何故か部室に戻ったら、いきなり友奈にデートしてくださいって頼まれた。普通だったら、喜ぶべき所なんだけど、相手はこっちの世界の友奈だ。
ということはこれは浮気になるっていうことだ良いな。
妻である友奈は笑顔だけど、あの笑顔が怖すぎだろ。絶対に怒ってるよ。怖い、怖すぎる。
というか浮気なんかしたら、友奈よりも東郷に殺されそうなんだけど……いや東郷に殺されるな。
僕は東郷の方を見て……
「東郷、出来れば楽に殺してくれ」
「な、何を言ってるの?桔梗くん、海くんどうしたの?」
「何というか友奈の突然の発言で、頭が困惑してるんだ。海、落ち着け」
「落ち着けって、友奈、めっちゃ笑顔だけど怒ってるよね。あれ……」
「海くん、私は怒ってないよ」
「一から説明するからちゃんと聞けって」
桔梗SIDE
少し前、僕らはみんなで海岸のゴミ拾いに精を出していた。
「桔梗くん、はい、お茶」
「うん、ありがとう。美森」
僕は美森から貰ったお茶を飲むとあることに気がついた。これって美森の飲みかけの……
美森は何だか顔を赤らめてるし……
「間接キスだね」
「わざわざ言うなよ」
二人でそんな話をしている中、夏凛たちはと言うと僕らの様子を見て、
「あの二人本当にどうにかならないかしら?」
「夏凛さん、本当にすみません」
「でも、私たちの世界の二人よりイチャイチャしてるよね」
「東郷さん、幸せそうでいいね~」
「本当に暖房入らずだよ~」
「……………」
「どうかしたの?結城ちゃん」
「あ、えっと……東郷さんと桔梗くんの二人見てて思ったんだけど、恋人同士ってどんな感じなのかなって……」
「とても幸せなことよ」
友奈たちの話に僕らも混ざった。それにしても恋愛とかそういうのにあんまり興味がなさそうな友奈がそんなこと言うのは珍しいな。
あと美森が幸せだって言ってくれて、ちょっとうれしいのだけど……
「友奈もそのうち分かるんじゃないのか?」
「う~ん」
「あ、それだったらいい方法あるよ」
「いい方法?」
あれ?何だか嫌な予感がしてきた。友奈(上里)、まさかと思うけど僕が友奈の彼女になってちょっとしたデート体験させるつもりか?いや、まさか……
「海くんとデートしたら?」
「「「えっ!?」」」
夏鈴、牡丹、僕が同時に驚きの声を出してしまった。いや、友奈、それは色々とまずいんじゃないのか?自分の夫をだぞ
「え、でも、それって浮気になるんじゃ……」
そうだ。友奈の言うとおりだ。海のことだ。多分浮気だとか色々と気にするからな。
だけど友奈(上里)は友奈に何か耳打ちをした瞬間、何故か顔を真赤にさせていた。
「わ、わたし、頑張ってみる」
友奈がやる気になったけど、大丈夫なのか?これ……
海SIDE
「というわけだ」
「というわけって………」
「協力してあげて、海くん」
友奈、お前気にしなすぎだろ。というか何かしらの目論見あるのか?耳打ちしたって言ってたけど、何を言ったんだ?
「え、えっと海くん、ダメかな?」
まぁ頼まれた以上は引き受けるべきだな。ただ尾行には気をつけないとな。特にそのっちには
「そのっち、一応言っておくけど」
「大丈夫だよ~尾行とかしないから~」
うん、ついていく気満々だな。どうにかしてまく方法考えないとな。
次の日の休日、友奈との待ち合わせ場所に来ている僕。特に視線は感じない。作戦は成功したって言うことだな。
みんなの前で言った待ち合わせ場所はニセの待ち合わせ場所。本当のところはあとで友奈に知らせておいた。何というか尾行されるのはちょっと嫌だからな……何というか桔梗さん、ごめんなさい
「お、お待たせ」
慌ててこっちに走ってきた友奈。何というか同一人物とは言えこれ、本当に浮気にならないか心配だ。友奈が許しているとはいえ……
「そんなに待ってないよ。それでどこ行く?」
「えっと……海くんが行きたい場所でいいよ」
僕が行きたい場所か。この世界にあるかどうかわからないけど、一つだけ行きたいな。
「それそこに行く前に食事でも行くか」
「うん」
「ふふふ、私たちを欺こうとするなんて甘いよ~カイくん」
「……園子、お前もこりないな。この間姫野さんに怒られたのに」
「だって~気になるし~それに今回はゆーさんが頼んだことだもん」
「えへへ、ごめんね。二人とも忙しいのにこんなこと頼んで」
「別にこれぐらいは……でもなんで海とデートなんて言い出したんですか?」
「う~んと、結城ちゃんの気持ちが分かるからかな」
友奈の気持ち?どういう事だ?
「それにしても海くんが行きたい場所ってあそこかな?」
食事を終え、友奈と一緒に僕の行きたい場所に着いた。そこは何の変哲もない木の前だった。
「ここって?」
「ん、言うなれば僕が友奈のことを好きになった場所かな」
「上里ちゃんのことを……」
「好きになったというよりかは意識し始めたっていうべきだな」
僕は友奈に語った。僕が生まれたときからずっと勇者のサポートをしていくことが義務付けられたことを、そんな話を聞かされて芽生えたのは勇者と一緒に戦いたいって思いだった。
なんで僕には勇者としての素質がないんだ。どうして彼女たちが苦しく辛い思いをしているのに、僕はただ見守ることしか出来ないんだって……
「そんな思いを秘めながら、僕はお前と会って言われたんだ」
彼女たちの辛さを知った上で僕はちょっと無茶をした。だけどそんな時に友奈に言われたことがある。
「あの言葉を聞いて僕は友奈の事を好きになったのかもしれない」
「………海くん……あのね、伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと?」
「海くんにはもういるけど……伝えたいの。私……貴方のことが好きです」
「……………」
友奈の好意は気がついていた。でも僕にはもう守るべき人がいるんだ。だから普通はその想いに応えることは出来ない。
「友奈……ありがとうな。お前の気持ちは嬉しいよ」
「………でも海くんには上里ちゃんがいるから……」
「僕はどんな世界でも友奈を救いたい」
友奈は驚いた顔をしていた。この言葉は僕がこの世界に来てからずっと心に刻み続けたものだ。
どんな世界でも友奈がピンチになっても、僕はお前のことを好きだから救けたい。
「今の言葉が僕の返事だよ。確かに僕には守るべき存在はいるかもしれないけど、それでも……」
「海くん……ありがとうね。上里ちゃんの事………私の事幸せにしてね」
「あぁ」
「どんな世界でもか……あいつ、欲張りだな」
「そこが海くんの良いところだから……前に海くんに言われたから……同じ人間だけど違う人間のことを好きになったらダメかって……」
海くんは本当に優しいからこそ、あんなことを言えたんだ。それだったら私が言えることは……幸せにしてあげてねとしか言えない。
「ゆーさん、ゆーさん、聞きたいことあるんだけど良いかな?」
「何?そのちゃん」
「ゆーさんがゆーゆに言った言葉って、もしかして……」
「そのちゃん、それは秘密だよ」
私があの時に言った言葉、それは結城ちゃんの気持ちのことだった。ちゃんとお別れする前に伝えたほうが良いって……
「私だったら浮気にはならないよ」
「………なぁ、園子」
「うん、カイくん、浮気したら本当に大変かもしれないね」
次回で風先輩の卒業式回。つまり最終回です。