スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIIIー5「終焉の銀河へ」

 

 

 新西暦一九〇年 ※月△日

 銀河系、とある宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 いつの間にか年が過ぎ、一九〇年になっていた。

 長かったこの大戦も、佳境を迎えつつあると言っていいだろう。

 

 さておき、近況だ。

 無事、みんなと合流することができた。現在は、合流した宙域で体勢を立て直しているところだ。

 

 《エグゼクスバイン・メヴィウス》大活躍! ハザルに引導を渡し、ゴラー・ゴレム隊はついに壊滅した。キャリコやスペクトラ、光龍、エイスという幹部格は取り逃がしたが、もはや地球圏で活動する余力はないだろう。

 そういえば、何気にバラン・ドバンとは初対面だったな。あ、戦闘後に潔く投降を申し出てきたのだ。トウマとの決闘で負けを認めたかららしい。

 奴は、主に《ジュデッカ》の所業に本国に対する不信感を覚えたのだとか。あと、エイスが残していったハザルと自身の正体、シヴァー・ゴッツォが生み出した「ハイブリッド・ヒューマン・タイプPD」についても思うところがあるようだ。あれ、オレには負け惜しみにしか聞こえなかったんだがなぁ。

 

 惜しむらくは、ソール11遊星主をこの手でブッ飛ばせなかったことか。

 パレッソ粒子だかなんだかしないが、オレがその場にいたなら問題なくブチのめせただろうに。ま、過ぎたことだな。

 

 さて、《ジェネシック・ガオガイガー》の自作プラモの設計図引くとするか!

 

 

   †  †  †

 

 

 《ラー・カイラム》、格納庫。

 地球、いや全銀河の特記戦力をこれでもかとかき集め、十数隻からなる母艦で運用するαナンバーズ。

 その無茶苦茶な体制を維持する労力は並大抵のものではなく、整備の神様アストナージがいなければ十全に稼働させることは至難と言えるだろう。

 

 激戦に次ぐ激戦で傷ついた機体。

 喧噪から離れたキャットウォークに、クォヴレー・ゴードンとヴィレッタ・バティムがいた。

 共通する因縁の相手、イングラム・プリスケンの魂の行方――、そしてお互いの存在意義を確かめ合った二人の見上げた先には漆黒の銃神《ディス・アストラナガン》。また、その隣には鋼の救世主《エグゼクスバイン・メヴィウス》が静かに佇んでいる。

 

「よお、クォヴレー」

「イングか」

 

 クォヴレーは呼びかけられた方に視線を向ける。

 イング・ウィンチェスターとアーマラ・バートン――αナンバーズの窮地を救った立役者、クォヴレーにとっては様々な意味で因縁浅からぬ者たちである。

 さとえき、クォヴレーのぶっきらぼうな返答に、イングは半眼を向けた。

 

「お前ってば、相変わらずだよな」

「ならば隊長と呼んだ方がいいか?」

 

 ふてぶてしい態度にイングは肩をすくめた。

 確かにイングはクォヴレーの監督役ということになっているが、隊長らしいことをした覚えはない。それに改まるでもなく口調も変えていないのでは皮肉にしかならないだろうが、クォヴレーの場合は本心から言っているから始末が悪い。

「この天然め」と小さくこぼし、イングは話題を本題に切り替える。

 

「オレはお前を探してたけど、こいつは大尉を探してたんだ。ほら、アーマラ」

「あ、ああ」

 

 イングの背中に隠れていたアーマラが、促されておずおずと進み出た。

「私に?」ヴィレッタが疑問符を浮かべる。

 

「その、大尉は私の素性をご存じで、いろいろと気にかけてくださっていたんでしょうか」

「そうね……あなたが私たちと同類で、保険として地球に送り込まれていたことはイングラムから知らされていた」

 

 「未来世界で、ガリルナガンに乗って現れたときは肝を冷やしたわ」とヴィレッタは述懐して苦笑を漏らす。

 《アストラナガン》のコピーである《ガリルナガン》と、それを駆るバルシェムという意味深な組み合わせに、事情を知るヴィレッタが深読みするのも無理はない。まかり間違ってユーゼス・ゴッツォが再来したとなれば、悪夢でしかないのだから。

 

「……ということは、大尉は私のお姉様になるのでしょうか?」

「! そ、そうね……あなたがそう呼びたいなら、構わないわ」

「はい、お姉様」

 

 アーマラが嬉しそうにはにかむと、ヴィレッタは頬をわずかに染める。クールビューティーの鏡のような美女が照れ入っている姿は、なかなかに破壊力があった。

 こっちも天然かよ。イングは苦笑をかみ殺し、自身の目的を切り出す。

 

「クォヴレー」

「なんだ?」

「お前……いや、()()()()()()だ?」

「!」

 

 イングの主語の欠けた問いはしかし、クォヴレーをわずかに動揺させた。

 脈絡のないやりとりを横で聞いていたアーマラが、眉をひそめる。ヴィレッタは心当たりがあるように、二人の会話を厳しい目で見つめている。

 

「……わからない。ただ気の遠くなるほどの輪廻の果てということしか、な」

「イングラムはそれを把握していたのか?」

「いや、思い出したのはつい今し方――俺とイングラムが統合され、アストラナガンが真に覚醒を果たしてからだ」

「なるほどね。だいたいわかった」

 

 などと脈絡のないリアクションをして悦に入るイングの脇を、難しい顔をした

アーマラが小突く。

 目を向ければ、眉間にしわを寄せ、わずかに膨れたようにする桃髪の少女。その態度がかわいく見えて、イングは軽く悶絶せる。

 

「イング、一人で納得してないで私にもわかるように話せ」

「ンッ、そうだな、すまん」

 

 咳払いし、イングは真面目くさって説明を始めた。

 

「掻い摘んで説明するとだな、この宇宙は滅びと再生を繰り返しているんだ。配役を変え、細部や結末を変え、ときには大きく舞台を変えて――延々と永遠に」

「それはやはり無限力によるものなのか?」

「いや、奴ら(イデ)もその輪廻の一部さ。卵が先か、鶏が先かはわからんけど

「そしてその輪廻の輪にイングラムとクォヴレーは――、いえ、私たちは皆組み込まれているということね」

 

 イングの解説を受け、ヴィレッタが纏める。

 

「そうだ。イングラムはユーゼス・ゴッツォのクローンとして生まれ、世界を渡りアストラナガンを建造し、大いなる負の力に敗れて死ぬ。その魂がアイン・バルシェムに宿り、クォヴレー・ゴードンという存在が生まれ、大いなる負の力を打倒し、果てない旅に出る……因果律の番人たるアストラナガンはそれら全てを記憶している。――いつか来たる俺の滅びすらも、な」

 

 やや冷笑を浮かべて自身に待ち受ける定めを語るクォヴレーの姿に、イングはイングラムの姿を幻視した。

 気になる単語を聴きつけ、アーマラが再度問う。

 

「その、大いなる負の力とはなんだ?」

「アストラナガンとイングラムが教えてくれた……。奴の名は霊帝ケイサル・エフェス、バルマーの支配者、創造神ズフィルードと呼ばれるファースト・サイコドライバーの一人。そして今や怨霊を統べる反無限力の権化となった存在……イング、お前はよく知ってはずだな」

「ゲベル・ガンエデン――、ナシム、バベルとかつての破綻を乗り切り、今の世界の礎を築いた者の成れの果て。やっぱり、あのときアストラナガンを乗っ取っていたのはゲベルなんだな?」

「そうだ。もっとも、完全な状態ではなかったようだがな」

 

 であれば、この宇宙はあの時点で滅びていただろう。クォヴレーがさらりと恐ろしいことを告げ、他の三人の表情を曇らせる。

 ディス・レヴと霊帝の組み合わせはまさに致命的だ。クォヴレーの記憶には、ケイサル・エフェスが銃神の心臓を強く求めていた様が残っていた。

 

「ケイサル・エフェス……それが私たちが倒すべき奴の名か、クォヴレー」

「そうなる。だが、この記憶は奴を打倒した後、俺が因果律の番人となって初めて解放されるはずだった。それが何故、今なのか……」

「それなら心当たりがあるぜ」

 

 クォヴレーのこぼした疑問に答えたのはイング立った。

 

「クォヴレー、お前の話でようやく合点が行った。ゲベル、いやケイサル・エフェスは幾度となく死と再生を繰り返す宇宙の輪廻を利用して、因子を集めていたんだろう。アポカリュプシスの果て、自身が無限力を乗り越えた戦士たちに打倒される――その大きな流れすらも計画に組み込んで、負の無限力を高めるために」

 

 ズールやムゲなど、強大な負の力の使徒により広げられた銀河を覆う大戦において、数多の命が散っていった。その多くが怨霊となり、反無限力を肥大化させているのだ。

 すでに手段と目的をはき違え、本末転倒に陥っていることも思い当たらず――もはやゲベル・ガンエデンという人格はないに等しく、ただ邪気と怨念の集合体と成り果てているのだ。

 

「そうして集められた因子が今のαナンバーズであり、ズールやムゲ、その他の宇宙的災厄ということね」

「高蓋然性世界の勢力や、バーチャロンたちもその一部か?」

「ああ。そうして奴は無限力(イデ)から運命を簒奪する準備を完了したんだろうな。まあ、無節操に集めすぎてXANだの冥王だの飛影だのハート・オブ・ディーヴァだのゼフォンだのとイレギュラーまで続々招いてるけど。そして極めつけのイレギュラーがこのオレ、バビル二世だ」

 

 ヴィレッタ、アーマラの言葉を肯定し、イングは不敵に宣言してみせる。

 

「先代バビルはゲベルの所業をどこかの輪廻(ループ)で知ったんだろう。ゲベルの行動を逆手に取り、この世に招いた自分の代行者をカウンターとする――、オレが喚び込まれるくらいに、この宇宙は切羽詰まったところまで来ていたんだな」

 

 やれやれと肩をすくめるイング。あるいは、《ディス・アストラナガン》を奪われた時点でこの銀河の命運は決していたかもしれない。

 全ての命が死に絶え、怨霊が支配するようになった世界は文字通り地獄。生と死を反転させるという霊帝の目論見は、是が非でも防がなければならない――それが数奇な運命に導かれ、この宇宙に集ったαナンバーズの使命だったのだ。

 

「今のケイサル・エフェスは、かつて“俺”が対峙した時よりもずっと強大で恐ろしい存在になっているだろう。……こちらの戦力も増強してはいるが、果たして打ち倒すことができるのか――」

「ま、オレがいるんだから楽勝だろ?」

 

 クォヴレーが険しい表情で懸念を口にすると、イングは間髪入れず楽天的な意見を述べる。

 まるで気負いのない態度に、自分たちの未来を信じ切った目。地球圏最強の汎超能力者らしい振る舞いに、因果律の番人は思わず笑みをこぼした。

 

「そうだな、お前はそういう奴だった」

「この馬鹿には無用の心配だったな、クォヴレー」

「イング、あなたはもう少し謙虚さを身につけた方がいいわね」

 

「……なんか、ひどい言われようなんだけど?」

 

 そうぼやき、がくりと肩を落とすイングに三人は笑みを交わすのだった。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八九年 ※月□日

 外宇宙、とある宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 大方の修理を終えて、どうにかこうにか一息つけたところだ。

 GGGのディビジョン艦隊の超科学の賜物である。あと、メキボスの手配したゾヴォークの輸送艦隊が補給物資を運んできてくれたことも大きいな。

 

 さて、何とか体裁を整えた俺たちαナンバーズ。次の目標を決めるために《シティ7》の会議所で各団体の代表が集まった。え、オレ?もちろん召集されましたが何か?

 まずは地球圏のゴタゴタを収拾すべきという意見もあったが、囚われたミンメイたちや剛博士らの身を案じる声もある。

 位置的な効率や火急性を考え、まずはバロータ軍とキャンベル・ボアザン連合軍をおとなしくさせることになった。ついでに、バンカーやギャンドラーと決着をつけられれば最高なんだが。

 というわけで、大河長官らαナンバーズ首脳陣がチームを編成中だ。これに関してはオレはノータッチ、使われる方だからな。

 

 さて昨日、書き忘れたことを端折りつつつらつらと残してみる。

 オレが戦線離脱していた間にもいろいろイベントごとがあったようで。

 地球では《ブレード》、《エビル》のブラスター化イベントが起きたようだし、連邦軍強硬派から逃れるためにクロスゲートで外宇宙に旅立ったあとも苦難続きだった。

 

 バッフ・クランの大艦隊に強襲され、散り散りになったαナンバーズ。

 ガルラ大帝国の艦隊というかシンクラインに付け狙われたり、覚醒した《イデオン》が恒星を両断したり、キャンベル・ボアザン連合に人質を取られたハイネルが敵対しされたり。ストールさんちの長兄、ガディ・ストールが刺客として現れたり、封印戦争で倒したはずのガイゾックが再び(三度?)現れたり。

 紆余曲折ありつつも何とか集結し、宇宙収縮現象の原因、獅子座に位置するかつての三重連太陽系、ソール11遊星主の本拠地へとたどり着く。

 

 激闘の末、緑の星の遺産、真なる勇者王《ジェネシック・ガオガイガー》によって光となるが、同時に奴らが作っていたレプリ宇宙も安定を失って崩壊、αナンバーズは暗黒のES空間に取り残されてしまった。

 進退窮まったみんなは原作通り、護と戒道少年をESウィンドウで送り出した。ちなみにこの人選は別に年少だからとかではなく、サバイバリティの問題だ。実際、閉ざされたES空間を特定できたのは送り出された二人が発していた念波をキャッチ出来たからだしな。

 あとは《グレートゼオライマー》と《ネオ・グランゾン》がパパっと片づけてくれました、とさ。

 ていうか、次元斬なしでもあの二機だけで何とかできたような気がするのは気のせいじゃないだろう。

 

 なお、凱さんがケミカルボルトで洗脳されたとき、ロム兄さんがいつもの口上(「勇気」だったらしい)で颯爽と現れたとのこと。また聞き逃したぞ、チクショウ!

 

 

 

 新西暦一九〇年 ※月●日

 銀河系、バロータ星系付近 《ラー・カイラム》の一室

 

 というわけで、やってきましたバロータ星系。今回、オレとアーマラはこちらに配属されている。まあ、オカルトじみてて厄介なプロトデビルンが相手なんだから妥当な人選だな。

 他のメンバー? 今回は人数が多いから省略で。

 さらわれたミンメイや他の人たちが心配だし、何より宇宙の状勢は切羽詰まってる。

 サクッと片付けて次に行こう。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ※月△日

 銀河系、バロータ星系付近 《ラー・カイラム》の一室

 

 プロトデビルンの首魁、ゲペルニッチとの和解に成功。ミンメイや早瀬少佐ら、囚われていた人々は無事に解放された。

 え?展開が速すぎ?いやいや、いろいろあったんだって。

 

 バサラの銀河を震わす魂の歌声は、プロトデビルンたちを進化させ、自らスピリチュアを生み出せるようになったらしい。さすがアニマスピリチュア、何でもありだな。オレが言えた事じゃないけど。

 進化したゲペルニッチは迫るアポカリュプシスを乗り越えるために協力を約束してくれ、自分の名代としてガビルを残していった。シビルはあれだ、自由意志って奴だ。

 久々の生「愛・覚えていますか」に張り切ったのは秘密。ボドルザー艦隊との決戦を思い出したぜ。

 

 追記。

 やっぱジーナス夫妻はジーナス夫妻だった。天才ヤベェ。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ※月△日

 銀河系、某宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 ボアザン星系に向かったチームと合流した。

 圧制と腐敗を招いていたボアザン帝国皇帝ズ・ザンジバル、そして平和勢力のクーデターによりキャンベル星から放逐された女帝ジャネラは倒れた。ボアザン、キャンベル両星は平和を取り戻したのだ。

 また、囚われていた剛博士、エリカを救出することには成功したが、ハイネル、リヒテルの両名がその命を散らすこととなった。彼らの肉親たちだけでなく、向こうで合流したマーグも盟友たちの死を大変悲しんでいた。

 それを聞き、あっちについて行けばよかったと凹んでいたら、アーマラに叱咤された。

「過ぎたことをクヨクヨ悩むな、顔を上げて前を向け。皆が最善を尽くした結果なんだ、受け入れろ」だってさ。

 ったく、あいつに諭されるなんてオレもヤキが回ったかな。

 だが、目が覚めたぜ。バビル二世がこんなところで立ち止まってるわけにはいかないもんな。

 

 で、気持ちを新たにしたところで、また一つ敵対勢力を壊滅させた。

 度重なる敗北を自身の身をもって濯ぐべく決戦を挑んできたガルラ大帝国の首魁、ダイ・バザール大帝王、それからついでにシンクラインの野郎に引導を渡してやった。これで奴らに虐げられていた人々も浮かばれるだろう。

 ギブアップ? するわけねーだろ。今のオレたちは絶対無敵だぜ!

 

 

 

 新西暦一九〇年 ※月△日

 太陽系、木星圏 《ラー・カイラム》の一室

 

 太陽系に帰ってきて早々、大事件に遭遇してしまった。

 ちなみに、連邦を刺激しないようにだいぶ離れた場所にクロスゲートを開いたわけだが、それが功を奏したかな。

 

 宇宙怪獣殲滅作戦「カルネアデス計画」の要、コードネーム「BMIII」へとするため移送中の木星に、ザフトの遠征艦隊が接近しているとの一報を受け、オレたちは急行した。

 旧式のマシーン兵器、ではなく《シズラー白》で孤軍奮闘していたお姉様ことカズミさんと合流、真価を発揮した《ガンバスター》の《スーパー稲妻キック》が放たれる。

 早々にザフト(性懲りもなく《リジェネイト》がいたので、ぶっ飛ばしておいた)を撃退したところにギャンドラー、宇宙海賊バンカー、ガイゾックが大挙をなして来襲し、オレたちは迎撃を余儀なくされた。

 「BMIII」が自分たちを攻撃するものだと勘違いしているらしいザフトはともかく、ギャンドラーの狙いは木星に眠るザ・パワー、奴らの言うところの“ハイリビード”だ。

 

 先触れとして現れた《バンドック》、コンピュータードール8号と決着をつけ、バンカー旗艦に殴り込む。

 バンカーの大船長、ガリモスと復讐鬼ギル・バーグ。そしてギャンドラーの首領、ガデス。強敵揃いで補給もままならないボスラッシュだったが、《ダンガイオー》の《ファイナルサイキックウェイブ》、《バイカンフー》の《運命両断剣・ツインブレード》が炸裂、何とか撃破することに成功した。

 

 しかしガデスめ、紛いなりにも反無限力を操るだけになかなか物知りだったな。

 死と再生の輪廻を関知しているばかりか、オレを「太極に至りしもの」と呼んで警戒するとは小賢しいぜ。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月◎日

 地球圏、アステロイドベルト周辺宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 現在、木星輸送艦隊の護衛をしつつ、地球圏に帰還中だ。

 

 偵察に出ていた《エターナル》、《アークエンジェル》が未確認の使徒と遭遇した。《第一六使徒アルサミエル》だ。

 同化能力を持つ厄介な使徒で、取り付かれた《零号機》の自爆によりなんとか撃破されている。

 辛うじて一命は取り留めたレイは、治療のために大破した《零号機》ともども一足先に地球圏へと輸送されている。ゼーレと碇ゲンドウの思惑なんてハナから読めてるが、あえて今回は乗ってやった。因果の消化は大事だ。まあ、あの逞しいシンジが壊れるなんて予想できないんだけどな。

 リツコさんが滅茶苦茶心配してたのは余談。BMIII建造に協力するからついてけないのだ。

 

 で、《アークエンジェル》隊はその後に連邦軍の艦隊と交戦。独断専行したらしく、独自に部隊を引き連れてきたカナードをキラとプレアが応戦して撃退している。

 ちなみに、《クラップ》級や《サラミス》級、《アガメムノン》級などの一般的な宇宙戦艦でも専用の大型フォールドブースターさえあればここらまで来るのは比較的簡単だ。でなきゃ、アステロイドベルトに基地なんて作れないしな。

 

 なお、《ドレッドノート》が新たに新造されたドラグーンユニットを装着して、《Xアストレイ》に。《ブルーフレーム》には《ローエングリンランチャー》が追加され、《レッドフレーム》がパワーシリンダー内蔵の《戦国アストレイガンダム》にそれぞれパワーアップしている。

 ついにやりやがったぜ、ロウ。ちなみに“頑駄無”ではない。あしからず。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月□日

 地球圏、アステロイドベルト宙域イカロス基地 《ラー・カイラム》の一室

 

 ようやっとイカロス基地に到着した。

 一応、退去処置を受けているのでこちらに留まっているが、ガン無視して地球に乗り込む所存である。

 

 さて、今後の方針だ。

 そろそろ連邦軍強硬派がプラントへの攻撃を始めそうな気配があるし、ラダム母艦をいつまでも月に放置しているわけにはいかない。

 また、地上でも竜魔帝王により纏められた地底帝国が最終決戦をもくろみ、決起したらしい。ついでに、竜魔帝王と形だけの同盟を組む次大帝プロイストも姿を現して暴れているようだ。

 さらに、ハザードの手引きでザ・ブーム艦隊に制圧された火星に向けて、ポセイダル軍の大部隊が接近しているとの情報もある。どうやらアポカリュプシスにより母星が壊滅し、進退窮まって地球圏に侵攻してきた模様だ。

 地球圏の命運はマッハでデッドエンドへひた走っているってわけだ。

 

 というわけで、αナンバーズは六つにチームを分けて対抗することになった。

 なお、「誰がどこに行ったかわからない」というお便りがあったし、おそらくこれがボスラッシュの最後なので今回は説明しようと思う。ヌケがあったらゴメンな。

 

 まず、連邦軍及びザフトの決戦に武力介入するチームだ。

 《ラー・カイラム》を旗艦に、《アークエンジェル》、《エターナル》、《クサナギ》、《ローラ・ラン号》、《ソレイユ》、《リ・ホーム》の総勢七隻。

 人員はアムロ大尉を筆頭に、新旧の垣根を越えたガンダムオールスターチーム(一部例外アリ)だ。

 クォヴレー、アラド、ゼオラとリョウト、リオがここに参加する。

 

 続いて、ザ・ブーム艦隊を主体とした星間連合残党、そしてポセイダル軍に制圧された火星を解放する部隊。

 《ナデシコC》を旗艦に、《ナデシコ・Yユニット》、《エルシャンク》、《ゴラオン》の四隻。

 それぞれの母艦の所属機に、ダバたち《エルガイム》チーム、エイジら《レイズナー》チーム、ゲイナーらエクソダス組、バーチャロンチーム。《コンバトラーV》、《ボルテスV》、《ダイモス》、《ダイターン3》と特機も揃っている。

 ほかには、マサキら魔装機神組、イルム中尉とマオ社長、メキボス、ガヤト。まさに“火星決戦”だな。

 

 月、ラダム母艦を撃滅する部隊。イバリューダーの介入も予想される。

 旗艦に《ドラゴンズ・ハイヴ》、《キング・ビアル》にGGGのディビジョン艦隊が同行する。

 戦力は、因縁深いDボゥイらスペースナイツを筆頭に、GGG戦闘部隊と《ジェイアーク》、《ドラグナー》チーム、オルファン組、《オーガン》、イクサー1たち三姉妹、チームD、ロム一行、《ゴライオン》チーム、《ザンボット3》、《トライダーG7》。地上から連邦軍の有志も後に合流するそうだ。

 あと、セレーナとチームTDが同行する。アストロノーツ、スペースマン繋がりということにしておこう。

 

 地球圏に接近するゼラバイアの本拠地、ゴーマを木星圏付近で迎撃する部隊。

 《マクロス7》を旗艦に、《ソロシップ》、そしてサンジェルマン城の真の姿《グラヴィゴラス》及び、GEAR本部から《メテオ》が現地で合流する予定だ。

 メンバーは、サンドマンとグランナイツ、《グラントルーパー》隊、フォッカー少佐率いる《バルキリー》部隊とサウンドフォース、シビルとガビル、トップ部隊、《イデオン》、《電童》チーム、《グレートゼオライマー》、《ダンガイオーチーム》だ。

 トウマとミナキさん、アルマナ一行、ゼンガー少佐、レーツェルさんはここだ。バリメカ縛りである。

 敵は強大だが、こっちもバカげた戦力だから心配ないだろう。

 

 《大空魔竜(LOD)》、《天空魔竜》、《月光号》を母艦に、地上でようやく現れた《大地魔竜》、《トゥアハー・デ・ダナン》と合流する。ヴェスターヌを通じて連絡を取ってきたダリウス大帝(もちろん封印戦争で倒した奴とは別人?だ)との接触が目的だ。おそらくプロイストとの決戦も行われるだろう。

 ついに揃った三大魔人を筆頭に、《EVA》チーム、宗介たちミスリル組、ゲッコーステイトの面々と《アイアンギアー》隊、《ダルタニアス》、ミト王子一行、三つのJ9チーム、旧JUDA及び加藤機関メンバー、《プロト・ガーランド》らが戦力だ。

 他には、クスハとブリット、《SRX》チームが参加する。《ザ・グレート》登場には期待大だが、悲劇が待っていることも予想される。孔明にひとつ言付けしとくか。

 

 ラスト、地底帝国との最終決戦。

 《大空魔竜》、《グラン・ガラン》が母艦である。

 主なメンバーは《マジンガー》チーム、《ゲッター》チーム、《鋼鉄ジーグ》、《ガイキング》とその僚機、大作と銀麗さん、獣戦機隊、《ライディーン》、《ラーゼフォン》、タケルと《コスモクラッシャー》隊。文章に起こすと少なく見えるが、チームごとの戦力は十分と言えるだろう。

 そして、オレたちサイコドライバーズが参加する。流れ的にはクスハが担当すべきところなんだろうけど、イルイが捕らわれているらしいとあっちゃ黙ってられない。兄貴だからな、オレは。

 

 待ってろ、イデ。ちゃっちゃと厄介ごとを片づけて、次はお前らとの決着だ。

 

 

   †  †  †

 

 

 ゼ・バルマリィ帝国による地球侵略を契機に、長きに渡って続いた大戦はついに佳境を迎えていた。

 銀河大戦――この戦争は後の世に、そう称されることとなるだろう。

 

 

 太陽系第四惑星、火星。

 赤き軍神の星は、ハザード・パシャが実権を握ったザ・ブーム艦隊と、宇宙怪獣の襲撃を受けて母星が壊滅したポセイダル軍により制圧されていた。

 《サイバスター》、《グルンガスト改》を筆頭とするαナンバーズ分艦隊がその解放を目指す。

 ついに《飛影》に操者として選ばれたジョウ・マヤと、己の使命に目覚めたイルボラ・サロの《零影》が先陣を切る。対するは真のオルドナ・ポセイダル、アマンダラが駆る黄金のHM《オージ》。「バイオリレーションシステム」による不死身じみた性能を発揮し、立ちふさがる。

 

 

 コーディネーターたちの住まうスペース・コロニー、「プラント」。

 歪んだ選民思想を振るう連邦軍強硬派とザフトの激突とそれに伴う破滅を回避するため、αナンバーズ《ラー・カイラム》艦隊が両者の間に割って入る。

 最新技術により新たに生み出された《HiーνガンダムHWS》を駆るアムロ・レイと、彼率いるガンダムチーム。地球人類に、これ以上の愚行を繰り返させるわけにはいかない。黒き銃神と比翼の鳥たち、そして凶鳥の名を継ぐ者がそれに続く。

 人の革新を信じる者たちが、プラントに迫る悪意の群――「フェルミオンミサイル」を食い止めるため、戦乱の宇宙(ソラ)を駆け抜けた。

 

 

 月、ラダム母艦。

 双子の弟、シンヤこと《テッカマンエビル》との決着をつけた相羽タカヤ――Dボゥイこと《テッカマンブレード》はラダムの首領、《テッカマンオメガ》と化した自身の兄を討つべく命の炎を燃やす。正気を取り戻した弟の後押しを受け、《ブレード》は行く。

 々夢を追うものとしてアイビスたちの《ハイペリオン》がそれを助け、そして《ASアレグリアス》が《テッカマン》すら置き去りにするスピードで障害を撃滅していった。

 多くの仲間を得て、愛する者たちに支えられ、孤独な復讐者は真の英雄(ヒーロー)になる。

 

 

 ゼラバイアの拠点にして本拠地たる戦闘惑星「ゴーマ」が地球に迫る。

 おぞましい数の兵器を《イデオン》と《グレートゼオライマー》の一撃が壊滅し、開かれた活路。 《アウセンザイター》とともに駆け抜ける《ダイゼンガー》が切り開き、無限の闘志を力に変え、《大雷鳳》の蹴りが外道を砕く。

 地球を、生きとし生けるもの全てを殲滅せんとするジェノサイド・マシンを迎え撃つは重力子の勇者、グランナイツ。紅き牙、《ソルグラヴィオン》が青い炎を纏う《ゼラヴィオン》と激突した。

 

 

 地球、南極圏。

 かつてセカンド・インパクトという未曾有の災害を引き起こしたその地で、無限力により招かれた高蓋然性世界からの来訪者、ダリウス帝国との最終決戦。

 邪炎の魔竜《魔炎超魔竜ファイナルドヴォルザーク》により焼き尽くされた酷寒の大地。次大帝プロイストの歪んだ傲慢を、平和な未来に続く王道を行く若者たちが弾劾する。

 サイコドライバーたちの強念が悪意を駆逐する中、《大空魔竜》、《大地魔竜》、《天空魔竜》――勢揃いした炎の三大魔人がその力を結集し、最強無敵の魔人《ガイキング・ザ・グレート》が地上に再臨した。

 

 

 

 そして――

 

 

 極東地区日本。

 バルマー戦役前後から続く戦乱の中心とも呼べる地球の特異点においてもまた、一つのピリオドが打たれようとしていた。

 

 恐竜帝国、妖魔帝国、ミケーネ、邪魔大王国――地上侵略をもくろみ、スーパーロボット軍団によって壊滅された。

 激戦の末、地底帝国の首領、竜魔帝王に深手を負わせたαナンバーズの前に、地獄大元帥、いやDr.ヘルの“切り札”

が姿を現した。

 

「あれは、カイザー!?」

「フハハハハハッ! 見よ、兜甲児! これこそワシの最後にして最高傑作ッ、デビルマジンガーだ!」

 

 《デビルマジンガー》――《マジンカイザー》に酷似した最凶最悪の魔神。

 地下勢力の技術によって改良を施した《量産型グレート》をベースに、《量産型ドラゴン》由来のゲッター線を過剰に浴びせて異常進化させた邪悪なる存在だ。

 

「兜甲児! 貴様の祖父、兜十蔵から続く因縁をここでワシが断ち切ってやろう!」

 

 Dr.ヘルの頭脳が移植された《デビルマジンガー》は瀕死の竜魔帝王にトドメを刺し、そのマイナスエネルギーを吸収して恐るべきパワーを発揮する。

 《量産型グレート》《量産型ドラゴン》《メカギルギルガン》《ドラゴノサウルス》の大群を率い、甲児、ひいては兜一族との最終決戦を挑む。

 

 《デビルマジンガー》とその軍勢の前に力尽きていくスーパーロボット軍団。スクランダーを破壊され、翼をもがれた《マジンカイザー》が地に堕ちる。

 兜甲児、絶体絶命の大ピンチに父、剣蔵は科学要塞研究所の司令塔を分離させ、《デビルマジンガー》に特攻をかける。

 それによって生じた僅かな隙。

 ――そのとき、科学要塞研究所から新たな紅き翼が発進した。 

 

「おじいさんの残してくれたカイザーと! おとうさんの作ってくれたこのスクランダーで……Dr.ヘル、てめぇに引導を渡してやらぁ!!」

 

 父、剣造博士の遺した新型カイザースクランダー「ゴッドスクランダー」と合体した《カイザー》は、「神モード」を発動する。

 ――《ゴッドマジンガー》、悪の魔神を打倒するために生まれた最強最後の正義の魔神。究極のマジンガーの誕生だ。

 

「おい、リョウ! コイツは……!」

「ゲッターが、カイザーに反応している!?」

 

 さらに、《カイザー》のパワーアップに呼応したかのように《真・ゲッター》の全身が蒼く輝く。

 発動した新たな力――《ファイナルカイザーブレード》と《ゲッターファイナルクラッシュ》が《デビルマジンガー》に炸裂するが、撃破までには至らない。

 いや、むしろDr.ヘルの執念を体現するかのようにその力は増大していた。

 《デビルマジンガー》はディス・レヴ同様負の想念、死霊の怨念を吸収し、力に変える。そして、無限力の負の一面にすら干渉する能力を持っていたのだ。

 

「クソッ! これでもまだ倒せないってのか!」

「諦めるにはまだ早いぜ、甲児!」

「あのマジンガーがマイナスエネルギーを取り込むというなら、同量のプラスエネルギーをぶつけてやればいい」

「そういうこった! 行くぜ、TーLINKコンタクトッ! アカシックレコードアクセスッ!!」

 

 イングとアーマラの思念が高まり、《エグゼクスバイン・メヴィウス》のオウル・レヴが輝き唸る。

 アカシックレコードにアクセスし、喚起した無限力を《デビルマジンガー》のマイナスエネルギーにぶつけて相殺、バビル二世の強念が活路を切り開く。

 

「やるぞ、甲児君!」

「宇宙の平和のために、僕も力を貸そう!」

「所長の敵は討たせてもらうぞ!」

「テメェら悪党との腐れ縁ともこれまでだ!」

「Dr.ヘル! 俺たちの、この一撃を受けてみやがれ!」

 

 竜馬、デュークフリード、鉄也、宙、そして甲児が決意を。

 《反重力ストーム》による拘束から、《ファイヤーブラスター》と《ブレストバーン》/《ダブルバーニングファイヤー》、《スピンストーム》、《ストナーサンシャイン》が次々と浴びせられる。

 力の源たる負の無限力を封じられた《デビルマジンガー》が苦しみうめく。

 さらに――

 

「マジンガーと……」

「ゲッターの恐ろしさを、教えてやる!!」

 

 光子力エネルギーを全開にし、紅き灼熱の光を纏う《マジンカイザー》と、ゲッター線のまばゆい輝きを放つ《真・ゲッターロボ》が背中合わせで同時に飛び立つ。

 物理現象を超越した軌道で、究極のスーパーロボットが悪魔の魔神に肉薄した。

 

「コイツで決まりだ!」

「真ッ!! ファイナルダイナミックスペシャルッッ!!!」

 

 《カイザーノヴァ》と《真シャインスパーク》の同時攻撃。愛と平和の矢となって悪魔を討つ。

 《マジンカイザー》、《真・ゲッターロボ》、《グレートマジンガー》、《グレンダイザー》、《鋼鉄ジーグ》による夢の競演《真・ファイナルダイナミックスペシャル》が、Dr.ヘルの執念ごと悪の魔神を葬り去ったのだった。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月◎日

 地球、極東地区日本 《グラン・ガラン》の一室

 

 長かった地下勢力との戦いもこれで終わりだ。

 Dr.ヘルの遺した言葉によれば、囚われていたイルイはシャピロによって連れ浚われた後らしい。場所はアステロイド・ベルト、入れ違いか。

 「異星人に地球人の祖先が造り上げたシステム……、ガンエデンを渡すのも腹立たしい……。貴様らにはムゲ・ゾルバドス帝国の秘密基地の場所を教えてやる」「勘違いするな……ワシはただこの星を愛し、他の誰にも 渡したくないだけだ」「奴らはアステロイドベルトのポイント1204にいる……」。奴の今わの際の台詞だ。

 手段は致命的に間違ってたが、奴も地球を愛していたのは間違いがいないだろう。

 

 他のチームも順当に勝ち抜いている。

 プロイスト、ポセイダルは倒れ、両軍は瓦解。ダリウス軍は仕込み(プロイストの悪足掻きに警戒するよう言っただけだが)が功を奏して命を拾ったダリウス大帝に大人しく従っているし、難民と化したポセイダル軍残党の方もメキボスが上手く纏めてくれている。

 また、ゴーマは最凶最後の超重神《アルティメットグラヴィオン》により破壊され、ヒューギ・ゼラバイアの憎しみは宇宙に消えた。

 

 地球圏の他のチームも勝利を収め、プラントは降伏、ラダムは完全に壊滅した。なお、強硬派の三輪や真空管ハゲはプラントの決戦兵器「ジェネシス」第一射で《ドミニオン》諸共戦死したらしい。ざまぁ。

 しかし、ジェネシスの自爆と暴発に巻き込まれた《フリーダム》、それが照射されたラダム母艦内で《テッカマンオメガ》と戦っていた《ブレード》が消息を絶っているのが気がかりだ。

 とはいえ、孔明からの未確認情報だが、カナードとミユキが二人を救出しているとの報告もある。オレの知識的にも十分あり得る話だし、キラとDボゥイについては心配ないだろう。

 

 さて、一刻もイルイを早く助けに行きたいところだが、主要勢力の壊滅を受けて動き出した連中がいる。それを見過ごすわけには行かないよな。

 

 統一意志セントラルには、オレたち極東地区組と南極組が合流して対抗。ラダムが壊滅したことを受けて行動を開始したイバリューダーの本拠地、「戦闘惑星ゾーマ」に向かうのはプラント組と月面組。混沌とする銀河中央部から遙々やってきたガルファ本星には、火星組と木星組がそれぞれ当たる。

 ちょうど因縁深い面々が揃ってるのは天の配剤って奴かもな。

 

 さーて、今度もサクサク片付けていくぞ。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月■日

 太陽系、アステロイド・ベルト クロスゲート周辺宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 宣言通り、サクサク片づてやったぜ。

 《ネイキッド》とセントラルの破壊により発生した次元の歪みだが、マキナの力を結集した《ラインバレル modeーC》の《ファイナルフェイズ》により終息。《ラインバレル》と浩一も無事帰還している。

 なお、因果率的に欠けている《零号機》の代わりはオレたちの《エグゼクスバイン・メヴィウス》が務めた。ATフィールドと念動フィールドは原理的に同じものだし、お誂え向きだろ?

 

 そういや戦闘中に、戦争狂が単身乱入してきたな。失敗続きでついにゼーレからも見限られたらしいが。

 宗介が珍しく熱くなって相手をしていた。まあ、因縁にケリをつけられたんだから万々歳ってことにしとくか。

 

 ガルファ皇帝及びゼロは、フェニックスエールを得た《電童》と《凰牙》により撃破。《アカツキの大太刀》は生で見てみたかった。

 また、地球に向けて放たれようとしていたゾーマの反物質砲を防ぐため、《ゴルディオンクラッシャー》の光を受けた《オーガン》決死の《グランドクルスアタック》、そして予想通り復帰した《ブレード》の《ブラスターボルテッカ》が放たれ、ゾーマ諸共破壊されている。

 

 解放されたガルファ本星、いやアルクトスの数少ないの住民たちについてはアルテアに任せておけばいい。王子だしな。事態が落ち着けば、然るべきところに星ごと移民することになるだろう。

 生き残ったイバリューダーは彼らの指導者、ミークが纏めている。強力な予知能力を持つミークはアポカリュプシスによる終焉、そしてその先に待ち受ける存在を関知しているようで協力を約束してくれた。地球への侵攻も、それが原因の一つだったらしいな。

 

 なお、イバリューダーたちは地球圏から旅立ったが、アルクトスは安全保証上その他の理由で木星圏辺りに留まっている。

 あそこなら、タシロ提督率いる地球連邦最精鋭の宇宙艦隊の目と鼻の先だし、いろいろ安心だ。

 

 合流したオレたちは、一部の艦艇(シティ7、メテオ、ディビジョン艦隊などの非戦闘艦)を残しつつ、これからシャピロが待ち受けるアステロイドベルトの秘密基地へと向かう。

 待ってろよ、イルイ!すぐに助けてやるからな!

 

 

 追記。

 流れで仲間に加わったカナード・パルス君。キラの兄貴的な存在の彼だが、搭乗機もそれらしいもので。前の戦闘で《ハイペリオン》が壊れたらしく、連邦の月基地から奪ってきた《ストライクノワール》(《グランドスラム》所持)だったのだ。現在ロウ他の手で、光波防御帯発生装置を移植中。

 いや、確実に似合うし、核エンジン強奪イベントの一部再現だろうけどさぁ。またぞろ因果が流れ込んだか、それともジェネレーションシステムでもどっかにあんのか?

 

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月☆日

 太陽系、アステロイド・ベルト クロスゲート周辺宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 痛恨である。イルイをキャリコたちに横からかっさらわれた。

 アステロイドベルト基地でシャピロの《デザイア》を下しつつ(部下に裏切られた哀れな末路だった)、イルイを追ってムゲ帝国の本拠地である異次元へ。

 そして、ムゲ・ゾルバドスと性懲りもなく復活したズールを相手に大立ち回りを演じたわけだ。

 

 ギルドロームの専用機《ギルバウアー》の精神波攻撃で同士討ちさせられたのもやばかった(《ディストラ》とガチンコとかやめてよね)が、そのあとも苦労させられたな。

 奴ら、自分らのテリトリーだからってやりたい砲題しやがる。厄介な精神攻撃はもちろん、闇の皇帝や帝王ゴール、竜魔帝王、ダリウス大帝(封印戦争の方だ)、ネオスゴールド、ムーンWIIL、ガデス、ダリモスをあの世から呼び出しやがった。

 まあ連中、ますます神懸かってきた感のあるバサラとミクの歌に充てられてさんざんに弱ってたけどな。え?設定ミス? ナンノハナシデスカ?

 

 最終的にはズール皇帝を、マーグとロゼたちの“愛”で黄金に輝いた《ゴッドマーズ》の《スーパーファイナルゴッドマーズ》が。

 ムゲ・ゾルバドスを、《ダンガイオー》の《ファイナルサイキックウェイブ》から《アルティメットグラヴィオン》の《超重弾劾剣》、そして《ファイナルダンクーガ》と《ダンクーガノヴァ・マックスゴッド》による合体攻撃《断空双牙剣》が黄泉路へと帰した。

 また復活されてもあれなので、オウル・レヴをフルドライヴさせて無限力を生み出し、ムゲ空間にぶつけてやった。あそこに溢れていた悪霊どもは今頃因果地平の彼方だろう。南無南無。

 

 

 

 新西暦一八九年 ⊿月※日

 太陽系、アステロイド・ベルト クロスゲート周辺宙域 《ラー・カイラム》の一室

 

 緊急事態発生だ。ムゲ宇宙から帰還し、満を持してカルネアデス計画が発動するという最中、その間を縫ってゼーレが人類補完計画を発動させたのだ。

 復活使徒の《ゼルエル》の妨害を退けつつ、急行中。宇宙軍のミスマル提督によれば、地球全土を赤い光が覆い尽くし、十字架のような光の柱が無数に立ち上っているらしい。

 リアルタイムの映像を見たが、かなりグロかったぞ。

 

 

   †  †  †

 

 

 赤い生命のスープに満たされた旧ネルフ地下、セントラルドグマ。

 仲間の呼びかけにより、自我を取り戻したシンジの《初号機F型装備》――戦闘によるダメージを補助するためにリツコ以下が突貫で装備させた――、アスカの《弐号機》を筆頭に、《マジンカイザー》や《真・ゲッターロボ》、《HiーνガンダムHWS》、《ダイターン3》、《ジェネシックガオガイガー》、《ガイキング・ザ・グレート》、《グレートゼオライマー》、《ライディーン》、《ラーゼフォン》、《XANー斬ー》、《飛影》などの特記戦力。そして《エグゼクスバイン・メヴィウス》、《真・龍虎王》、《ディス・アストラナガン》、《大雷鳳》、《ASアレグリアス》――αナンバーズ最精鋭部隊が降り立つ。

 相対するのはレプリカ《初号機》と《量産型EVA》を引き連れた碇ゲンドウ。世界と人類の未来に絶望し、全てのリセットを願う男だ。

 

 セントラルドグマに対峙する両者。

 そのとき突如として開いた虚数空間、“ディラックの海”から黒いヒトガタが這い出した。

 

「黒いエヴァ……参号機?」

「あれって鈴原のエヴァじゃない。誰が乗ってるの? 今さらアイツなワケないし、まさかレイ?」

「いや待て、この念は――」

 

 突然現れた《参号機》。それはかつてシンジらの友人が使用していた機体だった。

 シンジとアスカが困惑する中、イングが見知った念を関知して声を上げる。

 

「やあ、久しぶりだねシンジ君」

「! か、カヲルくん!? カヲルくんなのっ!?」

 

 ウィンドウに映るアルピノの少年を見て、シンジは驚愕する。

 彼、渚カヲルはおきまりのアルカイックスマイルを浮かべた。

 

「うん、キミが知っている渚カヲルではないけれど、僕は確かに渚カヲルさ」

「……? えっと、カヲルくんも一緒に戦ってくれるってことでいいの?」

「ふふ、そういうことになるかな。今は戦えないリリス――、綾波レイの代わりだよ。それから、このエヴァの元のパイロットの彼に、シンジ君の助けになってくれと頼まれてもいるしね」

「そっか、トウジが……」

 

 離ればなれになった友人の思いに感銘を受け、シンジの目尻に僅かに涙が浮かぶ。《弐号機》がからかうように《初号機》の小脇を小突いた。

 

「それに、僕ら使徒もこの宇宙に生きようとする命、全ての終焉に抵抗するのは当然のことだよ。シトとヒトが共存できないなんて、ゼーレやアカシックレコード(運命)が勝手に決めつけた妄言さ」

「どこの世界線の話だよ、それ」

「案外、そんな宇宙はたくさんあるんじゃないかな。ヒトの数だけ、ヒトの想いの及ぶ限り宇宙は限りなくあるんだから」

 

 イングの茶々をものともしないカヲルは、意味ありげな笑みを潜める。

 なお、彼の発言にエウレカが激しく同意を示していたのは余談。

 

「太極に至る道筋を順調に歩んでいるようだね、おめでとうイング、いやバビル二世と呼ぶべきかな?」

「そりゃ嫌みか何かか、タブリス」

「まさか。新しい至高天の誕生を僕はもとより、世界もまた長らく待ちわびているんだ。遍く宇宙の平和と平穏のため、キミにはそれを支える一柱になってもらわないとね」

 

「いちいちややこしい言い回しする奴だな」カヲルの抽象的で詩的な表現に、イングは肩をすくめて苦笑を浮かべるのだった。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八九年 ⊿月△日

 地球、第三新東京市 《ラー・カイラム》の一室

 

 サードインパクトによる人類補完計画は防がれ、アンチATフィールドによりLCLと化していた人々も個を取り戻している。未だ混乱しているようだが、直にそれも終息するだろう。

 セントラルドグマでの碇ゲンドウとの決着戦において《EVA参号機》で参戦してきたタブリスこと渚カヲルだが、そのままαナンバーズに残って協力するようだ。曰く「監視者としてこの宇宙の因果律の乱れは余りに酷くて、看過できないんだよ」とのこと。ついに運営側からも出張ってきたか。

 あとは、補完に呼応して《ラーゼフォン》が神聖化しなかったのは残念であり安心だけど、ずっと影の薄かった久遠が対抗するように《ベルゼフォン》を呼び出して、そのまま戦闘メンバーに居座ってしまったのは想定外だ。

 お前ら隠しユニットかよ。フラグ立てた覚えねーぞ。

 

 しかし、ゼーレの、あるいはゲンドウの仕掛けていた罠には逆に感心してしまった。

 シンジから聞いたんだが、どうやら数多ある平行宇宙の『碇シンジ』たちの心情、それもかなり末期のものに強制的に共感させられ、発狂してしまったらしい。これが《初号機》に仕込まれた赤い靴、ってとこなんだろう。

 無理もない。《EVA》に搭乗するのはある意味心を剥き出しにするのと同じだ。そこにショッキングなイメージをぶつけられれば、タダでは済まない。

 まあ、その代わりに善い結末を迎えた平行世界の因子も流れ込んできて、復帰を助けてくれたみたいだけどさ。紫陽花がどうの三つ子がどうのって言ってたけど、なんのことやら。

 しかしまぁ、マダオこと碇ゲンドウの悲観論は聴くに耐えなかったな。

 霊帝のやってることとまさに同じで、善と悪、正と負はまさしくコインの表と裏、どちらか一方が欠けることはあり得ない。世の中、どちらか一方だけ知ったかぶって悟ったふりする奴が多くて困る。クルーゼみたいにな。

 

 

 

 新西暦一九〇年 ⊿月△日

 太陽系、アステロイドベルト イカロス基地 《ヱルトリウム》内、宿泊施設

 

 ついに、「カルネアデス計画」発動の時がきた。

 銀河殴り込み艦隊、旗艦《ヱルトリウム》。αナンバーズの各艦を収容してしまうほど大きな白亜の巨大戦艦だ。

 その巨大さは想像を遙かに超える規模であり、ノアの方舟的な要素も持たされているらしく都市一つ(初代《マクロス》のそれよりデカいかも?)をまるまる抱えているほど。まあ、今は人が少なすぎて閑散としてるけどな。

 

 明日、オレたちはクロスゲートを使って銀河の中心に向けて出発する。

 みんな各々、思い思いのことをして最終決戦の前のひとときを過ごしていることだろう。

 バサラとカヲルが、ミンメイら歌姫ズとこそこそやってるのを見かけたな。メキボスもそれに関連して何やら悪巧み?してるようだし。まあ、悪い感じはしないので、好きにしたらいいと思うが。

 

 準備は万端。細工は粒々。運を天に任す段階はもう過ぎた。後は、オレたちの気持ち次第だろう。

 だが、あの性格最悪なイデが、オレたちの抵抗をみすみす見過ごすわけがない。嫌な予感がヒリヒリとしやがる。

 銀河の中心で戦うのはバッフ・クランと宇宙怪獣、そして邪念の化身ケイサル・エフェス。敵の勢力は強大だ。

 志半ばで銀河の海に散ることだって、あり得るかもしれない。いや、オレた ちは死地に旅立つんだ。未来の礎となるために。

 

 と、アーマラと二人きりになったときにぽつりとこぼしたわけだ。まあ、オレだって弱気になるときくらいあるさ。

 んで、いろいろあって物理的に叱咤激励されてしまった。今さっきまで、余韻に耽ってボーッとしてた。

 なんかもうめちゃくちゃ柔っこくて、アイツも女の子なんだなぁ、って改めて思った。なにがとは口が裂けても言わないが。

 

 

   †  †  †

 

 

 幾多の苦難を乗り越え、ついに意志の統一を果たした地球連邦により母なる星の、いや全銀河の命運を賭けた「カルネアデス計画」が発動された。

 白亜の旗艦《ヱルトリウム》率いる「銀河殴り込み艦隊」。地球人類の英知と資源、あらゆるリソースをつぎ込んで建造された大艦隊はしかし、クロスゲートを目前にして立ち往生を余儀なくされていた。

 

 暗黒の宇宙に、プラズマの花が無数に咲き乱れる。

 クロスゲートを通り、際限なく現れる宇宙怪獣の群。全宇宙規模で集結しつつある災厄と破滅の化身の天文学的物量は、歴戦のαナンバーズをすら圧倒して見せた。

 

「どれだけいるんだ、こいつらッ」

「敵が七分で黒が三分――だそうだ!」

「ジリ貧だな、それでは!」

「だが、やるしかねェだろ! ここを乗り越えなきゃ、イルイを助け出すことも、ましてや銀河を救うことなんてできやしない!」

 

 機体を必死に操りながら、イングは歯噛みする。殲滅形態《メヴィウスG》による対軍攻撃も、焼け石に水にしかなっていない。アーマラが思わず弱音を吐くのも無理はなかった。

 《グレートゼオライマー》、《ニルヴァーシュ》、《ガンダムDX》、《テッカマンイーベル》、《ネオ・グランゾン》、《サイバスター》、《ヴァルシオーネ》、《ASアレグリアス》など、強力なMAPWを持つ機体もまたそれに続くが、宇宙怪獣の大群を押しとどめるには至らない。

 活路を見いだすべく、《Hiーνガンダム》、《ビルバイン》、《XANー斬ー》、《飛影》、《マジンカイザー》、《真・ゲッターロボ》、《ジェネシックガオガイガー》、《バンプレイオス》、《ディス・アストラナガン》、《大雷鳳》が果敢にも群れの真っ直中へと突撃をかける。

 《ラー・カイラム》を始めとしたαナンバーズ艦隊が猛烈な砲撃を加え、《真・龍虎王》と《ヒュッケバインMkーIV》、《EVA》各機、アンチボディたちが協力して形成した防御フィールドが艦隊を守護した。

 

 ――だが、彼らの奮闘もむなしく、戦況は悪化の一途を辿っていた。

 アポカリュプシスを主導するイデの意志を受けて沈黙する《イデオン》。艦隊を構成する《ヱクセリオン》級が一つ、また一つ轟沈していく。

 

「クソ、オレたちは、こんなところで終わりだってのか……!」

 

 一抹の絶望感がイングの胸にも到来した、そのときだ。

 突如後方から飛来した強大なビームの奔流が合体宇宙怪獣に直撃し、巨体の半分をえぐり取る。

 

「っ、新手か!?」

「いや、これは――!」

 

『クロスマッシャー、発射!!』

 

 さらに、螺旋を描く赤青の砲撃が宇宙怪獣にトドメを刺した。

 

『クロスマッシャー? ん、どうしたんだよリューネ?』

『い、今、まさか……!』

 

 リューネの動作を忠実に反映する《ヴァルシオーネ》が、驚愕の表情まで浮かべて振り向く。

 

『久しいなリューネ、我が娘よ』

『お、親父ぃ!?』

 

 割り込まれたウィンドウに映る威丈夫の姿を見て、ついにリューネは仰天した。

 凶悪な剣《ディバインアーム》を()()に突き立て仁王立ちするのは、究極の名を冠する真紅(あか)き巨人――究極ロボ《ヴァルシオン》。その背には、ディバインクルセイダース(DC)の紋章が金糸で描かれた黒いマントがはためく。

 両脇に左右対称の“アストレイ”、《ゴールドフレーム天ミナ》、《ゴールドフレーム天ギナ》を従える様はまさしく覇王の風格を纏っていた。

 

『あれは究極ロボヴァルシオン! くぅぅぅぅっ、生で見れるなんて感激だぜ!』

『落ち着いて、リュウ。念が乱れているぞ』

 噂に名高いスーパーロボットの搭乗に悪癖をヒートアップさせるリュウセイを、マイが冷静になだめる。

 

『リューネの親父さんって確か……?』

『ビアン・ゾルダーク博士、EOT研究の第一人者であり、地球防衛を目的にDCを設立した人物です、マサキ。……ビアン博士……、私は貴方が再び表舞台に返り咲くことを心待ちにしていたのですよ』

 マサキの疑問に答えるシュウは、感慨深げつぶやく。

 

『SDFー1マクロス……!』

『おっと、ついに現役復帰ですかグローバル議長?』

『死地に赴く君たちの支援のための特別処置だよ、フォッカー少佐。後背は我々に任せ、後顧の憂いなく任務を果たしてほしい』

 かつての上官の戦線復帰を、フォッカーが軽口を交えて歓迎した。

 

 《ヴァルシオン》が立つのはSDFー1《マクロス》強行型、その右腕である《アームド02》だ。

 バルマー戦役における殊勲艦であり、退役した後は地球連邦の首都に当たるダカールはマクロスシティの象徴だった《マクロス》だが、カルネアデス計画発動に際し、進発する銀河殴り込み艦隊を支援するため急遽現役復帰、グローバルを始めとしたかつての乗組員を迎え、地球連邦軍の総旗艦として返り咲いた。

 そこにはDCの創始者にしてSDF設立の立役者、そしてグローバル、タシロ両名の盟友でもあるビアンの働きがあったのはいうまでもないだろう。

 

『全艦、戦闘開始! αナンバーズを援護せよ!』

 

 グローバルの指令で、《マクロス》率いる艦隊――《アルビオン》、《リーンホースJr》、《ジャンヌダルク》、《ネェル・アーガマ》、《アマリリス》等リリアス級戦艦の姿もある――から無数の機影が、光の帯を引いて発進する。

 

『各機、αナンバーズに後れを取るなよ! 連邦軍正規軍の底力を見せてやれ!』

『へっ、いけ好かねェブルコス野郎に使われるよりずっとマシだな』

『エド、真面目にやりなさいよ』

『ジェーンこそ、ブルーが宇宙仕様になったからってはしゃぐなよ』

『あなたたち、お喋りはそこまでにしなさい』

 

『ナチュラルに後れを取るわけには行かないな!』

『ふっ、今回のオペはタフな仕事になりそうだ』

 

 《ガンバレルダガー》の指揮を受け、《ソードカラミティ》、《フォビドゥンブルー改》、《バスターダガー》――地球連邦のエースたちが《ジェガン》や《ギラ・ドーガ》、《ドラグーン》、《量産型F91》、《ドトール》、《エステバリスII》、《レイダー制式仕様》、《ソルテッカマン》、《迅雷》からなる大部隊を引き連れて宇宙怪獣の群れに挑む。

 またその中には、“ドクター”と“黄昏の魔弾”など、ザフトのエースパイロットたちの姿もあった。

 

 そして――

 

『お久しぶりです、アムロ大尉』

『クリス、バーニィ!』

『俺たちは軍を退役しましたけど、地球の平和を守りたいって気持ちはみんなと一緒です』

 

『マザー・バンガードとF91……、キンケドゥさんとベラ艦長まで!?』

『今はシーブックだよ、トビア』

『私たちも、地球の未来のために戦うわ。あなたたちだけに、負担は押しつけない』

 

 かつての仲間が、旅立つ戦友たちを送り出そうと駆けつける。

 さらに、国際警察機構の赤い《グルンガスト弐式》、旧SDF現連邦宇宙軍のトロイエ隊が駆る《ガーリオン・カスタム》。《ヒュッケバインMkーII》二号機とモスグリーンに塗られた先行量産型《エルシュナイデ》。ゼンガー、レーツェルのかつての僚友やイルムとリンの同期たちが、《ゲシュペンストMkーII改》で参戦する。

 ――イングたちαナンバーズの影で、世界の平和のために大戦を戦い抜いた戦士たちが各地から次々と集結していた。

 

 全てはアポカリュプシスを乗り越えるため。未来を切り拓く、そのために――

 FIRE BOMBERの奏でる「鋼の救世主」の勇壮なメロディーと歌声が響き渡る中、猛烈な勢いで宇宙怪獣を撃滅する《ヴァルシオン》から、全周波数で電波が発信される。

 

『この宙域に集いし戦士諸君。始めまして……いや、すでにまみえた事のある者もいるだろうか。私はビアン・ゾルダーク、かつてDCを設立し、地球の危機に備えようとした者だ』

 

 ビアンの演説が、通信回線を通じて届く。

 

『何もしないという事は、生きる事を放棄する事と同じだ。それは生命体の存在意義に反すると、私は思う。人類に逃げ場なし……だからこそ、選ぶべきは戦いの道、生き残る道だ。そして、人類は幾多の苦難を乗り越え、異なる星、異なる人種とも手を取り合い、その道を選んだ。――それが無駄な足掻きであろうと、そこには確かに生が有る。命の輝きがある。最後まで、諦めることなく人間として精一杯生きる――、それが、我々の出した答えだ』

 

 その力強い言葉の一つ一つが、生きるため、未来を掴むため、力の限りに戦う戦士たちを鼓舞し、その背を後押しする。

 誰しもが持ちうる心の光、それが輝いて今、絶望を駆逐する原動力となる。その光の名前は勇気、あるいは愛、あるいは希望……ヒトの持つ、最も強くて尊い力の正体。絶対運命すらも覆す“奇跡”を起こしうる無限の可能性――、目には見えない最強最後の(つるぎ)なのだから――

 

『若者達よ、その手で未来をつかみとれ! そう、力尽くでだ!!』

 

 宇宙怪獣を一刀両断した《ヴァルシオン》が、ビアンの身振りを写して拳を高々と振り上げる。

 傷つき、倒れても、何度でも立ち上がり、明日の平和の礎にならんとする戦士たち。ビアン・ゾルダークの演説は、そんな彼らを鼓舞し、勇気づける。

 それはすなわち未来への咆哮――闇の時代に終止符を打つ、勝利の凱歌だ。

 

 ――宇宙怪獣に埋め尽くされた戦場に、一つの大きなうねりが生まれようとしていた。

 

「こうまでお膳立てされて、立ち止まってなんかいられないよな!」

「ああ。私たちもうかうかしていられない」

「やりましょう、イングさん、アーマラさん!」

 

 心強い援軍を得て、イングの胸には熱い思いが焔のように燃え盛っていた。

 ヒーローたらんとする彼自身の決意。

 バビルから託された使命。

 ナシムが夢見た理想。

 それら全てを抱き、鋼の勇者は終わりゆく銀河に旅立つ。

 

 ――《MAアキレス》と合体し、《メヴィウスR》となった《エグゼクスバイン》がメタル・クロークを翻す。

 

「ビアン博士、そして地球のみんな! オレたちは往く!」

「わたしたちの武器は、みなさんの愛と勇気と希望なんです!」

「この戦いは、地球人だけのものじゃない。この宇宙に生きる、全てのヒトの戦いだ!」

「だから見ていてくれ! そして信じてくれ! オレたちは必ず、未来を取り戻してみせる!!」

 

 黄金に輝く精神に『覚悟』を銀の剣に変えて――、鋼の救世主が今、終焉へとひた走る銀河に旅立つ。

 

 イングの、アーマラの念が高まり、それに呼応した光神の心臓(オウル・レヴ)が唸りを上げて、無限の光エネルギーを生み出した。

 

「宇宙怪獣、来ます!」

「私たちの邪魔をするな! 輝け、オウル・レヴッ!」

「おおおおっ!!」

 

 接近する混合型宇宙怪獣に光を込めた両足蹴りを叩き込む。

 最接近した《エグゼクスバイン・メヴィウス》は、腰から《ロシュセイバー》を引き抜いた。ビームの刀身が、凄まじいほどの輝きを放った。

 

「リボルスパークッ!!」

 

 突き込まれた《ロシュセイバー》を通って流された莫大な光エネルギーが、宇宙怪獣の内部で拡散し、破壊する。

 振り返り、光剣を一振りする《エグゼクスバイン》。その背後で、混合型がさながら恒星と見まごうほどの大爆発を起こした。

 

「行くぞ、エグゼクスッ! TーLINKフルコンタクトッ、本当の戦いはこれからだぜ!!」

 

 《ロシュセイバー》を格納し、左腕の《TーLINKセイバー》がアクティブ。

 千の覚悟を身に纏う不死鳥の勇者――人々の光を受けた救世の剣(セイバー)が、太陽の輝きを放って災厄の化身を断ち斬った。

 


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