東方記末神伝 〜Undefined Apocalyptic Museum. 作:らむねこ。
壱/柘榴の雨と紅白の巫女
季節は冬間近の晩秋。間欠泉が吹き出してから早くも一年が経とうとしている。幻想郷には木枯らしが吹き、木々の葉は枯れ落ち、そろそろ雪が舞う季節に入ろうかという時期にある。
「もうすぐ冬なのね。神社は涼しいけれど暇。……だから何処へ行こうって気にもならないけど」
人里離れたここ、博麗神社に住まう幻想の
「あらあら。何か異変でも起きてほしいような言い様じゃない」
霊夢の独り言を聞きつけたのか、将又別に仕事があってきたのか、境内からこちらに向かって一人歩いてくる姿がある。
「あー?そんな訳ないで……って
「何時からでしょう?少なくとも今の独り言に意見を返せる時から居たわ」
「要約は今来たばかりって訳ね。それで、何の用?冷やかしなら退治するわよ、暇だから」
柄の長い大幣を握り霊夢はむくっと起き上がる。
「冷やかしに来たって理由しか無いけれど別に退治することも無いじゃない」
紫は霊夢の隣を通り過ぎ、ずかずかと部屋に上がり込む。
「……ここは神社よ。泥棒はよしなさい、みっともない」
「神社だからこそ少しくらい良いじゃないの。
「罰当たりもいい所ね。……これ、一雨くるのかしら」
ふと空を見上げると、今までそこに無かった筈の小さな積乱雲が群生となって黒々と存在感を示していた。
「……。この時期に雨なんて珍しいわね。でも気にしなくても大丈夫でしょう、その内止むから」
煎餅を食べ終えた紫も縁側へ身を乗り出した。
「そうだといいんだけどね。……ささ、雨が降るから帰った帰った」
「あぁ、霊夢のいけず」
「煎餅まで食べておいて何が不満なのよ。こっちはあんたが神社にいられるだけで人間が寄って来なくて迷惑なの。そんなにかまって欲しいんだったら自分の式神とでも遊んでなさい」
言葉の後に紫の頭を大幣で軽く叩いた。
「仕方ないわねぇ……。だったらいいわ。それじゃまた来るからその時にでも構ってもらおうかしら」
「来なくてよろしい」
そう言って半ば強引に紫を追い出すと、もう一度縁側に横になった。
➕
それからの事だった。
夕刻を回った辺りから昼間の大きさを優に超えて幻想郷を覆い、太陽を隠した積乱雲が津波の様な大雨を幻の大地に降らせていた。
「……似たような光景、少し前にも見た気がするわ。また吸血鬼かしら」
ボソリと呟いてから、卓袱台の上にあった
この柘榴は先程来た紫が「お土産♡」と言って置いていった物だ。
「にしても、何で
それから数分後、柘榴の実の様な赤い雹が暗い空から降り落ちてきた。
「あらまぁ、赤い雹なんてこの世にあるのね。……あるわけないでしょ。これは異変ね」
霊夢は直ぐ様御札を懐に仕舞い大幣を手に持つと赤い星の降る凍てつく闇夜に飛び出して行った。
弐/魔法使いと赤色の氷石
なあ香霖八卦炉が壊れちまったんだ直してくれよ〜はぁまたか仕方ないから直してやるけれどしっかり貰うからなおう付けといてくれたら嬉しいんだが……君は何でいつも付けに回すんだ少しは払ったらどうだ、うんぬんかんぬん。
中古屋の店内に二人分の声が響く。
「……これで二つ目か。スペアの方も壊すなんてどんな特訓をしてるんだ……」
「香霖、早く代替の八卦炉を――」
白黒の少女の催促に香霖と呼ばれた男が返した返事は。
「魔理沙。今、君に渡せる八卦炉は僕の手元にない。何故だか解るか?」
その問に魔理沙と呼ばれた白黒の魔法使いは首を傾げた。
「……昨日は何をやりににここへ来た?」
「八卦炉の修……り……」
「今日は?」
「……ごめん」
「はぁ。……八卦炉の代替品として有事用にそこに置いてある剣を持っていくといい。貸すだけだからな、八卦炉が直ったらすぐに返すんだぞ」
「香霖は人が良いぜ。へいへい、しっかり返しますよっと」
「それは
「三種の神器!?……三種の神器って、山の神社の神が持っていた鏡もその一つだよな?」
下ろした剣を腰に結わえて言う。
「
念には念をと言った香霖が座っている椅子の背凭れに寄りかかると、
「解ったよ。……ん?香霖、外から物凄い音がしないか?」
言われて耳を済ませれば、ダダダと硬い物が屋根に当たるような低い音が部屋中に鳴り響いている。
「言われてみれば。雨かな……」
店内の高い所に設置された小窓の外を覗いて気づいた。
「赤い雹か。って赤い雹なんかあるか!……とりあえず外は氷の礫、出歩くなんて出来たことじゃ――」
「これは異変の匂いだぜ!じゃあな香霖、これ借りてくぜ!」
木製の扉を押し退け魔理沙は、紅の雹が降る暗い空へ颯爽と飛び出して行った。
こんばんみ、コヒツジです。予約投稿しようかと思いましたが止めました。ついに本編スタートです