そしてタイトル通り、桔梗側の海の登場です。
バーテックスたち天の神との争いが終わり、大赦と天の神を裏切り、勇者候補であった鈴藤灯華たちを利用した魔王を退治した讃州中学勇者部の勇者たちは平穏な日々を送っていた。
大赦のとある一室では一人の少女は今までの出来事が書かれている報告書を読み返していた。
「………境界の勇者、神宮桔梗。魔王討伐の後、造反神と戦った」
長い黒髪で巫女服姿の少女はそう呟くが、回りにいる仮面を着けた人たちは彼女のつぶやきが聞こえないような素振りだった。
「そして更に別次元の私がいる世界で、新たな可能性を秘めたバーテックスと戦った」
少女は報告書を机に置き、立ち上がった。
「平行世界というのは聞いたことがあったけど、本当に存在するなんてね……あなた達はどう思う?」
少女は仮面の人たちに声をかけるが、誰も返事を返してくれなかった。
「…………あの返事くらいしてくれないかな?」
今にも泣きそうな声でそう告げた瞬間、仮面の人たちは動揺していた。何でこう話しかけても誰も返事をしてくれないのだろうか?何、私が大赦のトップの家系で、神樹様の声が聞ける巫女だから?
「乃木ちゃんは楽しそうでいいな……私も讃州中学に行ってみたいな……」
私の一言で余計周りの人達が動揺した。何でこんな風になったのだろう?はぁ、乃木ちゃんあたり遊びにこないものか……もしくは彼女あたりが……
『上里海さんですか?』
どこからともなく声が聞こえた。周りにいた人たちもその声の主を探していると、私の目の前に白い光の玉が現れた。
「あなたは……天の神様の関係者ですか?」
乃木ちゃんの他に遊び相手の一人、天の神様。彼女と神樹様が和解した後度々私のところへ来ては話し相手になってくれている。最初は周りの人達はハラハラしながら見ていたけど、今はそんな事はなかった。
『いいえ、違います。私は………正直に言って分かるかどうか微妙な感じですが……言うなれば幸福の女神です』
幸福の女神……聞いたことが無い。もしかして神樹様と融合した土着神の一人だったり?
「あの女神様、こうして私の所に来てくれてうれしいですが、神樹様から離れて良いのですか?」
下手すれば四国の結界が一部壊れてしまうんじゃないか心配でしょうがない。
『あの、私は………』
『ちょっと私達があんな集合体の一部になるわけないじゃない!!』
今度は水色の光の玉が現れた。一体何が起きてるのだろうか?
『あの、先輩……お願いですから』
『この子、本当にあの子と同一人物なの?性別だけじゃなくって察するのもちがうんじゃないの?』
さっきからこの光の玉は何の話をしているのだろうか?すごく気になるし、回りにいる人たちもどうすれば良いのかオロオロし始めてるし……
「えっと、貴方は?」
『私は水の女神よ。本来別世界への干渉は禁じられてるけど、あの天の神もやってることだし、別にいいわよね』
女神様が禁止されたことをやるのはどうかと思う。というかさっきから気になっている女神っていうのは一体何なんだろうか?
「えっと、女神様達は土着神様とは違うのですか?」
『はい、違います。私たちは神格的には土着神の上です。言うなれば天の神と同じ神格を持っています』
『なにせ、崇拝している人間の多さが違うからね』
「はぁ………」
何となくわかったけど、なんでまたこの女神二人は私の所に現れたのだろうか?それに同一人物って何のことだろう?
『すみません、カズマさん。申し訳ありませんがアクア先輩をちょっと……』
『しょうがねぇな。アクア、少し黙ってような』
『ちょっと私だって女神なのよ。何で黙らなきゃいけないのよ』
『いいから、話が進まないだろ』
幸福の女神様の方から男の人の声が聞こえると、水の女神様が一瞬で姿を消した。さっきから何なんだろうか?
『えっと、話を戻しますね』
「はい」
『私と先程の水の女神は言うなれば、そちらとは全く違う世界……平行世界にいる女神なんです』
「平行世界……以前神宮桔梗が訪れたという世界ですね。確か天ちゃんは自由に行き来しているという話を聞きました」
『はい、そう……天ちゃん!?』
つい、天の神様のことをあだ名で呼んでしまった。だって友達だから仕方ないもん
『えっと、まぁ貴方がおっしゃっているとおりです。こちらにはこちら側の貴方もいることは?』
「はい、報告は聞いてます。死んでいるけど女神様の力で勇者になられているんですよね。一度だけ会ってみたいですが……」
『それはいずれ……私がこうして現れたのはこれから先起こる………というよりも天の神が言うには起きていると言うべき異変について話をしにきました』
「異変?そちらの世界とは違い、天の神とは和解し、失った土地の再建をしているので、異変なんて……」
『いえ、もうすでに起きていると天の神は言っています。彼女は異変解決のためというべきか……キメラを倒した時に勇者を連れてきたのだから、そっちもどうにかするべきと………』
何だか幸福の女神様は苦労してるな……というか天ちゃんも無茶なことを……
『とにかく異変は起きているんです。あなた方は忘れているかもしれませんが、何かを忘れているはずです』
忘れているはず?私は回りにいる人たちを見るが、誰も見に覚えがないみたいだ。一体私たちは何を忘れているというのだ?
『天の神はそちら側の勇者なら思い出すはずだと言っています。そして思い出した時、新たな戦いが始まると……』
戦いがまた始まる……また彼女たちに辛い役割を背負わせることになるの
「境界の勇者だけでは駄目でしょうか?彼ならば……」
『彼の持つ力では今回の異変を乗り越えるのは無理でしょう。だからこそ天の神は彼に……神樹と私の祝福を受けた彼の力を貸してほしいと言ったのでしょう』
「……………」
あらたな異変……一体何が起きているの?だけどこうして女神様が来たのだから……
「分かりました。私、上里海は願います。現状起きている異変を解決するために女神様の力をお貸しください」
『分かりました。海さん、貴方の願い確かに聞きました。今から祝福を受けた世界より勇者を送ります』
女神様が消えた瞬間、今度は天井を突き破って何かが落ちてきた。そこには私に似た顔をした男の子がいた。
「あの天の神は……有無を言わさず送りやがって……」
彼は文句を言っているけど、でも私には分かる。彼はきっとそれでも助けてくれるだろうって………
彼は私に気が付き、驚いた顔をしていた。
「はじめまして、私は巫女、上里海です。貴方は?」
「僕は上里海。勇者です」
私と彼は握手を交わした。そして今起きている異変が何なのか知るべきだ。
讃州中学
僕は屋上で一人絵を描いていた。何でだろう?いつも隣に誰かが一緒にいたはずなのに……
「なんか大切な何かがあったはずなのに………」
こんな事を感じるのは僕だけなのだろうか?もしかしてここ最近巻き込まれた造反神事件やキメラ事件のせいで、戦いたいという気持ちがこみ上げているのか?
「まさかな………」
「桔梗く~ん」
友奈が屋上の扉の方から僕の名前を呼んでいた。何かあったのか?
「風先輩が呼んでるよ~」
「そういえば集中しすぎたな。すぐ行く」
僕は呼びに来た友奈と一緒に部室へ戻るのであった。
最後の最後で主人公の桔梗登場ですが、何だか一話にしては出番がすくなった……
二人の海の会話は次回もあります。というよりも合流までやる予定です。
因みに二人の女神の出番はこれで終わりかも?