全てを捧げて   作:プラトン

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前話から七年後。
今回から原作開始。


X784年

『お兄ちゃん、おはよー!』

 

おはようレーリア。もう朝飯出来てるってさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん…今日一緒に寝てもいい…?』

 

また父さんに怖い話をされたのか?

…いいけど、ちょっと待っててな。お兄ちゃんは父さんとオハナシしてくるから。

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん、勉強教えてよ!』

 

俺は勉強より運動の方が得意なんだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…お兄ちゃんはもっと大人っぽく話した方が格好いいと思うよ?』

 

そうしたらお前、こんなのお兄ちゃんじゃない!って泣き出したじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

『私はお兄ちゃんのこと怖いなんて思わない。だってお兄ちゃんは、その魔法を誰かのために使ってるから』

 

お兄ちゃんを慰めるなんて、レーリアも大人になったなもんだ。

…ありがとな、レーリア。

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん、大好き!』

 

こらお前、そういうことは誰かのためにとっておきなさい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃんは私を助けてくれなかった』

 

違うんだ

 

 

 

 

 

 

 

『私のために魔法を使ってくれなかった』

 

お兄ちゃんは

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃんは私を殺した』

 

助けたかった

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃんだけのうのうと生きている』

 

…すまない

 

 

 

 

 

 

 

『嫌イ』

 

許してくれ

 

『憎イ』

 

頼む

 

『オ前ナンカ、必要無イ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『殺シテヤル』

 

アアああアアアあアアあああアアあアあああああアアあアアアあああアアあアアアああアああああアアアアアアああアアああアアアあああアあアあ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター」

 

「っ…、アルファか…。おはよう…」

 

「おはようございます、マスター。汗と息切れがひどいですが、大丈夫ですか?」

 

「少し嫌な夢をね…。もう大丈夫だ」

 

「了解しました。他の方々はすでに起きておりますので、マスターもお急ぎ下さい」

 

「分かった」

 

「それでは失礼します」

 

「…はぁ」

 

 

また、あの夢だ。

 

ありえない悪夢で、ありえる正夢。

初めて見てから何年も経っているが、最近は特に見る。

 

真っ暗闇の中を、記憶の中を独りでさまよい、そして…レーリアに…。

 

…やめよう。こんなことを考えても無意味だ。

 

「先に汗を流すか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、マスター!おはようございまっす!」

 

汗を流した後ギルドメンバーの揃う大広間の中へ足を踏み入れると、自分に視線が集まるのを感じる。

…なぜ感じることしか出来ないのかというと、顔に張り付いたロガーのせいで何も見えないからだ。

 

「…ロガー、少し落ちつけ。マスターの顔から離れろ」

 

「そうよローちゃん。離れてくれないと私が抱き付いて食事をとれないじゃない」

 

「…ナーキュ、貴様も自重しろ」

 

ライドウはこんな時本当に頼りになる。

俺でさえ手を焼くギルドメンバーを冷静に対処する姿は格好いいと言うほか無い。

 

…以前、隠れて胃薬を飲んでいたのを目撃してしまったのは言わないでおこう。

 

「ロガー、気持ちはうれしいけど離れてくれ…。メロとアルファは来てないのか?」

 

「アルファは今メロを起こしに行ってるっす。こんな時間まで寝てるなんて、まだまだお子様ってことっすね~」

 

「それだとマスターもお子様に…冗談よ、ローちゃん。だからそんなに睨まないでよ~」

 

「マスター、この皿を並べておいてくれ」

 

「…ん、分かった」

 

ライドウは二人を無視するスタンスでいくようだ。

俺もそうしよう。正直、朝から疲れるのはごめんだ。

 

「皆さん、お待たせ致しました」

 

「ん~、まだ眠い…。でもご飯は食べたい…」

 

食事をテーブルに並べ終わった丁度その時、アルファとメロが部屋へと入ってきた。

メロは半分寝ているが食べ物への執着が勝ったようで、誰に言われることもなく席につく。

 

「マスターとライドウもご着席下さい。予定時間より大幅に過ぎてますので、食事をとりながら会議を始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じゃあ、そのアルグナ族を見つけることが、マレバラントに近づく一番の近道って訳ね」

 

「…今のところはそれしかないな」

 

俺たちが今回、六人全員で集まった理由は二つ。

 

一つはここ数年で集めた呪いやマレバラントの情報の共有と近況報告。

 

近況報告は主に、予想外のトラブルや活動を行う上での障害となる出来事を伝えることだ。

最初は俺のウェンディやミネルバの件を言及されると思っていたのだが…。

 

「いっつも偉そうなこと言ってるライドウが正規ギルドとトラブるとはね~。ふぁんとむ…ろーど、だっけ?これでうちが目を付けられたらどうするつもりなの?」

 

「殺人起こしてお尋ね者になっている奴に言われたくないな…」

 

「私は正当防衛ですぅ~。それに闇ギルドだったんだから死んでも構わないでしょ?ね、アルファ」

 

「メロ、さも私が元凶のような言い方は止めてください。私は命令通りに行動しましたが、あなたは明らかに殺人を楽しんでいたでしょう」

 

俺たちは闇ギルドであるし、他者とのいざこざは避けられないと言っていい。

しかし本音を言えば、これからの活動を妨げることは極力少なくしたかったのだ。

 

だから一つ二つの問題は覚悟の上であったが…。

 

「それに正規ギルドともめたのは俺だけじゃない…。なぁ?」

 

「ちょ、あっしはただたまたまクエストに来てた奴らと遭遇しただけっす!それにあっしの方が被害者っすよ!いきなり雷落とされたり、目が変な三人に襲われたんすからね!?」

 

「そんなこと言ってローちゃん、怒らせるようなことしたんじゃないの~?」

 

「いいががりは止めて欲しいっすね、村人全員廃人にした悪魔め」

 

「私は幼気な少年少女を助けただけよ」

 

…まさか全員とはな。

 

まあでも、構わないか。

評議院に感づかれるのも時間の問題だ。

 

俺への言及も忘れられているみたいだし…。

 

「安心していいわよマスター。後でしっかりお説教してあげるから」

 

「そ、そんなことより早く行くぞ。ハデスを待たせ過ぎだ」

 

そう、これらの話は通信用魔水晶を使えば済む話なのだ。

ここへ集まった二つ目の理由、もとい本題。

 

 

悪魔の心臓傘下の闇ギルド、不老不死としての仕事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れてすまない、ハデス」

 

この魔道戦艦の中でも特に重厚な扉を開くと、通ってきた狭い廊下とは比較にならない程に広い空間が視界に入る。

 

そしてその空間の一番奥には、俺たちを召集した張本人がこれまた大層で派手な椅子に腰掛けていた。

 

もう随分と待たせているはずだが、ハデスは機嫌の悪い素振りなどは少しも見せない。

 

「久しいな、ベイルよ。…おぬしと顔を合わせる度にこの言葉が出る」

 

「ここには滅多に来ないからな。これからは頻繁に出入りすることになるだろうけど」

 

「へーい!ハデス久しぶり~!だいぶ老けたんじゃな~い?」

 

「おいメロ…」

 

「…相変わらず、手下共の躾はなっていないようだな」

 

「そこは素直に謝るよ…」

 

ここへ来る度に痛感する。

うちのギルドメンバーと悪魔の心臓は本当に不仲だ。

 

正直、初めて彼らをこの場へ連れて来た時は、なぜここまでそりが合わないのか不思議で仕方なかった。

だから後ほど彼らに理由を聞き出したら…。

 

『自分たちはベイルだから従うのであって、あいつらに頭を下げるつもりは毛頭無い』

 

…本当に、馬鹿な奴らだ。

本当に。

 

でも出来るなら喧嘩は止めてほしい。彼らの喧嘩は喧嘩じゃすまない。

ウルティアがいなければ何度この戦艦が墜ちていたことか。

 

…そんな俺の心配をよそに、メロはハデスを煽りまくる。

 

「こんなに待たされてるのに全然怒んないなんておじいちゃん優しい~!それともボケて時間感覚無くなっちゃったのかな~?」

 

「私はその程度で憤慨などせぬよ。…私は、な?」

 

「何その意味深な発言、格好つけてんの?そんな老いぼれになってまで恥ずか…」

 

「炎神の…怒号!」

 

「っ!」

 

メロの口を止めたのは、普通の暖かく明るい炎とは似ても似つかない漆黒の炎。

 

…てか本気かよ。床に穴空いてるし。

俺はともかく、ハデスにまで当たってたらどうするつもりだったんだ。

力の制御が疎かになるほど頭に血が上っているらしい。

 

メロも避けていたようで、不適な笑みを浮かべながらその魔法の使用者へ顔を向ける。

 

「いきなりご挨拶だね、ザンクロウ?」

 

「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって…、俺っちが消し炭にしてやるってよぉ!」

 

「あんたの攻撃なんか当たる訳ないじゃん、全部返してあげる!」

 

ザンクロウの猛りは怒れる獅子そのもの。赤い目がギラギラと光り、メロを見据えていた。

一方、メロも戦闘準備は出来ているようで、鏡をいくつも作り出してザンクロウを迎え入れる。

 

いや、おい、待て!

 

「おい、今ウルティアはいないんだからやめとけって!お前らも止めてく…れ…」

 

 

 

 

「…なんであんたもいるっすか?」

 

「ウ、ウ~ウェ。自分も七眷属の一人ッスから…」

 

「…やっぱ被ってるっす…」

 

「おお、紳士な自分とキャラが被ってるのは誇っていいッス!仲間ッスね!」

 

「キャラじゃねえっすよ!お前みたいな白団子と一緒にするなっす!あっしが言ってんのは語尾のことっすよ!」

 

「ウ~ウェ、安心するッス。自分の語尾はカタカナッスから」

 

「はぁ!?」

 

 

…。

 

 

「ああ、片や人の心を奪う魅惑の悪魔、片や人の心を求める土くれ…。そんな君たちと俺が出会えたのは運命、そう!デスティニーの結晶!」

 

「そうね~。本当に結晶にされたくなかったら、その鬱陶しい口を閉じてくれるかしら」

 

「別に私は人の心など求めていません。求めているとしたら、それはあなたの不幸ですね」

 

「君たちの言葉が俺の心を貫き、俺の想像を膨らませる!君たちは俺のキャンパスを彩る輝きだ…!」

 

「ねえライドウ。こいつ永眠させていいかしら?」

 

「好きにしろ。俺は関わりたくない…」

 

 

…カオスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでハデス、俺たちの仕事って?」

 

収拾が付かなくなる前に全員を強制的に落ち着かせ(ハデスの助力有り)、何とか本題に入る。

 

「今ぬしらに頼みたい仕事は二つ。その二つの仕事に人員を割いてもらいたい」

 

「人員ならそっちに十分いるじゃないっすか」

 

「この仕事は楽なものではない。故に魔力も高いぬしらに任せたいのだよ。七眷属も他の件で出払ってしまうのでな」

 

「なによそれ。面倒くさい仕事じゃないでしょうね?」 

 

「…ゼレフ書の悪魔、ララバイとデリオラの回収」

 

呪歌に災厄の悪魔、か…。

ゼレフ書の悪魔…このギルドの傘下である以上、何度か耳にしたことはあるものの、実際に目にしたことは未だにない。

 

「仕事内容は概ね理解しましたが…、デリオラに関してはウルティアが既に出向いているのでは?」

 

「相手はゼレフ書の悪魔。ウルティアの腕を疑う訳ではないが、念には念だ」

 

そう言いながらハデスは仕事内容の細かい指示や情報を記した数枚の紙を俺に手渡す。

…この内容なら数人出せば問題なさそうだ。

 

「…よし、お前ら行くぞ。道中詳しく説明する」

 

「はっ、せいぜい死なないように足搔けってよ!」

 

…死なないように?

誰に向かって言っている。

 

「死なねぇよ、神殺し。死ねないからな」

 

俺の反応が期待のそれではなかったのか、ザンクロウは鼻を鳴らしてつまらなそうに顔を背けた。

 

 

 

 

「俺たちはまず、マグノリアに向かう」

 

 

 

 

 

 

 

 

闇ギルド、不老不死《エターナル・ユース》

 

 

 

 

 

X784年、活動開始

 

 

 

 

 

 

 




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