「どこ行ってたのよ!!」
友奈と一緒に部室に行くと早速先輩に怒られる僕。ここは素直に言ったほうがいいな
「絵を描いてました」
「あんた……たまに思うけど本当に自由よね」
先輩は呆れながらそう言う中、僕は部室にいる人数を見ると一人足りない気がした。
「園子はまだなのか?」
「そのちゃんは掃除当番だよ。多分そろそろ……」
「遅れました~掃除の途中で寝ちゃって~」
掃除中に眠れるなんて、何というか園子らしいな……
「乃木らしいわね……というか桔梗。あんたが絵を書いてる理由って色々とあったからでしょ」
流石は先輩、鋭いな。魔王討伐の後、造反神との戦い、別世界に現れたキメラ・バーテックスとの戦いに巻き込まれ、僕はようやく取り戻した日常を満喫するためにこうやって絵を描くようになった。
「というか桔梗、あんたと園子が自由すぎて、部活動に支障をきたしてるのよ。そこら辺わかってるのかしら?」
「わかってるよ。灯華と桜が大赦の巫女様の世話係に任命されて、勇者部の人数が減ってるのは………」
キメラ・バーテックスとの戦いの後、灯華と桜の二人は大赦の巫女様の命令で、お世話係を任命された。そのため学校には来ず、ここ最近は大赦にいる。
たまに行くと二人から愚痴を聞かされたりもしている
「桔梗さんも大赦のお仕事とか大丈夫なんですか?確かかなり上の方の役職ですから……」
「僕の場合は夏凛と園子と同じ、卒業までは自由にしてろって、まぁたまに呼び出されたりとかするけどね」
呼び出されるって言っても、書類整理の手伝いとか巫女様の話し相手になるくらいだけど……
そういえば巫女で思い出したけど……
「あいつどうしてるのかな?」
「あいつって?」
「前に桔梗くんが別世界で会った男の子の勇者だよね。すごく仲良かったんだっけ?」
「まぁ気があったからな。あいつとまた会うのは難しいし、連絡も取れないからな……」
今頃あっちでも頑張ってるんだろうなと思いながら、僕は空を見上げるのであった。
大赦にある私の自室に招いた別世界の私……上里海さん。彼が現状起きているであろう異変を解決するために手伝いに来たみたいだけど……
「顔が同じなのに性別が違うだけで、ちょっと複雑ですね」
「複雑とか言うな。僕なんかちょっとした事情で女の子になったからな。見た目とかお前にそっくりだったし……」
「何だか色々と苦労してるんですね………」
「お前も巫女としての役割とか大変だろう」
互いに溜息をつくとそこにお世話係の鈴藤さんと立花さんがお茶を持ってやってきた。
「お待たせしました。海様」
「お客様の……って海くん!?」
鈴藤さんは彼を見て驚いた顔をしていた。そういえば彼女も神宮くんと一緒に別世界に行ったんだっけ?
「灯華さん、お久しぶりです。というか何でここに?」
「あ、いえ、今私は海様のお世話係で……」
「彼女たちのことは聞いてるわね」
「あぁ、こっちの世界で起きたことは大体……それで今何が起きてるか分かるか?」
彼の問に私は答えられずにいた。今起きていることって……何のことだろうか?現状特に問題は起きている様子はない。
「申し訳ありませんが、心あたりがないのです。鈴藤さん、立花さん、あなた方は?」
「いえ、私達も……」
「灯華ちゃんが別世界に行ったくらいでしょうか……勇者部の皆も元気ですからね」
特に情報は得られなかった。彼もどうしたものか悩んでいた。
「まぁ何かしら起きてることは確実だろうしな………これからどうしたものか……」
「とりあえずお茶を飲みながら、こちらの勇者部の方々のお話でもしましょうか?確か……」
私は部屋にある資料を取り出し、読み上げていた。
「結城友奈さん、犬吠埼風さん、犬吠埼樹さん、三好夏凛さん、乃木園子さん、神宮桔梗さん。彼女たちは特に争いに巻き込まれずに平穏な日々を歩んでいますよ」
「………ちょっと待った。一人足りなくないか?」
突然彼がそんな事を言い出した。何かしら資料に不備でもあったかしら?
「えっ、あの勇者部は今その六人だけですよ。一人もかけては……」
「いや、待ってくれ。こっちにいない………わけないよな。桔梗さんが言ってたし……」
彼は何かに気が付き、立ち上がり、部屋から出ていこうとした。私はそんな彼を呼び止めた。
「待ってください。今、自由に動かれると大騒ぎになります。何処に行こうとしているんですか?」
「確か大赦には歴代の勇者たちの資料的なものがあったはずだよな。多分だけどそれにあいつの名前が………」
「あいつって……一体誰のことですか?」
立花さんの問いかけに彼は私達のことを見つめながら、答えた。
「決まってるだろ。……………………」
休日、僕は一人で浜辺で絵を描いていた。だけど何でかわからないけど、何か足りない気がしている。
「特におかしなところないのに……」
『そっか、それだったら私がなってもいいよ』
突然頭のなかにイメージが流れ込んできた。何だ?これ……
『素敵な絵を書いてくれてありがとう………』
誰なんだ?この子は……でも僕は彼女のことを知っているはず……とても大切な……
「………疲れてるのかな。流石にこの季節にこんな場所で絵を描いてたから……」
さっき頭のなかに突然現れたイメージのことは忘れよう。多分今まで大変だったから、今になって疲れが出たんだろう。
「あの子は一体………」
「あれ?やっほ~桔梗く~ん」
誰かに声をかけられ、振り向くと友奈がいた。何故かジャージ姿だけど、何かあったっけ?
「友奈、今日はどうしたんだ?」
「えっ、部活の助っ人に行ってきたんだよ。さっきまで夏凛ちゃんも一緒だったんだよね」
そういえば部活の助っ人、頼まれてたんだっけ?僕はてっきり知らないうちにサボちゃったのかと思ったよ
「桔梗くんは絵を描いてたの?」
「うん、ただなんかどの絵も足りない気がしてて……」
「足りない?」
友奈に僕は描いた絵を見せた。すると友奈も……
「ちゃんとかけてる………よ。ただ何だか足りないような……」
友奈も僕と同じ感じだった。この浜辺、海、空の景色なのに何が足りないっていうんだ……
「まぁそのうち分かるだろうし、友奈、送ってく」
「え、でも、桔梗くんの家、反対方向だよ。悪いよ」
「いいから、じゃないと怒られるのは僕なんだけど」
「怒られるって…………誰に?」
そういえば僕は誰に怒られるのだろうか?ただこういう時女の子、特に友奈を送っていかないと怒られるような………
友奈も何だかいつもとは違う表情をしていた。
「先輩にか?」
「そう……かもしれないね」
僕は友奈と一緒に帰ることにしたのだった。だけどさっきの友奈の様子がおかしいことが気になっていた。それに今になってあの世界に行った時に言われた言葉が頭をよぎった。
『すべてを教えるわけ無いであろう。だがもしそれが嫌ならば、忘れないようにするのだな』
忘れないようにって何のことだよ………
僕は友奈を家まで送り届けると、友奈はなぜか隣の家を見つめていた。
「ここ誰も居ないんだよな」
「うん………でも、何でだろう?誰かが住んでたような……」
「誰かって誰だよ。それだったら僕に言ったりするだろう。新しいお隣さんが来たって……」
「うん………」
友奈は寂しそうな顔をしながら、家に入っていった。何でだろうか?心に空いたこの穴は………僕は………
『忘れないようにするのだな』
あの仮面の男の声がまだ頭のなかに響いていた。
大赦に置かれた資料室で彼は必死に何かを調べていた。彼は何を調べているのであろうか……
「やっぱり………どれにも書かれてない。なんで……」
「あの何をさっきから探してるんですか?」
「………ある少女の記録だよ。僕がいた世界でも記録は残してあるはずだ。なのに……彼女だけ何で……」
彼は険しい表情をしていた。一体彼は誰のことを言ってるの?
「…………」
そして彼はおもむろに端末を取り出すと、白い光の玉が飛び出してきた。
「エリスさん。異変について分かりました」
『そうですか。一体何が……』
「その前に今、そっちに はいますか?」
『え、えぇ、いますけど……』
「そっちでは起きてないのか……とりあえず説明しますとかくかくしかじかで……」
彼は女神様に何かしらの事情を説明していた。何の話をしているんだろう?世界からとか、忘れられたとか………
『………まさかそんなことが……ですが……』
「何が起きてるかわからないけど、例のものを送ってくれませんか?」
『あれですね。カズマさん達に頼んでもう準備は終わってます。直ぐにでも……』
「お願いします。僕もそろそろ合流します」
白い光の玉が消えると同時に彼は私の方を向いた。
「頼みがある。勇者部のみんなのところに行きたいんだ。お前と一緒に」
「えっ、ですが私が外出するとなるとそれなりに時間が……」
「それでもいい。直ぐにでもあいつらの所に行かないと……伝えないと……」
次回で勇者の章一話終了ですね。桔梗も友奈も何かしらの違和感を覚えてます。