新西暦一九五年――
あの“銀河大戦”から五年……地球は、終わることのはない平和を謳歌していたかに思われた。
しかし、未だ潰えぬ悪意が、邪悪なる思念が密かに蠢動していたのだ。
それは、極めて近く限りなく遠い世界からもたらされた。
極東地区日本、旧DC社施設。
数々の名機を生み出してきたこの場所で、今まさに新たな“龍”が産声を上げようとしていた。
「ロブ、これって
「そうだよ、イルイ。こいつが正式量産型の
イルイ・“ガンエデン”・ウィンチェスター、一四歳。
かつての銀河大戦の渦中にあり、また幾億巡の戦いの輪廻に終止符を打った英雄の一人。また、未だ保持する強大な念により人界の平和を護る“宇宙の女神”である。
学校の授業参観でここを訪れたイルイは旧知の相手と交友を深める。こう見えて、彼女はロボット大好きっコだ。
「かっこいいねぇ!」
「そうだろうそうだろう? 苦節五年、ようやく日の目を見せることができたよ」
目をきらきらと輝かせるイルイに、ロバートは満足そうに頷く。
銀河大戦終結から五年の歳月を経て、ついに量産化の運びとなった
またレスキューマシンとしての一面も合わせ持ち、まさにこの平和な時代に即した機体と言えるだろう。
「じゃあ、この子はクスハとブリットの子どもになるんだね」
「はは、まあそうなるかな」
「男の子かな? 女の子かな?」
そんなとき、不意に鳴り響く警報。
突如として現れた“未知の生命体”群が街を、人々を無差別に殺戮する。
「みんなを助けなきゃ! ロブ、雷龍借りるよ!」
「ま、待てイルイ! いくら君がサイコドライバーだとしても、それは量産仕様の機体だぞ!」
「おにいちゃんにできて、
「いや、そういう問題じゃ――」
「イルイ、いっきまーすっ!」
友人を、そして人々を守るため、強引に《雷龍》へと乗り込んだイルイは、“未知の生命体”――インベーダーの群れをあっさりと撃退した。
そんな彼女の前に、異変を聞きつけ、白亜の戦艦――《ナデシコC》が飛来する。
「ルリルリ! ひさしぶり!」
「はい、お久しぶりです。それにしても、大きくなりましたね、イルイさん」
「もち! わたし、おねえちゃんみたいなボインちゃんになるんだからっ」
「……ボインちゃん……誰の悪影響なんでしょうね、これ」
《ナデシコC》と合流したイルイは、《雷龍》の操者として事態の真相究明のため、彼らと行動をともにすることとなった。
――そして地球は、銀河は再びの戦禍に包まれる。
ごく普通の学生、バレル・オーランドは、突如墜落してきた青いロボット――銀河連邦軍の試作兵器《イクスブラウ》とそのパイロット、フェイ・ロシュナンテとともに“未知の生命体”と交戦する。
イルイと《ナデシコC》隊の助力もあり、バレルは何とか生き残ることが出来た。
また、衛星軌道上で銀河連邦軍の次期主力機と目される可変人型兵器《アーク》シリーズの機動試験を行っていた《アルビオン》も、異変に遭遇していた。
テストパイロットのタック・ケプフォードとマリナ・カーソンは、プラント国防軍の新型“ガンダム”強奪事件に居合わせる。
「また戦争がしたいのか、アンタたちは!」
「……違う。わたしたちは、戦争をさせないために動いてる」
「! それって、どういう――」
「だから――ジャマ、しないで!」
新造戦艦の進宙式を観覧するため家族旅行でプラントに訪れ、偶然居合わせたシン・アスカは、ひょんなことから新型ガンダム――《インパルスガンダム》に乗り込み、同じ新型のうちの一機、黒い《ガイアガンダム》と刃を交える。
これがシン・アスカと、BF団のエージェント、ステラ・ルーシェのファーストコンタクトだった。
テロリストにより奪われた三機のガンダムを追うため、新造戦艦《ミネルバ》が発進する。居合わせた地球安全評議会の議員、アスラン・ザラの懇願により、成り行きで《インパルス》のパイロットとされてしまったシンを乗せて――
それぞれの異変を追って合流した《ナデシコC》、《アルビオン》、《ミネルバ》に火急の報せが入る。
ユニウス・セブン――かつての大戦の折り、核の火により散った宇宙の墓標。それが、安定軌道を離れて重力に引かれているという。コロニーの残骸が地球に墜ちれば、核の冬がくる。フィフス・ルナの二の舞だ。
コーディネーター系テロリストの操るカスタムタイプの《ジン》、さらには黒い《アーク》タイプとジオン系モビルスーツ部隊の妨害により、破砕作業は遅々と進まず――
「くっ、この黒い可変機、強い!?」
「落ち着いて、バレル! 動揺すればこちらがやられるわ!」
一同の奮闘虚しく、阻止限界点を越え、重力に引かれて地球へと落下するユニウスセブン。赤熱する様は、かつてのアクシズ落としを彷彿とさせる。
そのとき、強念とともに一筋の光が宇宙に走る。
「待たせたな! 真打ちの登場だ!」
「わたしもいますよーっ」
「お兄ちゃん、エクスっ! ……あれ、お姉ちゃんは?」
「今回は別行動だ。まあ、こんな三下どもなんぞ、オレたちだけで十分だろう?」
“鋼の救世主”――銀河最強の人型機動兵器《エグゼクスバイン・メヴィウス》。操るは銀河最強の汎超能力者、“バビル二世”ことイング・ウィンチェスター、イルイの兄である。
銀河を守護する無敵の
「TーLINKセイバー、アクティブッ!」
「……!」
「お前の正体は割れてるぜ、ブラッディアークのパイロット!」
「! 貴様、何を!」
「とっとと自分の世界に帰れっつってんだよ、
「ぐぁっ! ――クッ、消えろイレギュラーが!」
黒い《アーク》タイプを退け、有象無象を蹴散らして、不死鳥の勇者が宇宙を直走る。
「シーケンス、TLS! ユニウス・セブンの怨念たちよ! お前たちの無念、この俺が因果地平に還してやる!!」
放たれるは邪念を絶つ剣、《極大念動破斬剣》。振り下ろされた光の刃が墓標を真っ向から斬り裂き、光の粒に変わる。
無念、苦痛、憎悪――そのすべてを太陽の輝きが因果地平の彼方へと送った。
一同の活躍により、辛くも地球は滅びを逃れた。
そんな彼らの耳に飛び込んできたのは、ネオ・ジオン残党、“袖付き”により親友である、ミネバ・ラオ・ザビが誘拐されたとの一報だった。
一方、新天地――未だ見ぬ銀河を目指して航行中の《マクロス・フロンティア》は、地球外生命体“バジュラ”との抗争状態に陥っていた。
激化する戦闘の中、民間軍事プロバイダーS.M.Sのバルキリーパイロット、早乙女アルトは、某かの理由で崩壊した惑星エリアから逃れてきたもの――、次元の壁を突き破って転移《デフォールド》してきた戦艦《アーク・アルファ》と、銀髪の少女オータム・フォーと接触していた。
――風雲急を告げる地球圏。
可能性の獣、《ユニコーンガンダム》と「ラプラスの箱」。
《マクロス・フロンティア》が遭遇した超時空生命体“ヴァジュラ”。
もう一つのバイストン・ウェルからの来訪者、ホウジョウ軍。
何者かの手により復活したDG細胞。
平行世界からの来訪者たち。
無限力を喰らう生命体“インベーダー”ともう一つのゲッターチーム。
一二〇〇〇年の時を越えて目覚めた機械天使《アクエリオン》。
かつての仲間たち、“ゲッコーステート”の平行存在。
仮面の男“ゼロ”と白騎士《ランスロット》。
“特異点”、桂木桂と《オーガス》。
それらがもたらす異変と危機に対応するため、再びαナンバーズが結成される。
――混乱の火種は地球だけではなく、銀河の遙か彼方、極めて近く限りなく遠い世界にもくすぶっていたのだ。
「バルドナドライブ……それがお兄ちゃんたちが今探っていることなの?」
「そうだ。バルドナドライブとは、ジル・バルドナ博士が建造した次元力を人為的に発生・制御し、平行世界を観測、あるいは干渉を可能とする装置――、それが今回の事件の原因だ」
「……でもそれだけじゃ、こんな混沌とした状況にならないよね?」
「正解。
「また
「どうどう。ま、いつものことだよな、実際」
独自の調査に戻る兄と別れ、イルイは新たな仲間と共に戦場を行く。
友と平和を取り戻すために。
戦いの中、イルイにもまた乗り越えるべき試練が訪れていた。
「やめて、応龍皇! もうあなたが戦う必要なんてないんだよ!?」
『■■■■■■■■――ッッ!!!』
堕ちたる超機人、《応龍皇》。
力を失い、繰者を失い、躯を失い、誇りを失い――全てを失って悪龍と化した超機人の長は、だだ破壊と混沌を振りまき、もはや人界に仇成す悪災へと成り果てていたのだ。
「本当に大丈夫なのか、イルイ?」
「うん、お姉ちゃん。あの子はわたしがなんとかしなきゃいけないの。それが……ナシムの器だったわたしの責任なんだよ」
「イルイ……」
「つまり……わたしがやらなきゃ誰がやる!」
「元気なのはいいが、シリアスするなら最後までやろうな」
「えへへ」
決戦の舞台は、蚩尤塚上空。
四神の魂が眠る地で――
「それならっ! ――応龍皇っ! あなたのその怨念、わたしがナシムに代わって祓います!」
イルイの、サイコドライバーの類い希な強念。それは、TーLINKシステムを持たない《雷龍》にすらも強大な力を与える。
掲げた《シシオウブレード》に集う次元力――《龍王機》《虎王機》《雀王機》《武王機》の魂が因果地平の彼方から小さな彼女に力を貸す。
「邪、破れば人々を救い! 顕正、則ち上大法を弘む! 奥義! 破邪顕正・桜花放神ッ!!」
激闘の末、イルイの念に屈した《応龍皇》は怨念を全て吐き出し、降伏された。
その魂は回収され、《応龍皇》は新たに生まれ変わる――
《龍王機》《虎王機》の解析データに《雷龍》の開発により蓄積された最新技術、そしてラ・ギアスに由来する錬金学をフィードバックして建造された躯を得た四神の長。
その名は――
「行くよ、龍王転神! オウリュウオー!」
いくつもの戦いがあった。
だが、それもいつかは終わる。この宇宙に鋼の勇者たちがいる限りは。
“袖付き”を主体とするクーデター軍により乗っ取られたプラント防衛施設「メサイヤ」を、ビスト財団の暗躍により復活したDG細胞が瞬く間に席巻。「デビルメサイヤ」となって人類を粛清せんと破滅の光「ネオジェネシス」を輝かす。
ギガノス残党や旧火星の後継者、木星帝国の遺児たち――銀河連邦の統治を由としない勢力が、平和の象徴たる地球を破壊せしめんと決起したのだ。
「フロンタル! 貴様が奴の、シャアの怨念の器だというなら、俺たちがそのエゴを帰す!」
「クワトロ大尉の理想をこれ以上汚すな! お前は宇宙の闇に還れ、フル・フロンタル!」
「いい加減、戦争なんて飽き飽きなんだよね! そういうのは、これでお終いだ!」
「運命を切り開く! そのためには! 今の俺には、みんなを護る力があるんだ……!」
「戦いの痛みも背負って、未来に進む……それが僕たちの覚悟だ!」
「ジオンに生み出されたものとして、私がここでジオンの怨念は絶つ! フェネクスッ!!」
「バンシィィイ!! その仮面の下にあるものを吐き出せ、フル・フロンタル!!」
「ガンダム! 俺に力を貸せ! 弱くて、不完全で……だから託すんだ! 託されて歩き続けるんだ! どんなに辛い道であっても――!」
「そのために俺たちは戦う! ユニコォォォーーーンッ!!!」
「これが火の文明……人が自ら生み出したものは人に新たな力を与える……それは誰かと共に希望を信じる力……その化身、ガンダム!!」
吼える三機の《ユニコーン》。
再び開くクロスゲート。未来世界から《ガンダムDX》と《∀ガンダム》を迎えたガンダム連合を迎え撃つは、赤き彗星の落とし子――フル・フロンタルと《デビルネオジオング》。サイコシャードの放つおぞましき光が、全ての歴史を虚無に塗り替えようと妖しく輝く。
一年戦争から始まった“ガンダム伝説”――その最後を飾る正真正銘、ほんとうの最終決戦。
ガンダム乗りたちの熱い“魂”をその身に受け、覚醒する《ユニコーンガンダム》。サイコフレームがシンなる力を発揮し、虹色の光が宇宙を満たした。
「わたしの――!」
「あたしの――!」
「アタシの――!」
「俺たちの歌を聴けーッ!!!」
「ランカちゃーん!」
「バサラーッ、シェリルーッ!」
「ミーアさぁーん!」
「真面目にやれ、お前たち!」
銀河を牛耳らんとするマクロス・ギャラクシーの卑劣な策略により、操られたバジュラクイーン。
ヒトの身勝手なエゴに縛られたバジュラたちを解放するため、銀河に三人の
不滅の聖剣の名を冠したバルキリー――《YF-29デュランダル》がその紅い翼に歌と想いを乗せ、銀河の果てまで羽撃いた。
そして――――
傾いたビルの残骸がそびえ立つ閉鎖海域。水平線から朝日が射し込む。
海上施設に位置するバルドナ・ドライブが異常稼働し、様々な平行世界から無作為に因果を呼び寄せる。それは、世界の垣根を破壊し、遍く次元の崩壊を意味していた。
「追い詰めたぞ、ベルクト!」
「もう止めましょう! バルドナは……いえ、ドクター・シキは倒れた! あなたの復讐は終わったんです!」
この宇宙の技術により完成した最終決戦仕様フレーム《イクスブラウtypeAs》に乗るバレルとフェイが訴える。
眼前には深紅の人型機動兵器。
崩壊した惑星エリアに隠されていた禁断の“
「フェザーアークの機動テストからこっち、随分な大事になっちまったが……」
「それでも、やるしかないわ。私たちは銀河連邦の軍人なんだから」
最新型《アーク》シリーズ、専用カラーの《バスターアーク》に乗ったタックとマリナ。
彼らと相対するのは海面と上空を埋め尽くす黒い無人兵器。それらは、“
「……私の故郷、惑星エリアはもうどこにもない……けれど、この地球は――もう一つの故郷は滅ぼさせない!」
《アルファート》のコクピットでオータム・フォーが独白する。
後陣に控える《アーク・アルファ》に残された惑星エリアの住人の遺伝子情報、そしてこの美しい
「バルドナ・ドライブはすでに臨界点を越えた。これを止めたいのなら、俺を殺すしか方法はない。――この“セラフ”ごとな!」
ありとあらゆる平行世界を抹消するため、暴走するバルドナドライブ。
それは、惑星エリアのジル・バルドナ――ドクター・シキの遺した悪意。
自分のいない世界。そして“自分”ではない自分など認めないという身勝手で狂気的なエゴが惑星エリアのみならず、この地球や他の数多の星々に襲いかかろうとしていた。
“
彼はあえて憎悪する男の計画を引き継いでいる。それは、自身を拒絶する“世界”への復讐に他ならない。
「ベルクト……あなたの境遇、知りました」
「……」
「だけど……だけどッ、わたしはイルイ・ガンエデン・ウィンチェスター! 人界の平和を護る
黄金龍――《黄龍皇》が吼え、その心臓たる真・五行炉が唸りを上げる。
天地が震え、海原が裂ける。雷鳴轟く時、戦いの火蓋が切って落とされた。
「そしてなにより、“バビル二世”の妹として、あなたのすることを許すことはできませんッ! 天意招来・迅雷疾駆! ――龍王破山剣・
「もう……終わった」
「終わってない!!」
「どちらかは否定される。そのことはわかっていたはずだ」
「そんなの……知るかよ」
「……」
「俺たちは違うだろ!! 俺は俺だ。君は……君だ!」
「……。そうか……。なら……ここからはお前だけの道だ」
「ヤツらが来るぞ、イング……!」
「宇宙怪獣……エグゼリオ重力変動源だよ、お兄ちゃん!」
「宇宙が埋め尽くされてますっ!」
「あれが解き放たれれば、銀河全てが食い尽くされるだろうな――だが!」
「――オレたちαナンバーズの敵じゃない!」
「この宇宙での最後の仕事だ! 行くぞ、アーマラ、イルイ、エクス! ――アカシックレコード、アクセスッ!!」
「了解だ、イング! 輝き唸れ、オウル・レヴッ!」
「わたしたちに力を貸して、ナシム、ゲベル!」
「リミット解除! エグゼクスバイン、マキシマムドライブです!」
「今再び、正と負の力が交わる! テトラクテュス・グラマトン……!!」
「心、技、体を一つに極め――」
「絶望、討ち滅ぼす極光の刃ッ!」
「平和の意志をこの胸に!」
「まとい輝く黄金竜!」
「「「遠からん者は音に聞け、近ばよって目にも見よ!!!」」」
「一騎超神・至高天ッ! エグゼクスバイン・メヴィウスインフィニティ!! 本当の戦いは――、ここからだ!!」