東方記末神伝 〜Undefined Apocalyptic Museum.   作:らむねこ。

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エリュシオンに氷の雨

肆/紅い砦と銀の錠前

 

博麗霊夢は今、赤い雹により大時化になった湖のど真ん中に紅く怪しく佇む館の前に掛かる桟橋に立っていた。

 

「ここに来るのは月に行った時以来で懐かしいわ。ここの(アホ)を退治するするのは面倒臭いけど、異変の為、私の為、やるしかないわね」

 

自身に喝を入れて桟橋を駆ける。

 

「あぁ、雹が痛い、鬱陶しい!(あいつ)から傘でも奪っておくんだった」

 

それから少し走ったところで赤色の門が見えてくる。

 

「……えーっと、門番がいないみたいね。どうしたのかしら、サボり?」

 

しかし砦の真ん中にあるアンティーク調の大きなヴィンテージドアにはこれまた日焼けした貼り古紙(アンティークペーパー)が一枚、暗い寒空の元靡いている。

霊夢はその貼り紙をドアより剥がして黙読した。

 

「……。『当館は急用の為、本日の営業を終了させて頂きます。尚、御用が有りましたら主人、レミリア・スカーレットまで御一報下さいませ。』……絶賛私をお出迎えって意味で取っていいのかしらね。だったらこんなチンケな扉は壊して通るまで!」

 

そう言うと桟橋の来た方へと戻ってインターバルを取ると、銀の錠前で固く閉ざされた扉に体当りした。

 

 

伍/魔女の寝耳にも念仏

 

紅魔館の門前に仁王立ちで立ち尽くす白黒魔法使い、霧雨魔理沙。

その紅雹の乱反射で紅く火照ったように見える顔はその色と真反対に蒼白く染まっていく。

 

「おいおいおい。一体、紅魔館で何が起きているんだ……?」

 

魔理沙が見つめる先には、決壊しかけた紅色の門があった。

その門を潜り抜けて紅魔館へ足を一歩踏み入れる。

エントランスもナイフや御札で中途半端に荒らされていて、見るも無残とも言えない状態だった。

 

「……この荒らし方は――」

 

『はぁー、あんたじゃないの!?私はあんた達がまた変な企みをして紅い雹を降らせたと思ったのにー!』

 

魔理沙の言葉を遮って館内から大きな叫びが聞こえた。

 

「はぁ。やっぱ霊夢(あいつ)だよな……」

 

「あら魔理沙。今日の招待客は博麗霊夢だけよ?」

 

溜息をついたところで後ろから瀟洒な少女の声が掛かる。

 

「咲夜か、随分とボロボロじゃないか。やりあったのか?」

 

「まぁちょっとね」

 

咲夜は親指と人差し指で少しの意味を込めたハンドサインをしてさらに続ける。

 

「それで要件は?……って聞かなくても、外の天気のことでしょ」

 

「あぁ。お前達じゃないんだな?」

 

「えぇ。念の為って言うならパチュリー様にも会っていくかしら?」

 

にんまり笑みを浮かべて咲夜はあざとく頭を傾げた。

 

「いやいい。また本を返せって耳にタコが出来る程言われるからな」

 

「何処も魔女っ子の耳には念仏だったわね。私は無論信者だけど」

 

「お前の場合は寝耳にWith you(レミリア).だろ」

 

その返しに瀟洒な少女はふふっとにやけながら、

「それ、どういう意味かしら?」

と黒笑いしていた。

 

 

陸/魔法少女逃走中

 

紅魔館内、大図書館。ここには数多の叡智が集約されている。

そこを取り仕切る魔女は、姉の吸血鬼とは違う、もう一人の吸血鬼と言葉を交わしていた。

 

「魔理沙が来てるって?教えてくれて有難う、行ってくるわ」

 

紫色したビクトリア朝風のネグリジェを羽織った魔女は魔法を唱えて自分の背に軽い追風を起こすと、その風に乗って大図書館を出ていった。

 

「はぁ、また私は遊んじゃダメなのか。つまんないの」

 

付け足しでお姉様ばかり狡いと言い放ち、手の届くところにあった魔導書を掴むとそれをあらぬ方向へと放り投げる。

 

「ああ!駄目ですよフラン様!」

 

視界の外より小悪魔が床に滑り込んで落下寸前の本を掴み取った。

 

「本を粗末に扱ってはいけません!またパチュリー様に怒られますよ?」

 

「だったら小悪魔、私と弾幕ごっこしようよ」

 

「む、無理ですって!フラン様が手加減して下さらないから一方的な戦いになってしまいますよ!」

 

「小悪魔のケチー。……お姉様の言い付け(ルール)なんか守らなくてもいいか。お姉様だって同じこと(異変を起こ)したんだし」

 

どうやら紅霧(あの)異変はフランにとって反面教育となったらしい。

言うが早くフランもネグリジェを着た魔女を追う様に大図書館を飛び出していった。

 

 

「げげっ、パチュリー!……とんずらとんずら」

 

「魔理沙、今日という今日は逃がさないわよ!本を返しなさっ――」

 

パチュリーが手を伸ばそうとした途端、背中の方から謎の重圧が伸し掛り、彼女は赤色の床に全身を打ち付けた。

 

「魔理沙、遊びましょ!」

 

「フランまで!?」

 

魔女の背中を踏み台にして魔理沙の乗る箒に飛び移る。

 

「魔理沙もフランも、待ちなさい!」

 

もう一度パチュリーが伸ばした手は、

 

「ぎゃふん!」

 

フランドールの足首を鷲掴み彼女を床に叩きつけた。

 

「うわ、痛そ〜。……私はレミリアんとこ行ってくるよ、んじゃあな」

 

「魔理沙、待ってっていってるでしょ〜……」

 

魔女が残った力で持ち上げた右腕は空を掻いた。

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