東方甘観処   作:南野涼夏

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蜜御の夜明け

幻想郷の人里から少し離れた道沿いに、「忘れられた」店が、復活した。

 

~~~~~~

甘味処「蜜御(みつみ)」。江戸時代に、江戸の中でも裕福な方の人達に愛された名店だ。

だが、蜜御は新たに出来た甘味処に客を少しずつ、奪われていった。

大政奉還がなされたころ、江戸に洋菓子という文化が流れてきた。

多くの甘味処は、洋菓子も揃えるようになった。

だが蜜御は、当時の店長の意思のもと和菓子だけで貫いてきた。日本の文化を、大切にしようとした。

その結果、客はどんどんと減り、多くの人が蜜御を忘れた。

その後の戦争で「贅沢は敵だ」がモットーだった日本では商売が成り行かなくなり、空襲で店が燃やされたことで、甘味処「蜜御」は完全にに忘れ去られた。

そして当時の店主――――今の4代前にあたる、小畑敦士(こばたあつし)は見知らぬ土地に居た。

敦士は近くを通りかかった人に尋ねた。

「一体ここは、どこなのです?」

その問いに対し、通りすがりの人は告げた。

「ここは幻想郷。私から言えることとしては、あなたは元の世界で「忘れられた」ということくらいだ」

敦士はなんとなくだが、理解したという。なぜなら、蜜御は人気が無くなり、店舗も燃えた。つまり、それは蜜御を―――――――敦士を忘れたということに他ならなかった。

だが、敦士は諦めなかった。そして彼は、

「私は、この幻想郷とやらで、「蜜御」を復活させる」

と誓った。そして敦士は、それからは調理器具や食材を集めるために働いた。そしてそれは、3代の間続いた。

~~~~~~

 

「まったく、ひい祖父さんたちも無茶するなぁ」

蜜御の現在の店主、「小畑寒汰(こばたかんた)」はそう呟きながら、蜜御の和菓子の製法や歴史が綴られた巻物を閉じていく。

蜜御を復活させるまで、4代かかってしまったのだ。

先代たちは後代のために資金集めと試行錯誤を繰り返してくれたのだ。寒汰の父――――先代はもう隠居して店を寒汰にまかせた。

「まあ確かに、蜜御の店主のなかで歴代最高の和菓子を、僕は作れるだろうけど」

寒汰は、「甘さを観測()る程度の能力」を有している。どんな食材を使おうと、甘くて美味しい和菓子にすることができるのだ。それに伴うくらいに調理技術も磨いたわけだが。

「さてと、店を開けるか」

朝焼けでそこかしこに散っている紅葉の葉のように赤い空の下、寒汰は店の鍵を外し、店先の板を「準備中」から「営業中」に変えた。

 

 

「客が来ない!」

寒汰は思わず叫んでしまった。

もう、太陽は高い所で燦々としていた。

「まあ、開店当時はこんなものか」

広告しておけばよかったなと思いながら、寒汰が店内を掃除していると、

「あの、すみません」

銀色の髪色をしたメイド服を来た女性がやってきた。

「いらっしゃいませ」

寒汰が笑顔でそう返すと、その女性は和菓子がある方へと向かった。

しばらくの間、その和菓子を見て悩んだあと、その女性は寒汰に問いかけた。

「おすすめはありますか?」

「おすすめですか………………。旬なんかも加味しますと……………………こちらの栗饅頭はいかがでしょうか。細かいところは企業秘密ですが、ペースト状にした栗や栗の甘露煮、栗のペーストを練り込んだ生地、それらを軽く直火で炙って作っております」

「それは美味しそうですね。お嬢様やパチュリー様の分まで購入していきましょう。これを10個頂けますか?」

「ええ、勿論」

寒汰は栗饅頭10個を箱に詰めて渡し、代金を受け取った。

「また来ますね。…………もし、強引に商品を奪おうとする方がいらっしゃったら、気をつけてくださいね」

そうして、その銀髪の女性は蜜御をあとにした。

 

 

それから少しが経って。

「いい匂いがするわね。それ、あたいにちょーだい!」

氷の妖精がやってきた。

「これは店の商品ですから、そういうわけには行きません」

「じゃあ、段幕ごっこであたいが勝ったらちょーだい!それじゃあ、いくよー!氷符「アイシクルフォール」!」

「ああ!もう唐突だな!」

寒汰はそう叫びながら氷の妖精が放った段幕を見る。左右から滝のような段幕が飛んでくる。

そして、寒汰は自らの能力を使用した。そして見つけてしまった。

……………………段幕が一切来ない安全地帯を。しかも、妖精の目の前に。

寒汰は段幕の「甘い」所を抜けていく。徐々にだが寒汰は段幕に一切当たらずに肉薄する。

「おーい、どこ狙ってるんだ?」

寒汰は妖精の目の前の安全地帯からそう茶化す。段幕に安全地帯が生じてしまうのはしょうがないことだからこのことで馬鹿にするつもりは一切ないが、今回は煽るためにそうした。

すると、氷の妖精は段幕を変えた。

「まだまだ! 凍符「パーフェクトフリーズ」!」

「よっと」

寒汰はその段幕も軽々と避ける。

「なんで当たらないのよ!」

「僕の能力は「甘さを観測る程度の能力」なんだけど」

寒汰はそこで数拍ほど開けて言った。

「僕の「甘さを観測る程度の能力」が観測ることができる甘さは、食べ物に限ったものではないんだよ。そして、その甘さの算出は数秘術とラプラス理論に基づく。つまり、未来予想から生み出される、ほぼ確定した「甘さ」を見ていることになる」

「えっと、数秘? ラプラ………なんだっけ?」

このとき、寒汰は悟った。この妖精は記憶力が残念だということと、それに伴って学習能力がないこと、そして、あまり後先考えてないことを。というか、妖精全体の特徴ではあるのだが。

「こりゃ無駄だな。向こうの泉の方から来たみたいだから、そろそろそっちに帰ってもらおうかなっと」

寒汰は段幕を避けながら接近して、自分のスペルカードを発動させた。

「打符「フォースフライト」」

フォースフライト。掌から力を飛ばし、相手を吹き飛ばすスペルカードだ。フォースフライトの射程は、僅か1尺に満たない。だが、当たれば吹っ飛ぶ。結構吹っ飛ぶ。

寒汰は生地作りでフォースフライトを利用する。

右手と左手で挟むようにして発動すれば、あとは勝手に同じ大きさの力で捏ねる(吹き飛ばす)ので、楽な上、品質が一定になる。

そんなフォースフライトを喰らった氷の妖精は、空を飛んで…………否、吹き飛んで泉の方へと帰っ…………強制送還された。

 

 

「面倒なのに絡まれたなぁ………」

その夜、寒汰は今日のことを振り返ってそんなことを考えた。

まともなお客様はあの銀髪の女性くらいであった。

「明日は店を開けずに、広告しに人里に行くか」

寒汰はそう決めて、広告用の紙を作り始めた。

広告が必要数完成したときには、外は明るくなり始めていた。




どうも、南野涼夏です。
この「東方甘観処」は「東方トーク」で試験用に執筆した小説になります。
何故か投稿できなかったのでこちらの方に投稿をさせていただきました。

この作品はここで完結させることも、続編を書くこともできるように終わらせていただきました。
個人的にはまだもう少し書きたいですけども、一応短編ということでこのようになっております。
尚、まったりと書いていこうかなとは思っています。
ご一読頂き、ありがとうございました。



↓ここから先は読まなくても問題ないです。↓


試験用ってどういうこと?
この作品は「甘味処」、「パチュリー」、「栗」の3語を入れるという制約のもと執筆しました。加盟試験みたいなものです。

寒汰の能力について
寒汰の能力は、料理面、戦闘面、心理面のいずれでも使える能力として作りました。
心理面の描写を構想すると、さとりが出て来ないと面白くならないので今回は省略です。この能力が心理面でどう作用するのかは、さとりや作品オリジナルヒロインが出てきたときにでも。
本編内で「数秘術やラプラス理論に基づく能力」という旨の文章があります。数秘術やラプラス理論についてご存知の方なら、寒汰のヤバさがわかる蓮の能力設定です。

数秘術やラプラス理論
正直申しますと、僕も詳しくありません。
wikiの「数秘術」と「ラプラスの悪魔」を参考にしてください。

なぜその2つに基づくの?
匂い=分子
物体=分子
すなわち、全部数値化して算出すれば甘さがわかるってことで良いよね!
って僕が考えたからです。
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