スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIー2「凶鳥は灰から蘇る」

 

 

 新西暦一八七年 ■月※日

 南アタリア島 《リーンホースJr.》の自室

 

 スーパーロボットの必殺技ならいざ知らず、よりによって《リーンホースJr.》の《ビームラム》で殲滅されるとか、《イスラフェル》いと哀れ。

 ブライト艦長もびっくりだったが、オレたちだってびっくりだ。

 

 ちなみに再生復活し、さらに分身して見せて葛城一佐にインチキ呼ばわりされていた《イスラフェル》は、原作通りユニゾンキックで完全に撃破された。

 

 

 新西暦一八七年 ■月☆日

 太陽系外苑部、冥王星近海 《マクロス》の自室

 

 大変なことになった。

 現在オレたちロンド・ベルは、SDF艦隊に所属する巨大戦艦《マクロス》とともに太陽系の端、冥王星付近にいる。

 

 きっかけは、南アタリア島上空に突如来襲した巨人型宇宙人――ゼントラーディだ。

 何の因果か、あるいは必然か。突如地球に来襲したゼントラーディを迎え撃つオレたちロンド・ベルとSDF。だが、そこでアクシデントが起きた。

 彼らゼントラーディと敵対する別の異星人――おそらくエアロゲイターが、地球人類を星間戦争に巻き込むために送り込んだブービートラップだった《マクロス》はコントロールを離れ、。

 さらに暴走による“フォールド”に巻き込まれ、オレたちは冥王星付近まで強制転移させられてしまったのだ。

 

 1G環境から急に無重力に放り出され、展開していたロンド・ベルの機動部隊は大混乱に陥った。

 というか、オレ的には初宇宙である。かつては創作の中でしかありえないような、地球から遙か彼方である。

 《マクロス》のフォールドに巻き込まれてすぐ、宇宙に対応していない機体を救助する傍ら、無重力、三六〇度自由な世界を存分に楽しんだ。

 ちなみに、シーラ様、エレ様が心配でいの一番に《グラン・ガラン》と《ゴラオン》に向かったのだが、「私たちのことは構わず、他の方を」とやんわり諭されてしまった。

 どうやら、オーラ・バトラーやオーラ・バトル・シップに備わる“オーラバリア”は真空にも適応しているらしい。オーラバリア万能説。

 そんなこんなで我を忘れて興奮しすぎて、まぁたリョウトたちに微笑ましがられてしまった。ますますオレの立場が「弟キャラ」に固定されるじゃないか。

 まったく、不本意だ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ■月◎日

 太陽系外苑部、冥王星近海 《マクロス》の自室

 

 広い! 《マクロス》についての感想だ。

 さすが、都市一つを内部に納めたってだけのことはある。《マクロス》ってロボットに変形するんだけど、そのときここどうなってるんだろ……?

 

 街には南アタリア島に住んでいた一般市民がまるまる避難しているため、結構な活気があった。

 だがみんな不安そうにしている辺り、日本地区のパンピーとは違うらしい。あそこ、スーパーロボット関連の研究所を多数抱えてるのに経済が普通に回ってるし、毎日のように地下勢力が暴れ回ってるってのに次の日には街並みが元に戻ってる不思議地帯だからな。

 ちなみに、マサキはたびたび迷うのですでに街中の一人歩きを禁止されてる。

 

 さておき、新しい仲間を紹介しようか。

 《マクロス》の艦載機にしてSDFの主力兵器《VFー1バルキリー》を駆るスカル小隊が、協同してくれることになった。というか、ロンド・ベルがSDFに協力する形になるのか。

 スカル小隊のリーダー、ロイ・フォッカー少佐は歴戦のパイロット。彼がアムロ大尉、クワトロ大尉と仕事をしている姿は猛烈にかっこいい。

 スカル小隊には他にも、天才マクシミリアン・ジーナス、歩く死亡フラグ柿崎速雄、初代トライアングラー一条輝(階級略)となかなか個性的なメンバーが揃っている。

 他にも、ブリッジ・クルーを始めたくさんの人物が増えたが割愛する。一介のパイロットであるオレが、《マクロス》の艦橋に上がることなんてまずないだろうしな。

 ますます大所帯になって、人を覚えるのも一苦労だ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ■月×日

 太陽系外苑部 《マクロス》の自室

 

 《マクロス》は本日も元気に地球へ向けて進んでいる。

 今日はSRXチームに混じって念動力に関する訓練を受けた。リョウトやクスハ、リオも一緒だ。

 訓練は、まんまESPテストみたいなものだった。裏にしたカードの絵柄を読み取る、とかな。

 

 で、イングラム少佐曰わく、念動力の素質的な意味での強度は、

 一位、リュウセイ

 二位、オレ

 三位、クスハ

 四位、リョウト

 五位、洸

 ――越えられない壁――

 六位、アヤ大尉

 七位、リオ

 と、こんな感じらしい。オレとリュウセイは僅差だそうだ。

 まあ、リュウセイは生身で念動フィールド張ったり出来ないから、その点を踏まえるとオレの方が上かもしれないが。

 

 なごやかというか、賑やかに訓練は終わった。

 だが、オレのイングラム少佐に対する疑念は深まるばかり。ときおり感じる無機質な視線もそうだし、オレの念動力が高まってきたからなのか、彼の邪念というべき念を微かにだが関知しつつあるのだ。

 ……やはり、怪しいな。警戒を強める必要があるかもしれない。

 

 

 

 新西暦一八七年 ■月◇日

 太陽系外苑部 《マクロス》の自室

 

 地球圏への帰還の最中、オレたちは人類、いやこの銀河に生きる知的生命体すべての天敵、STMC(Space Terrible Monster Crowd)=宇宙怪獣と遭遇した。

 探査任務を帯びていたSDF艦隊零番艦、《ヱクセリヲン》と共同して撃退したが、それらはほんの一握りにすぎないらしい。正直デカすぎてPTじゃ歯が立たないかと思ったが、意外と何とかなるもんだ。

 

 再び深宇宙へと探査任務に赴く《ヱクセリヲン》からマシーン兵器のパイロット、タカヤノリコ、アマノカズミ、ユング・フロイトの三名が乗機《RX》シリーズとともに参戦した。

 その中でも、ノリコはご同輩らしく、格納庫でオレやリュウセイよろしく大興奮していた。てか、アンタ長いこと宇宙にいたのに何でそんなにロボに詳しいのさ。

 とりあえず、お近づきの印に《ヒュッケバインMkーII》の1/100フルスクラッチモデルと積んでたストックのプラモをいくつかプレゼントしておいた。すごく喜ばれた。どうやら彼女、雑食らしい。

 で、ノリコの“お姉様”、カズミ女史には「ノリコが増えたわ……」と呆れられた。テンドンだから、それ。

 

 ちなみにオレは最強厨、後継機厨にして初代厨、さらに特撮全般もイケる口。リュウセイはバリバリのスーパーロボット派だが、リアルロボットにも造詣が深い。ノリコの知識はかなりディープで筋金入りだ。

 正直、知識面では二人に負けている。お前ら、何歳だよっ!

 

 

 

 新西暦一八七年 ■月◎日

 太陽系外苑部 《マクロス》の自室

 

 イングラム少佐が裏切った。

 案の定というべきか、言葉がない。

 

 ことの発端は、Rシリーズ三機による合体にして真の姿、《SRX》を完成させるための訓練だった。

 まだ足に当たる《Rー3》のプラスパーツがないってのにイングラムは合体を強行、結果失敗したSRXチームを「期待外れだ」と断じ、真意を露わにしたわけだ。

 手始めに、アヤ大尉に見切りをつけたと《R-3》を銃撃し、ご丁寧にも自分が暗躍したことを報告してくれやがった。

 ブリットの件の真相をヤツに告げられ、ショックを受けて茫然自失に陥ったクスハと《Rー3》を大破に追い込まれたアヤ大尉、そして逆上して返り討ちにあったリュウセイを守るため、オレとリョウトはライディース少尉と協力して《RーGUNパワード》と戦った。

 「オレは前からアンタを怪しんでいたよ、イングラム少佐! リュウセイたちにはうまく繕っていたようだが、歪んだ邪念が見え隠れしていたぜ!」と本音を投げつけてやった。

 対するイングラム少佐の返答は「イング、お前の存在は俺の計画に含まれていない異分子、いわばイレギュラー。これ以上の邪魔は許されない」という殺意の言葉と、《ツイン・マグナライフル》の弾丸。

 まあ敵には容赦しない主義のオレだ、激しい戦いの末に《ロシュセイバー》からの《ファング・スラッシャー》で、きっちりばっちり遠慮なく撃墜してやった。“エアロゲイター”の青い人型機動兵器に邪魔されて、肝心の少佐には逃げられてしまったけどな。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月▲日

 太陽系、木星と火星の中間 《マクロス》の自室

 

 月が変わり、《マクロス》はようやく人類の生存圏に辿り着いた。

 ところで、木星は“ジュピトリアン”の勢力圏、まさしく敵地と言っていい。予想通り、道中にはいろいろとハプニングがあったが割愛する。だって、オレ個人に関わるようなイベントは特になかったしなぁ。エアロゲイターの白い機動兵器、“ホワイト・デス・クロス”こと《ジュデッカ》が現れて、リュウセイに突っかかってたことくらいか。

 ともかく、ロンド・ベルの一員として、平和を脅かすあらゆる悪と戦うのみだ。……そういえば、ジュピトリアンの機動兵器の中に黄色くて虫っぽい無人機が混じってたんだが……まさかな。

 

 さておき、特筆するようなことと言えば、DC社創始者ビアン・ゾルダーク博士の愛娘、リューネ・ゾルダーク嬢が《ヴァルシオーネR》とともに加入したことだろう。

 ビアン博士といえば、「人類に逃げ場無し」という提言を残していることで有名な天才科学者だ。

 彼はリューネと何らかの調査のために木星に赴いたあと、消息を絶っている。リューネもどこにいるのか知らないらしい。

 で、そのリューネは立場的にはお嬢様と言ってもいいんだろうが、機動兵器を駆ってお転婆さんである。そんな彼女の乗機、《ヴァルシオーネR》は趣味的というかロボットらしくない。有り体に言うと、そう、美人だ。

 さらさらとしたマゼンタのロングヘアに、愛らしい容姿。プロポーションは搭乗者と違い、スレンダーと言っていいだろう。

 すばらしいな。落ち込んでいたリュウセイが思わず「惚れた!」と奇声を上げるくらいである。

 

 最近は、若干立ち直ったリュウセイとノリコの三人で、格納庫に入り浸っては《ヴァルシオーネR》を眺めている。

 転移の前に買い込んだパテやらプラ板やら何やらで、()()の自作フィギュアを作ってみた。

 むふふ。やはり、ふつくしい……。

 

 

 新西暦一八七年 ×月$日

 太陽系、木星と火星の中間 《マクロス》の自室

 

 今日は一人、《マクロス》艦内の訓練施設で秘密特訓を行った。

 イングラムの言うところでは、オレはどうやら“サイコドライバー”、汎超能力者というものらしい。

 ()超能力者というくらいだから、念動力、つまりテレキネシス以外にもかかわらず使えるんではなかろうか、という思いつきから始めたこの訓練。当初は麗とエレ様から霊力的なものを学んで修得してみたが、視たくないものが見えそうで若干後悔している。

 で、今日は思いつく限りの超能力を試してみた。

 発火能力(パイロキネシス)瞬間移動(テレポート)発電能力(エレクトロマスター)千里眼(クレヤボヤンス)etc.etc.……なんとなくのイメージで再現してしまったのだが、ぶっちゃけどれもこれも「どこのレベル5だ」という威力である。超電磁砲(レールガン)も真似れたしな。

 いつか、ベクトル操作が出来たりするようになるのか? あ、メルヘンは要りませーん。

 

 いろいろ試していたら、シロクロを連れたマサキとリューネが現れた。デートか、妬ましい。

 なんでも「魔法らしき力を感じた」ので様子を見に来たのだとか。シロクロによると「イングには魔力があるみたいニャ」とかなんとか。

 おい、「イング」は魔力も持ってるのか。改めて言うが、どんなチートだ。

 しかし、魔法か、興味深いな。……ラ・ギアスには一度行ってみたいもんだな。

 

 ともかく、まずは基本に立ち返り、テレキネシスを極めてみるつもりだ。

 あまりの調子に乗って力を使いすぎるといろいろやばそうだと「霊感がささやく」のだ。

 それにテレキネシスなら、大勢の敵を吹き飛ばしたり、相手の首を絞めたり、指先から青白い電撃を出したり、いろいろ応用出来そうだしな。あ、最後のは違うか。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月♪日

 太陽系、木星と火星の中間 《マクロス》の自室

 

 なんだか最近、《マクロス》の艦内が騒がしい。特に都市部が浮ついている感じがする。

 なんでも“ミス・マクロス”なる催しが開催されるらしい――と、街中でクスハたちとスイーツを食べていたときにそんな話を耳にした。

 これは、イベントの予感か?

 

 まあ、正直アイドルとかにはあんま興味ないんだけどな。そう言ったら、クスハやリオが意外そうな顔をされた。

 オレをなんだと思ってるんだ、アイツらは。オレが好きな音楽は、ポップでロックな熱い曲なんだよ。

 

 

 

 新西暦一八七年 ×月◇日

 太陽系、木星と火星の中間 《マクロス》の自室

 

 案の定イベントだったよ……。

 経緯を省いて単刀直入に言うと、フォッカー少佐と一条少尉、マックス、それに《マクロス》ブリッジオペレーターの早瀬未沙中尉。それから民間人(例のミス・マクロス、リン・ミンメイとそのマネージャー兼兄)、、それからクスハがゼントラーディの戦艦に浚われてしまったのだ。

 まあ、いろいろあって帰ってきたけどな。

 ゼントラーディとの文化的接触とか、一条少尉のトライアングラーだとか。そういうことはどうでもいいのだ。……妬ましい。

 

 ああ、そうそう。コロニーから送り込まれた五人のテロリ――もとい、ガンダムパイロットたちが参入した。どうやらみんなして《マクロス》に紛れ込んでいたらしい。

 いつのまにか姿を消していたデュオの《ガンダムデスサイズ・ヘル》(どこにそんな強化が出来る部品があったんだ)、《ガンダムサンドロック改》のカトル・ラーバ・ウィナー、トロワ・バートンと《ガンダムヘビーアームズ改》、張五飛の愛機《アルトロンガンダム》。そして主人公、ヒイロ・ユイの《ウィングガンダム》。

 参加のタイミングはまちまちだったが、協力関係は地球圏に帰還するまでとのことでいささか残念だ。宇宙怪獣や異星人の脅威を目の当たりにして、地球人同士の諍いが無意味だと気づいてくれればいいんだが……。

 

 

 新西暦一八七年 ×月◎日

 太陽系、火星付近 《マクロス》の自室

 

 物資補給のため、火星(テラフォーミング済み)に立ち寄った《マクロス》。破棄された基地から救難信号が関知されたとかで一悶着あった。

 まあ、ゼントラーディの罠だったわけだが。

 

 調査のため、基地内に潜入した早瀬中尉の危機を救ったのは、快男児こと破嵐万丈。愛機《ダイターン3》とともに宿敵メガノイドを打倒したベテランの特機乗りにして、持て余した暇で“破嵐財閥”なる一大企業群を経営する大富豪である。

 それはいい。万丈さんはまさに“オトナ”って感じの頼りになる人だし、《ダイターン3》は強力なスーパーロボットだ。SDFとロンド・ベルの陣容が一層、厚くなったと言えるだろう。

 ただ、かつてのメガノイドの反乱で被害に遭った入植地の名前が問題なんだ。

 「ユートピアコロニー」っておい、作品違うだろ。フラグか? 未来の参戦フラグなのかっ!? なんか、某社の試作宇宙戦艦が跡地の調査に向かったらしいとか万丈さんも言ってたしさぁ。

 もしもそうなら、近いうちに悲惨な目に遭うであろう()()()……オレに救えるか?

 いや、まずはこの戦争を乗り越えることが先決だ。後のことは、そのとき考えるっ!

 

 

 

 新西暦一八七年 ♪月●日

 地球圏、衛星軌道上 《グラン・ガラン》の一室

 

 オレたちが地球圏を離れている間、ジオンやティターンズの連中はもとより、異星人や地下勢力が好き勝手やってくれているらしい。

 と言うわけで、オレたちSDF艦隊及びロンド・ベルは、三艦に分かれて敵対勢力に対抗するため地球圏各地に進撃することになった。

 オレは《グラン・ガラン》に同乗して、月方面に向かうことになっている。

 月はマオ・インダストリーやアナハイム・エレクトロニクスなど、ロンド・ベルを後援する組織が存在する場所だ。同時に、宇宙という敵対勢力に狙われやすい立地にあるわけで。

 苦境にさらされていることは想像に難くない。一刻も早く、救援に向かわなきゃな。

 

 さあて、地球の大掃除としゃれ込みますか。

 

 

 新西暦一八七年 ♪月△日

 地球圏、宙域 《グラン・ガラン》の自室

 

 新しい仲間が加わった。

 シーブックのガールフレンド、ベラ・ロナことセシリー・フェアチャイルド。《F91》のプロトタイプと言える《F90V》を駆って、ロンド・ベルに協力するそうだ。

 まあ、地球圏に戦乱をもたらしている一端を実の肉親が担っているとなれば、思うところもあるのだろう。

 ……シーブックめ、彼女連れとは妬ましい。

 

 

 

 新西暦一八七年 ♪月♯日

 地球圏、宙域 《グラン・ガラン》の自室

 

 普段温厚なヤツは、怒らすとヤバい。今回の感想だ。

 地球圏外に出ている間、カトルは守ろうとしたコロニーのものたちに、家族を皆殺しにされた。原因はOZの離間工作だ。

 そしてカトルはコロニー製ガンダムのプロトタイプ《ウイングガンダムゼロ》を持ち出し、復讐に走った。憎悪と《ゼロ》に搭載された“ゼロシステム”に精神を蝕まれた結果、(くだん)のコロニーを破壊してしまった。

 気持ちは痛いほど解るが、やりすぎだ。

 トロワと協力し、《ゼロ》を《エクスバイン》でぶん殴ってコクピットから引きずり出した。説教をかますのはガラじゃないから、後はトロワに任せといたけどな。

 総括すると、群集心理とオレたちの操る機動兵器の恐ろしさを改めて実感した一日だった。

 

 

 

 新西暦一八七年 ♪月○日

 極東地区近海 輸送艦《アウドムラ》艦内

 

 地球に戻ってきたオレは現在、SDF艦隊本隊を離れてエゥーゴの支援組織、カラバの所有する輸送艦《アウドムラ》で極東は上海にある国際警察機構の拠点、梁山泊に向かっている。

 クスハとリョウト、リオの何時ものメンバーと大作少年、銀鈴さんが同行している。

 目的は、現地で秘密裏に調整中している《MkーII》と《弐式》の後継機の受領だ。ついでに、オレにも新しい機体が与えられるらしい。

 《グルンガスト参式》と《ヒュッケバインMkーIII》――それが、リョウトたちの新しい機体だ。

 オレに与えられるのは、一部

リョウト機の予備パーツを用いて組み立てられた専用の《ヒュッケバインMkーIII》。動力炉のブラックホール・エンジンは、二人の機体に搭載される予定のトロニウム・エンジンにやや出力が劣るものの、機体自体がオレの適正に合わせて近接戦闘向けに設計されているらしく、総合的には負けず劣らずと言っていいだろう。 

 確かに《エクスバイン》もいい機体だが、正直力不足になってきている感が否めない。かつてのアムロ大尉じゃないが、オレの反応に……いや、念に機体が追従できていないのだ。

 あるいは、いつかTーLINKシステム自体にも限界が訪れるのかも知れないが。

 

 現地に着くまで、もう一眠りするかな。

 

 

 

 新西暦一八七年 ♪月◎日

 極東地区、上海 病院の一室

 

 今オレは、国際警察機構の傘下にあるとある病院の一室でこの日記を記している。

 

 国際警察機構の本拠地、梁山泊。

 そこで調整を受けていたオレのブラックホールエンジン搭載型《ヒュッケバインMkーIII》は、突如襲撃してきたBF団の十傑集“素晴らしき”ヒッツカラルドによって、《グルンガスト参式》とともにずんばらりと真っ二つにされてしまった。

 正直またかBF団!と言った感じだ。

 オレもロブに作ってもらった携帯型念動光子剣“ライトセイバー”で立ち向かったが、十傑集相手にはほとんど歯が立たなかったのは歯痒いばかりだ。

 

 その混乱の最中、Dr.ヘルの手勢である機械獣とともに強襲してきた中華ロボ、《龍王機》《虎王機》を迎撃するため、やむなく既存の機体で出撃した。

 そこに乱入するイルムのおっさんとブリットくん。心を入れ替えたのか、なにやら協力してくれるらしく。

 オレが《龍王機》を、ブリットが《虎王機》をそれぞれクスハ、リョウトを相方に対峙した。

 が、中華ロボは思いのほか手強く、《虎王機》の牙がブリットの《MkーII》を砕き、《エクスバイン》もまた《龍王機》により大破に追い込まれ、深手を負ったオレは意識を失った。

 

 人伝だが、オレとブリットがやられた後、――有り体に言えばブチギレた――リョウトがTーLINKシステムに隠されたもう一つの機能、“ウラヌス・システム”を発動させ、外部から《MkーIII》を起動。不安定だったトロニウム・エンジンを完全制御し、《MkーII》のコクピット部であるパーソナル・ファイターでのドッキングを敢行した。

 さらに、同じくウラヌス・システムを発動させたクスハの強念により、操られていた《龍王機》と《虎王機》の自我を蘇らせ、両機とコンタクトに成功。なんとか無事だったブリットと力を合わせ、二機が合身した超機人(スーパーロボット)《龍虎王》があしゅら男爵らを撃退した――らしい。

 おい、オレはブリット(ヒロイン)と同じ扱いか。まあ、リョウトがオレのためにキレてくれたことは素直にうれしいけどな。

 

 さておき。

 幸いオレの《MkーIII》の心臓部は無事だった――というか、無事でないと上海がバニシングなのだが――ため、機体はなんとか再生できた。実際に頑張ったのは、ロブやカークさんらスタッフのみんなだけどな。

 

 形式番号PTXーEXH《エクスバイン・アッシュ》、それがオレの新しい機体の名前だ。

 無事だった《MkーIII》の心臓部と予備パーツ、残されたリョウトの《MkーII》のボディを大破した《エクスバイン》に組み込み修復した機体で、《エクスバイン》のフォルムをベースとしつつ、各部に赤と橙色の“パッチ・アーマー”が装着された左右非対称のデザインをしている。

 この追加パーツには伸縮性・耐久性に優れた“ADテープ”で封印が施されており、さらに《ガンダムF91》の開発元、サナリィから供与された試作型のアンチ・ビーム・コーティングマント“コーティング・クローク”を装備し、外観が大きく変化した。

 総じて、とても厨二マインドを刺激される見た目である。

 

 最大の特徴とも言える大型の念動感応剣《T-LINKセイバー》とそれを納める鞘を兼ねる盾《ストライク・シールド》は、もともとオレの《MkーIII》に搭載される予定だった武装で、幸いにも取り付け前だったことから損傷を免れた。

 また射撃武器として《エクスバイン》と同じ《フォトン・ライフルS》、《MkーIII》と共通の武装《グラビトン・ライフル》を持ち、射程に隙はない。

 防御システムは念動フィールドで、発生装置が《Rー1》と同じく両肘にあるため《TーLINKナックル》も使用可能。テスラ・ドライブにより空中戦にも対応済みだ。

 機体名は英語の「灰」とフランス語の「H」を意味し、破壊された凶鳥(ヒュッケバイン)が不死鳥のように 灰の中から蘇ることを示すのだそうだ。

 継ぎ接ぎだらけの急造機とはいえ、元が優秀な機体ばかりなため、完成度は高いと言えるだろう。

 

 トロニウム・エンジンの調整と、《MkーII》のコクピットとのマッチング作業に手間取る《MkーIII》。《参式》の残骸から回収されたTーLINKシステムや、現代の部品の取り付け作業で身動きのとれない《龍王機》《虎王機》に先んじて、オレと《アッシュ》はSDF艦隊本隊に合流する。

 ほとんど一から組み上げた《アッシュ》がいち早く完成したのは、リョウトたちがオレの機体を優先してくれと頼んでくれたかららしい。すばらしきは友情かな、だな。

 

 ……さて、さっさとベッドから抜け出して、みんなのところに向かおうか。相変わらず頑丈なこの身体には、感謝してもし切れない。

 この身はマシンナリー・チルドレン、紛い物の命だ。――だけど、平和を守りたいって気持ちに偽りはないはずだから。

 

 

    †  †  †

 

 

 地球連邦軍極東支部。

 いくつもの特殊な研究を抱えた日本地区を守る、地球防衛の要とも言える特別な場所である。

 そんな日本を、ひいては地上すべてを支配せんと企むドレイク・ルフトの軍勢の襲来に乗じて現れたのは、イングラム・プリスケン操る漆黒の堕天使――《アストラナガン》。

 スパイ活動を通じて収集された地球、バイストン・ウェル、ラ・ギアスの技術と、“エアロゲイター”――ゼ・バルマリィ帝国の技術を以てして建造された恐るべき機動兵器である。

 《アストラナガン》の圧倒的な力の前に窮地に陥ったSRXチームとSDF艦隊。

 

『フッ、ここまでのようだな』

『くっ、イングラム!』

『せめてもの手向けだ。虚空へと消え去れ、リュウセイ。廻れ、インフィニティー・シリンダー……』

 

 膝を突く《Rー1》を見下ろす漆黒の堕天使が、その力を示さんとしたその時だ。

 

『……!』

 

『っきゃ、この念は!』

『うあ! ……相変わらず、すげー念してるぜ』

 

『洸っ』

『っ、来るのか、彼が……!』

 

『カミーユさん、これってやっぱり?』

『間違いない。この気配、アイツのものだ』

『アムロ、また力を増したようだな、彼の念は』

『ああ。それに、以前カミーユたちの言っていた通り、確かに太陽のようなイメージを受ける』

 

 強念者やニュータイプなど、特殊な感応能力を持つものたちが強烈極まる念を関知して反応する。

 それは《アストラナガン》を操るイングラムも同様だった。

 

『ム……!』

 

 一筋の閃光が戦場を駆け抜ける。

 攻撃を停止し、唐突に展開された《アストラナガン》の念動フィールドが瞬く間に切り裂かれ、掲げられた《Z・O・ソード》に火花が走った。

 黒き機械天使を襲った閃光は、一息に基地の建物の上に降り立った。

 翻る朱い外套――

 乱入者は、眼前に発生させた黒い重力の渦から長大なライフル――《グラビトン・ライフル》を取り出し、超重力の砲撃を照射する。

 

『お前は――』

 

 再びの念動フィールドでそれを防ぐ《アストラナガン》。イングラムは僅かに警戒を滲ませて、襲撃者に意識を向けた。

 そして、SDFの仲間たちが彼の名を呼ぶ。

 

『イング!』

 

「遅れてすまない、みんな。また会ったな、イングラム・プリスケン」

 

 無骨な(フェイスマスク)で表を隠し、朱色の外套を靡かせる騎士然とした機動兵器(パーソナルトルーパー)――《エクスバイン・アッシュ》を駆る銀髪の少年、SDF艦隊が誇る“エースアタッカー”、イングが快活に言う。

 

『イング! そいつが新しいヒュッケバインか? カッコいいじゃねーか!』

「ありがとな、甲児!」

『遅せーぞ、イング! 道にでも迷ったか?』

『そんニャ、マサキじゃニャいんだから』

『そうそう』

『シロ、クロ! 一言多いんだよっ』

『そのPTで大丈夫なのか、イング。継ぎ接ぎのように見えるが……』

「心配すんな、カミーユ。コイツは、アッシュは見た目通りの張りぼてじゃないんだぜ。あとマサキ、シロクロの言うとおりお前と一緒にすんな」

 

 甲児、マサキ、カミーユ――イングにとって気の置けない友人と呼べるものたちが、次々に歓迎の声を上げた。

 

『遅いわよ、バカイングっ! 来るなら来るで、もっと早くから来なさいよ!』

『あ、アスカ、そんないい方ってないよ』

『イングさん、助かりました』『ハロッ、ハロッ』

「おうおうちびっ子ども、よく頑張ったな。後はお兄さんに任せなさい」

『派手な登場の仕方だねぇ、お兄さん。オレたちは前座ってワケ?』

「はは、ま、ヒーローは遅れてやってくるってことさ」

『……お兄さんって、アンタあたしたちと見た目変わらないじゃない』

『まあまあ』

 

 アスカが文句を垂れ、シンジが宥める。真面目なウッソと、おちゃらけたジュドーのコメントにイングは軽妙に応じる。

 その傍らで、再び管を巻く赤毛の少女を気弱な相方がなだめるのはいつものことだった。

 

『それにしてもイング、どうやってここに?』

「テレポートですよ、アムロ大尉。オレはサイコドライバー、“汎超能力者”らしいのですから。その力をTーLINKシステムで増幅して、アッシュごと上海から転移してきました」

『んな無茶な』

「疲れるから日に何度も出来ないし、パーソナルトルーパー一機跳ばすので精一杯だから、戦術的には役立たずだけどな」

 

 アムロの呈した疑問にさらりと答える。横で聞いていたリュウセイが、思わず至極真っ当なツッコミを入れた。

 彼がそれなりに無茶をして駆けつけたのにはわけがある。

 この“世界”と縁もゆかりもない自身を受け入れてくれた“仲間”、それが今のイングの「護りたいもの」。そのためなら、彼は地球の裏側へだって駆けつける。

 幾多の戦いと出会いを経て、少年は戦士と呼べるまでに成長した。もともと持っていたのだろう、心に正義の炎を灯し、邪悪に怒り、絶望と理不尽に立ち向かう戦士としての資質を。

 

「さぁてリュウセイ、オレがちょっとばかり時間を稼いでやる! その間に体勢立て直して、ばっちり合体決めてくれよなっ!」

『あ、ああ! 任せるぜ、イング!』

 

 仇敵から意識を逸らさず、友に後を託す。自分はあくまで露払いなのだと割り切る態度は、仲間を大切にする彼らしいものだった。

 仲間との語らいを切り上げたイングは表情を改めて、律儀にも待っていたらしい黒い機動兵器へと意識を向ける。

 

「という訳だ。アンタの相手はオレがする」

『フッ……愚かだな、イング。そんな継ぎ接ぎだらけの機体で、俺のアストラナガンと戦うつもりか? かつてのヒュッケバインのように、跡形もなく消滅(バニシング)させてやろう』

「言ってろ。凶鳥は灰から蘇る……このアッシュをただのパーソナルトルーパー、ただの急造機と思うなよ。消滅(バニシング)するのはイングラム、貴様の方だ」

 

 安い挑発に毅然と言い返し、イングは操縦桿を握り直す。

 欠陥を修正されたブラックホール・エンジンを搭載した《アッシュ》は、正しく初代《ヒュッケバイン》の血を引いた凶鳥の眷属である。

 さらに《EX》、《MkーII》、《MkーIII》――歴代の《ヒュッケバイン》の力を受け継いだその姿は手負いなれど、凶鳥の名に偽りはない。

 

「視えるぞ……イングラム・プリスケン。貴様の苦悩が」

『苦悩だと? 俺にそんなものはない』

「そうかよ、あくまでシラを切るつもりなら――」

 

 《アッシュ 》の頭部を覆った防護用のフェイスマスクの裏側、ゴーグルに覆われたツイン・アイが光る。

 

「貴様を縛る邪念の鎖ッ、このオレが断ち斬る! シーケンス、TLS!!」

 

 イングの有する強烈な念がTーLINKシステムにより増幅され、スペック上の性能を超えた力を《アッシュ》に与える。

 背中の外套で姿を隠し、翻した次の瞬間には左手に《フォトン・ライフルS》を携えていた。

 建物の上から大きく飛び上がった《アッシュ》は、左手に構えたライフルを乱射する。激しい集中砲火を受け、《アストラナガン》の念動フィールドがついに破れた。

 重力に従い《アストラナガン》目掛けて自由落下する中、《アッシュ》はライフルを腰にマウントして《ストライク・シールド》から延びる柄を掴む。

 

「セイバー、アクティブ! はあッ!」

『……!』

 

 激突する《TーLINKセイバー》と《Z・Oソード》が激しい火花を散らす。

 両機の体格差により激しい衝撃がコクピットを揺るがすが、イングは構わず機動を続けた。

 

「はあああッ!」

 

 テスラ・ドライブの限定的慣性制御により《アッシュ》は縦横無尽の機動を見せ、凄まじい速さで斬撃を繰り出す。

 対する《アストラナガン》は剣を手に翠緑色の光の翼、《TーLINKフェザー》を展開して同じく高速で機動する。

 特機と呼んで差し支えない《アストラナガン》相手に、《アッシュ》は互角の剣戟戦を繰り広げている。

 これはブラックホール・エンジンの強大なパワーと、格闘戦を意識して特別に建造されたHフレームによる恩恵だ。どちらも、本来の《MkーIII》から受け継がれたものだった。

 

「オオオオッ!」

 

 一瞬の隙を貫く神速の突きとともに、《アッシュ》が《アストラナガン》の背後に切り抜ける。

 緑の軌跡を残すテスラ・ドライブにより、空高く舞い上がった《アッシュ》。イングの強念によって、機体全体が紅黒い発光現象を引き起こした。 

 

「TーLINKフルコンタクト! 覚悟しろ、イングラム・プリスケン!!」

 

 イングの念が最高潮を迎え、眼前に構えた《TーLINKセイバー》の刀身を翠緑の光が覆っていく。

 弓のように大きく後ろへ引き絞った剣が、ついに放たれる。

 

「砕け散れぇぇぇぇッ!!!」

 

 空間を絶つほどの斬撃。

 刀身に込められた莫大な念が解放され、大爆発となって炸裂した。

 神速で斬り抜けた《アッシュ》はそのままの速度で着地、地面を滑りながら《ストライク・シールド》の鞘に剣を納める。爆風に煽られて、コーティング・クロークが大きくはためいた。

 

『ほう……寄せ集めの機体にしては、そこそこのパワーはあるようだな』

 

 晴れていく念動爆発の噴煙から、胴体に深い傷痕が刻まれた黒い堕天使が現れる。

 しかし、致命傷に思われた傷は見る見るうちに塞がっていく。《アストラナガン》の装甲に用いられたズフィルード・クリスタルの力だ。

 

『それにその念、あれからますます高まっているようだ。やはり危険だな、お前は』

「ハッ、そんな余裕でいいのかよイングラム。今日のオレは、狂言回しで露払いが仕事だぜ?」

『何? ――これは……!』

 

 イングラムの声に、彼らしくない驚愕と動揺が滲む。

 にやりと不敵な笑みを口元に浮かべたイングは勝利を確信し、高らかに宣言する。

 

「さあ見せてやれ、リュウセイ! 天下無敵のスーパーロボットをッ、お前の鋼の魂を!!」

『応! 行くぜッ、ライッ、アヤッ! ヴァリアブル・フォーメーションだ!!』

 

 生命の危機により働く生存本能ではなく、自らの意志の力で“ウラヌス・システム”を発動させたリュウセイが今、Rシリーズの真の姿を顕現させようとしていた。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八七年 ♪月●日

 地球、サンククングダム周辺海域 《グラン・ガラン》の一室

 

 極東基地での一戦は、《SRX》の完成を持って幕を下ろした。もちろん、オレたちの勝利でな。

 しかし、あれは我ながら最高の登場の仕方だった。

 前々から暖めていた決めゼリフも言えたし、感無量だな。

 

 さておき、SDF艦隊は再び三隊に分けられ、地球各地に赴くことになった。

 経緯は省くが、オレは前回と同じく《グラン・ガラン》隊に所属して、完全平和主義を唱う国、サンクキングダムへ。リョウトとリオは、《ラー・カイラム》でジオンやティターンズの連中とやり合いに宇宙(ソラ)へ上がり、クスハとブリットは大作少年らと《ゴラオン》に合流して極東地区で暴れる地下勢力に対応する予定だ。

 

 そういえば、アムロ大尉が《νガンダム》に、ゲッターチームが《真ゲッターロボ》に乗り換えてたっけ。

 次に合流したら、自作モデルの資料写真を撮らなきゃな。

 


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