もしもシンゴジが艦娘の存在する世界で現れたら 作:watazakana
ゴジラの光から数時間しか経っていないと言うのに、数日ほど過ぎたような感覚に唐澤たちは襲われていた。
『高い放射線量が予想されます、都民の皆さんは…』「ゴジラは一体どれだけの…」「政府はアテにならん、今ここで…」「空間線量がでかすぎる!ヨウ素安定剤を…」「そっちにホットスポットが…」
立川の災害対策本部予備施設は話し声で満ち満ちていた。
「八雲副長官!」
その声のする方を見ると、なにやら見慣れない顔ぶれが。小太りの男は唐澤たちに歩み寄る。
「おう八雲、お前が無事で何よりだ。俺は金帰火来でなんとか助かったよ。お前も地元は、大事にしとけよ?…っと、そっちは横須賀鎮守府の提督…確か唐澤中将だったな、先の戦争での功労者の…ああ、俺は保守第一党で政調副会長をやってる未来の総裁、和泉だ」
「日本国海軍中将、横須賀鎮守府提督の唐澤だ。こんな時にも野心を持てるとは、特別に野心家であり、政治家であることの現れなのだろうな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
両者が簡単に挨拶をすませると、早速本部室へと向かった。
「とにかく情報が欲しい、あるだけ全部だ。ゴジラは今どうなってる?」
「依然として活動停止中、停止理由は目下まるで不明」
「放射線は?」
「原子力規制庁が被害を免れてたからそっちで対応。向こうは都内のサーベイでてんてこ舞い中。ゴジラの口から微量の放射性物質が放出されているが、特に問題なしだと」
「ゴジラプルームはこの季節だ、房総沖に出るだろうが範囲は広いだろうな」
「直撃を受けた都内3区は帰還困難区域となる恐れがある。除染の問題も大きくなるだろう…くそッ」
「つまり事態は危急存亡っつーか、超深刻ってことか…」
「そういうことだな。だがこれに対応するには人も物資も法律も足りない」
そこへ八雲と一緒にいた野村もため息混じりに
「仕方ないですよ…飯田総理も阿形官房長官も、海江田海軍大臣も、もういませんから…」
と愚痴ると、机を思い切り叩く音。
「失っちまったモンをアテにすんじゃねェ!やれることを残ったモンでやるだけだろうが!」
「唐澤中将っ」
野村の胸ぐらをつかもうと向かう唐澤の間に和泉がわって入り、水を差し出した。
「まずは、君が落ち着け」
「……すまん…」
これにはさすがに唐澤も引き下がるしかなかった。
「そういえば和泉、総理臨時代理はどうなった?」
三時間前
横須賀鎮守府 3F 執務室ーーー
今日の鎮守府の朝は黒電話が早朝にけたたましく鳴る。
「はい、こちら横須賀鎮守府です…提督!良かった…生きていらっしゃったのですね!てっきりゴジラに焼き払われたのかと…ええ、はい、…わかりました」
大淀は受話器を置くと、伊良湖食堂へ向かった。
同 伊良湖食堂ーーー
「提督の生存、確認しました!」
その一言で、皆一斉に安堵の表情を浮かべ、静かに「良かった…」と言い合った。
「それと、船体召喚型の不知火、あなたは立川に向かってください。提督が来てほしいとのことです」
「あっはい、ではどうやって行きましょうか」
「自動車運転は?」
「無理です」
「自転車」
「遠すぎます」
「海上ルートで迂回」
「疲れます」
「じゃあ海上ルートでお願いします」
「⁉︎」
結局、長門が車で送ることになった。
現在
災害対策本部予備施設ーーー
「先の悲劇から生き残り、チームの半数以上の者たちがここにいる事を、感謝する。残念ながらここに来ることができなかった者たちの想いと共に、諸君には頑張ってほしい。欠員は随時、補填していく。家族や友人、同僚を失った悲しみが消えることはない。だがそれを乗り越えることはできる。今は国民の為、対策と凍結プランの完遂に力を注いでほしい。頼む」
巨災対ーー巨大不明生物に関する災害対策室ーーが揃ったところで、八雲たちの仕事は本格的に始まる。もちろん、唐澤も。
「駆逐艦不知火、到着しました。どんな御用で旧式の私をお呼びに?」
「あぁ、それはな、旧式…いや、船体召喚型の不知火でしか出来ないことがあるからだ」
横須賀鎮守府 港エリアーーー
“Welcome to Yokosuka marine base.I’m Ohyodo.Nice to meet you ”
“I’m Iowa,nice to meet you too”
米国の精鋭即応隊、高速艦隊“AIGIS”の旗艦、アイオワと、横須賀鎮守府提督代理、大淀は自己紹介を手短かに済ませる。
握手はしているものの、お互い目が笑っていない。双方とも忙しいのだ。
同 応接室ーーー
“I can speak Japanese. I don’t care talking in Japanese “(私は日本語が話せるわ、日本語で話しても構わない)
「それでは、今回米国に受注した兵装はどこに?」
「それなら御心配なく、Sara!」
現在
あの悲劇から何日も経ったと思える一瞬に、皆立ち上がる。「まだ足搔けるぞ」と、皆動き出す。あれだけの絶望を見せつけられたが「それでも」と、走り出す。
ゴジラ、依然として停止中。
人間、彼を止めるために再び立ち上がる。
死者 行方不明者 推定360万人
負傷者 不明