僕は突然やってきた姫野さんを部屋に入れることにした。というか帰ってくるなら前もって連絡してほしいのだけど、今日は牡丹の希望で美森が泊まることになってるのに……
「ふぅ、久しぶりに来たけど、あんまり変わってないわね。ここも」
「姫野さん、連絡くらいしてください」
「……ごめんなさい。携帯忘れてきちゃって、おまけにここの鍵も置いてきちゃったの」
相変わらずだ。本当に変わらないな……
「えっと、桔梗くん、この人は?」
「親しいみたいですけど、お父様?」
とりあえず二人には紹介しないとな。というか姫野さんにも紹介をしないと……
「美森、牡丹。この人は僕の保護者で姫野四葉さん」
「……はじめまして、姫野四葉です。そちらの方は東郷美森さんですよね。桔梗の彼女の。そっちは……えっと……」
「あっ、東郷牡丹って言います。えっと別世界の……」
「あぁ、二人の子供ですね。報告の方は聞いてます」
報告って、大赦はどこまで……いや、海のやつはどこまで喋ってるんだ?とはいえ、事情を知っているなら説明する必要はないな。
「それで姫野さん、帰ってきた理由は?」
「桔梗くん?」
「お父様、何だか聞き方が……」
二人がそう言うが、僕としてはいつも通りだからしょうがないんだよ。
「お二人とも気にしないでください。今日帰ってきたのは、明日一緒に墓参りに行きましょう」
墓参りか……そういえば久しく行ってなかったな。それにしても本当の突然だな。
「美森さん、牡丹さん、お二人とも……それと……」
姫野さんは部屋の壁の方を向き、笑顔で……
「聞き耳立ててる方々は申し訳ありませんが、付いてこないでくださいね」
まさかと思うけど、隣の部屋から聞き耳立ててたのか?というか夏凛もよくそんな目的のために家に入れたな……
海SIDE
そのっちがコップを使って聞き耳を立てていたが、何故か突然土下座していた。
「そのちゃん、どうかしたの?」
「あんまり聞き耳立てない方がいいわよ。あとで桔梗に怒られるわよ」
風先輩がそう言うが、何故かそのっちは体を震わせていた。本当に何があったんだよ
「それにしても桔梗さんの部屋の前にいた女の人、誰なんでしょう?」
「あの人は桔梗の保護者よ。大赦で何度か会ったことがあるわ。名前は姫野四葉だったかしら?」
夏凛と面識があるということはそのっちと面識があるということだな。それにしてもあの人が姫野さんか……僕が知ってる姫野さんとはぜんぜん違うな……
「う~ん?」
「あれ?上里ちゃん、どうかしたの?」
何故か友奈(上里)が唸っているのを見て、友奈(結城)が心配そうにしていた。ちなみに二人は名前呼びではなく、名字呼びをしている。まぁ皆が困惑しないようにの配慮だけど……
「えっとね。あの姫野って言う人、どこかで会ったことがあるんだよね」
「友奈、僕らの世界には姫野って言う人は大赦にはいないらしいよ。お姉ちゃんからそこら辺確認はとってある」
平行世界の影響か、僕らの世界には姫野って言う名前の人はいない。まぁ似たような名前で四葉姫乃って言う人はいるけど……でも僕もあの顔の面影……どこかで……
「何処でだっけ………」
「友海はわからないか?僕も見覚えがあるんだよ」
「遠くからでよく見えなかったけど、千景おばちゃんにそっくりだったよ」
「あぁ、千景さん………んん!?」
僕はある一冊の書物を思い出した。アレに書かれていたのは神宮家と郡家の関わりだったような……いやでも、あくまで神宮家と郡家だし、姫野家との関係は……
「そのっち、詳しいことは……」
「あの海さん、園子さん、さっきから震えていて駄目です」
一体何があったんだ?
桔梗SIDE
次の日になり、僕ら三人は姫野さんが運転する車で僕の両親が眠るお寺に来ていた。昨日感じた視線は感じなくなったということは、どうやら皆は付いてこなかったみたいだけど……
「お久しぶりです。神宮さん」
姫野さんは墓前でそうつぶやいていた。そういえばちょっと気になっていることがあった。姫野さんって千景にちょっと面影が……
「桔梗くん、どうかしたの?」
「いや、ちょっと……姫野さん、聞きたいことがあるんですけど、神宮家と姫野家ってどんな関係があるんですか?僕が知る限りでは300年前の付き合いだって……」
「……………」
姫野さんは黙り込んでいた。答える気はないってことか?それならそれでいいけど……
「……ここにお父様の……」
「あぁ、僕の両親とおじいちゃんが眠っているんだ。あっちだとまだ生きてるみたいだけど……牡丹、悪いな。こんな所に付き合わせて……」
「いいえ、こうして連れて行ってくれてありがとうございます。お祖父様方……東郷牡丹っていいます。別世界から来ましたお父様とお母様の娘です。きっとこちらでもお父様たちは私のことを大切にしてくれると思います。だから……見守っていてください」
何だか恥ずかしいな……それに責任重大なことを言われてしまった。頑張らないとな。
「………桔梗」
姫野さんはそんな牡丹を見てか、古めかしい勾玉のアクセサリーを僕に渡してきた。これも見覚えがあるんだけど……
「神宮家に伝わる大切なものです。これには一人の女の子が娘のために幸せであってほしいという思いがこもったものです。無くさないでね」
一人の女の子が娘のために……それってもしかして……
「姫野さん、神宮と姫野と郡って……」
僕の先祖である神宮は千景さんのことを愛していた。千景さんの危機に神宮は彼女を守ったって言う話は僕は知っている。そして姫野は……
「桔梗、それ以上は言わない方が良いわ。心のなかにしまっておきなさい」
本当に話す気はないって言うことか……だけど姫野さんは空を見上げ……
「姫野四葉は……………親友の幸せを願っていた。だからこそ……私もそうするだけよ」
親友の幸せか……だから僕の保護者になってくれたんだな。
「それじゃ帰りましょう」
僕らはそのまま家に帰るのであった。神宮と姫野……もしかして僕と姫野さんって……
かなり姫野四葉は勇者であるのネタバレをしてしまいすみません。でも細かい関係性については語ってないからセーフなのかな?
次回は海SIDEでやります