の所行である。

 そういう施設や技術はティターンズやジオンのものも含めて、BF団は先代の頃から潰して回っているんだがまだ生き残っていたとは。

 ゼーレめ、思ったより侮れないな。

 

 

 

 新西暦一八九年 △月◆日

 地球、オーブ首長国連邦 《アークエンジェル》の一室

 

 ロウの手により修復された《ブルーフレームセカンドL》(エンジンが核融合炉に換装されている)で挑むソキウスとの雪辱戦。

 決闘は劾の勝利に終わったが、戦いはそれで終わりにはならなかった。

 

 ギャンドラーとバンカーの連合軍がオーブを制圧するため攻めてくる。

 立会人をしていたオレとアーマラ、ロウ、《ダンガイオー》チームが応戦した。

 

 バンカーの軍勢には《アイザム・ザ・サード》、シャザーラがいた。

 ランバは、バンカーの侵略により滅亡したリリス星の王家の生き残りであり、かつての従者であるシャザーラは国を見捨てた王家の人間を恨んでいたのだ。

 

 だが、そのランバの必死の説得でシャザーラは思い直してくれた。

 しかし、《アイザム・ザ・サード》には遠隔操作装置が仕掛けられていた。

 人質を取られて反撃もロクにできず、無抵抗でなぶられる《ダンガイオー》。オレたちも助けに入ろうとするが、雑魚に邪魔されて手出しができない。

 「自分ごと討て」と覚悟を決めるシャザーラ。涙を飲んで放たれる《スパイラルナックル》。ランバは、《ダンガイオー》チームは、オレたちはバンカーの非道に怒りを燃やす。

 

 ――と、そこに颯爽と現れたのは天空よりの使者! ロム・ストール!

 彼は、大破する《アイザム・ザ・サード》からシャザーラを間一髪で救い出していたのだ! さすが剣狼の導きッ、何でもアリだぜ! 口上を決めるロム兄さんかっけー!

 

 本隊も到着し、戦況は一気に逆転。外道どもにはご退場願った。

 なお援軍の中には、《デュエル》《バスター》《ブリッツ》の姿。パイロットはもちろん、イザーク、ディアッカ、ニコルの赤服三人組だ。

 同胞とは戦えないが、異星人相手には力を貸してくれるらしい。彼らも、オレたちと行動して心境に何らかの変化があったのだろう。

 

 一命を取り留めたシャザーラだがランバと和解し、《ダンガイオー》チームに同行することになった。また亡国のお姫様が増えましたな。

 なお、壊れた《アイザム・ザ・サード》だが、ターサン博士とロウが一晩で直していた。

 お前ら、どこのジェバンニだ。 

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月■日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《アークエンジェル》の一室

 

 ようやく日本に着いたわけだが。

 事情を書き留める前に、ややこしいので区別のために新たに現れた《大空魔竜》、《ガイキング》をそれぞれ《大空魔竜(LOD)》、《ガイキング(LOD)》としておく。

 まあ、結論から述べるとこの《大空魔竜》、やはり「LOD」版だった。

 

 異変は《ガイキング》のボディ、ヘッドパーツらしき物体が現在の連邦軍極東支部、科学要塞研究所近くに転移したことから始まる。

 岡長官の指示で救助されたヘッドパーツには少年が乗っていた。じきに意識を取り戻した彼はツワブキ・ダイヤと名乗り、困惑混じりに自身の身の上などを説明する。

 その説明の内容については割愛するとして、彼が未知の異世界、ダリウス界から現れ、なおかつパラレルワールドからの来訪者であることが判明する。

 バイストン・ウェル、ラ・ギアスの存在を把握し、タイムスリップの事例さえ知る岡長官だ。そういうこともあるだろう、と納得して見せてダイヤにこの地球について説明したそうだ。

 どこぞの三輪と違って有能で話の分かるお人ある。

 

 そこに謎の巨大メカ、というかダリウス鉄獣が襲来する。

 ダイヤは科学要塞研究所に研究目的で保管されていた《ガイキング》のパート1、パート2、そのプロトタイプをヘッドパーツに装着して戦った。

 いわゆる《カイキング》ということになるのだろうが、いろいろツッコミどころ満載である。確かに、ゾルマニュウム合金製だろうけどさ。

 

 MS、MA、SPT、PT混成部隊の援護もあり、ダリウス鉄獣を撃破、その後時を置かずして現れたのが《大空魔竜(LOD)》というわけだ。

 

 「《大空魔竜》戦隊」との会合に、《アークエンジェル》隊の代表団の一員として参加した。オレは頭脳労働担当じゃないんだが、仕方ないとあきらめた。はやくシラカワ博士来ないかなぁ。

 《大空魔竜(LOD》のキャプテン、ルル・アージェスの生声を聞いて、うるりと来てしまったのはオレだけの秘密。

 オレは彼らの活躍の詳細を知っている、というかリアルタイムで見てた口だからかなり感動ものだったり。《グレート》初合体ので無双っぷりが生で見れなかったのは残念だけどな。

 物語の時間軸としては「原作」の終盤、ダリウス帝国の帝都が崩壊し、ダリウス界から三度地上に出たタイミングだろう。中盤あたりだったら面倒だが、それはそれでややこしいことになりそうだ。

 僚艦の《大地魔竜》《天空魔竜》の行方は不明。連邦軍の防衛網にも引っかかっていないことから、出現に時間差があるか彼らの世界に取り残された可能性もあり得る。

 というか、プロ子が向こうに残ってたらかなりやばいな。ダリウス鉄獣が出てきたのだし、そうでないことを祈る。

 彼らの本来の世界は高蓋然性世界である可能性が考えられる、とは孔明先生の

お言葉だ。やはり、時祭イヴには早急に接触しないと。

 

 ダイヤたち「《大空魔竜》戦隊」はこの地球圏の現状を聞き、オレたちαナンバーズに協力してくれることになった。

 また、この世界にも《大空魔竜》戦隊があると聞き、驚いてもいたな。

 

 情勢が安定し、無限力の活動が停滞化すればオレがクロスゲートに干渉して彼らを元の世界線に帰すこともできるだろう。その旨はもちろん伝えてあるが、別にそれを盾に協力を強請ったわけじゃないぞ。

 彼らは正しくヒーロー、困っている人を見捨てるなんてできるはずないんだからさ。

 

 イデの手配に従うようで癪だが、使えるものは使わせてもらう。こちとら、猫の手も借りたいくらい忙しいんだ。

 

 追記。

 予想通りというか、アーマラの声がプロイストに聞き間違われた。

 「プロイストとはどのような奴なんだ」と聞かれたので、「ブッチャーとタメを張る外道」と簡潔に答えたら盛大に顔をしかめられた。さもありなん。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月*日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《アークエンジェル》の一室

 

 地球圏安全評議会で答弁するため、第一東京市に訪れたミリアを護衛した。

 アーマラ、イルイはいつもの如くだが、今回は《マクロス7》船団の正規軍人、ガムリン木崎中尉が同行している。

 ちなみに、公式の場ではきちんと「ミリア市長」って呼んでるぞ。普段呼び捨てにしているのは本人の希望だからだ。

 

 答弁は《マクロス7》船団の現状と、外宇宙から迫る脅威を訴えるものだった。

 「あなた方の来訪が外敵を招いたのではないか」と言う議員(実は孔明の仕込んだサクラ)の意見には、「私たちが帰還しなくても、侵略者は地球へとやってきていた」と正論で言い返していた。

 さすがは戦闘民族、小細工なしの真っ向勝負だったな。

 

 ミリアの答弁をご破算にしたいのだろう、テロリストが雑多な型落ちの機動兵器で襲撃してきたので返り討ちにした。

 さっき孔明から聞いたのだが、どうやらその正体はアマルガムの残党であり連邦軍の強硬派、いわゆるブルーコスモス。黒幕はゼーレのだったようだ。

 

 そういえば、連中の中には鉄甲龍の八卦ロボ、《雷のオムザック》の姿もあったな。サイなんとか、生きてたのか。

 狙いは美久、いや《ゼオライマー》の次元連結システムだったようだ。

 まあ、案の定あっさり《ゼオライマー》に敗退した際には、「()()さえ完成すれば、貴様らなど!」とかほざいていたが。まさかグレ、いやいやいや、まさかそんなまさか。

 とりあえずそれは棚上げにしておく。

 

 地球安全評議会の出した決定は、住民を地球に受け入れることは現状難しいが、そのかわりに最大限の支援を行うというもの。

 悪意を持って解釈すると弾除けになれってことなんだが、ようは地球安全評議会の直属組織になっているαナンバーズに合流しろということだ。《MZ23》、《ソロシップ》も含めてな。

 

 余談。

 ミリアはハマーンさんと意気投合したようだ。女傑同士だからか。

 事実上、ミネバの義母をしている新米母親として、ベテランのミリアからいろいろとアドバイスをもらっているのかも。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月*日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《アークエンジェル》の一室

 

 現在、《アークエンジェル》隊はまたまた足止めを食らっている。

 《シティ7》及び《マクロス7》船団に対する地球安全評議会の沙汰を待つためだ。

 

 時間が空いたので、加納渚の様子を見に行ってみた。

 すると、案の定クトゥルフの手の者に襲われていたので、ロム兄さんを見習ってヒーローらしく颯爽と救出した。決めゼリフは「通りすがりの超能力者さ」だな。

 ちなみに渚とその家族や友人は腕利きの護衛をたんまりとつけてあるし、いざとなったら《シティ7》に避難させる予定だったのだが。グロい死亡フラグなんて立たせないぜ!

 

 で、運の悪いことにイクサー1とはち合わせてしまったんだ。

 なんだ、第一声が「得体の知れない奴!」って。お前の方が得体が知れないよ。ムカッときて思わずムキになって戦っちまった。

 イクサー1、クトゥルフの戦士はかつてない強敵だった。さすがのオレも、危ないところだったぜ。

 

 ちょうどいいタイミングでクトゥルフの戦闘メカが現れてくれたので、イクサー1と和解、共闘した。

 無理矢理《イクサーロボ》に乗せられた渚には悪いことをしたな。

 

 戦闘後、イクサー1は姿を消したが、混乱して途方に暮れている渚を保護した。

 オレがαナンバーズの一員であることを知って驚く渚。イクサー1のパートナーに選ばれたこと、彼女とともにクトゥルフと戦う運命にあることを訳知り顔で教えたら、「なんで私がそんなことしなくちゃならないのよ!」と全身で拒否された。まあ、普通の女の子だものな、仕方ない。

 嫌がる渚にはいつも通り、「戦いたくないなら戦わなくていい」と言っておいた。オレが代わりに戦えばいいんだからな。

 最終的に渚とその関係者は事情を説明して、《シティ7》に避難してもらっている。それはそれで危険かもしれないが、こっちの方が護りやすいんだよ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月★日

 地球圏、衛星軌道上 オービットベース 《ラー・カイラム》の一室

 

 途中、ラダムとイバリューダーの小競り合いに巻き込まれつつ、《アークエンジェル》隊は《シティ7》、《大空魔竜(LOD)》を引き連れて無事オービットベースにたどり着くことができた。

 

 月方面隊だが、星間連合の戦力を削ぎ、月から撤退させることには成功したものの、イバリューダーとガルラ大帝国の介入で地球圏から叩き出すことには失敗した。

 現在、ギシン星間連合とガルラ大帝国、イバリューダー、ラダムの四つ巴により宇宙は酷いことになっている。異星人を素体にした《テッカマン》軍団が来襲、ラダムも本格的に殺しに掛かってきている。

 幸いなのは星間連合と繋がっている疑いのあるザフトがガルラ、イバリューダー、ラダムに掛かりっきりでまともな軍事行動ができていないことか。

 まあ、連邦軍だって似たようなもんだけどな。

 

 宇宙組にはこっちの《大空魔竜》も合流していたし、何より嬉しいのが《超竜神》の復帰だ。六五〇〇〇年前の地球に流れ着いて朽ち果てていたが、発動した無限力の一端、ザ・パワーにより復活したのだ。

 兄たちの無事に、《風龍》《雷龍》兄弟も喜んでいたな。

 

 逆に、スペースナイツのアキさんが隊を一時離脱してGGGアメリカに渡ったという。

 身を削って戦うDボゥイの姿に、思うところがあるのだろう。フラグである。

 

 同じ《ガイキング》乗りということで、サンシローさんとダイヤが親交を深めていた。

 元はプロ野球選手のサンシローさん、子どもの扱いはお手の物ってことか。

 

 

 新しい仲間について書き留める。

 デュークフリードの妹、マリア・グレース・フリード。フリード星人の生き残りのナイーダ。二人とも、紆余曲折の末仲間になった。

 大介さんは、地上から合流したひかるさんとナイーダさんの間に挟まれて修羅場ってるし、甲児は甲児でさやかとマリアが火花を散らして修羅場ってる。うらやましくねー。

 ちなみに、超能力持ちのマリアと《ミネルバX》の組み合わせは何気に一軍レベルの戦力だったり。

 

 なお、ベガ艦隊と戦闘中のガンダル司令から「ルビーの花を探せ」とのメッセージが届いたという。

 大介さんにはなにやら心当たりがあるようだ

 

 《ソロシップ》。開拓惑星ソロの人々を乗せた遺跡艦である。

 連邦政府の煮え切らない対応に怒るユウキ・コスモに絡まれたりもしたが、仲良くやりたいと思う次第だ。

 ちなみにカガリはオーブに残っているので、噂の迷言は飛び出さなかった。残念、なのか?

 

 《ガーランド》の矢作省吾。

 一九八〇年東京を再現した《MZ23》から新西暦に放り出された彼は、カルチャーギャップが酷いらしい。ジュドーやコスモと意気投合していたな。

 あと、彼の友人として紹介された霞渚にげんなりした。いや、確かに筋の通った役回りだけどさ。

 

 熱気バサラ。ロックバンド「FIRE BOMBER」の一員であり、歌う《バルキリー》乗りである。

 「戦争なんてくだらねぇ!」が口癖だけあって、仮にも軍隊のαナンバーズに協力するのは不本意なようだ。

 とりあえず、《シティ7》で買ったアルバムにサインをもらっておいた。ありきたりなアイドルソングも嫌いじゃないが、やっぱ熱いロックが一番だな。

 

 

 さてお待ちかね、《MZ23》の管理者、時祭イヴとの面談だ。

 大河長官、大文字博士、ブライト艦長、新たに加わった《バトル7》のマックスとミリア(出会い頭に修羅場ってた)、ラミアス艦長、ルリルリ(たまにそう呼んでる)、神北のじいちゃんとロミナ姫。そうそうたるメンバーを後ろに、無限力に精通するオレが代表して質問した。オレ、単なる一パイロットだったはずなんだけどなぁ。

 なお、《大空魔竜(LOD)》からは代表としてルルとダイヤ、サコン・シロウが参加していた。

 

 やはり思った通り、《MZ23》は統一意志セントラルに支配された地球から逃れるための都市艦だったようだ。

 また《大空魔竜(LOD)》の出身も同様であり、セントラルに支配されるずっと前の時代からやってきたことが判明した。《MZ23》に残されたデータによると、「《大空魔竜》戦隊」はダリウス界に向かったまま行方不明。しかし、以後ダリウス界からの侵略もなかったとされている。

 それを聞いたダイヤたちは大変ショックを受けていたが、同時にプロ子、次大帝プロイストが向こうに残っていないことには安心していた。

 

 ダイヤから本当に帰れるのかと問われたが、難しいことじゃない。

 《エグゼクスバイン》のラプラスコンピュータで因果律を観測すれば、帰還すべき世界線・時間軸の特定は可能だ。そもそも、旧プリベンターのメンバーはタイムスリップを経験しているんだからな。

 どちらにせよ、銀河の終焉を阻止し、無限力の活性化を終わらせなければお話にならないけどな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月×日

 地球圏、アステロイド・ベルト イカロス基地 《ラー・カイラム》の一室

 

 放棄された火星を帝国監察軍第一艦隊から奪還するため、αナンバーズはイカロス基地にやってきた。

 《ラー・カイラム》、《大空魔竜》、《ナデシコC》、《キング・ビアル》、《アークエンジェル》、《エルシャンク》、《ソロシップ》、《バトル7》、《大空魔竜(LOD)》の九隻からなる大艦隊だ。

 バルマーの最精鋭、第一艦隊とてひとたまりもないだろうさ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月*日

 地球圏、火星 エリシオン基地 《ラー・カイラム》の一室

 

 第一艦隊は壊滅、火星は無事奪還された。

 バラン・ドバンの《ベミドバン》。

 孫光龍の《応龍皇》。

 キャリコ・マクレディの《ヴァルク・バアル》。

 スペクトラ・マクレディの《ヴァルク・イシャー》。

 それぞれ、トウマ、クスハ、クォヴレー、セレーナと因縁ある相手であり強敵だ。

 さらに巨人族との戦闘経験を反映した超巨大要塞型《ズフィルード》、第一艦隊の決戦兵器《ズフィルード・エヴェッド》が行く手を阻む。

 激しい砲撃の嵐と、ディフレクト・フィールドの鉄壁はまさに難攻不落の要塞と言える。

 だが、新たに結成されたサウンド・フォースの歌による援護を受けたαナンバーズの総攻撃に、第一艦隊司令エペソ・ジュデッカ・ゴッツオともに倒れた。

 

 しかし光龍め、よりにもよってバルマーにつくとは。超機人の役目を忘れたか。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月*日

 地球圏、火星 エリシオン基地 《ラー・カイラム》の一室

 

 ネルガルから木星圏に異変アリという一報が入る。

 機界原種の来襲を察知した連邦宇宙軍は、《ユーチャリス》を改装した《ナデシコYユニット装備型》を筆頭にした艦隊を派遣、旧木星帝国の住民の救助活動を行っているそうだ。

 

 木星、ゾンダーとの決戦、か。

 この戦いがこの戦争の一つの区切りになるような、そんな予感がするな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ◎月※日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 長い戦いだった。

 クロスゲートから現れた宇宙怪獣の群れを退け、原種の罠に嵌まってクライン・スペースに閉じこめられるも突破。木星にあるザ・パワーを得たゾンダーのマスタープログラム、Zマスターを獅子王博士と《ジェイアーク》の犠牲を出しつつも撃破。

 さらに帰還した地球では、命さんがかつてパスダーにより植え付けられた種子が発芽、変異した機界新種(ゾヌーダ)の《ゾヌーダロボ》と東京市を舞台に激闘を繰り広げた。

 あらゆる物質を石ころ同然に変える「物質昇華」の猛威を潜り抜け、《ガオガイガー》の《ヘルアンドヘブン》が《ゾヌーダロボ》のコアを摘出、護渾身の浄解により命さんは救われたのだった。

 

 だが、満身創痍のαナンバーズに追い打ちを掛けるように、ゴラー・ゴレム隊が襲いかかる。

 Zマスターとの戦闘と、ゾヌーダ出現によるトラブルで出撃できなかった《エグゼクスバイン》、《ビルトファルケンL》、《龍虎王》、《雷鳳》、《ベルグバウ》、《ASソルアレス》、《ビルトビルガー》と《ビルトファルケンR》、《ベガリオン》が迎え撃つ。

 しかし、主力を欠いた上に多勢に無勢、追いつめられるオレたち。絶体絶命の危機に駆けつけたのは、心強い仲間たちだった。

 リュウセイとヴィレッタ大尉、ゼンガー少佐とレーツェルさん。そして、《メギロート》の群れを《サイフラッシュ》で消し飛ばすお約束の流れで、《サイバスター》率いるアンティラス隊が参上したのだった。

 これで形勢逆転、ゴラー・ゴレム隊は壊滅的打撃を受けて逃げ帰った。

 

 

 さて、新メンバーの紹介だ。

 クロスゲートから現れたかりそめの旅人、《テムジン 707J》のチーフ、《アファームド・ザ・ハッター》のハッター軍曹、《フェイ・イェン・ザ・ナイト》ことフェイ・イェン――、いわゆるバーチャロンチームにはもう一人(?)、イレギュラーがいた。

 電脳の歌姫、《フェイ・イェンHD》である。

 フェイ・イェンの二人には「おまえら同一人物なんじゃねーの?」とツッコんだが、「「なんだかよくわかんない」」とユニゾンで返された。また無限力の仕業か。いい加減にしろ。

 

 とりあえずややこしいので、《HD》の方は中の人に因んでミクと呼ぶことに。そう提案したら「この子を知ってるの?」と驚いていた。

 チームD、JUDA特務室のメンバー、《エルシャンク》隊、《マジンガーZ》と各種《ガンダム》を見て反応を示していたことから、どうやら「UX」世界か、それに近い宇宙からきたようだ。「誰かの歌が聞こえてきたんだ」とは本人談だが、誰かって誰さ。

 

 木星決戦では、GGGアメリカに保護されていた《テッカマンレイピア》こと相羽ミユキが《マイク・サウンダース13世》の新武装を届けに参戦した。

 身体の方は大丈夫なのか、とそれとなく聞いたら言葉を濁された。そういうことか。なんとかしなきゃな。

 

 リュウセイは、《アルブレード・カスタム》で参戦だ。

 敗北の後遺症で念動力を失ってなお、バルマーと戦おうとする彼はまさしくヒーローだ。オレもダチとして、全力で力になってやりたいと思う。

 また、ゼンガー少佐の《ダイゼンガー》は設計者直々に改修を受けたそうで、《ゼネラル・ブラスター》、《ダイナミック・ナックル》の固定武装が解禁されていた。

 レーツェルさんのダブルG、《アウセンザイター》との合体攻撃《竜巻斬艦刀・逸騎刀閃》は強力無比だ。

 

 おなじみ、マサキとリューネのラ・ギアス組。今回は仲間も伴ってやってきた。とはいえ、イージス事件時のメンバーのみだが。

 ラ・ギアスの方にはきちんとした母艦もあるのだそうなのだが、諸事情により持ってきていないらしい。こっそりセニアに理由を聞いたら、「お金の問題よ、お金の」とげんなりした様子で答えられた。世知辛ぇえ。

 シラカワ博士は別行動とのことで、率直に残念がったら「なんでぇ、シュウの方がよかったってのかよ」とマサキがふてくされていた。

 いやいや、お前らが来てくれてうれしかったって。

 

 ゾンダーが滅び去り、護は生まれ故郷を訪ねるべく《ギャレオン》とともに、外宇宙へ旅立っていった。

 ケンタに次いで護も旅立ち、銀河や北斗ら、年少組がしんみりしていたな。

 ウチの妹様もだいぶ落ち込んでいて、慰めるのが大変だった。

 

 

 

 新西暦一八九年 ☆月*日

 地球、極東地区日本某所 「愚裸美温泉」の一室

 

 ったく、ひでー目に合ったぜ。

 

 激戦の労を労うということで、サンドマンがαナンバーズ全員を個人所有(!)の温泉地に招待してくれた。

 慰安旅行中(という名目で、かなめの身の安全を確保しているらしい)の《トゥアハー・デ・ダナン》のメンバーとなし崩し的に合流、英気を養ったわけだ。

 

 で、せっかくの温泉ということで、甲児、豹馬、ボス一味他有志を引き連れて女湯を覗きに行ったんだが、失敗してエラい目にあった。

 アーマラの奴、殺す気で発砲してきやがって。死ぬかと思ったぞ。

 まあ、その模様はいつか別口で披露することにして。

 

 温泉地にほど近い火山の火口内からゼラバイア、《炎獄の竜神 マグガルド》が出現。それに便乗して、デビルサターン率いるギャンドラー一派が攻撃を仕掛けてきた。

 

 だが悲しいかな、シチュエーションが悪かった。

 FIRE BOMBER with アーズガルツメイド隊の「合神!ゴッドグラヴィオン(サンドマンの合いの手つき)」から、FIRE BOMBER with フェイ・イェンHDによる「SKILL」のメドレーをバックに、気力を大いに充填したαナンバーズの総攻撃を受けたんだからな。

 デビルサターンはギャグ担当だし、お誂え向きのシチュエーションだったか。

 

 

 

 新西暦一八九年 ☆月#日

 地球、某所 バベルの塔

 

 現在αナンバーズ艦隊は極東支部で激闘のダメージを癒している。

 で、オレたちはというと、孔明から連絡を受け、バベルの塔に帰ってきた。

 ことの発端であるウチの博士の依頼で、マサトと美久、赤木のリッコさん、セニアとウェンディさん、両サコン氏、ターサン博士とアール博士が同行者だったり。多いわ!

 

 つーか、着いてびっくりした。

 光子力研究所の弓博士と新早乙女研究所の早乙女博士、科学要塞研究所の兜博士らを筆頭に、有名どころというかαナンバーズに関係する科学者・技術者が勢ぞろいしていたんだからな。

 イルム中尉の親父さん、ネート博士と安西博士、ロブとカークさんもいた。GGG代表の獅子王雷牙博士が「弟も参加したかっただろうね」と言っていて、ほろりとした。あ、プラート博士なんかもいたぞ。

 

 第二次EOT会議とでも言うべきか、博士の音頭で地球と異星、異世界の頭脳が一堂に会したこの会議。

 議題はアポカリュプシスと無限力について。あと、なんかみんなの知恵を出し合って一つのものを作り上げるらしいが。

 まあ、途中で追い出されたんだけどな!

 

 何を作るつもりなのかを発案者の博士に聞いてみたのだが、「それはヒミツだよ、イング」とウィンクを交えてはぐらかされた。あの人、いい年してお茶目というか子供っぽいところがあるんだよなぁ。ろくなもんじゃないな、こりゃ。

 リューネにだってまだ会うつもりはないらしいけど、その理由が「相応しいタイミングというものがあるのだ」ってことだし。

 

 追記。

 ガルーダとネプチューンの改修作業はまだ続いている。

 どうやら博士がノリにノってしまったらしく、近代化改修に留まらないマ改造を施しているとのこと。もしかしたら今回の集まりにも関係しているのかと思うと、戦慄を禁じ得ないな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月¥日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 ようやく本隊に合流した。

 第二次EOT会議は一週間も続いたわけだが。

 

 今日の出来事。

 科学要塞研究所近くに停泊していた《シティ7》内にクトゥルフの戦士、イクサー2が進入した。

 再び姿を現したイクサー1、サイボーグ宙、セレーナと協力し、撃退に成功する。

 しかし、クトゥルフの新型、ではなくムーンWiLLの生み出した戦闘メカ《レギュラスα》が現れた。あ、《ディロスθ》ももちろんいたぞ。

 

 イクサー2が《イクサーΣ》を持ち出して決戦を挑む。

 援軍として《Rーダイガン》と《ブラックウィング》、そして新たな勇者王が登場する! ファイティングメガノイド《ガオファイガー》!

 純地球製《ガオガイガー》、生機融合体「エヴォリュダー」に進化した凱さんのGパワーを受けた新しい勇者王の戦いぶりは、圧倒的と言う他なかった。

 

 《イクサーロボ》同士の戦いに勝利したのはイクサー1と渚だった。

 戦闘後、イクサー1はαナンバーズに同行することを表明、渚もようやく覚悟を決めた様子だ。

 

 が、新たな問題も噴出した。

 戦闘終了間際、ガルファの機獣に隙を突かれ、拘束された《凰牙》が連れさらわれるというアクシデントが起こった。

 確かにそんなイベントもあったな、と今更ながら思い出し、大いに凹んでいるところだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月*日

 地球、太平洋 《ラー・カイラム》の一室

 

 JUDAのメンバーが一時本拠地に帰還すると聞いて嫌な予感がしたんだが、大当たりだ。

 

 森次が加藤機関に寝返り、JUDA本部は壊滅、石神社長が殺害された。彼らの真意を知っているとはいえ、やるせない。

 さらに、それに呼応するようにクーデター軍が決起し、地球安全評議議事堂を占拠すると同時に、バイオネットやアマルガム残党、さらには最近影の薄かった地下帝国までもが世界各地で混乱を引き起こした。

 当然、αナンバーズが行動を開始。まずは全軍で、人質に取られた地球安全評議会のメンバーを解放に向かう。

 

 現場に急行するオレたち。

 敵は当然の如く加藤機関とクーデター軍。アルマとマキナ、そして型落ちの機動兵器。人型アルマことジャック・スミスを生身で一騎打ちして投降させつつ、クーデター軍を壊滅させた。

 というかハマーンさんが《キュベレイ》を議場近くに持ち込んでいたらしく、一人でリアル無双状態だったんだが。オレたちの出る幕ないじゃんか。

 

 マズい事態は立て続けに起こるもので。戦闘後、グランナイツ内にゴタゴタが発生、リィルが戦闘不能、ミズキさんはチームを抜けるという体たらく。

 ここに来て、嫌な流れだな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月○日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 月軌道上に、突如として巨大な戦艦がワープアウトしてきた。

 地球圏はクーデター軍の決起もあって大混乱だ。

 

 外宇宙の事情通、ターサン博士によれば、ワープアウトしてきた不明艦は共和連合ゾヴォークの大型砲撃艦、《ウユダーロ級制圧砲艦》とのこと。

 ついに出たか、ゾヴォーク!と身構えたところに、意外な人物からメッセージが届いた。

 

 その人物とはシュウ・シラカワ。地球圏でも一二を争う天才科学者にして、《グランゾン》のパイロットだ。

 なんとシラカワ博士は封印戦争後、旧DC時代から持つ独自のコネクションを駆使してゾヴォークの枢機院に接触、連邦政府との同盟締結を働きかけていたのだという。オレは知らなかったが、すでにグローバル議長やミスマル提督、大河長官らには内密に話しを通していたらしい。まあ、なにやら個人的な思惑も絡んだものらしいが。

 で、ゾヴォークの意向だが。この宇宙的危機に際し、渦中の地球と連携して滅びを乗り切りたいというのだという。しかし、聞いた話によると政敵暗殺上等なドロドロとした社会構造をしているらしいし、真意は定かではない。

 まあ、仮にも共和制の国だし、同盟相手としてはバルマーや星間連合よりマシだろう。

 大河長官らは連邦政府を代表して彼らと会見を目指すようだが、はてさて、どうなることやら。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月◇日

 地球、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 引き続き、世界規模の混乱は続いている。αナンバーズは母艦ごとに五つ部隊に分け、同時進行で事態の収拾を図ることになった。

 

 アラスカ、現地球連邦最高司令部「JOSH-A」防衛に向かうのは、《ラー・カイラム》と《アークエンジェル》隊。

 戦力はモビルスーツを主力に、《ボルテス》チーム、《ゼオライマー》、獣戦機隊、《ダイモス》チーム、チームDだ。

 

 北米地区、GGGアメリカの支援に向かうのは二隻の《大空魔竜》。両《ガイキング》とGGG機動部隊、《ゲッター》チーム、《レイズナー》チーム、スペースナイツ、大作と銀麗さんが同行する。

 クスハ、ブリットとSRXチームはこの部隊である。

 

 日本地区防衛に残るのは《キング・ビアル》。竜魔帝王により統一された地下帝国を抑え、ガルファから北斗を取り戻すのが主な目的だ。

 主な陣容は《鋼鉄ジーグ》、《マジンガー》チーム、《コンバトラー》チーム、GEAR、J9、《ザンボット3》、旧JUDA特務室のメンバー。グランナイツも諸事情により居残。J9はオレが無理を言って加えてもらった。

 トウマ、ミナキ、ゼンガー少佐とレーツェルさんも残るようだ。

 

 宇宙に出て、星間連合とザフトに睨みを利かすのは《ナデシコC》と《エルシャンク》。

 両艦の専属機、《ライディーン》と《ラーゼフォン》、《グレンダイザー》、《ダンガイオー》チーム、《ダルタニアス》、《ドラグナー》チーム、トビアら旧宇宙海賊が戦力だ。

 クォヴレー、アラドとゼオラにはザフト相手にがんばってもらいたい

 

 最後に、ゾヴォークと接触するのは《バトル7》と《ソロシップ》。

 《バルキリー》全般に《イデオン》、旧ネルフ組、《ガーランド》、イクサー1と渚、《ゴーショーグン》チーム、ラ・ギアス組、《ゴライオン》チーム、バーチャロンチームが参加する。

 シラカワ博士と顔見知りらしいセレーナ、スレイはここだな。

 

 さて、オレとアーマラ、イルイだが、《ラー・カイラム》隊に加わってアラスカに行くことになった。

 ブライト艦長曰く「アラスカでは激戦が予想される。頼りにしているぞ、イング」とのこと。ブライトさんにそこまで言われちゃ、張り切らないわけにはいかないよな。

 

 嫌な予感がビシビシ感じやがるが、オレの身は一つしかないのが辛いところだ。

 孔明と国際警察機構に各部隊のフォローをするよう依頼しておこうと思う。

 

 

 

 新西暦一八九年 ☆月@日

 地球、太平洋 《ラー・カイラム》の一室

 

 《ラー・カイラム》隊は海上を移動中。

 敵に遭遇するわけでもなく、静かなものだ。不気味すぎるほどな。

 

 日本地区の《キング・ビアル》隊から火急の知らせが入った。

 《ゴッドグラヴィオン》の敗北とグランナイツの崩壊だ。

 無人操縦装置取り付けのため、単独行動しているところをゼラバイアに狙い撃ちにされたらしい。

 エィナの犠牲と、ルナの失踪。

 盗用した《グラヴィオン》のデータから生み出された連邦軍の特機、《グラントルーパー》隊も現れたようだ。

 

 原作の流れから考えるに、ルナが連邦政府、いやブルーコスモスあたりに捕らえられているはずだ。ここはコスモレンジャーJ9の出番だな。

 あと、シャッセールの“獅子の女王(リオン・レーヌ)”にも救出依頼をしておこう。

 

 とはいえ、こっちにもよそを心配している余裕はない。

 アズラエルからの連絡によればハザードが暗躍しているようだし、アラスカでは何が起こってもおかしくないんだ。

 ミスマル提督のような実力実績のある高官が後ろ盾についてくれているのだし、さすがに反逆者扱いはないと思いたいが。

 

 

   †  †  †

 

 

 アラスカ、地球連邦最高司令部「JOSH-A」。ヘリオポリスから長い道のりを経て、《アークエンジェル》は旅の目的地にたどり着く。

 しかしそこはすでに、ブルーコスモスの巣窟と化していた。

 

 失脚したはずの三輪長官により査問と称して拘束されるブライトやマリュー。αナンバーズのメンバーも相手が仮にも味方とあって、無抵抗で拘束されてしまった。

 しかし、アズラエルからの警告を受け、また半ば予想していたイング――地球圏最強の汎超能力者の前には生半可な謀略など意味をなさない。

 アキレスを密かに潜入させ、αナンバーズの戦力を手中にせんとする連邦軍強硬派の罠を力づくで食い破り、入り込んでいたズールの手の者、ゲシュタルトらを蹴散らしてイングはエクス、アキレスを連れて司令部に進入する。

 

 何も知らない司令部職員を国際警察機構の威光で黙らせ、端末に取り付く。

 バルマー戦役から続く長い戦乱における英雄イング・ウィンチェスター、国際警察機構の「ワンゼロワン」の勇名は連邦軍内外にも響きわたっている。ましてやここは仮にも連邦軍の頭脳、彼を知らぬものはいなかった。

 

「これは……!」

 

 基地システムにアクセスした結果得た情報に、イングは瞠目した。

 

「中性子爆弾……核だと!?」

「イングさん、この量の核爆弾が爆発したら、地球は……!」

「わかってる! クソッ!」

 

 二人のやりとりを聞いて、司令部は俄に騒然となる。

 アラスカの地下深くにあったのは、ドクーガのネオネロスも用いた旧世紀の悪しき遺産。その物量は、一度爆発すれば地球を死の星にしかねないほど。 

 悲鳴と戸惑いが交錯する中、イングは爆発を阻止すべく、あらゆる手段を用いる。エクスも、その演算能力を駆使してサポートする。

 だが――

 

「駄目だ、停止信号を受け付けない!」

「こっちもだめですっ! システムが切り離されてるの!?」

 

 エクスの悲鳴にも近い叫びが響いたとき、司令部内に警報が響きわたる。

 広域警戒網を映した特大のモニターには、不吉な赤い光点が次々と点灯していった。

 

「敵襲っ!? ザフトの大部隊が、大気圏外から降下してきます!」

「オレたちを餌に誘い込んだ……? いや、違うな、惨たらしい戦争によって地球を苦悶と絶望で満たす、それがズールとムゲの狙いか!」

 

 「パナマじゃないのか?」「そんな、どうして!?」――悲鳴や怒号を背に、イングはやりどころのない苛立ちを拳に固めて目の前のコンソールに叩きつける。

 砕けるコンソールには見向きもせず、彼は身を翻した。

 

「みんなを解放して迎え撃つ! ゼオライマーの次元連結システムなら、核爆発だって宇宙に逃せるはずだ!」

「はい!」

 

 

 途中、独自に進入していた岡長官、アラン・イゴールと協力し、囚われていた仲間たちを解放。さらにイングは、半ば強制的に転属を命じられていたナタル、フレイ、ムウの三名を確保した。

 何も知らず、未だ基地内に残る大勢の職員の避難を岡長官らに任せ、迎撃に打って出る。

 

 灰色に曇った空を覆い尽くさんばかりに押し寄る、ザフトのモビルスーツ。そして、星間連合の戦闘メカ群。

 ザフト乾坤一擲の作戦、「オペレーション・スピットブレイク」。全軍に近い戦力と《ゴーストX9》まで投入して、連邦軍の本丸を落とさんと猛進する。――そこに悪辣な罠が待ちかまえているとも知らずに。

 

 守備隊の《イージス艦》や《ジェガン》、《ドラグーン》が必死の抵抗を続けるが多勢に無勢、成す術なく破壊される。

 職員避難の時間を稼ぐため、前面に出てザフトの攻撃を一身に受ける《ラー・カイラム》、《アークエンジェル》。全域に核爆弾の存在を告げるが、ザフトは聞く耳を持たず止まらない。

 母艦を守るために、アムロ率いるモビルスーツ部隊は必死の抵抗を続ける。それが、ザフトを深みに引きずり込む結果になるとわかっていても――

 

 

「はぁ……、はぁ……!」

 

 白いモビルスーツ《ストライクガンダム》のパイロット、キラ・ヤマトもまた泥沼の戦場にいた

 不意に、《グゥル》に騎乗した《ジン》を高出力ビームが射抜く。

 

「な、なんだ……トーラスに、ジム? いや、新型?」

 

 キラは、カメラに映る《ジン》を撃破したと思わしき機影に怪訝とする。

 編隊を組んで飛行する黒い可変モビルスーツ《トーラス》、その上にシンプルな青いモビルスーツが騎乗していた。

 連邦的な、どこか《ストライク》を思わせる意匠のモビルスーツ部隊は《トーラス》とともにザフトを攻撃する。

 

「援軍なの?」

 

 ふと気を抜いたキラをあざ笑うかのように、不明機が《ストライク》に向けてビームライフルを発砲する。半ば反射的に構えたABシールドがビームを拡散させた。

 衝撃に軋むコクピットで、キラは混乱する。

 

「コイツ、撃ってきた!?」

『キラ!』

 

 ウェイブライダーから変形した《Zガンダム》がビームライフルの引き金を引き、《トーラス》と謎の新型を破壊した。

 《ストライク》の傍らに、《Zガンダム》が着地する。

 

「カミーユさん!」

『ソイツらは無人機、モビルドールだ! 遠慮はするな!』

「は、はい!」

『モビルドールなんて持ち出しちゃって、どこのどいつよ?』

 

 カミーユの忠告を受け、キラはトリガーを引く。

 上空ではモビルアーマー形態の《ガンダムZZ》がミサイルの雨を降らせながら、旋回していた。

 

 

『殺気!?』『キラッ、避けろ!』

 

「え――うわぁっ!?」

 

 カミーユ、ジュドー、二人のニュータイプが捉えた

 強烈な()()()()ビームが、《ストライク》を襲う。

 ビームは偶然構えたままだったシールドに直撃し、それを融解させながら弾き飛ばした。

 

『――フンッ、唯一の成功体と言えど、ガンダムが出来損ないではこのザマか』

 

 そんな敵意に塗れた声が吹き飛ばされた《ストライク》のコクピットに響く。どこか自身に似たその声色に、キラの困惑は深まる。

 アラスカの深い森から姿を現したのは、白と赤を基調とした“ガンダム”。

手にはサブマシンガン状の銃器を持ち、背中にはビームを放ったであろうウィングバインダーを背負っていた。

 

『ガンダムタイプ? また新型ってわけ?』

『気をつけろ、キラ。生半可な相手じゃなさそうだ』

 

 《Z》と《ZZ》が膝を突く《ストライク》を庇うように立ちふさがる。

 赤白のガンダム周囲には、複数の新型機が従っていた。

 

『Zに、ZZ……バルマー戦役時代の骨董品か。ガンダムは、このハイペリオンガンダムだけでいい! そしてキラ・ヤマト! 貴様は俺が倒す!』

 

 キラと同じ声をした男――カナード・パルスは、強烈な憎悪を露わにし、《ストライク》にぶつけた。

 

 

 作戦を完遂するためにブルーコスモス、あるいはゼーレが差し向けた刺客たちが戦場に乱入する。

 《ストライク》の流れを汲む戦時簡易量産機、GAT-01《ストライクダガー》。

 機体自体は大幅にデチューンされているものの、動力源にはミノフスキー型核融合炉を採用しており、パワーだけなら原型機を遙かに凌ぐ。

 そして、試作型モビルスーツCAT1-X1/3《ハイペリオンガンダム》。

 同じくミノフスキー型核融合炉を動力源に、新型ビームシールド「光波(アミューレ・)防御帯(リュミエール)」を装備した最新鋭の“ガンダム”だ。

 

 モビルドールに制御された《トーラス》、《サーペント》、《ギラ・ドーガ》、《ドーベンウルフ》に加え、元ティターンズの生き残り、ヤザン・ゲープルや元アマルガムのガウルンらが猛攻を掛ける。

 核爆発が迫っているというのに、まるで死兵のように――実際、自らの死を恐れてはいまい――躊躇のない攻撃は脅威的の一言だった。

 

 一方、核爆発に備えるマサトと《ゼオライマー》の前には、八卦衆の生き残り、塞臥(サイガ)が立ちふさがる。

 風、火、水、月、地、山、雷――かつて撃破された八卦ロボの要素を一つに集めた異形にして巨大な特機、《ハウドラゴン》。

 鉄甲龍の名を関した最期の八卦ロボが、“天”を追い落とさんと襲いかかった。

 

『八卦ロボの武器に、このパワー、ゼオライマーと同等とでも言うのか!?』

『マサトくん!』

『フハハハハハ! この程度か、木原マサキ!』

『違う! 僕は秋津マサト、木原マサキじゃない!』

『フン、ならば貴様の代わりに俺が冥府の王となってやろう! このハウドラゴンでな!』

 

 激突する《ゼオライマー》と《ハウドラゴン》が、天地を揺るがした。

 

 

 海上では、《エグゼクスバイン》と《ビルドファルケン・タイプL》が星間連合を相手どりに奮闘していた。

 周囲には《ダンクーガ》ら特機部隊が撤退の準備をする輸送艦を守るべく、敵機を撃墜している。

 また、イザーク、ディアッカ、ニコルの三名が同胞たちに罠の存在を訴えるが、聞き入れられない。皆熱狂に浮かされたように、我先に基地へと突入していく。

 

『ザフトめ、星間連合と組みしていたようだな』

「そうらしい。つーか、奴ら外面を取り繕う気もなくなったらしいぜ」

『――厄介なことだ、なッ!』

 

 互いの死角をカバーするように、背中合わせで銃器を放つ両機。息のあった華麗なコンビネーションで敵機を寄せ付けない。

 その周囲では、《TーLINKレボリューター》と《TーLINKリッパー》が乱舞して鉄くずを量産していた。

 

「現在、避難率35%。爆発までの時間は不明です!」

「っち、こいつはマジでやべーな。マサトたちは動けねぇし……最悪、オレが核爆発を転移させるしかないか」

『できるのか、そんなこと』

「できるできないじゃねぇ、やるしかねーだろ」

『しかし、お前は――』

「! アーマラッ!」

『ッ!』

 

 イングの発した警告に、アーマラは思考の間もなく反応した。

 阿吽の呼吸でその場を離れる二機の凶鳥。そこに、一筋の落雷が降り注ぐ。

 曇天から次々と落下する稲妻。

 αナンバーズ、連邦軍、ザフト、星間連合――強烈な雷光は勢力を問わず降り注ぎ、戦場を無造作に蹂躙する。

 

『雷だと?』

「これ、自然現象じゃありません! 上空に強力なαパルス反応! ――きますっ!」

 

 エクスの警告とともに、一際巨大な落雷が戦場を切り裂く。

 長城の如き巨体が、灰色の雲海を悠然と泳ぐ。万雷を轟かせ、万里の龍神が姿を現した。

 

「応龍の超機人、応龍皇! 孫光龍!」

『やあ、火星ぶりだね、バビル二世』

「テメェ! こんなところにノコノコやってきて、何のつもりだ!」

 

 全長推定8,000km、巨大なる超機人は、まるで下界に溢れる塵芥を見下す天上人のように。

 

『何のつもり? もちろん、キミを倒すためさ。かつてこの応龍皇を下したキミの先代、ビッグ・ファイアはもうこの世にいない。そしてナシムもガンエデンを失ってあのザマさ。あとはキミさえ消えれば、応龍皇に敵はないんだ』

 

 自身の狙いを明かす光龍。

 歪んだ念と不快な思惟を感じ取り、イングの眉間に深い皺が寄る。

 

『それに、僕の今の雇い主がマシアフ――イルイの身柄をご所望でね。邪魔なキミにはここで消えてもらおうってわけだよ』

「させると思うか、光龍!」

『ありきたりなセリフをありがとう、二世。僕からも一言遅らせてもらおう』

 

 光龍は、道化の仮面を被ったまま、殺意を露わにした。

 

『僕はね――、キミみたいに暑苦しい奴が大嫌いなのさ!』

 

 鳴り響く雷光とともに、応龍の超機人がその顎門(アギト)を開く。

 

 

 

 

 アラスカ上空、衛星軌道上。

 白い翼を持つ優美なピンク色の戦艦から、三機の機動兵器が発進した。

 

 桃色に染めたザフトの高級士官用パイロットスーツを着た少女が、やや緊張した面もちでシートに収まっていた。

 アラスカの地で死闘を繰り広げる友人たちを救援すべく、周囲の反対を押し切ってここにいる。

 

「これが、地球……わたくしたちヒトの生まれた星……」

 

 今、彼女の眼前に広がるのは母なる惑星(ほし)、地球。その雄大な威容に、その美しいまでの碧に、少女は感銘を受けると同時に微かな恐れを覚えていた。

 

『本当に大丈夫なのか? 君は軍事的な訓練を受けていないんだ、余り無茶をするべきじゃない』

 

 サブモニターに映るいわゆるザフトレッドのパイロットスーツに身を包んだ少年が、気遣わしげに声をかける。

 少年は、全天周囲モニターに映し出された背中に“リフター”を背負ったワインレッドの“ガンダム”に搭乗しており、少女の乗るモビルスーツと手を繋いでいた。

 

「だいじょうぶですわ。わたくしも、お友達の助けになりたいのです。それに、あなたがエスコートしてくださるのでしょう?」

『あ、ああ』

 

 少女のたおやかな笑み。少年は言葉に詰まり、反射的に頷いていた。

 

『二人とも、お喋りはそこまでにして』

『アラスカの戦況は芳しくないみたいだ。急いだ方がいい』

 

 凛々しい面差しの女性が二人を咎め、続いて柔和な印象の青年がわずかに急いた様子で告げる。

 彼らは友人の身を心配して、気が急いていたのだ。

 

「ごめんなさい、わたくしはいつでも行けますわ」

『こちらも準備完了しています』

 

 出発を促され、少女と少年が表情を改めた。

 少女の機体の全天モニターには、少年の赤い機体とは別に、もう一機の機動兵器が。映し出されている

 船舶に似た機体に搭乗した黒と紫紺の機動兵器――ブレードアンテナこそ四本になっているものの、事情通ならばある意味特徴的なフェイスデザインでその素性を理解するだろう。

 

 “バニシング・トルーパー”、《ヒュッケバイン》と――

 

 

 

 ビームサブマシンガン《ザスタバ・スティグマド》が放つメガ粒子の直撃を受け、《エールストライカー》が損傷、爆発する。

 キラは死の恐怖を押し殺しながらもはや邪魔にしかならない《ストライカー》を破棄、その勢いと本体の貧弱なスラスターの推力を全開にして反転し、《ビームライフル》を撃ち放つ。

 狙い違わぬ射撃はしかし、《ハイペリオン》のビームシールドの前には無力だった。

 

「やっぱり、ビームが……!」

 

 キラは歯噛みする。

 《ストライク》のビームライフルは《ハイペリオン》の代名詞、光波防御帯に阻まれる。

 バルトフェルドが“バーサーカー”と表したその未知なる能力も、厳然たるスペック差を埋めるまでには至らない。

 

『そらそらそらぁ! どうしたキラ・ヤマト! 成功体の力はその程度かぁ!』

「き、君はいったい!?」

『ふんっ、やはり何も知らないか。でなければ、そのように惰弱ではいられん!』

 

 《ハイペリオン》のパイロット――、カナード・パルスは無知を嘲り、憎悪をキラにぶつける。

 見に覚えのない弾劾。だが、相手の声を聞いていると自分とは無関係とは思えず、キラは心身ともに追いつめられていった。

 

 バッテリー駆動の《ストライク》では、核融合炉を持つ《ハイペリオン》に歯が立たない上、鉄壁とも言えるアミューレ・リュミエールの前には《ストライク》のあらゆる武装は通用しない。

 友軍機は皆、それぞれ戦闘中で孤立無援。いつでも血祭りに上げられると、カナードはキラを、《ストライク》をことさらにいたぶっていたのだ。

 

 頭部がえぐられ、左腕が切り飛ばされ、ライフルが潰される。《ハイペリオン》によって《ストライク》は無惨な姿に変えられていく。

 ついにビーム刃が前面の装甲を切り裂き、コクピットが露出した。

 

「う、うわああっ!」

 

 ついに、キラの口から悲鳴が飛び出した。

 核融合炉のパワーが込められた蹴りを胴体に受け、吹き飛ばされた《ストライク》が木々をなぎ倒す。フェイズシフト(PS)装甲でなければ、真っ二つに折れてもおかしくない衝撃がコクピットを軋ませた。

 

「ぐぅぅっ!!」

『これまでだな。――死ね、キラ・ヤマト!』

 

 無慈悲な言葉とともに、ビームサブマシンガンの銃口が無様に擱坐した《ストライク》を捉える。

 そのとき、天空より一筋の光が降り注ぎ、《ザスタバ・スティグマド》を射抜いた。

 

『!?』

「えっ!?」

 

 何者かの狙撃により主武装を失った《ハイペリオン》はそれを投げ捨て、腕の光波防御帯を展開して後退する。

 同時に、込められたメガ粒子が。

 轟く爆音。膨れ上がる爆炎が《ハイペリオン》の姿を一瞬覆い隠した。

 

『ちぃ、新手か!? どこから――』

 

 苛立つカナード。地面を這うように、赤いリフターが猛スピードで強襲する。

 咄嗟に飛び退く《ハイペリオン》の頭上から、赤い“ガンダム”が《ビームサーベル》を落下ざまに振り下ろす。

 

『おおおおっ!』

『ぐぅぅッ、邪魔をして!』

 

 咆哮一閃。ビームとビームが激突し、粒子と爆光が迸る。

 シールドに防がれた赤いガンダムは、手に持ったサーベルを腰にマウントされたもう一本と連結、長刀状にして追撃する。両端からビーム刃の延びたサーベルを器用に操り、《ハイペリオン》を追い立てていった。

 

「あのガンダムはいったい……?」

 

 もはや動くことさえままならない《ストライク》の前に、青い翼の“ガンダム”が降り立つ。

 その“ガンダム”は倒れた《ストライク》のすぐ側に寄り添うようにして膝立ちとなり、フェイズシフトダウンする。そして、人体で言う鎖骨の間からシートがせり上がってくる。

 ピンク色のスーツを着たパイロットはベルトを拙い手つきで外し、ヘルメットを脱ぎ捨てる。コーディネーターの優れた視力が、その人物の素顔を捉えた。

 

「……えっ、ラクスさん!?」

「はい!」

 

 明るい返答とともに、ラクスはシートから飛び降りるようにしてモビルスーツの手の上に降り立つ。その危なっかしい様子を見せられたキラは、はらはらして思わずコクピットから身を乗り出して彼女を出迎えた。

 軽快な足取りで傷ついた《ストライク》の、キラの元にたどり着いたラクスは、一転して頬を膨らませる。

 

「キラ、わたくしのことは“ラクス”とお呼びくださるよう、お願いしましたのに」

「あ、うん、ごめん……って、そうじゃなくて! どうしてラクスさ、ラクスがこんなところにいるのさ!」

 

 混乱気味のキラに、ラクスはふわりと微笑む。

 その可憐な笑顔に追求の言葉を失うキラ。親友が同じようにやりこめられたことを知る由もない。

 

「熱気バサラさんの姿を見て、わたくしは思ったのです」

「バサラさんの?」

「はい。わたくしもただ平和を願うだけではなく、行動しなければと。……力だけでも、想いだけでもだめなのです。耳に心地いい理想を歌うのは簡単で、それだけでは世界を変えることなどできないとわかったのです」

 

 ラクスは胸元で手を組み、祈るように切々と言葉を紡ぐ。

 

「この星を平和を取り戻すために、そしてほかの星々の方たちと手を取り合うために……その始めの一歩として、このモビルスーツ――、フリーダムをキラに託します」

「フリーダム……」

 

 こちらに。ラクスに誘われ、キラは“ガンダム”のコクピットに足を踏み入れる。

 ラクスと肩が触れ合う距離に。

 立ち上がるOS。ザフトの軍章が表示され、次いで文字の羅列が流れていく。

 

 Generation

 Unsubdued

 Nuclear

 Drive

 Assault

 Module Complex――

 

 《ストライク》のOSと同じ「G.U.N.D.A.M」のアナグラムにキラは思わずくすりと笑みを漏らした。そして、モニターに表示されるスペックに目を通していく。

 その視線は、ある一点に釘付けとなった。

 

「動力は――レーザー核融合炉!? プラントは、ミノフスキー物理学を使わない核融合エンジンを完成させたの?」

「はい。ザラ議長……アスランのお父さまはわたくしの父に、「コーディネーターの意地だ」と仰っていたそうですわ」

 

 複雑な表情を見せるラクス。その凝り固まった考え方が愚かだと思う彼女はプラントにおいては異端だ。

 かたくなに、“ナチュラル”の生み出したミノフスキー物理学の使用を拒んでいたプラントが至った英知の結晶――ZGMF-X10A《フリーダムガンダム》。

 連邦が再び核融合エンジンを採用したことに対抗するかのように、プラントもまた新たなステージに足を踏み入れていた。

 

「これなら、あのガンダムとも戦える……!」

 

 キラは自身を散々に打ちのめした“ガンダム”に対して闘志を燃やした。

 《ハイペリオン》のパイロットと何らかの因縁があるのなら、自分はそれを知らなければいけない。漠然と、キラはそう感じていた。

 

『ラクス、キラは確保できたか!?』

 

 とそのとき、赤いガンダムタイプ――ZGMF-X09A《ジャスティスガンダム》から通信が入る。

 キラは聞き慣れた親友の声に驚き、顔を上げた。

 

「! アスラン!? もしかして、あの赤いガンダムに?」

『そうだ! キラ、詳しい話しは後にして、ラクスをアークエンジェルかラー・カイラムに下ろすんだ』

「いいえ。キラ、わたくしのことはかまわず、このまま戦ってください」

『ラクス!?』

「そんなっ、危ないよ!」

「わたくしが直接ザフトのみなさまに訴えかければ、この無意味な戦いを止めることができるはずです。違いますか?」

 

 真剣さを帯びた水色の瞳がじっ、とキラを射抜く。

 ただのぽやぽやとしたお姫様ではないことはキラとて理解していたが、ここまで意志の強いとは予想だにしていなかった。そしてその意志を曲げることは極めて難しいとも思い知った。

 

「……わかったよ」

「まあ! ありがとうございます、キラ」

『キラ!』

「アスラン、ラクスだって命懸けで戦うつもりなんだよ。平和の、みんなのために」

『キラ……。仕方ないな。その代わりキラ、お前がラクスを守るんだぞ』

「うん、わかってる」

 

 親友(キラ)の力強い答えにアスランは僅かに目を見開き、確かな

 

 ラクスをサブシートに座らせ――今回の作戦に合わせて急増で後付けされたものらしい――、キラは猛スピードでキーボードを叩いていた。

 時間はないが、多少になりともOSをカスタムし、万全の状態に持って行く。自分の命だけではなくラクスの命までかかっているのだ、妥協はしたくなかった。

 

「よし! 行くよ、ラクス」

「はい。キラはキラの想うとおりに戦ってくださいな。わたくしはザフトのみなさんに、戦闘を止めるように訴えてみますから」

「うん。くれぐれも、舌を噛まないようにね」

「ふふふ……はい」

 

 

 立ち上がる《フリーダム》。同時にフェイズシフト装甲が起動し、機体全体が鮮やかな白と蒼に色づく。

 それを待ち計っていたかのように、《ストライク》の残されたツイン・アイの片方から光が消え、フェイズシフトが落ちた。

 その姿がキラにはまるで、主の無事を確かめ、次なる“剣”に後を託して力つきたように見えて。

 

(今までありがとう、ストライク……)

 

 少なくない時間ともにした愛機の最期に黙祷を捧げる。

 最初はなし崩し的に巻き込まれ、嫌々乗っていた《ストライク》にも今や愛着を感じていたようになっていた。

 ヘリオポリスの友人たちや、αナンバーズの仲間たちとの交流と戦いを経て、キラはそれまで自分がいた平和の危うさを知り、同時に世界がどれだけ広かったのかを知った。

 そしてそれを護りたいとも思った。

 戦いを知らなかった子供だったからかこそ、純粋な思いで今のキラは戦っている。

 

 ――種子が弾けるイメージとともに、キラの視界はクリアに拓かれる。

 

「キラ・ヤマト、フリーダムガンダム、行きますッ!」

 

 蒼き双翼を広げ、新たな剣が自由と平和を求めて飛び立った。

 

 

 

『黄龍は神精! 応龍は四龍の長! よい子はねんねしな、ってね』

 

 雨を呼び、竜巻を呼ぶ。天候を支配する応龍の力。

 口から放たれた《応龍轟雷槍》が二羽の凶鳥を襲う。

 

「ぐ……!」

「きゃあ!」

『ちぃ!』

 

 野太い雷槍を回避する《エグゼクス》と《ファルケン》。その強烈な余波は念動フィールドを貫通し、少なくない損傷を受ける。

 濁った雲海を我が物顔で泳ぐ極大の龍は凶悪な雷光を纏い、下界を見下ろす。

 

『あははははっ、無様だねバビル二世! キミは確かに最強の強念者かもしれないが、そのガラクタでは十全に力を発揮できないようだ』

「っく、ヒュッケバインを――なめるなッ!」

『なめてはいないよ。正当に評価しているだけさ』

 

 《TーLINKセイバー》を引き抜いて突撃する《エグゼクスバイン》を、《応龍皇》の全身を覆う無数の鱗が分離した《龍鱗機》が向かえ撃つ。

 念動フィールド同士が激突し、スパークが迸った。

 

「っ、ごちゃごちゃと数ばかりいたって!」

『ハハッ、強がりだね。そいつらが何機いるのか、僕も知らないのさ!  数える のが面倒だからねぇ』

「数には数だ! TーLINKレボリューター!」

 

 《龍鱗機》はそれそのものが一個の超機人であり、《応龍皇》の鱗の数だけ存在する。

 念の刃が念動結界ごと《龍鱗機》を次々に両断していくが、多勢に無勢。《応龍皇》本体からの攻撃も加えられ、次第に《エグゼクスバイン》は追いつめられていく。

 

「スラスター噴射1秒ッ、UHBMで外力相殺……!」

「スライダー、四機喪失っ! トロニウム・レヴの出力、86%まで低下!」

『イング!』

 

 窮地のパートナーを救うべく、アーマラの《ファルケン》が果敢にも砲撃による援護を加えるが、《龍鱗機》の妨害で効率が上がらない。

 次第に追いつめられるイング。もがき足掻く様を光龍は嗜虐的に。

 そのときだ。

 

『!』

「この念は、もしや――!」

 

 イングと光龍、優れた強念者が強力な念を同時に関知した。

 次の瞬間、遙か彼方から飛来した六条の重力砲撃が十数機の《龍鱗機》をまとめて押し潰す。

 

 《エグゼクスバイン》のメインカメラが砲撃が到来した方角を捉える。

 水しぶきをあげ、海面スレスレを高速で滑るダークブルーのAM(アーマードモジュール)が、両舷のサイロを解放、無数の各種ミサイルを発射して辺りを蹂躙した。

 

『あれは、ヒュッケバイン・ガンナー?』

「いや、違う……あれはもっと別の――」

 

 アーマラのつぶやきに、実機を知るイングが訂正する。

 シルエットこそ《ヒュッケバイン・ガンナー》に酷似していたが、細部が異なる。特に、《ヒュッケバイン》と思われるPTの背部には《Gインパクトキャノン》と思わしき一対の砲塔はかつての機体には存在していなかったものだ。

 

 謎のPTから、両機に通信が入る。

 

『イング、アーマラ!』

『二人とも、無事みたいね』

 

 モニターに映し出されたのは戦友にして親友、リョウト・ヒカワとリオ・メイロンのコンビだった。

 

『リョウトにリオか!』

「なるほどな、だいたいわかった。リョウト、そいつがお前たちの新型か?」

『うん、ヒュッケバインMkーVIとAMガンナーIIだよ』

「おお! すげーかっけーな、MkーVIっ! 全部乗せてんこ盛りってところが最高にイカすぜ!」

『あはは……ありがとう』

 

 久々に噴出したイングの悪癖に、リョウトは苦笑い。しかし、()()が丹誠込めて()()()()()新たな愛機を褒められるのは悪い気はしないらしい。

 

「イングさんっ、エグゼクスバイン(わたし)というものがありながら浮気ですかっ」

「お、おいエクス、どうしてそうなる。オレはお前一筋だぞ」

「リック・ディアスとか、MkーIIにも乗ってましたっ!」

「お前、何でそんなことまで知ってんだよ!?」

「女の子のカンですっ」

 

 《MkーVI》をベタ褒めするイングに嫉妬したエクスがへそを曲げたが、さておき。

 

『おやおや。サイコドライバーのなり損ないのご登場かい? 新型らしいけど、所詮はヒトの創りしもの、応龍皇には足下も及ばないさ』

『それはやってみなくちゃわからないよ。リオ!』

『ええ、リョウト君! ヒュッケバイン、ドッキングアウト!』

 

 《ヒュッケバイン》背部に接続されていた一対のキャノンが分離して90°回転、《ガンナーII》の下部に格納された。

 テスラ・ドライブの光跡を残しながら、新たなる凶鳥がその全貌を現す。

 

 RTXー015《ヒュッケバインMkーVI》――

リョウト自身が設計した《MkーIII》のコンセプトを受け継ぐ正当後継機。“ヒュッケバイン”の名を継ぐもの、七番目の凶鳥。

 《エグゼクスバイン》で培われた「トロニウムエンジンとブラックホールエンジンの併用」、「TーLINKフレーム」等の運用データを、超技術「EOT」の信頼性を上げるために連邦軍やマオ・インダストリーで立ち上げられた「レイオス・プラン」でブラッシュアップ、発展させて採用した史上二機目のスーパー・パーソナルトルーパーである。

 

 レイオス・プランで安定性を増したトロニウムエンジンとブラックホールエンジンにより得たパワーは絶大、その最大出力は特機にすら匹敵する。

 さらに機体の骨格、HII(エイチツー)フレームは別名「フルTーLINKフレーム」と呼ばれ、全てをTーLINKフレーム化することで強念者の思念に対する感応性、追随性を劇的に向上させている。

 機体本体には《ヒュッケバイン》シリーズの伝統を踏襲して頭部《フォトン・バルカン》以外の固定武装は施されておらず、《ハイ・グラビトン・ライフル》、《ロシュセイバー》、《ネオ・チャクラムシューター》等が主武装だ。

 プロジェクトTDのスピンオフ技術を用いた新型テスラ・ドライブにより空中戦に対応、DHBMを併用した分身機構、グラビコン・システムの発展により「歪曲フィールド」の展開が可能になっている。

 そして最大の特徴は、《ストライク》のストライカーパック、《量産型ゲシュペンストMkーII改》の換装システムに影響を受けた「ネオ・コアトルーパーシステム」にある。

 両肩に装着する副腕兼増加装甲と《ブラスターキャノン》を内蔵した胸部増加装甲、ブレード付きの脚部増加装甲を全て装備した姿は《AMボクサー》を彷彿とさせる。

 背部ウィング・バインダー内に納められた計一八機の小型思念誘導兵器《TーLINKビット》は、念動力により攻防一体として運用可能。実戦投入されなかった《AMサーバント》の流れを汲んだ武装だ。

 その両者を装備したまま、専用の支援戦闘艇《AMガンナーII》との合体も可能であり、まさしく《パーフェクト・ヒュッケバイン》と言っても過言ではない機体となっている。

 

『行くよ、MkーVI! これが僕たちの初陣だ!』

 

 新たな《ヒュッケバイン》が、傷ついた友を助けるべく応龍の超機人に戦いを挑む。

 

『ターゲット・ロック! TーLINKビット、ソードモード! 行けッ!』

 

 ウイング・バインダー内部から射出された六つの小型飛翔体、《TーLINKビット》。両サイドに三機ずつ配置された《ビット》がリョウトの念を受けて翠緑の剣を形成する。

 まるで翼のように広がった強念の刃が飛翔した。

 《TーLINKビット》はリョウトの思惟に従って、その小さなサイズと機動性を武器に《龍鱗機》を次々に串刺しにしていく。

 同時にリオの《ガンナーII》が《Gインパクトキャノン》の連射による援護を加え、瞬く間に《龍鱗機》は半壊する。

 だが《応龍皇》も攻撃の手を緩めない。生き残りの《龍鱗機》とともにその顎門を開き、雷火の束を放った。

 

『ハイ・グラビトン・ライフル!』

 

 幾条もの雷撃をかいくぐる《MkーVI》は、開いた重力空間から《ポジトロンライフル》に似た形状の黒い銃器――《ハイ・グラビトン・ライフル》を引き抜く。

 再び射出された三機の《TーLINKビット》を三角に配置、射撃態勢を取った。

 

『TーLINKビット、リフレクトモード! 直撃させるッ!!』

 

 《TーLINKビット》が歪曲フィールドによる重力レンズを形成、《ハイ・グラビトン・ライフル》の威力を増幅する。

 放たれた超重力の一撃が《応龍皇》に直撃、巨体を揺るがした。

 

『ぐっ、この応龍皇をここまで! やってくれるじゃないか!』

『まだよ! アームリンク、開始! ガイスト・ナックル、セット!』

 

 両肩の増加装甲が展開したサブアームが、握りしめた手腕に覆い被さるように接続される。

 《ボクサー》の由来でもあるファイティングスタイルを取った拳に、TーLINKフレームにより増幅された攻撃的念動フィールドが集中していく。

 

『僕の作ったモーションだ! やってみせるさ!』

 

 意気を上げるリョウト。テスラ・ドライブが唸りを上げ、《ヒュッケバイン》が猛進する。

 

『はあああッ! ええい!!』

 

 雷撃の嵐を潜り抜け、肉迫した《応龍皇》の頭部に《ガイストナックル》が打ち込まれる。

 特殊火薬により打ち出された拳が龍鱗を砕く。

 

『もう一撃だ!』

 

 追撃に、脚部増加装甲のブレードによる回し蹴りをお見舞いし、《MkーVI》は後退する。

 猛烈なコンビネーションにより、《応龍皇》の巨体が再び揺らいだ。

 

「やるな、リョウト!」

『いつまでも、ヒュッケバインの名前を君に独り占めにはさせないよ。僕だって、凶鳥のパイロットなんだからね』

「へへ、言うじゃねーか」

 

 親友のらしくない強気な意気を聞き、イングは快活な笑みをこぼす。

 

「今日からオレとお前でダブルヒュッケバインだな」

『あはは。なんだい、それ?』

 

 上機嫌な親友の脈絡のない発言で、リョウトが思わず笑い声を上げた。

 

『お前たち! 仲がいいのはわかったから、さっさと戦え!』

『リョウト君! こっちはギリギリで手一杯なのよ!?』

「ご、ごめんリオ」

「おっと、オレらのパートナーが揃ってお怒りだ」

 

 必死に《龍鱗機》に対処するアーマラとリオから咎められた二人は表情を改め、眼前の脅威と対峙する。

 

「エクス、MkーVIにパターンDRKのモーションデータを送ってくれ」

「はいっ!」

『! これは……! ぶっつけ本番で、こんなシビアなタイミングを合わせろっていうの?』

「お前なら出来んだろ。奴に、本当の強さを見せてやろうぜ」

『……まったく、イングは無茶苦茶だなぁ。わかったよ、やろう!』

 

 リョウトはイングの無謀さに呆れ、そして口元に笑みを浮かべる。

 

 ここに、バルマー戦役を駆け抜けた二人の英雄、二羽の凶鳥による最強タッグが復活した。

 対峙するは最強の超機人、《応龍皇 》――

 

『何かやるつもりみたいだけど、四龍の長たるこの応龍皇の前には無駄な足掻きさ』

「勝手に言ってろ! 往くぜ、リョウト!」

『うん! TーLINK、フルコンタクト! 羽ばたけ、ソードビット!』

 

 リョウトの思惟をフルTーLINKフレームが増幅し、《MkーVI》の全身から翠色の波動が円を発する。

 トロニウムエンジンの出力上昇に伴いウィング・バインダーが展開、内部からTーLINKフレームと同じ素材で造られた放熱板が露出した。

 さらに、六機の《TーLINKビット》を媒体に念の刃を形成する。放射状に鋒を向けたさまはまさしく風を受け止める翼のようだった。

 

「TーLINKコンタクトッ! 唸れ、トロニウム・レヴ!!」

「全スライダー、パージっ! リミット解除! わたし、堪忍袋の尾が切れました!」

「エグゼクスバイン、エクストリーム・フェーズだッ!!」

 

 全身各所のコネクタから念の刃を発生させる《エグゼクスバイン》の奥の手にしてイリーガルな状態、《エクストリーム・フェーズ》。覚醒したイングの頭髪が紅く輝くのと同時に、《エグゼクスバイン》のゾル・オルハリコニウムの装甲が燃え上がるような真紅に染まる。

 念動力に感応して出力を引き上げるトロニウム・レヴのエネルギーが莫大な熱量を発生させ、その影響で赤外線と赤外寄りの赤や緑色の可視光を放射して、全身が赤く変色したように見えているのだ。

 その鮮やかな姿はさながらかつての《EX》を彷彿とさせた。

 

 紅く燃え上がる《エグゼクスバイン》と翼を解放した《ヒュッケバインMkーVI》が、揃えた足先に念動フィールドを集束させて《応龍皇》の真正面から突進する。

 感応し合う念が、互いの力を高め合う。右と左、それは究極のバランス。

 

『はああああっ!』

「セイヤーーー!」

 

 胸に燃やした炎が邪念を焼き尽くす。

 降臨した“奇跡”の力が、《応龍皇》に炸裂した。

 

 

    †  †  †

 

 

 新西暦一八九年 ☆月△日

 地球、太平洋上 《ラー・カイラム》の一室

 

 オレたちはアラスカを後にし、極東支部への帰路に就いている。

 予想外の出来事の連続で一時はどうなることやらと思ったが、なんとかなったな。

 

 サイなんとかが持ち出してきた《ハウドラゴン》は順当に《ゼオライマー》に敗北、這々の体で逃げていき。

 キラの新たな剣、《フリーダム》とアスランの《ジャスティス》による《コンビネーションアサルト》の前にカナード・パルスと《ハイペリオン》は敗退。

 《応龍皇》も、リョウトの《ヒュッケバインMkーVI》との協力での合体攻撃、ダブルライダーキックならぬ《ダブル・ エクストリーム・ストライク》によりご退場と相成った。

 ちなみに、モチーフの組み合わせはコアのごちゃ混ぜだけど、諸事情でメガマックス方式のキックだ。《応龍皇》が長すぎて、挟み撃ちにできなかったんだよ!

 

 中性子爆弾の爆発を阻止することこそかなわなかったが、残された職員の退避には成功。最後まで基地に残っていた岡長官もきちんと脱出してオレたちと合流、今は生き残った防衛艦隊の指揮をしている。

 放射能を含んだエネルギーは《ゼオライマー》により宇宙空間へと逃された。

マサトの「次元連結システムを応用すれば、出来るはずだ!」というセリフにはちょっと感動した。

 

 今回の事件を主導したハザードだが、事件の子細を国際警察機構に提出したことで失脚、奴に煽られていた連邦政府の強硬派も同じくエキスパートに逮捕された。過去の罪も併せて裁かれることになるだろう。

 いろいろな因果を集まっているおかげで腐っていても連邦にはまともな軍人、政治家だっているのだ。悪い奴らの好き勝手にはさせないぜ。

 

 ラクスとアスランだが、母艦の《エターナル》とザフトの有志を伴ってαナンバーズに合流しにきたそうだ。

 諸々あって失脚した元プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの主導で新造艦《エターナル》と《フリーダム》を始めとするいくつかの新型モビルスーツを奪取、サーペントテールの協力の下で亡命というかプラントを正すために決起した。

 《エターナル》にも同乗しているシーゲル氏、どうやら以前からプラントの異変を察知しており、密かに志を共にするものを集めて機会をうかがっていたらしい。それにしたって、いきなり《エターナル》を新型モビルスーツごと奪取してくるとは大胆すぎだろう。

 追っ手と戦っていたところを《ナデシコC》隊に助けられた後、アラスカの異変を察知。月から直接合流にやってきたリョウトたちとともに、急遽降下してきたとのこと。

 

 レーザー核融合炉の発明といい、ちょっとプラント人を見直したオレだった。

 

 

 追記。

 寝ようとしたら無限力の発動を感知した。あれはたぶん、クロスゲートが開いた余波だろう。

 だいぶ近くに感じたが、またなんか来たのか? 正直、もういい加減にしろよって感じだぞ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ☆月#日

 地球、太平洋上 《ラー・カイラム》の一室

 

 極東支部経由で、他の部隊から一方が届いた。

 結論から言う。やはり彼方から新たな来訪者がやってきたようだ。

 

 北米地区に向かった《大空魔竜》隊のもとには、バイストン・ウェルからクロスゲートにより再現されたオーラロードを通り、《グラン・ガラン》と《ゴラオン》が。

 宇宙、ゾヴォークとの交渉に向かった《バトル7》隊は、未来世界の仲間たちと再会した。今は《ローラ・ラン》と名付けられた《アーガマ》と《月光号》がクロスゲートから現れたらしい。

 詳細は不明。極東支部にたどり着いたら、急ぎ修理中のオービット・ベースに集結する予定だから、そのとき聞くことにしようと思う。

 シーラ様やエレ様、恋愛少年団と会うのが今から楽しみだ。

 

 どちらもオレたち旧SDF、旧プリベンターにとっては懐かしい仲間であり、心強い援軍だ。

 しかし、今までこの混乱は無限力、イデの仕業かと思っていたが、こういう援軍に関しては先代の采配のように思えてきた。

 もしそうなら、因果地平の彼方に消えたビッグ・ファイアには感謝してもしきれない。オレは先代の意志を継ぎ、バビル二世として、この宇宙をイデの因果から解放し、平和な未来を創らなきゃと決意を新たにした次第だ。

 


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