スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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※二話連続投稿につき注意!


αIIIー4「鋼の救世主 後編」

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月◎日

 地球圏、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 意気揚々と地球に凱旋した。

 どうやらオレたちが留守の間は、《ナデシコ・Yユニット》やこちらに転移してきた《天空魔竜》が地球の平和を守ってくれていたようだ。なお、《大地魔竜》は未だ不明とのこと。《ザ・グレート》はお預けか。残念。

 彼らにはエイーダ・ロッサと《Rーダイガン》が、アランさんと行動をともにしていたらしい。《ノヴァ》の支援機だってことは隠す気ないみたいだ。

 とりあえず、さっそくミクと意気投合していたエイーダには銀河と一緒にサインはもらっておいたぞ。

 あと、五飛もしれっと加わっていた。曰く「加藤機関の正義は見極めた」とのこと。ズールに洗脳されなくてよかったよな、お前。

 

 突然「やることがある」と姿を消したシラカワ博士にマサキの奴が憤慨していたが、さておき。

 地球各地で、待っていましたとばかりにゴラー・ゴレム隊がちょっかいをかけてきた。まったく、懲りない連中だよな。

 

 《龍虎王》に導かれて訪れた蚩尤塚ではクスハが孫光龍と激突。力を取り戻すために目的を忘れた《応龍皇》を正すため、そして百邪を討つため目覚めた《雀王機》、《武王機》の魂と合身、《真・龍虎王》が誕生した。

 ただ、《応龍皇》の猛攻でブリットが意識不明の状態に陥っている。今度は眠り姫かよ、とはさすがに言わなかった。クスハがシリアスしてたからな。

 

 バラン・ドバンとの決闘をきっかけに道を踏み外しかけたトウマだったが、こちらも収まるところに収まった。

 生まれ変わったことで正式にDGGに加わった《大雷鳳》が、百刃隊とやらを文字通り蹴散らした。心・技・体が揃ってこそ、訓練の成果が実るってわけだな。

 ハザルざまぁ。

 

 で、トウマが妙なのを拾ってきた。

 ゼ・バルマリィ帝国の巫女、アルマナ・ティクバーとそのお付き、ルリア・カイツだ。

 周りの目を盗んでお忍び的に地球へと降りてきていたようで、ゴラー・ゴレム隊があちこちで暴れていたのは彼女らの捜索が目的らしい。なにやら複雑な事情が背景にあるようだが、まったくはた迷惑なお姫様だ。

 

 トウマを挟んでミナキさんとにわかに修羅場ってるこのアルマナ、バルマーの事情に詳しいエイジらによるとかなりの地位にある人物らしく、彼らは緊張しつつ敬意を払っていた。

 二人の尋問には、ヴィレッタ大尉が当たっている。身元を知られるのは承知の上だろうな。

 

 あと、ルリアの声に聞き覚えがあるなぁ、 とずっと考えてて今さっき思い出した。あれ、ファムだ。それもオリジナル版の。

 気づいたらなんだか丁重に扱わなきゃいけない気がしてソワソワしてきたわけだ。中の人、実はファンなんだよなぁ、オレ。

 まあ、本人からは敵意満々で睨まれてるんだけどな。「火星ではよくもやってくれたな」って何さ。え? 火星決戦の時にいたの?

 

 

 追記。

 《ZZ》のフルアーマーパーツ、《V2》のアサルトパーツ、バスターパーツ、《ν》のHWS、《ストライク》のガンバレルストライカー等の強化装備が届いている。

 さらに、トビアのアイデアをキッドとロウがジャンクパーツを使って実現した《クロスボーン・ガンダムX1フルクロス》が完成した。胸部にサテライトキャノンを仕込むとかはさすがにしてないぞ。

 また、ハマーンさんの伝手で旧ネオ・ジオンから《サザビー》が送られてきた。こいつは、クワトロ大尉に格別の思い入れがあるカミーユが使うらしい。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月#日

 地球圏、極東地区日本 科学要塞研究所 《ラー・カイラム》の一室

 

 端的に言おう、加藤機関がまるっと味方に加わった(やや語弊あり)。

 いろいろあったが経緯は省略。さすが、「ナタクのファクター」だなということで一つ。

 森次の裏切りには思うところがないわけではないが、当事者たちで話がついてるんだからまぁ、いいか。

 高蓋然性世界からの侵略者、セントラルとの決戦も近そうだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月♢日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン 《ラー・カイラム》の一室

 

 くさくさした気分でこれを書いている。

 

 αナンバーズは現在、機能不全に陥ったオービットベースからロンデニオンに拠点を移した。

 バイオネットのギムレット(最終的にはルネに潰された)から接収した「Qユニット」を奪うため現れた護とギャレオン、そのレプリジンにより発生した被害は甚大だ。パピヨンさんが犠牲になっている。

 最終的には《ガオファイガー》の《ゴルディオンハンマー》により光となったが、あいつらも洗脳されていなければ仲間になれただろうに。

 友だちと同じ姿の存在が、非道を繰り返す様を見せつけられたイルイの悲しみはいかばかりか。

 直後に現れたソール11遊星主にパスキューマシンを奪われたが、パルパレーパとピルナスには怒りと悲しみの拳を叩き込んでおいた。

 後で覚えとけよ。復活する度に消滅させてやるからな。

 

 余談。

 Gアイランド・シティの戦いでは、復活した《第五使徒ラミエル》が出現した。

 かつては苦戦させられた《ラミエル》だったが、αナンバーズの過剰戦力にタコ殴りにされてあっさり撃破できてしまった。魂の欠けたガワだけの存在とはいえ、哀れだ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月★日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン 《ラー・カイラム》の一室

 

 先日の事件を受け、αナンバーズに対する風当たりがにわかに強くなってきた。

 地球安全評議会ではハマーンさんやリリーナが弁護してくれているが、旗色は思わしくないらしい。

 とそこに、連邦軍強硬派がマスドライバーを狙ってオーブに侵攻するとの一報が入る。オレたちは、先発する《アークエンジェル》隊につき合って急行した。

 オーブ首脳部を交えた会議。「マスドライバー、使わせたら? 使用料ふっかけて」というオレの提案は黙殺された。ウチの軍師からの入れ知恵だったんだけど、無駄になってがっかりだ。

 その後、ウズミ氏とカガリの「最後通告だと!? もはや体裁を取り繕う余裕すらなくしたか!」「再度の会談要請に応えもないまま……! くっそーーーッ!!」というやりとりにイラッ☆と来たのは秘密。いや、最初から交渉する気がなかったのはアンタらもでしょ?

 

 お話にならないので、先んじて迎撃準備をしておいたわけだ。もちろん、孔明先生の振り付けである。

 作戦は海上での迎撃。上陸を許す?市街地戦?論外です。

 さっさと準備を整え、さらに念のためオーブ中を駆けずり回って民間人を避難させた。会戦ぎりぎりに疎開?あり得ないです。

 無論、例の赤目の少年と家族も無事に国外、極東地区日本へ避難している。幸せになってくれるといいが。

 

 戦闘についてだが、ついに完成を見た《ブルデュエル》、《ヴェルデバスター》、《ネロブリッツ》のお披露目である。相手は新型GATシリーズ、《カラミティ》《フォビドゥン》《レイダー》の通称常夏三人組。機体性能は互角かやや上らしく、いい感じに圧倒していた。

 そういや、やけに動きのいい《M1》がいたけど、アレってやっぱ“拳神”かな?

 

 さらに、ようやく登場の地球製ソリッドアーマー《オーガン》。オレたちが外宇宙に行ってる間、オーブで建造していたらしい。

 連邦軍の《ソル・テッカマン》部隊、はぐれ《テッカマン》の《テッカマン・デッド》を相手に大立ち回りを繰り広げた。

 アラスカでもお世話になったゼーレの刺客部隊もいたな。アークエンジェル級二番艦《ドミニオン》を母艦にしてたが、艦長は誰だ? 三輪か、あるいは真空管禿かもな。

 ガウルンこと戦争狂はいたんだが、《ハイペリオン》の姿はなかった。やっぱ宇宙じゃないとアミューレ・リュミエールの本領を発揮できないからか?

 激闘の末、《ゼオライマー》が《ハウドラゴン》を撃破。しかし《ゼオライマー》の方のダメージも色濃く、マサトは隊を一時離脱して修復・強化に専念するとのこと。《グレート》フラグですねわかります。

 

 そうそう、《ストライクダガー》のパイロットは仮にも連邦軍人なので、キラ同様に手足首をもいで陸地の方に転がしておいた。《TーLINKレボリューター》大活躍である。

 つーか、オレたちαナンバーズを相手にして士気を保てるその気概にはある意味感心したぞ。

 

 

 常勝無敵のαナンバーズ唯一の弱点、防衛戦の常、オーブ防衛は残念ながら完遂できなかった。

 とりま、強硬派の戦力に大打撃を与えることには成功し、再度交渉のテーブルに着かせることも出来たから結果的には勝利と言えるだろう。

 

 なお、ウズミ氏によるモルゲンレーテとマスドライバーを爆破自殺は当然止めている。

 感動のシーン?知らんがな。身内とか理念のことばかりじゃなく、残された国民のことも少しは考えろよ。あんた国家元首だろ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月×日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン 《ラー・カイラム》の一室

 

 オーブは事実上解体、連邦の監視下に置かれており、ウズミ氏は国際警察機構の手で軟禁という名の保護されている。

 で、カガリが見聞を広めるとしてαナンバーズに同行してきた。

 イズモ級二番艦《クサナギ》を足に、お着きはアストレイ三人娘と、オーブに身を寄せていたらしい“煌めく凶星J”ことジャン・キャリー氏。。《ストライクルージュ》と使えもしないIWSPを持参しつつ。

 正直カガリはどうでもいいが、ジャンさんの登場で《レッドフレーム》のパワーアップが現実味を帯びてきた。え、《戦国》作るの? マジかよ。

 

 そういえば、ロンド姉弟ってどうなったんだ?とロウに聞いてみたが、「誰だそれ?」と言われた。

 《ガーベラストレート》を折ったのは、《テッカマン・エビル》らしいが。

 

 で、調べてみたらなんと、ウチの博士と協力していろいろ暗躍していたようなのだ。

 おい、どこの因果の影響だよ。《ヴァルシオーネ・ミナ》とか作り始めたら、オレってばどうしたらいいのさ?

 

 ちなみに、《ブリッツ》は撃破されていないが《ゴールドフレーム(あまつ)》は原作通りの形で完成しているようだ。博士が作ったんだろうな。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月†日

 地球圏、衛星軌道上L4宙域 コロニー・メンデル 《ラー・カイラム》の一室

 

 久々のザフト、クルーゼ隊と交戦した。

 プラント内部の協力者と接触しようと単独行動していた《エターナル》が狙われたのだ。

 さらに、《ドミニオン》を旗艦とする連邦軍強行派の艦隊(中には《アルビオン》も)が。

 

 クルーゼ隊には、ZGMFーX11A《リジェネイトガンダム》とアッシュ・グレイが参加していた。《アッシュ》と同じ名前でムカついたので、優先的に攻撃しておいた。

 連邦軍強行派はお馴染みの面子に加えて、《アルビオン》の艦載機としてSEEDMSVのエースたちが加わっていた。

 “月下の狂犬”モーガン・シュバリエの《ガンバレルダガー》、“切り裂きエド”ことエドワード・ハレルソンの《ソードカラミティ》、“乱れ桜”レナ・イメリアの《バスターダガー》の豪華布陣だ。“白鯨”のねーちゃんは、搭乗機が水泳部だから地上でお留守番か?《レイダー制式仕様》にでも乗せてやればいいのに。

 《ハイペリオン》の真骨頂、アミューレ・リュミエール全方位展開はやはり厄介だったな。

 

 さらにさらに、シンクライン率いるガルラ、《ブレード》、《オーガン》を狙ってラダム、イバリューダーが大挙して押し寄せた。各勢力が入り乱れ、戦場は大混乱である。

 ていうかザフトと連邦軍、侵略者と戦えや!と思わず切れてしまった。

 

 なお、メンデル内でのいざこざにはオレとアーマラも参加している。カナード・パルスも進入していたので心配になったのだ。ちなみに、カナードはやっぱり実力行使しようとしたのでちゃっちゃと撃退しておいた。

 クルーゼの生い立ちとカナードの正体を突きつけられ、キラはだいぶショックを受けていた。クスとフレイが慰めるのに必死になっていたな。

 美少女に囲まれて羨ましい、爆発しろ。と呪ってたらアーマラに蹴られた。痛い。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月†日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン 《ラー・カイラム》の一室

 

 ロンデニオンに帰還する途中、月面に異変ありとの知らせを受け、急行するオレたち。同時に、地球からガンドール級二番艦《ドラゴンズ・ハイヴ》が飛翔する。

 敵は、突如姿を現したムーンWILLとビッグゴールド率いるクトゥルフ本体、さらにはゼロ率いるガルファ帝国の連合軍だ。

 アラスカ基地での一件で上層部の非道を弾劾し、月に左遷されていた岡長官とイゴールさんが月面都市を護るために奮戦、その命を犠牲にする。

 爆発する野生。獣戦機隊とチームDは神おも超える力を発揮し、《ファイナルダンクーガ》と《ダンクーガノヴァ・マックスゴッド》が誕生する。

 《ファイナル断空光牙剣》と《断空彈劾剣》がムーンWiLLの《オリジナル・ダンクーガ》を粉砕。さらに、外宇宙で一時離脱して以来、傷を癒して帰還したイクサー1と反旗を翻したイクサー2、イクサー3による《イクサーズファイナルアタック》がビッグゴールド、そしてネオスゴールドを無に還した。

 ゼロもどさくさ紛れに撃破したのだが、やっぱすぐさま復活しやがった。とりあえず、北斗と治療から復帰したアルテアさんの希望でスバルを説得、捕獲もとい降したら撤退したけど。

 

 二人に託された地球の未来と平和、オレたちが必ずかなえてみせる。

 だから、無限力の中から見守っていてくれ。

 

 

 

 新西暦一八九年 ※月☆日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》の一室

 

 アーマラとスレイが重傷を負った。また、クォヴレーが《ベルグバウ》ともども光龍の奴に捕獲されている。

 《ベガリオン》、《ビルトファルケン・L》は無惨にも大破だ。

 

 原因は、セレーナの裏切りである。

 アルマナらの身柄を引き渡すことを口実に、ゴラー・ゴレム隊に寝返ったのだ。あいつの真意は概ね理解できるが、やり方が気に食わねえ。

 イルイ共々、アイビスたちが無事帰ってきたことも素直に喜べずにいる。

 

 アーマラだが、キャリコとの戦闘中に自分の正体、「ユーゼス・ゴッツォによって製造されたバルシェムであり、地球での記憶は全てイングラムにより植え付けられたもの」だと明かされて激しく動揺し、その隙をスペクトラに突かれて撃墜された。

 

 さっきヴィレッタ大尉の口から、詳しい事情を聞かされた。

 アーマラはやはりバルマー戦役で失われたユーゼス製のバルシェムの中の一人で、ヴィレッタ大尉同様イングラム少佐によって極秘裏に“枷”を外された上で特脳研に送り込まれたのだという。

 その役割はSRXチームが揃わない場合の保険であり、また自分と大尉に万が一のことがあったときの予備だった。用意周到なことだ。

 

 大尉がことさらアーマラに気かけていたのはそのためで、「あの子は私の妹なのよ」とどこか後悔したように言っていた。

 おそらく、そのことを本人に教えなかったことを気に病んでいたんだと思う。

 

 それは概ねオレの推理した通りで。

 クソッ、もっと早くアイツに真実を告げていればこんなことにはならなかったのに。アーマラがこうなったのは、日和見たオレのせいだ。

 自分の撒いた種だ、自分で処理する。キャリコとスペクトラには必ず落とし前をつけさせてやる。

 

 

    †  †  †

 

 

 目が覚める。

 オレは、妙な液体に浸かっていた。

 

「――ッ!?」

 

 嫌なデジャヴに一瞬混乱したが何のことはない、ここはバベルの塔内のメディカルルーム。“バビル”を治療するための専用施設だ。

 

 操作パネルをいじり、溶液を排出。治療カプセルから抜け出して息を吐く。

 

「そうか、オレは……」

 

 負けたのか。そう口にすると、胸に苦い思いが広がる。

 いや、あれを“負けた”というのは語弊があるが、それでも倒れて戦線を離脱してしまったのは事実だ。

 無敵を気取るつもりはないが、“地球圏最強の汎超能力者(サイコドライバー)”の肩書きを背負う者として、バビル二世としてオレに敗北も失敗は許されないというのに。

 

「っち、情けない!」

 

 イラつきを八つ当たりして振るった拳が、治癒カプセルのガラスを粉砕した。

 

 

 備え付けの簡易シャワー室で溶液を洗い流すと、アキレスが姿を変えた執事が着替えを持って現れた。どうやら出待ちしていたらしい。 

 滴を拭い、用意してくれた新しいボディスーツといつものクロークを身につける。着替えながら、こうして至った経緯を思い返した。

 

 セレーナの裏切りを端に発した一連の戦闘。

 アルマナらを人質に取り、バルマーの手を脱したクォヴレーとセレーナ。《ベガリオン》のテスラ・ドライブと《AMサーバント》のパーツを組み込んで復活した《ASアレグリアス》の活躍でキャリコたちを撃退したオレたちの前に現れたのは、奪われた《ベルグバウ》が新生した黒き銃神《ディス・アストラナガン》だった。

 ズール皇帝がバルマーに潜入させていた最後のゲシュタルトに奪われ、そしてそのゲシュタルトを媒体に何者かが憑依し、操っていたのだ。

 

 名乗ることすらしない奴はかつてない邪念を発露し、オレたちに襲いかかってきた。

 銃神の心臓“ディス・レヴ”の更なる覚醒を促すべく、クォヴレーを、ひいては無限力に祝福されたαナンバーズの魂を求めていたんだろう。

 奴は「あらゆる因果を集めた幾億万周期の輪廻の果て、ついに銃神の心臓を手に入れた」「然る後、無限力より運命を奪い取ってくれよう」とひび割れたように聞こえる声で独白していた。

 ……微かに感じたあの念は、ゲベル・ガンエデン? だが、あの濁りきった念は何だ?

 

 おぞましくも強大な悪しき邪念に支配された《ディス・アストラナガン》を止めるべく、オレと《エグゼクスバイン》は全力を超えた領域で戦った。

 激戦の末に、満身創痍の《エグゼクス》は《アストラナガン》と組み合って辛うじて動きを止め、《ヴァルク・ベン》に乗ったクォヴレーの接触を助ける。

 最後の記憶には、クォヴレーにより奪還された《ディス・アストラナガン》の上げる咆哮と、オーバードライブ寸前のトロニウム・レヴとブラックホールエンジンが緊急停止するアラートサイン。そして、枯れ木のよう老いた自分の手が残っている。

 あれは念の、超能力の使い過ぎによる弊害か。

 黄帝・ライセや孔明から何度も注意されていたし、何よりオレ自身漠然と危険性は感じ取っていたが、それだけ黒き銃神が強大だったということだ。

 

 一通り回想したところで、ドアが開く。

 

「ご主人しゃま!」

「孔明か」

 

 部屋に飛び込んできたのは我が軍師、諸葛亮孔明だ。オレの覚醒を聞きつけて飛んできたようだな。

 

「心配をかけたな。お前が、オレをここ無事に運ぶように手配してくれたのか?」

「はい。ご主人さまの傷ついた身体を治療するためには、ここの施設でないといけませんから」

「そうか、ありがとう。……それで、アーマラやみんなは? それにイルイはどうした?」

「αナンバーズの皆さんは、連邦政府により地球圏から追放されました。最後の通信では、「宇宙収縮現象の原因を突き止めるために出発する」と」

「それは、グローバル議長の差し金だな」

「はい。ブルーコスモス、ゼーレによるEVAシリーズ等の超兵器の接収を回避するためですね。そしてイルイさんですが、ご主人さまが倒れた後、ラー・カイラムから姿を消したとのことです」

「そう、か……」

 

 やはり、という思いがある。

 おそらくナシムの判断だろうが、オレが倒れたことでイルイの身に危険が降り注ぐことを回避するためだろう。

 追っ手からうまく逃げ切ってくれればいいが……。

 

「最後に、アーマラさんは……」

 

 

 

 

 自動ドアが開く。

 

「アーマラ」

「! イング、か?」

 

 顔を上げたアーマラはベッドの上にぼんやり座り込み、どこか焦燥した様子だった。

 無理もない。アーマラは今まで、自分が生粋の地球人だと思って戦っていたんだからな。大切な柱をへし折られたようなものだろう。

 

 無言で傍らに腰を落ち着けた。

 僅かに身じろぎしたが、アーマラはいやがる様子はないのでとりあえずよし。あとは切り出すきっかけだ。

 

「……」

「……」

 

 暫し、沈黙する。

 どう言ったものかといろいろ頭で考えてみて、結局ストレートに自分の気持ちを明かすことにした。やっぱ、ウジウジ難しく考えるのは性に合わないしな。

 

「ごめんな。お前がヴィレッタ大尉と同じなんじゃないかって感づいておきながら、教えなくて」

「……」

「ショックだったか? 自分が地球人じゃないこととか、記憶が嘘だったこととか」

 

 オレの問いに、アーマラは自嘲を浮かべた。

 

「……いや、そうでもない。自分が地球人ではないことや、両親の記憶と思い出が作られたものだったことに衝撃を受けなかったわけじゃないんだ。だが、お前を側で見ていたんだ、私の生まれなど些末なことだろう」

「それなら、どうしてそんなに落ち込んでるんだよ」

「一番ショックだったのは、それを知って僅かでも動揺して、お前の足を引っ張ってしまったことだよ。これまで兵士だなんだと散々言っておきながらな、な」

 

 こんなザマではキラのことを笑えん。そういう表情は痛々しいほど自虐に満ちていた。

 アーマラはプライドが高い奴だが、同時に自分に厳しい奴だ。でなきゃ、念動力に劣るにもかかわらずオレと同等の操縦技術を持てるわけがない。

 オレは反射的に立ち上がり、アーマラと相対した。

 

「馬鹿言え。そんなことでお前を笑う奴がいるなら、オレがぶっ飛ばしてやる」

「……」

「アーマラ。お前がスゲーヤツだってことは、オレが一番知ってる。」

「しかし、私は……」

 

 今更自己否定を口にして口ごもるアーマラに、オレはますますイラついた。

 理由は自分でも判断付かないが、ともかくイライラして仕方がなかった。

 だから――

 

「つべこべ言うな。お前はオレに着いてくればいいんだ」

「あっ」

 

 らしくないセリフを吐いてアーマラの手を取り、無理矢理に立ち上がらせた。

 

「きゃっ!」

「おわっ、と」

 

 足をもつれさせたアーマラがかわいい悲鳴を上げて、倒れ込んでくる。

 若干慌てつつ受け止めると、アーマラの顔がオレの胸に突っ込んできた。背丈は大体同じくらいだけど、コイツの体制が崩れてるからこんな格好になったわけさ。

 

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

 

 ち、沈黙が痛いっ!

 目の前にある桃色の髪からは、なんというか、女の子的な甘いに香りが漂ってきてドキドキする。

 いろいろとたまりかねて、オレは口を開いた。

 

「な、なんか言えよ」

「お、お前こそ何とか言ったらどうなんだっ」

「こういうのは苦手なんだよ」

「私だって……」

 

 消え入るようなアーマラ。普段、勝ち気で高飛車なこいつの、らしくない殊勝で弱気な様子が女の子していて。

 顔から火が吹きそうだ。

 

「と、その……イルイのこと、聞いたか?」

「あ、ああ」

 

 苦し紛れではないけれど、話題を変える。

 顔を上げたアーマラは、頬を僅かに赤みを残しながらも表情を曇らせた。イルイとは本当の姉妹のように仲がよかったから、気がかりだったのは間違いない。

 

「イルイは強い子だから泣いてはいないだろうけど、きっと一人きりで心細いはずだ」

「うん」

「オレたちのことだって心配してると思う」

「そうだな」

 

 いくらか落ち着いた様子でアーマラが肯定する。

 

「だから、その……」

 

 うまい言葉が思いつけない自分が苛立たしい。やっぱ直球一本勝負しかないか。

 アーマラの肩を軽く掴んで身体を離し、目と目を合わせる。深い藍色の瞳からは。

 

「一緒に、あいつを迎えにいこう」

「一緒、に?」

「ああ。オレとお前の、二人で。ついでに世界を救ってやってればいい」

「できるだろうか、私に」

「できるさ。なにせオレたちは、“サイコドライバーズ”だぜ?」

 

 αナンバーズのエースチーム、「サイコドライバーズ」――自惚れるわけじゃないが、オレたちはバルマー戦役から続く長い戦乱の中心をひた走ってきた自負がある。

 全ては平和のために。みんなの笑顔のために。

 ……オレは純粋にこの世界の生まれじゃないが、思い入れも、大切なもの だってあるんだ。

「サイコドライバーは、お前だけだろう」苦笑するアーマラ。けれど、さっきまでの弱気のムシは消えたようだ。

 

「ふっ……お前の無理無茶無謀の三拍子につき合えるのは、“相棒”の私くらいだな」

 

 桃色の髪を掻き上げて、クールに決める我が“相棒”。

 これだこれ。クールで高飛車で大人ぶって、だけどかわいいところもあって。そして、頼りになるオレの最高の相棒――、アーマラ・バートンはこうじゃないとな。

 

 居住まいを正し、改めてアーマラと相対する。

 オレは、今の気持ちのそのままを、なんら飾ることなく紡いだ。

 

「もう一度言うぜ、アーマラ。オレと一緒に来い。オレには、お前が必要なんだ」

「……ああ。銀河の果てまでだって、私がついて行ってやる」

 

 

 

 

 

 バベルの塔、格納庫。

 あらかたの照明が落とされ、薄暗い中をアーマラと二人行く。

 しばらくすると、見覚えのある青い軍服を着た男女に出くわした。

 

「ライ少尉に、レビか?」

「いつぞやの防衛戦ぶりだな、イング」

「久しぶりだ、イング。あと、いま私はマイ・コバヤシと名乗っているから、そう呼んでくれるとうれしい」

「ンッ、そうか、すまん。じゃあ改めて、マイ、ライ少尉、どうして二人が?」

「わたしたちはここで、SRXアルタードの調整を行っていたんだ」

「! 完成したのか、SRXアルタードが!」

「ああ、分離機能をオミットした急造仕様だがな。暴走する地球連邦政府に横やりを入れられないために、国際警察機構の手配でここに運び込んだ。作業には、シュウ・シラカワの手を借りている」

「なるほどな」

 

 シラカワ博士が急に離脱したのはそれが理由か。そういや《グランゾン》は便宜上、Rー0の名を与えられてるんだっけ。豆知識だな。

 

「健在は、XNディメンションの最終調整をしている段階だな」

「XNディメンション?」

「イングラム少佐が残したSRXの真の存在意義、機動兵器及びその周辺の物体の転移を行うシステムだ。長らく開発が難航していたが、何とか使用可能にまでこぎ着けた」

 

 なんでも、月面の研究施設での攻防(アウセンザイターの初陣)の際、別宙域にいた二人を何者かが転移させており、その際のデータから完成を見たのだという。また、イルイが姿を消す前にバベルの塔に残していったデータも重要な情報だったようだ。

 その何者かってのは、おそらくビッグ・ファイアだろう。先代には、また助けられたみたいだな。

 

「イングたちは、やっぱり?」

「ああ、オレたちは“博士”に呼び出されて――」

 

 マイの疑問に事情を説明しようとしたとき、どこからか甲高い音(テスラ・ドライブの駆動音か?)が聞こえてくる。

 避ける隙もなく、ピンクの丸い物体が、ゴガッ、と顔面に直撃した。

 

「ったあ!? ……何してくれてんだッ、エクス! 首がもげるかと思ったぞ!」

「ごご、ごめんなさいぃぃ!」

「ま、まあまあ」

「ったく……ん? なんかお前、変わってね?」

 

 おバカなマスコット・ロボを引き剥がしつつ、よくよく見るといろいろ細部が違っている。いや、自分が作ったものだしな。

 特に、後ろからふわふわと漂っている羽衣みたいなリボンみたいなものなんてかなり目立つぞ。

 

「はい! すーぱーしるえっとです!」

「スーパー、ね。で、何か性能的な変化はあんの?」

「特にありません!」

 

 そんな張り切って言うなよ。

 

 

 

 エクスに案内されて格納庫の最奥、オレすら立ち入りを禁止されていたエリアへと足を踏み入れた。

 

「来たかイング、アーマラ君」

 

 そこで待っていたのは白衣を身につけ、見事な髭を蓄えた強面の偉丈夫。

 ビアン・ゾルダーク――かつて「人類に逃げ場なし」と説き、ディバイン・クルセイダース社を設立して地球防衛の旗手を担った希代の大天才だ。

 

「どうやら、立ち直ったようだね」

「はい、ご心配をおかけしました」

「オレたちはもう大丈夫だぜ、博士」

「宜しい。決意を新たに立ち上がった君たち同様に、エグゼクスバインもまた新しく生まれ変わった」

 

 ビアン博士の力強い声が響き、照明が点灯する。

 

「これが――」

「新しい、エグゼクスバイン……」

 

 オレの言葉を引き継いだアーマラが、感嘆の声を上げる。

 転生した《エグゼクスバイン》は、とてもシンプルな姿をしていた。

 頭部は依然ゴーグルタイプだが、ところどころに《ガリルナガン》の要素も加わって凛々しい顔つきに。側頭部に見える四つの穴はバルカンか?

 ボディは《エクスバイン》の情報量をさらに多くした感じだが、突起は少な目だ。気になるのは《TーLINKスライダー》はおろか、《ストライク・シールド》すら装備されていないことか。

 

「青いんだな、今度のヒュッケバインは」

「ああ。俺の乗った008と同系色だ」

「ライディース君には酷なことかもしれないが」

「いえ、自分はもうそのことを乗り越えましたから」

 

 マイの感想通り、メインは白に近い薄い水色を基調にしたアーリーカラー。アクセントに上品な紫が加わっているのは、これまでの《ヒュッケバイン》の名残か。

 さらに、ボディにはフレームに沿うようにして碧い光のラインが走っており、さながら鳴動するようにエネルギーが行き交っていた。こちらは《ガリルナガン》を思わせる。

 

「機体性能を説明しよう」

 

 嬉しそうに言うビアン博士。おいおい、説明おばさんじゃないんだから。

 一度言ってみたかった? あ、そうですか。

 

「全長二〇メートル、総重量四二トン。基本設計は私がしたが、先日の会議に召集した各方面の天才たちが手を貸してくれている」

「やっぱり……。てか、単純にエグゼクスを改造したわけじゃないのか」

「さすがにダメージが深刻でね、フレームなどは断裂して使い物にならなくなっていたのだよ。それに、システムの都合上コクピットブロックも新しくせざるを得ない。無論、コンピュータ周りの中枢やエンジンコアなど無事な部分は極力移植しているが」

 

 君には残念なことかもしれないな。と、博士は言う。

 確かに、《ディス・アストラナガン》との戦いで《エグゼクスバイン》は限界を超えてボロボロに傷ついた。最終的にはオレの念動力で無理やり動かしていたような有様だったし。

 残念と言えば残念だ。あの機体は、オレがこの世界に生まれ落ちてからずっと一緒にいた愛機で相棒なんだからな。

 だが、地球を護るべく生み出された《ヒュッケバイン》の意志は、次代に受け継がれた。それさえあればいい。

 

「マン・マシン・インターフェイスは、TーLINKシステム及びウラヌス・システムからコバヤシ博士、ウェンディ君共同開発のアスラ・システムに変更されている」

「アスラ? 阿修羅のことか?」

「いや、ゾロアスター教のアフラ・マズダが由来だと聞いている。善悪正邪を超克し、この銀河に終わらない平和をもたらしてほしい、という願いが込められているそうだ」

 

 なるほどね。終わらない平和と来たか。責任重大だな。

 

 解体したGSライドのGストーンを中枢回路とし、ラプラスコンピュータと同調、プラーナコンバーターを介して生命力と念を次元力に変換し、それを触媒にアカシックレコードへの常時アクセス・限定的な改変を可能とする――と、原理や何やらを説明されたがちんぷんかんぷんだ。

 重要なのは、オレの念を完全に受け止めることができ、なおかつ今まで以上に高めることができると言うことだな。

 

「フレームは専用のHIIフレーム。装甲のゾル・オルハリコニウムは新たにPS装甲の理論とラ・ギアスの精製技術を組み込み、徹底的に対魔術(オカルト)処理を施した。さらに、ネート博士が完成させた念動力に反応するマシンセル、ネオ・マシンセルを機体全体に散布している」

 

 なにそれこわい。

 

「トロニウム・レヴは移植、ブラックホールエンジンは新型縮退炉に換装、そしてGSライドの代わりとして新たに光量子波動エンジンを搭載した」

「光量子波動エンジン?」

「うむ。故兜十蔵博士が残した未完成の理論を、兜剣造博士が私と宇門博士がそれぞれ提供した量子波動エンジン、光量子エンジンの技術を用いて完成させた。一種の次元力でありタキオンすら凌駕するフリーエネルギー、ディファレーター光線を発する人工太陽プラズマスパークを封じ込めた、次時代の光子力エンジンだ」

 

 これまたすっげー開発経緯だな。

 つか、プラズマスパークって……激しく聞き覚えがあるんだけど?

 

「この三種のエンジンを統合したシステムを、総称して“オウル・レヴ”と言う」

「オウル・レヴ……さしずめ、光神の心臓ってとこか」

「メイン推進機関には、グランゾンのネオ・ドライブとTーLINKフライトシステムを統合したTFDS(TーLINKフィールド・ドライブ・システム)。補助的に、クロスゲートドライブの原理を軸に、超空間エネルギーとフォールド技術を応用した光推進システム、マキシマオーバードライブを採用している」

 

 おい、また聞き覚えがある単語が出たぞ。総帥自重しろ。

 

「そして、早乙女博士から提供されたゲッター融合炉と《グッドサンダー号》に残されていた試作型ビムラー発生器を使い、多量のゲッター線とビムラーを浴びせ、ゾル・オルハリコニウムを変質させた」

「ちょ、ま」

「私は、変質したこれを生体金属ヒヒイロカネと名付けた。このヒヒイロカネにはイデオナイトと同様の性質があり、またゾル・オルハリコニウムの流体性を受け継ぎ、尚かつ限定的な再生・増殖・進化機能まで持ち得た――」

「待てぇいっ!」

「む。何かね?」

「何かね?じゃぬぇーよ! なんてもん浴びせてくれんだ、アンタ! 虚無ったらどうする!」

 

 いくらビムラーが無限力の最穏健派で、ゲッター線もかなり自重してるとは言ってもやりすぎだろ!?

 マシンセルが異常進化して、《デビルヒュッケバイン》とかになったらヤだからな!?

 つーか、イデオナイトと同様ってなおさらヤバい――

 

「あがっ!?」

「落ち着け、馬鹿者」

「ってーな、アーマラっ! 銃で殴んな!」

 

 マイが「痛そうだ……」と涙目で自分の頭を押さえていて、ライ少尉が苦笑を漏らしている。言っとくけど、リュウセイを義手で殴るアンタも同類だからな。

 

「ふんっ、お前が騒ぐのが悪いんだ。それでビアン博士、見たところセイバーやスライダーの類は装備していないのですね」

「ふむ、いいところに目を付けたね。基本武装は、頭部二連装フォトン・バルカンと両肩両腰に装備した計一二本のオールレンジ攻撃対応ロシュ・ダガー、MkーIVと共通装備のハイ・グラビトン・ライフルだ。超念動フィールドを応用したTーLINKナックルというのもあるが」

「基本武装ということは、まだ何か?」

 

 うむ。とアーマラの疑問に頷く博士。

 

「無論、それだけではない。見たまえ」

 

 《エグゼクスバイン》の背後を頭上から点灯した照明が照らし出す。

 そこには、様々な武装を全身に装備したトリコロールカラーの怪鳥、胸の中心に緑色のランプをつけた赤と銀の巨人、胸元に見覚えのある仮面をつけた黒一色巨豹が鎮座していた。

 オレは思わず目を見開く。

 

「これは……!」

「“マシン・アニマリート(MA)”、新生エグゼクスバイン専用のサポートメカであり、生まれ変わったみっつのしもべだ。私の古い友人から提供されたデータを元に建造したボディに、ガルーダ、ネプチューンの電子脳を移植した。言うまでもないが、彼らの完成には先日の会議で集まった各界の頭脳が協力してくれている」

「マッドどもめ……。そういや、アキレスは?」

「胸部コアユニットに直接乗り込み、機体全体を構成する流体ヒヒイロカネの制御を担当する方式だな」

「モビルホースかよ」

「この三体のMAと合体(フォームアップ)することで、新生エグゼクスバインは真価を発揮するのだ」

 

 ビアン博士が言うには《MAアキレス》が「仮面の英雄」、《MAガルーダ》が「鋼鉄の戦士」、《MAネプチューン》が「光の巨人」にそれぞれ対応しているのだそうだ。

 確かに、カラーリングとか意匠とかそれっぽいよな。……前に博士にこの世界の前世にいたヒーローたちについて語ったこともあるけど、それがこんなところに影響してくるなんて。

 

「そして、この新生エグゼクスバインは副座式の二人乗り。コ・パイロットは勿論アーマラ君、君しかいない」

「私が、ですか?」

「そうだ。アウグストゥスたるバビル二世が真に力を発揮するには、ヒトの念が必要なのだ。至聖三者、ガンエデンで言うなればマシアフ、イルイ君と同じ立場だな」

 

 父、子、聖霊の三位一体ってわけね。

 十字教は厨二ワードの宝庫だから、結構詳しいのだ。

 

「イング、お前、このことを知っていたのか?」

「いんや、ぜんぜん。でも何となくそんな気はしてたぞ」

「予知でもしたのか」

「まあ、そんなとこ」

 

 ニュータイプ的な直感、オレは鈍い方なんだが今回ばかりは予想も予知もしていた。

 

「丁度いいじゃん。ファルケンも性能的に厳しくなってきてるし、オレにはお前が必要だ。さっきも言ったろ? お前はつべこべ言わず、オレに着いてくればいいんだってな」

「イング……」

 

 言い切ると、アーマラは僅かだが照れたように頬を薔薇色に染めて微笑む。

「……っ……」なんつーリアクションしてくれてんだっ。気にしないようにしてたのに、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきたぞ。

 

 マイが乙女チックな視線を向けてくるし、ライ少尉には苦笑されるし散々だ。

 満足そうに見つめていた博士が口を開く。

 

「地球圏の、そして銀河のあらゆる英知を集めて誕生した対アポカリュプシス決戦機――エグゼクスバインは、人類の未来を勝ち得るため、太陽の光の力を得て甦ったのだ」

 

 どこぞの太陽の子かよ。

 しっかし、ご大層なお題目だな。ホント、責任重大だよ。ヒーローはツラいね。

 

「ところでさ、博士。なんでいつまでも“新生エグゼクスバイン”って呼んでんだ? せっかくパワーアップしたんだし、名前も新しくしていいんじゃないの。リーゼとかラインとかブレイズとか付けてさ」

「ふっ、それはだなイング、ネーミングを君に委ねようと思うのだよ」

「え? オレに?」

「うむ。エクス君たっての希望でね」

 

 ちらりとピンクのボールを見ると、キラキラとした目で見ている。いや、単なるイメージだけど。

 困ったようにアーマラを見ると、力強く頷いてくれた。

 

 みんなの期待に満ちた視線を受けつつ、新しい愛機の姿を仰ぎ見る。

 アースクレイドルから始まったこの旅も、思えば短くも長かった。

 様々な出会いと別れを経て、オレはオレの理想とするヒーローに少しでも近づけたように思う。自惚れじゃなく、心から。

 ビッグ・ファイアとナシムに託された願いは、もはやオレの理想と等しい。オレたちはこの閉じられた銀河の輪廻に風穴をあけ、新しい未来を斬り拓く。

 

 志も果たせず封印された初代《ヒュッケバイン》。

 リョウトとともにバルマー戦役を駆け抜けた《MkーII》、《MkーIII》。

 二機の《EX》とそれぞれが転生した《ガリルナガン》、《エグゼクスバイン》。

 そして凶鳥を継ぐもの《MkーIV》。

 それらに続く、八番目の凶鳥――

 

「それなら、コイツの名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴラー・ゴレム隊の度重なる攻撃により追いつめられたαナンバーズ。窮地に陥った彼らを閉じこめていたES空間が、突如斬り裂かれるようにして崩壊する。

 漆黒の宇宙に投げ出されたαナンバーズの前には、見慣れない機動兵器が待っていた。

 

「みんな、待たせたな! 真打ちの登場だ!」

 

 副座式に改められた楕円形の全天コクピット。操縦席に座したイングは、浮遊する光球の形をした独特な操縦ユニットを握りしめ、高らかに謳う。

 その前方、一段下がったコ・パイロットシートではアーマラが自信を全身に漲らせて静かに戦意を高めていた。

 

『イング……! それに――』

『リュウ、間に合ってよかった』

『間一髪だったようだな』

『ライ、マイ! バンプレイオスが完成したんだな!』

「それだけじゃないぜ、リュウセイ!」

 

 心強い援軍の到着に、αナンバーズがにわかに活気立つ。

 

 彼らが率いるのは時空を斬り裂く鋼の戦神、《バンプレイオス》だけではない。

 破壊神に由来する真の力を解き放った蒼き魔神、《ネオ・グランゾン》――

 撃破した《ハウドラゴン》を取り込み、完成された究極の八卦ロボ《烈のグレートゼオライマー》――

 決意を胸に重力子を解放したクライン・サンドマンこと、ジーク・エリクマイヤーが駆る黒き超重神《ゴッドΣグラヴィオン》――

 ――――宇宙に覇を轟かせる最凶無敵の巨人たちが、仲間の危機を救うべく一堂に会したのだ。

 

『イングくん! アーマラ!』

『この登場の仕方、まるでいつかの再現だな』

『あれがイングの、新しいヒュッケバイン……!』

『エグゼクスバインと比べてシンプルに見えるが、それだけではないか。それにこのプレッシャー……イング、一皮むけたようだな』

 

 クスハが戦友の登場に喜びを露わにし、クォヴレーが前任者(イングラム)から引き継いだイメージを思い返して苦笑を漏らす。

 一方、リョウト、アムロがエンジニアとしての一面を見せる。

 

『おいコラ、シュウ! 来るのが遅ぇんだよ!』

『そうがならないでください、マサキ。私たちはあの機体、バビル二世の座であり新時代のガンエデンの完成に駆り出されていたのですから』

『私たち? ってことは、もしかしてマサトもか?』

『うん。最終的な調整には木原マサキの、いや、僕の持つ次元連結システムの知識がどうしても必要だったんだ。ちょうどグレート完成のために地球に残っていたからね』

『私も銀河に住まう者の一人として、及ばずながら協力させてもらったよ』

『サンドマンまでかよ……って、なんか髪の色変わってねぇか?』

『ははは。エイジ、そのことについては後ほど説明しよう』

 

 マサキがシュウに噛み付き、マサトが。エイジの目聡い指摘をサンドマン。

 

『あれは……まさかそんな……?』

『え、姫様?』

『あれはまるで創世神ズフィルード……、いえ、もっと違う、大いなる力を担う存在?』

 

 αナンバーズに同行していたアルマナは、新たな凶鳥を祝福する無限力の息吹を感じ取り、困惑と期待を浮かべた。

 

「このヒュッケバインは、銀河に住まう人類の英知を結集して生まれた決戦存在ッ! オレたちの、銀河の未来を斬り拓く新しい剣だ!」

 

 それは、真紅の時代に終止符を打つため、世界が待ち続けた鋼の救世主(メシア)

 それは、愛に満ちた日々を、終わらない平和をこの銀河にもたらすことを約束された勝利の(つるぎ)

 それは、邪念を断ち、そして定められた終焉すらも斬り裂いて、煌めく未来を創り出す奇跡の戦士(ヒーロー)

 

 その名は――

 

 

「エグゼクスバイン・メヴィウス! 人々の希望と祈りを受けて、凶鳥は冥府から甦る! 貴様ら悪党どもを根絶やしにするまで、何度でもな!」

「ハザル・ゴッツォ! 貴様との鬱陶しい因縁、その邪念諸共ここで断ち斬ってやる!」

 

 イングとアーマラが口上を上げると、機体フレームに沿って走るエネルギーラインが蒼白い光を放つ。

 SRTXー00DEX《エグゼクスバイン・メヴィウス》――八(8)番目の凶鳥にして無限()の名を冠した救世(ぐぜ)の担い手、不死鳥の勇者。

 理不尽な運命から力尽くで明日(あす)を掴むため、過去・現在・未来、異星異世界――ありとあらゆる人類の英知の粋を結集して産み出された、究極のスーパー・パーソナルトルーパーである。

 

『グッ、バルシェムの分際でふざけたことを! エイス、予備兵力を出せ! 全て残らずだ!』

『……了解……』

 

 ハザルは恐怖と戦慄を押し隠すように、引き連れてきた戦力すべてを放出する。

 《メギロート》や《エスリム》、《ハーガイ》などだけではなく、かつて支配していた頃に捕獲したものだろうボアザン星やキャンベル星の機動兵器の姿もある。師団規模の大部隊だ。

 さらに――

 

『あれは……!』

『そんな……!? ジュデッカが十体も……!』

 

 敵母艦《フーレ》から現れたのは白き地獄、十体もの《ジュデッカ》にリュウセイとマイが言葉を失う。

 特に、かつてレビ・トーラーとして《ジュデッカ》に囚われていたマイは、僅かに恐怖を滲ませていた。

 

『だが、ジュデッカと言えど念動力者が操縦していなければただの機動兵器だ』

『いやライ、そうじゃねぇ。あのジュデッカからは確かに念が感じられるんだ』

『なんだと?』

『うん。だけど、その念がおかしいんだ。まるで機械のような……同時に酷い苦しみを感じる』

 

 ライディースの考えを否定し、リュウセイとマイは口々に違和感を吐露する。

 イング、そして彼と()調()しているアーマラもまたその違和感を感じ取り、表情をゆがめた。

 

『ハハハハ! その通り! この強化型ジュデッカには、念動力者の脳髄が封入されている。それも人形(バルシェム)などではなく、征服した星の猿どものものをな』

『な、なんということを……!』

 

 明かされた非道な行為にアルマナが絶句する。

 それを聞きつけたハザルは、嫌らしい笑みを浮かべ、慇懃無礼に言い返す。

 

『何が問題なのです? 我々ゼ・バルマリィ帝国という優れた存在に有効活用される。奴ら猿どもも本望でしょう』

 

『この……ッ、外道!』

『ハザル! あなたという人は……!』

『貴様の存在は、もはや許してはおけない!』

『あたしもいい加減、アンタのゲスなやり口には頭に来たよ!』

 

 命を踏みにじる悪魔の所業に、トウマ、クスハ、クォヴレー、セレーナが怒りを露わにする。

「ふんっ」《ジュデッカ》率いる敵団を一瞥し、アーマラは高飛車に鼻を鳴らした。それはまるでハザルを嘲るようで。

 

「語るに落ちたな、ハザル。自分の力を誇示しようと御託を並べて喚く様は見苦しいぞ。貴様のような奴を、負け犬というのだ」

「ハザル! テメェはつくづく見下げ果てた野郎だ! ついでだ、再生怪人は弱いってお約束を身を持って教えてやる!」

「わたし、堪忍袋の尾が切れましたっ!」

「行くぞッ! 最初はお前だ、来いアキレス! フォームアップ!」

 

 気炎を上げるイングの発した指令とキーワードを合図とし、《エグゼクスバイン》の背後に開いた重力ゲートから飛び出す《MAアキレス》が、胸のパーツを残して瞬く間にボディを液状化させる。

 胸部コアパーツが《エグゼクスバイン》の頭部に仮面として合体、流体ヒヒイロカネが機体を覆い尽くしてその色を濃紺と紫、僅かに赤が施されたものへと塗り替える。宇宙に満ちるタキオン粒子が実体化して虚空に《ストライク・シールド》と《TーLINKセイバーver.2》を形成し、左腕に装着された。

 その背から延び、宇宙にたなびく紅い外套「メタル・クローク」すらも、流体ヒヒイロカネが変化したものだ。

 

 地を駆ける無双の英雄、《エグゼクスバイン・メヴィウスR》。

 かつての《エクスバイン・アッシュ》を彷彿とさせるその姿は、《MAアキレス》と合体(フォームアップ)した形態。“仮面の英雄”を象った《エグゼクスバイン・メヴィウス》の基本戦闘形態であり、最も性能の調和が取れたオールマイティな形態である。

 

「さあ、エグゼクスバイン・メヴィウスのお披露目だ! ド派手に行くぜ、アーマラ、エクス!」

「任せておけ、イング!」

「全力全開っ、です!」

 

 白き地獄に囚われた哀れな命を解放すべく、不死鳥の勇者が立ち上がる。

 念動フィールドと連動したTFDSが起動し、フィールド状の翼が大小二対発生して《エグゼクスバイン・メヴィウス》を物理法則のくびきから解き放った。

 

 その戦いは圧倒的という言葉も不足なほど超然としていた。

 重力空間から取り出した《ハイ・グラビトン・ライフル》を用い、空間転移による挟み撃ちで《エスリム》を押しつぶす。

 腰部に装着された計六つのシースから《ロシュ・ダガー》が投射され、両端より光子が吹き出す。《リープ・セイバー》と名付けられた光の戦輪が空間転移を繰り返して縦横に駆け回り、《ハーガイ》《ヲエラ》をズタズタに引き裂いた。

 真紅の外套を翻し、仮面の騎士が躍り出る。強念を纏わせた四肢が唸りを上げ、《ヴァルク・ベン》を粉砕していく。

 

「散れ、TーLINKスプラッシュ!」

 

 強念がほとばしり、翻した《メタル・クローク》が水滴のように()()()()()

 ヒヒイロカネ製のボールベアリング弾がイングの思念に従って縦横無尽に暴れ回り、《メギロート》たちを次々に蜂の巣にしていく。

 ヒヒイロカネの特性を生かした特殊武装、《TーLINKスプラッシュ》。《参式斬艦刀》に用いられた液体金属操作技術を昇華したものだ。

 

 暴れ回る《エグゼクスバイン》対して、《ジュデッカ》の内の一体が攻撃を仕掛ける。

 サソリ型に変形して突撃をかける《第一地獄カイーナ》。だが、《エグゼクスバイン》はそれをあっさりと躱し、反撃に打って出る。

 

「一気に蹴散らす! シーケンス、FSEッ!」

「了解だ! TーLINK、ツイン・コンタクト! 輝けッ、オウル・レヴ!!」

「リミットブレイクっ! エグゼクスバイン、フルドライブです!」

 

 出力を上げるオウル・レヴに従って、メタル・クロークがマフラー状に変化する。

 イングとアーマラの念により制御されたネオ・マシンセルが流体ヒヒイロカネを爆発的に増加させ、増加したヒヒイロカネがマフラーの先端から散布されて《メヴィウスR》の形に変化していく。

 

「光を超えろ、エグゼクスバイン! ファイナル・ストライク・エンド!!」

 

 無数の分身が、次々に念動フィールドを纏って突撃。当たるは幸いとばかりに、《ジュデッカ》へと強烈なキックを叩き込んでいく。

 さらに一撃をお見舞いした分身が、それぞれ《TーLINKセイバー》を引き抜いて斬りかかる。

 

千路(ちじ)吹く風巻(しま)きに祟れて滅せ!」

「アカシックレコードアクセスッ! 一気に振り切るぜ!」

 

 エクスの珍しくドスの効いた口上を皮切りに、分身達の速度が増していく。

 光速の斬撃が幾重にも折り重なり、次元断層を創り上げる。全身をずたずたに斬り裂かれ、悲鳴のようなきしみを上げる《ジュデッカ》を数体が四方から串刺しにしてその身を翠緑のクリスタルへと変え、動きを完全に封じ込める。

 そして四方を囲んだ分身が刃を振るい、白き悪魔の巨体が高々と打ち上げられる。

 

「さあ、フィナーレだ!」

 

 打ち上げられた《ジュデッカ》めがけて、メタル・クロークのマフラーを三対の翼へと変化させた本体が莫大な念を左の足先に集中させて突撃をかける。

 そこに散布された流体ヒヒイロカネが集結し、念動フィールドと交わって猛烈な勢いで螺旋を描いていた。

 

「はあああああ――ッッ!!」

「せいやーーー!!!」

 

 念動力で創られた円環状の加速ゲートをいくつもくぐり抜け、光を超えるかのように加速していく。

 そして、念の高まりが最高潮を迎え、イングの髪が紅く燃え上がる。サイコドライバーモード――、“バビル二世”としての力が発揮されるのに併せて、アスラ・システムで()調()するアーマラの髪もまた、深い紺青色へと変化していた。

 身動きの取れない状態で吹き飛んだ《ジュデッカ》を、加速ゲートはホーミングして捉え続ける。そしてついに《エグゼクスバイン》による強烈な蹴りが炸裂する。

 

「セイバー、アクティブッ!」

「念動フィールド!」

 

 胴体を貫通した勢いのまま《エグゼクスバイン》が、振り向きざまに《TーLINKセイバー》を引き抜く。

 イングとアーマラ、二人の強念を帯びた刃が光り輝く。

 光刃一閃。空間ごと引き裂く大斬撃は、苦し紛れの念動フィールドを容易く両断した。

 

「名付けて、光刃閃・(きわめ)ッッ!! デッド・エンド・オール――」

「「スラァァァァッシュッ!!!」」

 

 さらなる一太刀。まっすぐに振り下ろした刃から放たれた極大極光の帯に飲み込まれ、《ジュデッカ》は大爆発とともに消滅する。

 再び外套型に戻ったメタル・クロークを靡かせて、《エグゼクスバイン》は剣を鞘に納めた。

 

 単体では敵わぬと判断したのか、《ジュデッカ》の中の一機が取り巻きに各種SPTを多数引き連れ、数にあかせて押し切ろうと《エグゼクスバイン》に迫り来る。

 

「ザコばかりがごちゃごちゃと。そんな小細工、私たちの前には無駄だということを教えてやる!」

「お次はコイツだ! 出てこい、ガルーダ!」

 

 《MAアキレス》が《エグゼクスバイン》から分離。続いて姿を現した鋼鉄の怪鳥、《MAガルーダ》が嘶きながら大きく羽撃き、変形を開始する。

 上半身と下半身、そして両翼が分離し、さらに両足が切り離される。その脚部が変形した両肩の追加アーマーは、小型《TーLINKスライダー》六機のプラットフォームだ。

 上半身、二つに割れた首が上から肩に被さり、頭部が顎を引いた形で《エグゼクスバイン》の胸に装着。背部に合体したボディには《フェルミオンブラスター》の展開ギミックと砲身を備える。空間そのものに接続した複雑な機構が組み合わさった《フリーダム》を思わせる可動翼は、《TーLINKフェザー》を発するフライトユニットであり、大型《TーLINKスライダー》八機がさながら羽根のように装着されていた。

 また、脚部の増加スラスターは《カロリック・クラスター・ミサイル》の発射ユニットだ。

 腰部リアアーマーには、《ガルーダ》の尾を形成する八枚の白い板状の武装が合体。その武装の名は《タオーステイル》、超魔装機《デュラクシール》を代表する兵器を設計者であるセニア自らがTーLINKシステムを組み込んで復活させた必殺武器である。

 合体が完了したと同時に相転移(フェイズシフト)するヒヒイロカネの装甲が、《ガルーダ》と同じトリコロールに染まっていく。

 

 空を飛ぶ無敗の戦士、《エグゼクスバイン・メヴィウスG》。

 PTのみならず、《ガンダム》に代表されるMSやMA、SPT、HM、さらにはオーラ・バトラーや魔装機の技術までをも取り込んだ《メヴィウス》の高機動砲撃空戦形態。その姿はまさしく“鋼鉄の戦士”と言えた。

 

「アスラ・システム、正常に稼動中っ」

「アーマラ、アスラ・システムとメヴィウス、使いこなせるか?」

「ふん、私を誰だと思っている」

「ははっ、お前にゃ愚問だったな」

 

 《メヴィウス》のアスラ・システムはイングとアーマラ、両者のあらゆる能力を同調させ、さらにお互いの優れた部分で相手を補い合う。

 それ故、メイン・サブの区別はなく、二人で一つの機体を操る――、それこそがこの《エグゼクスバイン・メヴィウス》の真価なのだ。

 

「TーLINKフェザー、展開!」

「出ろ、タキオン・ライフル!」

 

 翠緑の光翼が羽撃き、イングの念によって空間が穿たれる。放たれる砲火を掻い潜り、一気に最大戦速まで加速した《エグゼクスバイン》は、開かれた重力空間から射出された一対のライフルを手に取る。

 

「私に出会った不幸を呪え!」

「タキオン・ライフル、シュート!」

 

 《TーLINKフェザー》とTFDSによる超光 速機動の中、《ツインバスターライフル》に似た形状のそれを二つに分割し、それぞれから超光速の砲撃を断続的に放って敵陣をズタズタに切り裂いた。

 撤界効果により、理論上空間の繋がりを無視して平行世界の別の時代に向けて狙撃が可能なタキオン粒子波動砲《ツイン・タキオン・ライフル》。《メヴィウスG》のメインアームだ。

 

「ターゲットロックッ、ツイン・タキオン・ライフル!」

「マキシマム・シュートッ!」

 

 再び連結した《ツイン・タキオン・ライフル》から極太の光の柱が解き放たれた。

 解き放たれたまばゆいばかりの光の束は超光速。莫大なタキオン粒子の奔流に巻き込まれたバルマーの機動兵器群は、火球を残して消滅した。

 

「まだだ! 全スライダー、タオーステイル、パージ!」

「制御はオレに任せろ! オープンブレードッ!」

 

 アーマラの意思により分離した各種武装が、イングの念を受けて展開する。《タオーステイル》が四つづつ組み合わさって砲陣を敷き、《メガバスターキャノン》を放つ。

 また、変形した《TーLINKレボリューター》が回転しながら鎹の中心のレンズよりレーザーを照射して光の檻を形成、圧倒的な火力で宙域を制圧していく。

 

「アーマラ、一気に決めるぞ! シーケンス、OPV! 輝け、オウル・レヴッ!」

「了解だ! TーLINK、ツインコンタクト! 数価変換、ゲマトリア修正!」

「ターゲット、マルチロックです!」

 

 アスラ・システムにより増幅・拡大された二人の思念が、エクスの制御に従って戦場を覆い尽くす。

 メインモニターに投影された多数の敵影を、ロックオンを示す赤いマーカーが捕捉していく。

 

「サンシャイン・フォーメーションッ! トリガーは任せたぜ、アーマラ!」

「ああ! 外しはしないッ!」

 

 アーマラが、コ・パイロットシートの前方からせり出した拳銃を模したスティックを握りしめる。

 《エグゼクスバイン》は背中の《フェルミオンブラスター》が展開、ガルーダの頭部が口を開いて《ハイパーサテライトキャノン》が発射態勢を取る。また、脚部増加スラスターが《カロリック・クラスター・ミサイル》の発射準備を整えた。

 さらに、《タオーステイル》と《TーLINKレボリューター》が《エグゼクスバイン》の背後にまるで日輪のような陣形を組む。

 閃く翠緑の光。溢れ出す擬似魔力の輝きが虚空を走る。

 《エグゼクスバイン》の足下に、火・水・風・大地の四大属性に、星・月・太陽の象徴が描かれたラ・ギアスの魔法陣が完成した。

 

「メヴィウスの力を……! 見せてやる! オペレィション・ヴィクトリー!!」

「フルバースト・アタックッ、デッド・エンド・ファイア!!」

 

 引き金が引かれたと同時に、《エグゼクスバイン》の全身から無数の火砲が解き放たれた。

 両手に持った《ツイン・タキオン・ライフル》を始めとして、オウル・レヴの莫大なエネルギーをダイレクトに重粒子ビームへと変換した《ハイパーサテライトキャノン》、魔術プログラムにより生成されて分裂・炸裂する熱量の矢《カロリック・クラスター・ミサイル》、フェルミオン粒子収束砲《フェルミオンブラスター》――《タオーステイル》、《TーLINKレボリューター》のエネルギー集束レンズからは意志を持ったかのように枝分かれし、歪曲するホーミングレーザーが照射された。

 全天を覆い尽くす砲撃の嵐。

 アポカリュプシスの尖兵、宇宙怪獣に対抗するための超々広域殲滅攻撃《オペレィション・ヴィクトリー》を前に、《ジュデッカ》は為すすべもなくを巻き込まれ、バルマー軍は壊滅的な大打撃を受けた。

 

 さらに――

 

『せめてもの慈悲です……、あなた達の存在を、この宇宙から消し去ってさしあげます……!!』

 《ネオ・グランゾン》の《縮退砲》。

 

『彼らの苦しみ、無念は、僕らが冥府へと導こう! 真のゼオライマーの力……、今!! ここに!!!』

 《グレートゼオライマー》の《烈メイオウ 》。

 

『宇宙の宝、命を弄ぶ者を私は許さない! グラヴィトンランサー!!!』

 《ゴッドΣグラヴィオン》の《グラヴィトンランサー》。

 

 三体の魔神の必殺攻撃により、《ジュデッカ》が次々に破壊された。

 

『ば、馬鹿なっ?! 強化型ジュデッカが、こうも簡単にやられるだと!?』

 

 あまりにも一方的な展開に、ハザルが顔色を変えて狼狽する。

 残る《ジュデッカ》も《大雷鳳》、《真・虎龍王》、《ディス・アストラナガン》、《ASアレグリア》により撃破され、一機のみ。

 最後の《ジュデッカ》は、獣士やマグマ獣など比較的損傷が軽微な手勢を引き連れて、三度攻撃を開始する。あるいは、《ジュデッカ》に込められた脳髄に僅かに残された本能が《エグゼクスバイン・メヴィウス》に対して恐怖を覚えたのかもしれない。

 

「まだ来るか、懲りない連中だ」

「特機には特機だ。行くぜ、ネプチューン! システムチェンジ!」

 

 分離する《ガルーダ》と入れ替わるように、赤と銀の巨大トレーラーが重力ゲートを潜って発進する。

 イングの発したキーワードを合図にトレーラーが変形するのは、四〇メートル級の赤銀のロボット《MAネプチューン》。流線型ではなく直角を多用しているものの、がっしりとした体型や厳つい顔立ちは《ジャイアント・ロボ》を連想させた。

 

「ネプチューン、フォームアップ!」

 

 《ネプチューン》は、主の指示に従いさらに変形を開始する。

 脚部、腰部等の装甲が展開し、頭身を伸ばす。太い前腕が肩アーマーに変形して二の腕を露出、鋭利な螺旋状のモールドが施された前腕が新たに接続した。

 胴体前面を鏡開きに開き、《ゴッドマーズ》や《SRX》と同様に《エグゼクスバイン》を格納。重力空間から胸部追加装甲――翠緑の宝珠「エナジーコア」を中央に、その両脇に念動ブーメラン《コスモスラッガー》を配した飾りが装着される。《マジンガー》シリーズ、《グルンガスト》シリーズから受け継いだ意匠であり、この形態の必殺武装の一つである。

 最後に《エクスバイン》《SRX》譲りのゴーグルが付いた翠緑色の水晶が特徴的な兜飾りを装着、《ネプチューン》の口元をマスクが覆った。

 

「天動合体! エグゼクスバイン・メヴィウス!」

 

 完成したのは四九メートルの特機。カラーリングは赤と銀のツートンから変化し、各部が展開することによりブルーが施されたボディが露出している。

 また、スマートかつマッシブなプロポーションが《ダンクーガ》やその後継機《ノヴァ》、《グラヴィオン》、《ダンガイオー》、《ダイゼンガー》に酷似しているのはそれらの開発者たちが完成に携わっているからだ。

 

 海を行く無敵の巨人、《エグゼクスバイン・メヴィウスU》。

 プラズマスパークの莫大な光を最大限・最大効率で発揮できる特機型強攻形態であり、SRG-01《グルンガスト》、SMH-01《ヴァルシオン》、DCAM-00/Rー0《グランゾン》、DGG-XAM1《ダイゼンガー》等のDC系特機の流れを汲む“光の巨人”である。

 

 仁王立ちする赤き巨人に向けて、バルマー軍が攻撃を仕掛ける。

 しかしそれらは、強力無比な「超念動フィールド」と全身に纏う七色のオーラ、「オーロラエフェクト」に阻まれて容易く弾かれた。

 

「無駄だ! その程度の攻撃、このメヴィウスには通用しない!」

「今度はこっちのターンだぜ! こいつを喰らえ、ウルティメイトバニッシャーーッ!」

 

 反撃は、胸部エナジーコアと《コスモスラッガー》から放つ光量子波動砲《ウルティメイトバニッシャー》。莫大な光の濁流が《サイモン》《ダイモン》を包み込み、瞬く間に輝く粒子へと昇華させた。

 敵機の撃破を確認する間もなく、巨人は右腕を引き絞り、次の攻撃動作に入る。

 

「砕け散れ! バニシィィィイングッ――」

「マグナァァァァムッ!!」

 

 アーマラの叫びとともに、鉄拳が放たれた。《ガオガイガー》の《ブロウクンマグナム》同様、手首と前腕とが高速で逆回転して飛翔する。

 猛スピードで飛来した拳が《強力ナマズンゴ》を貫通し、一撃で粉々に破壊した。

 《バニシングマグナム》。元祖スーパーロボット《マジンガーZ》の代名詞、《ロケットパンチ》に連なる特機の伝統的武装である。

 

 帰還した右腕が再び合体し、各部から蒸気が吹き出る。

 鉄壁の防御と圧倒的なパワーによる蹂躙戦――、それはまさしくスーパーロボットと呼ぶに相応しい姿だった。

 

「よしアーマラ、あれをやるぞ!」

「……それはかまわんが、本当にあのセリフを言わなきゃダメか?」

「当っ然!」

 

 イングのイイ笑顔に、アーマラが盛大に顔をしかめた。

 ビアン博士が施した《メヴィウスU》の「音声入力式武器選択装置」には、彼女が恥ずかしがる恥ずかしいセリフが登録されていたりする。

 

「ああもうっ、やればいいんだろ! やればっ! TーLINKツインコンタクト!」

「がんばりましょう、アーマラさんっ! リミット解除! オウル・レヴ、フルドライブです!」

「まずはこいつだ! サイキックウェェェィイブ!!」

 

 突き出した左の掌に翠緑の念動光が迸る。猛烈なサイコキネシスが《ジュデッカ》を捉え、その動きを完全に封じ込めた。

 《ダンガイオー》と同様のサイコキネシスによる拘束攻撃を始動にして、《エグゼクスバイン・メヴィウス》三形態の内で最大最強の破壊力を誇る必殺技が今、解き放たれようとしていた。

 

「漲る勇気ッ!」

「っ、溢れる愛情ッ!」

「愛と勇気を光の力に変えて!」

 

 イングを皮切りに、アーマラ、エクスが上げる口上は必殺技を発動するキーワード。

 フルドライブするオウル・レヴ――光量子波動エンジンが莫大な光エネルギーを生み出し、縮退炉内部のマイクロブラックホールから無尽蔵のエネルギーが汲み出され、トロニウム・レヴが念に反応して出力を上げていく。

 天の光、地の闇、人の心。正負、そしてその間に立つ純粋なるエネルギーが交わって、無限を超える究極の(ウルティメイト・)(パワーフォース)が解き放たれた。

 

「宇宙よ、銀河よ! オレたちに力を貸せ! アカシックレコードアクセスッ!! 次元を斬り裂け! エグゼクスカリバー、アクティブ!!!」

 

 胸部から分離したエナジーコアとその台座から柄が延び、さらにコアを囲むように黄金の光が瞬く。

 柄を両手で握り締める赤い巨人。

 念動力により導かれ、翠緑の光を帯びた流体ヒヒイロカネが間欠泉のように吹き出し、両刃の刀身をクリスタル状の物質で形成する。その様はさながら《スレードゲルミル》の《斬艦刀》を思わせる。

 太陽を模した黄金の鍔に、結晶化したヒヒイロカネの刀身を持つ念動剣《エグゼクスカリバー》、別名《天地神明剣》。《グルンガスト》シリーズの後継機とも言える《エグゼクスバイン・メヴィウスU》の必殺剣である。

 

「す、素敵に無敵に絶光超ッ!」

「天衣無縫の天動超奥義ィィイッ!!」

 

 壮絶に顔を赤らめたアーマラがやけっぱち気味に言い放つ一方、イングはノリに乗っていた。

 高く掲げた刀身に稲妻が落ち、ヒヒイロカネが二人の念を喰らってまばゆいばかりに光り輝く。それと同時に、頭部のクリスタルが金色に変化した。

 煌めく剣を腰溜めに構え、赤き巨人が金色の極光を纏う。

 

「「オオオオオ――――ッッッ!!」」

 

 裂帛の咆哮。

 輝くオーラが形を変え、羽撃くは宇宙の闇を斬り裂く黄金の不死鳥。愛と勇気と希望を胸に、邪念を断ち斬る光の一撃――――

 

「「スペリオルフラッシュッッ!!!」」

 

 袈裟懸けに振り下ろされた光の剣が《ジュデッカ》の巨体に吸い込まれる。

 次元諸共断ち斬る大斬撃を繰り出し、突進の勢いで背後にすり抜ける《エグゼクスバイン》。振り下ろした《エグゼクスカリバー》のクリスタルの刀身が砕け散り、それと同時に念動の光を帯びた左手が掲げられた。

 

「バースト・エンド!」

 

 イングによるトドメのキーワード。

 握り締めた拳の間から翠緑の光が漏れ出し、斬撃とともに撃ち込まれた念がそれと連動して《ジュデッカ》を中心に大爆発を引き起こす。

 白き地獄は、黄金の爆光に包まれて跡形もなく消失(バニシング)した。

 

 

 《エグゼクスバイン・メヴィウス》により壊滅的な、いや文字通り壊滅したバルマー軍、ゴラー・ゴレム隊。

 発狂したハザルは怒りによって強念を呼び覚ました。《ガドル・ヴァイクラン》。地球の特機の「合体」に着目した《ヴァイクラン》の最強形態である。

 

 ハザルは怒りと恐怖に任せて《ガドル・ヴァイクラン》の必殺技、《アルス・マグナ・フルヴァン》を《バンプレイオス》に向けて放つ。乗り換えたばかりのリュウセイを狙った狡い攻撃だ。

 しかしそれは、サイコドライバーの力を取り戻したリュウセイの強念の前に凌がれる。

 

『な、なんだと!? このガドル・ヴァイクランの攻撃を、アルス・マグナ・フルヴァンに耐え抜いたというのか!? あり得ん!!』

『そんな合体モドキでバンプレイオスを倒そうなんざ、百年早いぜ!』

『ぐ、おのれぇえ! リュウセイ・ダテ! 未開惑星の猿の分際で!』

『……』

 

 ハザルの無様を受け、《ディバリウム》を操るエイスが行動を起こそうとしたそのとき、それに割り込むように、イングが――《エグゼクスバイン・メヴィウス》が《バンプレイオス》の傍らに降り立った。

 

「リュウセイ! 奴らに本物の合体攻撃ってのを教えてやろうぜ!」

『おっ? そいつとバンプレイオスでアレをやるってのか? オーケー、乗ったぜ!』

 

 息を合わせたイングとリュウセイは、《ガドル・ヴァイクラン》に向けて乗機の人差し指を突きつける。

 七九メートルと四九メートル、サイズ比では大人と子どもほどの差だが、二機の立ち姿は不思議と様になっていた。

 

『ハザル! テメェの悪行もここまでだ!』

「貴様のしてきたこと、お天道様が許してもオレたちαナンバーズが許さない! 行くぜ、TーLINKダブルコンタクトッ!!」

 

 イングとリュウセイ、それぞれの念が機体によって増幅され、その意思が共鳴し合いさらなる力を発揮する。

 地球圏最強の汎超能力者(サイコドライバー)と、それに次ぐ最強クラスの強念者。そしてその乗機は地球圏でも指折りのスーパーロボット――、鬼畜外道に引導を渡すに相応しい役者と舞台が揃う。

 

『行くぜッ、TーLINKブレードナッコゥッ! 破ァッ!!』

 

 まず挑みかかるのは《バンプレイオス》。拳から念の刃を作り出す《TーLINKブレードナックル》で、《ガドル・ヴァイクラン》を滅多打ち滅多斬りにする。

 

『オラオラオラオラァッ!』

『SRXの仇は討たせてもらうぞ!』

 

 ハザルによって《SRX》を破壊された破壊された借りを何倍にもして返すべく、リュウセイとライディースが気炎を上げる。

 猛烈な連打の後、締めのアッパーカットで殴り飛ばし、リュウセイが戦友に後を譲る。

 

『イング!』

「紅蓮を纏え、エグゼクスバイン!!」

 

 上昇していた《エグゼクスバイン・メヴィウス》の全身から、強烈な真紅(あか)い念動光が炎のように迸った。

「デーーーヤッッ!!」イングの雄叫びとともに、紅く燃えさかる炎を纏う跳び蹴りが、《ガドル・ヴァイクラン》を打ち貫いた。

 

「オレたちのビックバンはもう止められないぜ!」

「意味が分からんぞ……」

 

 アーマラのツッコミはさておき。追撃として炎を纏った拳による連携から強烈な手刀を打ち込むコンビネーション・アタック、《ビッグバンフィスト》が《ガドル・ヴァイクラン》を打ちのめす。

 強烈な連続攻撃に合体状態を維持できず、《ヴァイクラン》は《ディバリウム》のパーツをばらまきながら吹き飛んだ。

 

「リュウセイ!」

『おう!』

 

 さらなる追撃をかけるべく、《バンプレイオス》と《エグゼクスバイン・メヴィウス》が《ヴァイクラン》に肉薄する。

 《バンプレイオス》が右腕を、《エグゼクスバイン・メヴィウス》が左腕を引き絞り、その拳に強大な念を集中させていく。

 

「天上ォッ!」

『天下ァッ!』

 

「『超級念動拳ッッ!!!」』

 

 ズフィルード・クリスタルの防御力、再生力すら突破して正義の鉄拳が炸裂する。

 二つの拳が同時に《ヴァイクラン》の胴体に突き刺さり、溜めに溜め込んだ強念を流し込む。サイコドライバー二人分の莫大な念に耐えきれず、装甲には漏れ出した光とともに蜘蛛の巣状の亀裂が刻まれていく。

 

『ば、馬鹿なァ!? この、俺がっ……、選ばれしサイコドライバーたる、この俺がぁぁぁぁあああああ!?!?』

 

「ハッ、貴様など十把一絡げの念動力者(ぼんじん)に過ぎん。力に溺れ、道を踏み外した己の不徳を呪え」

「身の程を知っていたユーゼスの方がまだマシだったな。あばよ、ハザル。因果地平で奴が待ってるぜ」

『弄んだ全ての命に、あの世で詫びるんだ、ハザル!』

 

「『「念動爆砕ッ!!」』」

 

 イング、リュウセイ、アーマラの掛け声を引き金に《ヴァイクラン》の内部から発生した巨大な念動爆発に巻き込まれ、ハザル・ゴッツォは因果地平の彼方へと消えていったのだった。

 

 




いろいろな意味でやり過ぎた感はあるが、後悔も反省もしていない(キリッ

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