勇者の花と桔梗の花 勇者の章   作:水甲

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第10話 天罰

樹に注意するように伝えたけど、本当に大丈夫なのかわからなかった。そんなことを家に帰ってからもずっと考えていた。

そんな時だった。樹からメッセージが届き見てみると……

 

『今、病院です。お姉ちゃんがはねられてしまって……』

 

そのメッセージを見て、僕は急いで病院へと向かうのであった。何だか嫌な予感がする

 

 

 

 

 

 

病院に行くと美森達も来ていた。皆心配できたのだろうけど、僕は樹の腕に巻かれた包帯が目に入った。

 

「樹、その包帯……」

 

「桔梗さん、お姉ちゃんが轢かれそうになって助けようと思って……」

 

助けようとしたのがいいが、一緒に巻き込まれてしまったのか……でも樹は軽い怪我で済んでるみたいだけど……

 

「先輩は?」

 

「まだ……」

 

美森が俯く中、僕は皆以上に暗い顔をしている友奈を見つめた。もしかして先輩に相談したからって思ってるのか?それに樹も巻き込まれてしまったって……だけど樹は多分僕のせいだ……

 

すると病室から先輩がストレッチャーに乗った状態で出てきた。見る限り怪我が酷い。

 

「いやー、参った参った」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「樹、怪我大丈夫?」

 

「お姉ちゃんこそ……」

 

泣きそうになる樹に優しい笑顔を向ける先輩、自分よりも妹のことが心配って……

 

「皆ごめんねー、わざわざ来てもらっちゃって…」

 

「あの命に別状は……」

 

「それは大丈夫だから。大袈裟ねぇ」

 

「でも受験生に何て酷な事を…」

 

「それは言わないで!試験は受けるから!絶対受けるから!」

 

命に別状もないみたいで、一安心だけど……やっぱりこれってこの痣が関係してるんだよな……

 

「ごめんね。皆、桔梗、悪いんだけど私がいない間、樹のこと頼める?」

 

「え、えぇ」

 

「お姉ちゃん、私なら大丈夫だよ」

 

「でも……」

 

「もし何かあったら、ちゃんと相談するから……」

 

「そうね、樹も自立の練習みたいなものでちょうどいいかもしれないわね」

 

「ちょっと夏凛、あんたね……」

 

いつもみたいな空気に変わったけど、友奈だけはまだ浮かない顔をしていた。そして僕も……

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院からの帰り道、僕は夏凛と園子の二人を送っていくことにした。友奈と美森は海に任せたけど、海も何だか考え事をしていたのが気になった。何かわかったのか?

 

「それにしても風も樹もついてないわね。東郷助けたばっかりなのに事故なんて……」

 

「大赦もはねた車をおまわりさんと一緒に探してるみたいだよ~」

 

何というかはねた人が色んな意味で可哀想だな………

 

「まぁ無事だったから良かったわね。下手すれば警察と大赦に国防仮面が混じってたわよ」

 

「美森ならやりそうだな……」

 

「……きょうくん、元気ないけど大丈夫~」

 

園子が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。気取られないようにしていたのに、園子はそこら辺鋭いな。だけど話すことは出来ないし……

 

「いや、大丈夫だよ。ほら、寒いし早く帰ろう」

 

「そうね……これで風邪引いたらシャレにならないしね」

 

帰るように促す中、園子はじっと僕のことを見つめていたことに気がついていなかった。

 

「………何かあったのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

今回の先輩と樹の怪我の理由って、やっぱり友奈が話したことが原因なのか?だけどあの時友奈は先輩にしか話していなかった。樹は巻き込まれただけなのか?

 

「海くん、何か考え事?」

 

「ん?あぁ、ちょっとあっちの世界のことが気になって……何かトラブルに巻き込まれてないかって……」

 

「海くん、いつになったら帰れるんだろうね」

 

友奈は笑顔でそう言うけど、何だか元気がない感じがする。もしかして先輩のこと気にしてるのか?

 

「それじゃ友奈ちゃん、海くん、また明日」

 

東郷はそう言って、家に入るのであった。僕ら家に入ろうとした時、また端末に連絡が入った。

 

「ごめん、友奈。先に入っててくれ」

 

「う、うん」

 

僕は友奈と別れ、人気のないところで端末を取り出した。連絡してきたのってもしかして、エリスさんかな?何かわかったのかと思いながら、電話に出ると……

 

『ふはははは、異世界でも女の尻を追っかけている小僧よ』

 

僕は直ぐ様電話を切った。何で相手がバニルさんなんだよ。だけどすぐに端末に電話がかかってきた。

 

『どうした。吾輩と話したくないのか』

 

「こっちはエリスさんが何か掴んだのかと思って期待していたんだよ」

 

『世界が違うせいで貴様の悪感情が食えないのが残念だな。だが、貴様が知りたいことを掴んでいると言ったら……』

 

「………何が目的だ?」

 

バニルさんの場合は何かしらの見返りを求めるはずだ。まさかタダで教えるというわけ無いだろうな

 

『目的?強いて言うならあの別世界の天の神を早いところ返したいというくらいだな。奴が誂った駄女神が八つ当たりに店の商品を駄目にしていくからな』

 

本当にそれだけなのか疑わしいけど、折角だから聞いておくべきだな。

 

「それで僕が知りたいことって?」

 

『そちら側の勇者二人についてだ。奴らは罰を受けている。それは気がついていたか?』

 

「薄々は……」

 

『ならばその罰はどのようなものかは知らないみたいだな。罰を受けた者はその罰のことを告げようとすれば、それを聞いた人間に災いをもたらすであろう』

 

やっぱり予想していたとおりだ。皆に降り掛かっていた災いはそれが原因なんだな

 

『そしていずれ罰を受けたものの心は、いずれ壊れていくであろう。貴様らが言うところの決まりすら出来ずにな』

 

僕らの決まり……五ヶ条のことか。バニルさんが言っているとおりならどうにかしないと……

 

「救う方法はあるのか?」

 

『………悪いが教えることはできん』

 

そう言い残してバニルさんは電話を切るのであった。本当にこの人は……

さて、本当にどうしたものか。天罰から二人を救う方法はあるのか……それに僕は……

 

「関わっていいかどうかなんて悩んでいる暇はないよな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗SIDE

 

授業中、ずっと考えていたが本当にどうすることもできないのか。誰かに話そうとすることも駄目、話さず対策を練ろうとしても駄目。

更に痣の影響なのか、勇者を守るはずの精霊の力が使えなくなっている感じだ。普通だったら車にはねられても先輩や樹のことは精霊が守ってくれるはずなのに……厄介なシステムだよ。本当に……

 

もしも誰かが僕らのことに気がついた時は、どうなるんだ。やっぱり痣の力が発動してしまうのか……だとしたら危ないのは園子になる。

 

海も本当に何も聞いてないのか?この痣について詳しいのは天の神だけ。だけど奴は別世界にいる。そして連絡を取れるのは海だけ……海は僕らに何も言ってこないとなると本当にどうにもならない

 

「海くん?」

 

気がつくと美森が僕のことをじっと見つめていた。また顔に出ていたか?

 

「何だ?美森……」

 

「何かあったの?ここ最近ずっと悩んだ顔してるから……」

 

「ごめん。話したいけど………結構な機密だから言えないんだ」

 

これ以上美森には心配はかけさせたくない。それに僕らのことに気がついたらきっと美森はまた自分を責めてしまう。それだったらこのまま黙っているしかない。

 

 

「桔梗くん、もしも辛くなったら話してね」

 

辛くなったら話せか……話せないことがこんなにつらいなんてな……僕は美森の腕を掴みあることを告げた。

 

「美森、僕がどうなっても……忘れないでくれるか?」

 

「どうしたの?突然………そんな悲しいこと言わないで……」

 

「ごめん。ただ………」

 

僕がいいかけた瞬間、美森はそっと僕にキスをしてきた。そして恥ずかしそうにしながら、

 

「忘れないよ」

 

「……ありがとう」

 

「………ねぇあんたら、教室でイチャつくのやめてくれない」

 

気がつくとクラス中の皆が僕らのことを見ていた。人目気にしなすぎたか……

 

「今日は暖房いらずだね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

昼間の桔梗くんと東郷さんの話を聞いて、桔梗くんは耐えることを選んだ。私達が黙っていれば皆、不幸にならずに済むなら……私もそうするべきだ。

 

私はそう自分に言い聞かせながら、入院中の風先輩の御見舞とクリスマスパーティーのお祝いをするため、病室の扉を開けようとした瞬間、

 

『樹、今日大事なイベントでしょう?』

 

『いいの』

 

風先輩と樹ちゃんの声が聞こえてきた。樹ちゃんはイベントに参加するから来ないはずなのに……

 

『お姉ちゃんが怪我してるのに、私だけ楽しい事は出来ないよ』

 

『お姉ちゃんの事なんて気にしなくて良いのに……それに樹だって怪我してるじゃない』

 

『私はもう治ったよ~それにね。お姉ちゃんが楽しくないと私も楽しくないんだ。だから今日は良いの。ちゃんと代わってもらったから』

 

『ちゃんとご飯食べてる?出前取って良いからね』

 

『作ってるよー。ほとんどスーパーのお惣菜だけど…』

 

二人の話を聞いて、私は胸が苦しくなった。こうなったのは私のせいだ……私が先輩に話さなければこんなことには……

私は逃げるように走っていった。

 

 

 

 

 

 

辛い気持ちをただひたすら耐えなきゃいけない……誰かに相談することも出来ない。桔梗くんは耐えることを選んだ。それは強いからだ……でも私は……

 

ひたすら逃げるように走っていた私は、雪で足を滑らした。こんな辛い思いはもうしたくない。私はただただ泣き叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

誰か……助けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、泣いてるんだ?」

 

突然声が聞こえ、顔をあげるとそこには海くんがいた。海くんはそっと私に手を差し伸べた。

 

「海……くん」

 

「怪我してないみたいだな。どうかしたのか?」

 

「う、ううん、なんでもないよ……」

 

海くんには痣の影響はできなかったけど、それはただの偶然かもしれない。もし話したら……

 

「嘘つけ」

 

「えっ!?」

 

「耐えきれなくなったんだろ。だったら僕に話せ……」

 

「駄目、駄目だよ……海くんに話したら……」

 

「死んじゃうかもしれないだろ。それは大丈夫だ。僕には女神の加護を受けてる」

 

女神様の加護?よく分からないけど、加護を受けていても痣の力が加護を上回ったら……

 

「それに……死んじゃうかもしれないって言ったよな。安心しろ。僕は死ぬのになれている。なにせ……お前たちを救うために僕はこの生命を絶ったんだから……」

 

「えっ……」

 

命を絶ったって……どういう事?海くんは真剣な表情で言っていたから嘘じゃない。

 

「それにな。僕は決めたんだ。どんな世界でもお前を救うって……」

 

海くんは優しい笑顔でそう告げた。私は海くんに抱きつき、思いっきり泣いた。海くんはそんな私の頭をなでながら、あることを言うのであった。

 

「話してくれ。お前と桔梗さんに何が起きてるのか……」

 

 

 

 

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