スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIー1「凶鳥の眷属」

 

 

 新西暦一八七年 ×月■日

 地球連邦軍極東支部 《アーガマ》の医務室

 

 突然だが、オレこと「イング」は今日から日記をつけることにした。

 なんの因果か、マシンナリー・チルドレンなんて厄介なものに憑依してしまったオレは、戦乱渦巻くこの世界の渦中から逃げることは出来ないだろう。少なくとも、今すぐは無理だ。

 だから起きたこと、知ったこと、経験したことを文章にして残し、読み返すことで直面した状況から目を逸らさずに少しでも前向きでありたい。あと自分の記憶が信用ならないという面もあるかな。

 まあ、メタな話をするならこの方が楽ってのもあるんだけど。

 

 ゼンガーからどうやって逃れたのか皆目見当もつかないが、ともかく運良く、あるいは必然的に主人公たちに保護されたオレは、3日間ほど生死の境をさまよっていたらしい。

 驚いたことに、この“世界”にはスーパー系主人公とリアル系主人公が同居していた。

 目覚めてからしばらく、オレを救助してくれたという人物たちが現れたときは、びっくり仰天した。

 リョウト・ヒカワ、クスハ・ミズハの両名が連れ立って現れたんだから。あれ?ここ、αじゃないの?と疑問符を浮かべてしまった。

 リョウトは穏やかなようで主人公のオーラがあったし、生で見たクスハはめちゃくちゃかわいかった。

 正直、あの“揺れる”おっぱいをガン見しないでいるのは相当しんどいかったな。

 ……むっつりじゃないぞ、オレは。どちらかというとオープンなスケベだ。

 

 あと、どうやら本来の主人公はクスハのようだ。

 その理由は、リョウトのパートナー、リオ・メイロンが《ヒュッケバインMkーII》の選任オペレーターとして《アーガマ》に同乗していて、なおかつクスハの恋人、ブルックリン・ラックフィールドの姿が見あたらなかったから。

 中途半端であまり役に立たない原作知識によると、ヒロインは一時行方不明になるらしい。さすがに事情を知らない立場のオレが迂闊に問うことは出来ないが、まあ、そういうことなんだろう。

 彼女は全三作で主人公の一角を務めていたそうだから宜なるかな、といったところだ。

 

 この身体の名前らしい「イング」を名乗ったオレは、詳しい事情をそれとなく聞いてくるリョウトたちに「責任者の人に説明したい」と意志を伝えた。

 二人はやや困惑していたが、伝言を受諾してくれた。さすが主人公ズ、話が分かる。

 ちなみにオレの《ヒュッケバイン》は開始一戦目で早くも大破判定を頂戴し、極東支部から南アタリア島にあるディバインクルセイダース(DC)本社に移送されてしまったそうだ。

 まったく、“バニシングトルーパー”の面目躍如である。……はぁ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月○日

 日本近海 《アーガマ》の医務室

 

 今日はここの責任者たち、ブライト・ノア大佐とクワトロ・バジーナ大尉の後両名と面会した。

 実はオレ、内心わくわくしてた。

 だってさ、あのブライト艦長と“赤い彗星”シャアだぞ? 興奮するなってのが無理な話しだ。とりあえず、原作にならってブライト艦長にはサインを強請っておいた。

 

 会話の内容は、面会というか事情聴取のようなものだった。

 とりあえず、質問には可能な限り答えたし、オレが《ヒュッケバイン》に乗っていた経緯も説明した。

 この身体がマシンナリー・チルドレンという人工物であり、本来の身体とは違うらしいとか、気がついた場所はアースクレイドルでそこから逃げてきたのだとか。まあ要約すると包み隠さずぶっちゃけまくった。

 ただ、話せないこともあるからそれなりに誤魔化したし、そのせいで二人には実際かなり怪しまれてた。

 だけどさ、自分はこの世界の人間じゃありません、この世界はビデオゲームの世界なんです、なんて荒唐無稽な話、信じられるか?

 とりあえず、行くところもないし、マシンナリー・チルドレンの身体は厄介すぎるんで、ここに置いてもらえることになった。

 一応、パーソナルトルーパーやモビルスーツを扱えるから、傷が癒えたら協力してくれないかと打診されたけど、そこは保留しておいた。……まだ、戦うことに踏ん切りというか、割り切れないからな。

 ちなみに、ブライト艦長たちに対して敬語で接していたら妙に感心された。やっぱ民間人が多いから、規律がフリーダムなんだろうな。

 

 ああ、《マジンガーZ》や《ゲッターロボ》が現実に見られるなんて……楽しみだ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月▲日

 極東地区日本 《アーガマ》の私室

 

 さすがマシンナリー・チルドレンの身体というべきか、ものの二日で完治してしまった。

 で、今日は退院祝いを兼ねてリョウトとクスハ、リオの三人に艦内を案内してもらった。まあ、平たくいえば挨拶まわりだな。

 なお、リョウトとリオは「イング」、クスハからは「イングくん」と呼ばれている。

 

 リオの勤務場所という艦橋でブリッジクルーのみなさんに挨拶したり、食堂に居たパイロットの面々と顔合わせしたりした。

 挨拶したのは、兜甲児とその仲間たち、流竜馬以下ゲッターチームの面々、最近加入した葵豹馬とコンバトラーチーム。カミーユ・ビダンとエゥーゴの兵士たちに、あとデュオ・マクスウェル。すでに錚々たる面々だ。

 スーパー系な皆さんからは温かく歓迎されたが、リアル系な皆さんからはいささか胡散臭い目を向けられた。ま、自分でも胡散臭いなって思うから気にしてないけどさ。

 そして、お待ちかねの格納庫。《マジンガーZ》や《ゲットマシン》三機に興奮したり、《ガンダムMkーII》を。

 我を忘れてはしゃぎすぎ、リョウトたちに暖かい目線で見守られてしまった。……見た目的に年下だからしょうがないけど、中の人的には同世代のつもりなんだがなぁ。

 なお、整備班長アストナージ・ドメッソ氏には丁重にご挨拶しておいた。整備のカミサマを無碍には扱えないって。

 

 道すがら、雑談にかこつけて三人が《アーガマ》に居る経緯を聞いてみた。

 リョウトとリオは元マオ・インダストリー社の輸送船パイロットで、《ヒュッケバインMkーII》を狙うティターンズに襲撃を受けたところを《アーガマ》に助けられ、合流したらしい。

 どうやって二人で切り抜けたのかと聞いたら、「オートパイロットの輸送船を囮にして、MkーIIに二人乗りして脱出したんだ」とリョウトが答えてくれた。

 なにやらリオが顔を赤くして照れていたから、クスハと一緒に生暖かい視線を向けてやった。まあ、そういうことなんだろうな。

 

 一方クスハの事情は、結構シリアスだった。

 日本地区の、ごく普通の高校生――甲児とはクラスメートだったそうだ――だった彼女たちの高校に、一機の輸送機が墜落した。ドクター・ヘルの“機械獣”によるものだという。

 その影響で恋人は行方不明、彼女自身は輸送機に積まれていた《グルンガスト弐式》に偶然乗り込み、甲児とともに戦ったそうだ。

 

 どう返したらいいかわからず、押し黙るオレ。リョウトたちも詳しい経緯は知らなかったらしく、言葉を失っている。

 そんなオレたちに、クスハは「わたしは大丈夫だよ」と笑いかける。それが何とも痛ましく、胸を突くのだった。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月◇日

 極東地区日本 《アーガマ》の自室

 

 今日は酷い目にあった。ほんとーに酷い目だった。

 これを書いているのも正直ダルいが、わりと重要な出来事もあったからがんばって書き留めることにする。

 

 ことの発端はいわゆる半舷休息で《アーガマ》の、特にパイロット連中は一時の休息。

 それで街に降りるリョウトたちに、オレもついていくことにしたわけだ。

 新西暦の都市がどうなってるのか興味があったし、一人置いてかれるのは嫌だったからな。まあ、それがいけなかったんだが。

 

 最初はよかった。

 緊急時に対応できるように、年少の部類に入る面子でまとまって買い物なんかをやっていた。オレやリョウト、甲児、ボス、豹馬なんかは荷物持ち状態だったけど、それなりに楽しかったんだ。

 そんなときだ、何やら雲行きがきな臭くなってきたのは。

 

 至る所にプロペラ機のようなローターをつけた緑色のロボットと対峙するマッシヴな鋼色の巨大ロボット。名前は知らないが、後者は明らかに主役級の存在感を持った立派なロボだった。

 急ぎ《アーガマ》に戻ることになったみんなに紛れ、そそくさと安全地帯に逃れようとしたときだ。

 突然、強い衝撃が辺りを席巻した。

 

 はぐれたというか、分断されたオレの前に現れたのは、眼帯のダンディーな、だが怪しさ爆発な紳士だった。

 姿に一抹のデジャヴを感じていたオレに、オッサンはこう言った。

 

 ――「このような小僧をいたぶるのは不本意だが――しかし、ビッグファイアの御意志とあらば仕方あるまい」

 

 その瞬間、ゼンガーと相対したときと同レベルの寒気を感じた。死の予感って言えばいいだろうか、ともかくコイツはヤバい。

 直感に従ってその場から飛び退いたオレのすぐ側を通り過ぎていく突風、衝撃波。で、ここで気がついた。

 

 ――あれ? この人“衝撃のアルベルト”じゃね?

 

 ってことはさっきのロボット、《ジャイアントロボ》か! とようやく思い出した。いや、原作は詳しく知らないけど、“使徒”と生身でやり合うトンでも超人ってネタだけは知ってたんだよ。

 あとはまあ、恥も外聞もなく逃げ回ったわけだ。

 だがしかし、相手はBF団が誇る超人“十傑集”。あっという間に追いつかれ、衝撃波が殺す気で飛んでくる。

 いつしか追い詰められたオレは、迫り来る。そのときは、ミンチになる自分をありありと想像した。

 迫り来る死を拒絶するように、無意識のうちに伸ばした手。目の前には、念動フィールドらしき翠緑の光の膜がぼんやりと揺らめいた。

 アルベルトは、衝撃波と相殺して消えたオレの力を見てどこか納得したように、あるいは満足したようにニヒルな笑みを浮かべ、身を翻した。

 残されたオレはカミーユの《MkーII》が救助に来てくれるまで、その場で呆然としていたのだった。

 

 この不本意極まる邂逅で得たものは、オレが“強念者”であることのへ確信と、オレがこの「イング」に憑依した原因に“BF団”が関わっているのではないかという疑惑。

 謎は深まるばかりだが、オレという存在を解明する糸口を掴んだ気がしてる。……戦う運命からは、逃れられないのかな。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月□日

 極東地区日本近海 《アーガマ》の自室

 

 いろいろ悩みが尽きない今日この頃。

 無駄飯喰らいの穀潰しは御免だと、ここ一週間は《アーガマ》のいろいろな部署で仕事を自主的に手伝っていた。

 まず、ありがちなところでは格納庫で整備兵の手伝いだろう。

 優秀なマシンナリー・チルドレンの頭脳はここでも力を発揮して、刷り込まれていた機械知識を頼りにやってるうちに、すいすい身に付いていった。メカニックのみなさんからはそこそこ評価されたと思う。

 次に、食堂の手伝い。

 ここはまあ、成功したかどうかは微妙な線だ。オレとしてはそれなりに料理が出来るつもりだったんだが、いざ作った料理を試食した甲児とボスとデュオが「ぶふぁ!?」と盛大に噴き出してギャグった。

 曰く、死ぬほど滅茶苦茶甘かったらしい。……自分の好みでアレンジしたのがまずかったのか?

 とはいえ、レシピ通りに作れば何ら問題ないし、ジャガイモの皮むきなんてベタな仕事もあるわけだからこちらも問題ないだろう。

 試食した三人からは、「もう飯作んな」と強く止められてしまったが。

 

 そんな感じで、日々あくせく働いている。

 《アーガマ》のみんなに受け入れてもらうために、オレはこれでも必死なのだ。

 この世界において寄る辺も由縁もないオレだから、今ここにある縁を大事に育てたい。だからって、卑屈になるつもりはないけどな。

 

 それと、この期間に新たな仲間が《アーガマ》に加わった。

 《Vガンダム》のウッソ・エヴィンとカサレリアの仲間たちと、そのお目付役のマーベット・フォンガーハット。そしてなんと、“連邦の白い悪魔”ことアムロ・レイ大尉が初代《ガンダム》と共に加入したのだ! 

 ……うん、興奮しすぎだな。自重、自重。あとアムロ大尉と一緒に《ガンダムNTー1》のクリステーナ・マッケンジー中尉、オーストラリアはトリトン基地から奪われた《ガンダム試作二号機》を奪還するため、《ガンダム試作一号機》とコウ・ウラキ少尉とその仲間たちが参入した。

 ……どうして軍人さんには階級をつけて呼ぶのかって? オレはこう見えて真面目なんだ。

 ちなみに、大尉には握手とサインをねだりましたが何か?

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月※日

 地球連邦軍極東支部 《アーガマ》の自室

 

 今日は最近加入した“不死身の第四小隊”隊長、サウス・バニング大尉の指導する訓練に混じって汗を流した。

 このマシンナリー・チルドレンの身体がどれほどのものなのか、興味があったので参加してみた。

 《アーガマ》の甲板をグラウンド替わりに、耐久マラソン。精神的にはかなりしんどかったけど、有り余る身体能力をコントロールするコツがわかったような気がする。

 とりあえず疲れたし、もう寝る。

 

 

 新西暦一八七年 ○月◆日

 地球連邦軍極東支部 《アーガマ》の自室

 

 部隊名が“ロンド・ベル”に決定した!

 正式名称は「地球連邦軍極東支部第一三独立外部部隊ロンド・ベル」。名付け親は極東支部の岡長官。ボルテスチームの一員、めぐみの親父さんだ。

 エゥーゴだのリガ・ミリティアだの獣戦機隊だのコープランダー隊だの、いい加減ややこしかったからな。あ、後者二つは最近加入した仲間たちだ。

 なお、決定の際にアムロ大尉が「マーチウィンド」、ウッソが「ブルー・スウェア」を。オレも「ラウンドナイツ」を提案しておいたが、順当に却下された。ま、お約束だな。

 

 

 新西暦一八七年 ○月#日

 地球、太平洋上 《アーガマ》の自室

 

 突然だが、オレは一応非戦闘員であり、戦闘中はだいたい格納庫で整備班に混じって作業している。

 たまに《アーガマ》に被弾すると、艦内が大変揺れてとても怖い。外の様子が分からないというのは、心臓に悪すぎる。

 

 ということで、パイロットとして戦うことを前向きに検討してみることにしてみた。比較的安全な艦内にいるより、銃弾飛び交う戦場の方がマシだと思うオレも大概だな。

 とりあえず、シミュレーターから始めてみようと思い立ち、リョウトに相談した。

 快く協力を申し入れてくれた彼に案内されて訪れたのは格納庫の一角。そこに置かれた筐体を見て「なんか、アーケードゲームみたいだな」と漏らしたら、リョウトに苦笑された。

 どうやらマジでゲーム機らしく。リョウトはこのゲーム「バーニングPT」の日本地区ランカーであり、その実績がマオ社に認められてスカウトされたのだとか。そういえば、OGにそんな設定があったな。

 それはともかく。

 この筐体は特別仕様で、《ヒュッケバインMkーII》と《グルンガスト弐式》のデータが入力されている。《弐式》が使えるのはパーソナルトルーパー扱いの機体で、操作系もほぼ同等だからだそうだ。

 なお、他のラインナップはというと、

 《ゲシュペンスト》、《ゲシュペンストMkーIIタイプR》、《ゲシュペンストMkーIIタイプS》、《量産型ゲシュペンストMkーII》、《ビルトシュバイン》、《シュツバルト》、《ビルトラプター》、《ヒュッケバイン009》。

 ……一部、「それでいいのかマオ社」って機体も混じっていたが、問題ないらしい。ちなみに《ヒュッケバイン009》とは、オレの《ヒュッケバインEX》の元となった機体である。

 で、一通り使ってみたが、やはり《ヒュッケバイン》系列の機体がよく馴染む。《ゲシュペンスト》の頑丈さと汎用性も嫌いじゃないが、やや操作感が重いというか反応が鈍くていささか物足りない。その点、《ヒュッケバイン》は華奢だが軽妙で振り回しやすく、扱いやすかった。

 次点の《ビルトシュバイン》も悪くないが、ここは《ヒュッケバイン》にこだわりたい。

 

 操作をあらかた確認し、プラクティスメニューを消化したオレはリョウトと模擬戦をすることにした。

 使用機体はどちらも《ヒュッケバインMkーII》。

 レギュレーションで合わせたというよりは、オレもリョウトも《MkーII 》が使いたかっただけだな。

 

 何回か対戦していたら、なんとなく付き添いで、クスハと観戦?していたリオが自分もやりたいと言い出した。

 実はリオ、このシミュレーターで密かに訓練していたらしい。

 というわけで、リオとついでにクスハも巻き込んで、四人で対戦してみた。ちなみにリオの乗機は《弐式》な。

 

 オールマイティーなリョウトとバリバリ前衛型なリオ、どちらかというとサポートが得意なクスハにオールマイティーだがより近接に寄っているオレ。傾向はこんな感じだ。

 

 鉄板のリョウト×リオvsオレ×クスハを基本に、組み合わせを変えていろいろ試してみたり。

 最終的にはほとんど遊んでいるようになってしまい、通りがかったアムロ大尉とクリス中尉に呆れられてしまった。「これで、クスハも少しは気分が晴れればいいんですけど」とか言ったら、今度は妙に感心されたけど。

 曰く「俺のときはみんながみんな自分のことに必死で、そういう気遣いを出来る人間は少なかったんだ。その感性を大切にするといい」。さすが、伝説を作った人の言葉は重さが違うな。

 最後に、オレの操作ログその他はDC社に送られるらしい。まあ、碌なことには使われないんだろうけど、せめてカッコいい機体を融通してくれればなぁ、と思う次第だ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ○月▼日

 極東地区日本、第三新東京市 《アーガマ》の自室

 

 ……まじでヒトってシトと生身で戦えるんだ。知ってたけど。

 

 

 

 新西暦一八七年 ○月◎日

 極東地区日本、第三新東京市 《アーガマ》の自室

 

 昨日はショックで妙な日記になってしまった。反省。

 

 そんな昨日は、第三使徒《サキエル》との戦闘があった。

 地下勢力であり《ライディーン》宿敵の妖魔帝国が絡んできたり、“エアロゲイター”ことゼ・バルマリィ帝国の偵察機《メギロート》の姿も現れて、事態は一気にきな臭くてはなってきた感がある。

 お約束通り、《エヴァンゲリオン初号機》の暴走による殲滅――と思いきや、ゲッターロボやコンバトラーVによるごり押しで“ATフィールド”を破ってしまった。さすが《アーガマ》隊である。

 まあ、碇シンジや綾波レイとは直接の接触はなかったんだけどな。

 ちょっぴり、残念だ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ■月※日

 南アタリア島 《リーンホースJr.》の自室

 

 オレたちロンド・ベル隊はかねてよりの目的地、南アタリア島に到着した。ようやくと言っていいだろう。

 地球にあるというアンダーワールドの一つ、バイストン・ウェルに呼び寄せられたりして大変だった。

 ちなみにオレは《アーガマ》でバストン・ウェルを経由し、リョウトとリオはリガ・ミリティアの《リーンホースJr.》で宇宙へ、クスハは極東支部に残り《エヴァンゲリオン弐号機》輸送艦隊と行動を共にした。

 

 バイストン・ウェルでは、オレたちよりも早く地上から召喚された聖戦士ことショウ・ザマとその仲間たちに協力し、ドレイク・ルフト率いるアの国の軍勢と戦った。

 オレも予備機として残されていたクワトロ大尉の赤い《リック・ディアス》で出撃し、戦う羽目になってしまった。はしっこいが相応に脆いオーラバトラー相手に《クレイバズーカ》無双だったな。

 これで、オレもめでたくロンド・ベルのパイロットというわけだ。まあ、それは今更か。

 

 しかしまぁ、ウチも短い間に大所帯になったもんだ。

 極東支部によって秘密裏に建造されていた科学要塞研究所からは戦闘のプロこと剣鉄也と《グレートマジンガー》、《ジャイアントロボ》を要する国際警察機構の草間大介少年と銀鈴さん、《ボルテスV》のボルテスチームに《ダンクーガ》の獣戦機隊、《ライディーン》のコープランダー隊、《ガンダムZZ》のジュドー・アーシタとシャングリラ・チルドレンたち、《ガンダムF91》のシーブック・アノー、《エヴァンゲリオン》を運用する特務機関ネルフ、SRXチームの面々。そして、バストン・ウェルからは聖戦士ことショウ・ザマとその仲間たちが加わった。

 《マジンガーZ》は《ジェットスクランダー》でパワーアップしたし、ゲッターチームも武蔵がリタイアしてしまったが、新たなメンバー、車弁慶を迎え、《ゲッタードラゴン》に乗り換えた。カミーユとウッソにもそれぞれ《Zガンダム》と《V2ガンダム》が与えられ、戦力はますます充実している。

 艦船も、旗艦と言っていい《リーンホースJr.》に《グラン・ガラン》と《ゴラオン》がある。すでに艦隊と言っていい規模だ。

 

 そんな中で、オレと関係のある人々について紹介しようか。

 まずは、宇宙でのアクシデントで加入したシャングリラ・チルドレンについて。

 シャングリラ・チルドレンとは、偶然から《ガンダムZZ》に乗り込んだスペースノイドの少年、ジュドー・アーシタをリーダー格とした少年少女のグループであり、全員が大なり小なりニュータイプとしての素養を持っている。特に、ジュドーはさすがニュータイプ御三家の一人と言うべきか、すでにその才能の片鱗を見せ始めているようだな。

 シャングリラ・チルドレンたちはいわゆる悪ガキどもだが、どこか愛嬌があり憎めない。同じモビルスーツ乗りで年齢が近いためか、ウッソらリガ・ミリティアの少年少女とよく連んでるみたいだ。お目付役のルー・ルカの血圧が上がりきらないことを祈るばかりだが。

 地球の片隅に生きる少年たちと、宇宙に浮かぶコロニーで生まれた少年たちが出会い、友好を結ぶ――そう思うと、戦場での出来事とはいえなかなか感慨深いものがあるな。 

 

 《ジャイアント・ロボ》を操る大介は、小さいくせになかなか芯の通った好ましい少年だ。保護者とも言えるチャイナドレスの美女、銀鈴さんとよく一緒にいる姿を見かける。

 彼らが所属する国際警察機構はBF団と因縁深い組織、動向には特に注視する必要があるだろう。

 

 念動力者的には古代ムー帝国の遺産、勇者《ライディーン》とその操者、ひびき洸は外せない。

 彼とは同じ念動力者として、ちょくちょく接触して交友を深めている。やっぱ年下扱いされてるけどなっ!

 他に交友があるのは、洸の仲間であるコープランダー隊の一員、超能力者の明日香麗か。どうやらオレには霊感霊視的な能力もあるらしく、たまにアドバイスを受けてたり。……美人な女の子に指導してもらえるのはうれしいけど、怨霊とか視えたらヤだなぁ……。

 ああ、それから。なんとなく、《ライディーン》から警戒されているような気がしなくもない。なんなんだ、いったい。

 

 ネルフのチルドレンたちとは、そこそこ良好な関係を築けていると思う。

 シンジには「戦いたくないなら無理することはない。世界の平和はオレたちに任せとけ」と言っておいてある。ぶっちゃけ、《エヴァ》無しでも大抵の使徒に勝てるだろうしなぁ、ロンド・ベルって。ヤシマ作戦だって《エヴァ》が撃たなくてもよくね?と思ったのは秘密だ。

 レイに関しては、ちょっと扱いが難しい。「キミも……オレと同じか」みたいな厨二的なことを言ってみたいんだが、まだ早すぎるかな。いろいろと。

 アスカは……甲児と一緒にバカ扱いされている。こっちが見た目同年代だからって、舐められているらしい。まあ、バカにされていちいち怒ってたらラチが飽かないし、ガキっぽいので「ハイハイ」とあしらってる。それが気に入らないらしくて、さらに絡んでくるんだけどな。

 何度も言うが、オレ自身は高校生くらいのつもりなのだ。

 あと、お目付役の葛城ミサト三佐と赤木リツコ博士とはわずかに挨拶を交わしただけだ。大人だから、オレたちよりもアムロ大尉やブライト艦長らと難しい話をしているのをよく目にする。

 あと、ときおり赤木博士が後述するマサキの使い魔(ファミリア)、シロとクロ相手に戯れている姿を見かけたり。

 

 SRXチームのリュウセイ・ダテとは、同好の志ということですぐに仲良くなれた。

 コンシューマー版のバーニングPTで対戦したり、持ち込んだメディアディスクを観賞したり、コレクションを見せてもらったり。彼の相方、ライディース・F・ブランシュタイン少尉には「リュウセイが増えた」と大変呆れられている。

 オレも少なくない給料貰ってるんだし、今度街に出たら買いあさってこようかと画策している。

 波長が合うらしく、だいぶ前に仲間になった魔装機神《サイバスター》の操者、マサキ・アンドーと甲児を交えてよく連んでいる。《Rー1》と《サイバスター》で、《アカシックブレイカー》なる合体攻撃を見せてくれたりな。

 ただ、彼らの上司、イングラム・プリスケン少佐ははっきり言って胡散臭い。どこが、とはうまく表現できないが、あのオレを見るどこか実験動物を観察するような目。信用ならないので、極力近付かないようにしよう。

 ……こんなとき、自分の役に立たない知識が恨めしいな。

 

 最後は、紆余曲折あり、バイストン・ウェルから追い出されてしまったショウ・ザマとその仲間について。

 唯一の可変型オーラ・バトラー《ビルバイン》を操るショウさんは、すでにロンド・ベルのエースのひとりに数えていいくらい大活躍している。さすが聖戦士。

 地上について疎く、勝手が分からないだろう《グラン・ガラン》の艦長にしてナの国の女王シーラ・ラパーナと、《ゴラオン》の艦長、ミの国の王女エレ・ハンム(敬称略)にそれとなく親切にしてみたり。

 まあ、向こうさんは艦長で自分の艦からほとんど出て来ないし、地上人のショウさんやマーベルさんがいるから、わざわざオレがフォローする必要もないんだけどさ。

 そんな様子を見たリオやさやかを筆頭とした若手の女性陣からは、「イングって結構ナンパなんだ」などとたいへん失礼な評価をいただいた。

 まったく、リアルお姫様に会ったらドキドキするのが普通の反応だろうに。特に、おしとやかでお美しいシーラ様とは是非ともお近づきになりたいものである。

 

 他にも剣鉄也さんと炎ジュンさんとか、ボルテスチームのみんなとか、獣戦機隊の四人とか、紹介していない仲間がいるんだが割愛する。だって、自己紹介したくらいしか交遊ないし。

 いくらオレが社交的だとしても、物理的な限界があるのだ。

 

 さておき、大事なお知らせがある。

 リョウトの《MkーII》、クスハの《弐式》に新たな武装が追加され、さらに、さらに!さらにっ!オレにも専用のパーソナルトルーパーが届くことになったのだーーっ!

 詳しい話は聞いていないが、正直《リック・ディアス》には不満だらけだったから楽しみだ。

 

 

   †  †  †

 

 

 ディバイン・クルセイダース社本社のたる南アタリア島より数キロ、小規模な無人島。鋼鉄の巨人たちが激しい火花を散らしていた。

 

『ファイナルビームッ!!』

 

 イルムガルド・カザハラ――イルムのドスの利いた叫びと共に、“ブラック”こと《グルンガスト改》の星を模した胸部パーツから、強力なエネルギービームが放たれた。

 

『うわっち! あっぶねー!』

「オレたちのPTじゃ、直撃どころか掠っただけでスクラップ間違い無しだな」

 

 最前線を張る《Rー1》のパイロット、リュウセイが冷や汗を流す。

 一方、背部フライトユニットの機動力を生かしてひらりと交わした《エクスバイン》。そのコクピット、専用に誂えた紺と紫のパイロットスーツ――デザインはリョウトたちのものと共通だ――に身を包んだイングは、メインモニターに映る《グルンガスト》に照準を合わせると冷静に操縦桿のトリガーを引く。

 射程を犠牲に、取り回し易さと速射性を発展させた《フォトン・ライフルS》が重力の弾丸を吐き出した。

 イングの操作によってまるで機関砲のように放たれた弾丸はしかし、《グルンガスト改》の前方に広がった空間の歪みによりあえなく弾かれ霧散した。

 

「グラビティ・ウォール……、いやグラビティ・テリトリーか!」

『御明察! コイツは正解のご褒美だ、ブーストナックル!』

 

 前腕部を切り離し、砲弾のように発射した。

 

「その手の攻撃は、見切ってんだよ!」

 

 《エクスバイン》が腰部サイドアーマーから《ロシュセイバー》を引き抜き、飛来する噴射拳にタイミングを合わせて振り抜く。

 

『なにっ!?』

「踏み込みが甘いッ、ってね」

 

 《ブーストナックル》を切り払う《エクスバイン》。

 さすがに武器として使用するだけあって、前腕に損傷を与えることは叶わなかったが、《ブーストナックル》を無理矢理に弾き返されたことで《グルンガスト改》の体勢が僅かに崩れた。

 

『フッ、全機、一斉攻撃を仕掛ける。ライフル、ダブルファイア』

『わかったぜ、少佐!』

『了解! ハイゾルランチャー、シュートッ!』

「集中砲火だっての!」

 

 今が好機と見たイングラムの号令により、四機のパーソナルトルーパーが火器を構える。

 《ツイン・マグナライフル》、《ブーステッド・ライフル》、《ハイゾルランチャー》、そして《フォトン・ライフルS》。

 四種の砲火が一斉に放たれた。

 

『うおおお!?』

 

 さしもの超闘士もこの一斉射撃にはたまらず、重力障壁を突破されて巨大な機体が揺らぐ。 

 

『……おい、イング。その妙な語尾やめてくんねぇ? なんか背筋に寒気が走るんだよ』

「ホ! そりゃ無理な話だっての」

『だーかーらー、やめろよその喋り方!』

『お前たち、真面目に戦え!』

 

『「ごめんなさい』」

 

 ライに叱られて、素直に謝る二人。緊張感が足りないのは彼らのキャラクター故だろうか。

 少なくないダメージを負った《グルンガスト改》が、距離を取った。

 

『オイオイ、随分と余裕かましてくれるじゃないの。俺は眼中にないって?』

「さぁてね」

 

 苛立ちの含まれた軽口を不敵に返したイングは、器用にも《エクスバイン》の頭部を明後日の方に動かした。

 

「ま、興味があると言ったら美少女な友人の恋の行く末かな?」

 

 その先には、《グルンガスト弐式》と二機の《ヒュッケバインMkーII》。

 リョウトのサポートを受け、恋人であったはずのブルックリン――ブリットへ必死に呼び掛けている。

 

「そこんとこどう思うよ、色男さん?」

『……ッ』

「オレはクスハを信じるよ。アンタも信じるなら、ムサい男よりかわいい女の子の方だろう?」

 

 多分に意味を含め、イングはふてぶてしく言い切った。

 ブルックリンが彼の言うようにSRX計画の――イングラムの犠牲者であるというなら、クスハもまた犠牲者である。

 そして、イルムガルドはそんな犠牲者同士に戦いを強いている立場と言えるだろう。それも、一方はまだ幼いと言ってもいい少女だ。

 例えその行為に義があろうとも、マトモな感性を持っていれば悪と感じることは間違いない。

 

『ッチ、嫌みな言い草だが、確かにな。お前さんとは気が合いそうだ』

「そりゃどーも。気が合うついでに、お引き取り願えないかオッサン」

『オッサンじゃない! そいつはできない相談だ。SRX計画の機体は破壊しなければならないが――、今はお前さんが一番厄介そうだ、なッ!』

 

 巨体にものを言わせ、拳を繰り出す《グルンガスト改》と熾烈な空中戦を繰り広げる《エクスバイン》。右手には《ロシュセイバー》を、左手に《フォトン・ライフルS》を構えて激突した。

 援護射撃が飛来するが、イルムは《グルンガスト改》の厚い装甲を笠に着て強引に押し込んでくる。

 

「くっ!」

『そらそらッ! さっきの余裕はどうした!?』

 

 実際、イングには口ほど余裕はない。《グルンガスト改》相手に、《エクスバイン》がパワー負けしているのは明白だ。

 先ほど《ブーストナックル》を切り払った際に受けた物理的な衝撃は強烈で、《エクスバイン》の右腕には少なくないダメージが残っている。戦闘には支障ないレベルだが、そう何度も同じことは出来まい。

 動力源の差、機体サイズの差。様々な要因がイングを苦しめる。

 

(っち……、やっぱただのパーソナルトルーパーで特機相手にガチンコはシンドいか……!)

 

 内心で歯噛みする。同じ特機に瀕死の重傷を負わされた経験が、そして。

 深層心理に根付く「自身の存在の意味を知りたい」という複雑な感情と、「生きたい、死にたくない」という単純な欲求が彼を戦いに突き動かす。

 

「だが、やるしかない。戦わなければ生き残れないのなら――、TーLINK、フルコンタクト!」

 

 覚悟を決めたイングの放つ強力な念、テレキネシスαパルスを感知して、TーLINKシステムが活性化する。

 《エクスバイン》の特徴的なゴーグルアイの奥、一対のカメラ・アイがライトグリーンに輝いた。

 

「スラッシャー、アクティブッ!」

 

 音声認識と念動力により制御された《エクスバイン》は、左腕に固定された“最強武器”を右手で掴む。

 歪んだS字の固定状態から、十字手裏剣型の攻撃形態へと変形した《ファング・スラッシャー》が大きく振りかぶられた。

 

「ヤツを斬り裂け、ファング・スラッシャー!!」

 

 投擲された《ファング・スラッシャー》が、その名の通りの重力の牙を展開し、イングの念に導かれて空を斬り裂く。

 異端の凶鳥が黒い超闘士に鋭い牙を剥いた。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八七年 ■月※日

 南アタリア島 《リーンホースJr.》の自室

 

 今日はいつになく大変な一日だった。

 特に、クスハには気の毒なことになったな。

 

 まず、オレに与えられたパーソナルトルーパーについて記そう。

 名称を《エクスバイン》。大破した《ヒュッケバインEX》を修理・改修した機体で、《MkーII》とその後継機のパーツや武装の一部を試験的に使用した実験機だ。

 カラーリングは《EX》の赤から《ヒュッケバイン》カラーの紺と紫に変更。主な武装は《頭部バルカン》に《ロシュセイバー》、オレにとっては待望のマトモな飛び道具《フォトン・ライフルショートタイプ(S)》。そして最強武器として十字手裏剣型のブーメラン、《ファング・スラッシャー》。《MkーII》と同じ《チャクラム・シューター》も換装すれば使用可能だ。

 また、テスラ・ドライブを使用したフライトユニットを背部に搭載しており、単独で飛行が可能。防御機構は《グラビティ・テリトリー》、マン・マシン・インターフェースにはイングラム少佐の意向でTーLINKシステムを採用した欲張りな機体である。

 改修を担当したのは、SRX計画のカーク・ハミルととロバート・H・オオミヤ。

 ロブ――ロバート氏の愛称である――曰く「近接格闘が得意なイングにあわせてセッティングしてるんだ」とのことで、確かに《リック・ディアス》は元より基礎になった《ヒュッケバインEX》よりもしっくりときた。TーLINKシステムの感触も悪くない。

 難を言えば、やはりあくまでもパーソナルトルーパーの範疇に収まった機体であり、特機やそれに相当する相手には当たり負けする可能性が高いことか。

 実際受領してすぐ、それを実感したしな。

 

 で、本題。

 新しい機体のならしに、SRXチームの三名――イングラム少佐、リュウセイ、ライディース少尉――にリョウト、クスハを交えて近くの無人島に演習に向かった。

 と、オレたちの前に突如として二機の黒い機動兵器が姿を現した 《グルンガスト改》と《ヒュッケバインMkーII》である。

 ゴタゴタしていて事情がややこしいが、要約すると「イングラム少佐のかつての部下が彼を怪しみ、クスハの行方不明だった恋人が記憶喪失で現れた」とまあ、こんな感じか。

 《ヒュッケバインMkーII》にはブルックリン・ラックフィールドを説得しようと試みるクスハと、そのフォローにリョウトが当たり。オレはリュウセイ、ライディース少尉、イングラム少佐と協力して、イルムガルド・カザハラ操る黒い超闘士――《グルンガスト改》と激闘を繰り広げた。

 激しい激戦の末、《エクスバイン》の《ファング・スラッシャー》が《グルンガスト改》のボディを斬り裂き、浅くない傷を刻んだ。

 手傷を負った《グルンガスト改》と《MkーII》は、捨て台詞とともに戦域を離脱した。悲痛な声を上げるクスハを残して。

 

 ……しっかし、初戦から《零式》、続いてあの黒い奴とオレは《グルンガスト》に呪われてるのか? ジャイアント・キルにもほどがあるだろうに。

 

 なお、その日の夕食時に「……ブリットくんはさしずめさらわれたお姫様役だな」と素直な感想をこぼしたら、一緒に食っていた甲児とリュウセイが吹き出して、マサキが被害を受けていた。

 当然、マサキはキレてオレも含めて怒られたわけだが。

 そんな様子を見ていたクスハが、くすりと微笑んでくれたのがよかった。ま、落ち込んでるなら元気になるように気遣うのが友だちってもんだしな。そのためなら道化にもなるさ。

 きっとブルックリンくんはこのネタで長くイジられるのだろう。オレはそんな予感を覚えるのだった。

 

 ああそれと、ロブに接触したときにとある道具を制作できないかと相談してみたんだ。

 ロブもさすがアメリカ地区出身者らしく、あの“作品”にもロマンを感じるようでなんとかしてみせると快諾してくれた。()()がうまく実現できれば、きっとBF団のエキスパートと渡り合える……といいなぁ。

 


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