もしもシンゴジが艦娘の存在する世界で現れたら 作:watazakana
成田空港沖ーーー
「え…嘘…」
いつもお調子もので肝っ玉のある川内が今回ばかりは唖然としていた。それは川内に限らず、皆同じであった。
「尻尾…?尻尾だけでこれ…?吹雪…どう思う?」
「すごく…大きいです…」
と千歳と吹雪は茶番を打ったが、時雨に咎められる。
「千歳も吹雪も冗談言ってないで連絡しないとだよ!こんなの深海棲艦じゃない…もっと別の、もっと危険な生物かもしれない」
「そうだね…!こちら横須賀鎮守府第一偵察隊、巨大な尻尾を確認。詳細はつかめず。巨大不明生物の可能性大。討伐の許可を!」
横須賀鎮守府ーーー
「討伐?無理だよ!」
『どうしてですか⁉︎また何をするかわからない危険なヤツの可能性だってあるのに!』
ああ…コイツら、艦娘の持っている力がどんなもんかわかってねえ…
唐澤は深くため息をついて、
「日本国憲法第76条!『国家、またはそれに準ずるものから攻撃があった場合、武力の行使を認める。深海棲艦に関しては、先制攻撃を無条件で許可する』!巨大不明生物なら憲法適用外だ馬鹿!世界から見たお前らだって、戦略兵器級の兵士だぜ⁉︎艦娘の武器は!んな軽々しく使っていいもんじゃねぇ!下手すりゃ銃殺だぞバーカ‼︎」
と怒鳴った。流石に気圧され、千歳は『了解です…』と言うしかなかったようだ。
「とにかく、ソイツは巨大不明生物であって深海棲艦じゃないんだな?それだけでもありがたい。いつでも海軍大臣に連絡できるようにする。ソイツが何かアクションを起こしたら大淀に逐一知らせてくれ」
そう言って受話器を置こうとした時、
『提督‼︎巨大不明生物が潜行!水蒸気煙が多摩川に向かって動いてる!』
「そりゃ、生き物だからな…って、はァ⁉︎多摩川⁉︎ふっざけんなよデカブツ‼︎」
多摩川河口には首都湾岸線、多摩トンネルがあり、更に陸軍省連絡路も直下に存在している。陸軍省連絡路は滅多に使われないとはいえ、多摩トンネルと首都湾岸線はマズい。浸水事故…下手すると浸水どころではなくなる上に、このままではたくさんの死傷者が出る。
すぐさま別の電話機で海軍大臣の電話番号を押した。
ちょうど同刻、飯田総理大臣は記者会見の準備をしていた。
水生生物が上陸することはないーー
自分だってそう思う。そう思いたい。しかし、あの早口な課長補佐の「すでに自重を支えているかと」という言葉…15年前、深海棲艦が初めて人類に牙を向いた時、「生物がWW2時代の軍艦のような特徴を持つことはありえない」という常識が一瞬にして崩れた。今回も、同じことが起こるのではないか?という疑問が脳裏をよぎる。しかし、深海棲艦でさえ上陸だけはしていない。大丈夫だ、大丈夫だーーー
そう飯田は自分に言い聞かせながら記者会見室に向かった。
数分後、上陸することはないと言った直後に惨状が待ち受けていることも知らずにーーー
数分後、多摩川河口ーーー
「こちら川内‼︎提督ヤバイよ‼︎巨大不明生物が蒲田に上陸しちゃったよ!総理大臣は上陸しないって言ったよね⁉︎ともかく艤装で私達はこれ以上の監視は無理!これから艦砲射撃をしたい!発砲許可は⁉︎……はぁ⁉︎…わかった…偵察部隊総員撤退!これから横須賀に帰るよ!」
川内の声に「ありえない」と言いたげな時雨が
「そんな…!まだ発砲許可が降りないのかい⁉︎こんなになってるのに‼︎」
と詰め寄った。
不明生物がもうもうと上げている煙は、今なお進撃している証であり、今この時も人に危害を加えている証だ。それを見て黙っていられる人間などどこにいようか。
「その気持ちは私達も一緒だよ。でも時雨ちゃん、今はそんなこと言ってる場合じゃない。今は撤退しなきゃ…」
時雨達は煮えたぎるような憤りをやっとの思いで飲み込み、撤退を了解した。
巨大不明生物、蒲田上陸。進撃開始ーーー
死者 827人
負傷者 約2200人
次回あたり、艦娘が陸で活動するかもです