東方記末神伝 〜Undefined Apocalyptic Museum. 作:らむねこ。
壱/葦屋ヲ駆ケテタ向日葵
紅い館からそのまま足を運んだ霊夢は畑の中で向日葵共々蕭然としていた。
「なによこれ。前に来た時はもっと咲いてた気がしたんだけどなぁ」
しゃがんで茎の根元を見るとやはり地面が紅雹に覆われているせいもあるのか掘っても掘っても根が出てくる気配がない、と言うより掻き分けているのは殆ど雹だけ。
「はぁ。どれだけ降ってるのよ……」
軽く地団駄を踏めばジャリジャリと雹が擦れる軽い音が畑に響く。
向日葵の花はと言うと、分厚い雲の上に太陽が有る無いにも関わらず俯いたり落雹に打たれ折れたりする物が殆どだった。
「やっぱり、こんな雹の中じゃ幽香は
「……博麗の巫女?」
何処かから怪し気な声がした。
「誰!?」
声の主は何処にいるのだろうか、霊夢が見回しても見つからない。
「やっぱり博麗の巫女ね!」
「だから何処にいるのよ!」
声が聞こえて来る気のする方に叫んでみた。
「こっちこっち。早くおいでよ」
視線を少し右に寄せれば雹で埋もれた太陽の畑を四つの羽を生やした少女が向日葵立ち並ぶ隙間から駆け出していくのがちらりと見えた。
「ちょ、待ちなさい!」
間髪入れずに霊夢は迷わず彼女の後を追いかけていった。
➕
「もう、何処に行ったのよ」
ここ、太陽の畑は広大だ。竹林と比べてしまえばそうでもなかろうが、一度足を踏み入れたら迷路の如き向日葵の群生が行く手を阻む。
それは花が見上げていようが俯いていようが同じ事。
だが幻想郷の空に雹を降らす巨大積乱雲が月光を覆い隠したお陰で辺りは真っ暗、足元も雹だらけとあって走り回る何者かを捜索するのには全く適さず、余計に質の悪い異変だった。
「……呼ぶだけ呼んどいて黙りって、どういう了見よ?」
はぁ、と嘆息を漏らしながら背に立つ向日葵に寄りかかろうとした途端。
「きゃわっぐえっ!?」
重力に逆らえず積もった雹の上に何者かの背中と一緒にダイブした。
そして聞こえる霊夢以外の悲鳴。
「痛いわね。……見つけたわ!」
霊夢の隣には、見た目九歳ばかりなる少女が氷の上で目を回して横たわって居た。
「さっき呼んだのあんたよね」
思い切り体を打ったのか、向日葵柄の服を着た妖精の少女の意識は未だに戻らない。
「……大丈夫?」
頬を軽く叩けば少女は薄らと目を開けて、
「捕まった〜」
とだけ言って力尽きた。
弍/戦闘!ヒムカイ アオイ
「あんた、なんで私を呼んだのかしら?」
一匹の妖精に馬乗りになった霊夢は彼女に大幣を突き付け詰問した。
「あっ、いや、その、異変解決に向かわれてるのかなぁ、と思いまして」
「当たり前じゃない、これは明らかに異変よ。……妖精って事はまさか、自分からやられに出てきたんじゃ無いでしょうね?」
「ち、違いますよ!ただ、こちらまで来てるのが珍しいなと思って声をかけただけです」
「あらそう。……結局異変の手掛かりは無かったわね」
妖精を小突いて立ち去ろうとした時、妖精がふと言った。
「あっ。力になれるかは分かりませんが、剣を持った人が西から東の空の方へ飛んで行ってるのを見ましたよ」
「剣を持った人?下っ端天狗か半人半霊ね……。ありがとう」
「どういたしまして。その代わり――」
と小声を零して向日葵の妖精は巫女の目の前に立ちはだかった。
「私を倒してからじゃなきゃ行かせない!」
その大声は太陽の畑一帯に響き渡る。
「……本当にどういう了見よ。私は急いでるの」
「知ったこっちゃないですよ。目の前には人間、悪天候だけど今の私なら勝ち目は十二分にある!」
向日葵妖精はそのまま畑の上空へと飛び上がり、降り注ぐ紅雹を幾つも鷲掴むとそれを霊夢に向かって投擲した。
―蒼炎「ファントム・サンフラワー」
「んな氷の礫なんか当たらないわよ!」
霊夢も続いて飛び、向かってきた氷塊大幣で振り払おうと構えた時、氷塊は激しく弾け飛んだ。
それは綺麗な花火よろしく縦横無尽に広がると、巫女の後ろより落下速度と同等程の速度を保ちながら向日葵妖精目掛けて吸い寄せられていく。
「あんたも何かを集める力を持ってるの?」
「どうでしょうか。……巫女の勝機は私を唯の向日葵の精だと舐めないことですよ!」
向日葵の妖精は吸い寄せる礫をどんどんと凝固させ、そして巨大な大弾を作り出した。
ふとある事に霊夢は気づく。
「あんた、普通の妖精には無いような力を持ち合わせてる様ね……?」
「そうなんですかねー?ちょっと私にも分からないですけど、こう、何とも言えない
「何とも言えない
「そうです。……お喋りはここまでにしましょ!」
妖精は不思議な力の篭る氷塊を霊夢に向けて打ち出した。
「そう何度も同じ攻撃は利かないわよ!」
先よりもいち早く氷塊に翔け寄ると大幣で叩き壊して大きな札を妖精に放り投げる。
「そんな御札も、利かないですよ!」
向日葵妖精が避けた御札は通り過ぎると蜻蛉帰りして、もう一度妖精を襲った。
「悪いわね。魔法バカとは違って私の
「そ、そうなんですか」
被弾した妖精は両手から弾幕を放ちながら旋回して高く飛んだ。
「どこ行く気?」
「どこも行きませんよ!」
ダンスを披露するかのように四肢を使い華麗に舞うと、手から放たれる弾幕も綺麗な弧を描いて紅雹の降る夜空を飛んでいく。
「……避けられるんですね。次のスペルですよ」
―気象「遥か4万キロ先のソレイユ」
妖精が打ち出した一つの星弾は霊夢を中心に置いてその周回軌道上を回り始めた。
「攻撃しないのかしら。……星か何かみたいね」
急降下しても急上昇しても星弾の周回軌道は変わることなく霊夢に寄り添い付いてくる。
「……こういうの、なんって言ったかしら?」
「ストッキング?」
「微妙に違うような。……この星、落ちないのかしら」
大幣を伸ばしてもまだ足りないリーチの先で星は永遠と霊夢の周りを回り続けている。
「届かない。だったら妖精を狙うだけね」
御札を携えて妖精に向かい投げる。
投擲されたそれは背面にあった星弾に衝突してお互いを相殺した。
壊れるが早く次の星弾を構えていたのか、既に別の星弾が二つ、霊夢の周回軌道上へと入ってきている。
「ああ、鬱陶しい。壊すと増えるんだったらそのままあんたにぶつけてやるわ」
そして妖精に急接近。しかしイタチごっこのように妖精は逃げた。
「……。待ちなさい!」
「待てと言われて誰が待ちますか!」
「犬でもできるわ!妖精はやっぱり
その言葉にカチンときたのか、妖精が霊夢に向き直ると鬼の形相で涙を垂れ流しながらこちらに向かってきた。
「バ、バカっていうなー!」
霊夢に向かって飛んでいくその姿は、飛んで火に入る夏の虫を体現した様だった。
「……てい!」
「あふん!」
振りかざした大幣は綺麗に妖精の頭に当たって普段は聞きなれないような音を立てる。
「……あら。
水に撒いた塩の如く、宵闇の中赤色の弾幕が尾を引きながら向日葵の妖精は太陽の畑へと落ちていった。
「大丈夫かしらー?生きてるー?」
霊夢の声に同調するかのように何処からか物音が。
―「クリュティエの太陽信仰」
空からでは分かりづらいが、落下地点と思われる所から緑色した火炎弾が大量き、溢れる様に、唐突に吹き出した。
「ちょっと、何よ、これ、こんなの、どうやって……」
火炎弾に翻弄されながらもギリギリの隙間をグレイズして躱していく。
「あーもう、早く、……終われ!」
妖精が弾幕を打つのをやめたのか、霊夢の叫び声が弾幕を打ち消したのか、全く以て定かではないがその一瞬で火炎弾が全て消え去った。
「……おわ……った?……何これ、
目の前に出た立体字幕を殴ってみる。
「いったぁ……。岩か鋼かしら、まぁいいわ。次は山か冥界ね」
空を見上げれば紅雹は次第に強くなっていた。
おはようございます。今はそんな時間じゃない?えぇい、煩わしい。これ投稿したのが朝の十時半なんだよ、いいね?とりあえず書き溜めしてあるけどこれ完結してないから凄い心配になってくる。何で朝に投稿したかって?前日深夜から今朝八時まで別の作品書きなぐってたんですわ。それも何れ投稿するので良かったら見て下さい。へ?そんなの(ぶっ通しで別作品執筆してたの)は関係ないだろって?あっそうですか。今自分、睡魔の狂気で気が狂ってるんですわ。はい、それでは次回まであでゅー