目標だった、目指す果ていた。その後ろ姿があるから、歩み続ける事が出来て、挫けそうなった時も奮い立てた。
心の中にすっぽりと、大きく穴が広がっている。
様々な伝説を残した殲滅のライザ、
私は喧騒から逃げるように、建物の屋上で横になり空を眺めていた。祭りに出向く様な気分にもならない、けれど引きこもるのも性に合わない。だから、人並みを観察するように屋上から祭りの様子を観察している。
人、人、人。何処からどこまでも祭りを楽しんでいる。騒がしいのが好きな殲滅卿を弔うには、皆が楽しんでいる方が良いのだろう。それこそ、暗く湿っていたら化けて出てくる可能性が高い。
(探窟家なら、偉大な事。アビスの深く、深く。誰も見た事ない、場所。物、何を見て、何を得たのか?)
私だって探窟家だ、アビスに降りる度に胸が踊らない事なんて一度も無い。未知なる物を得て、未知なる物を知り、未知なる物と戦ってきた。
探窟家となった以上、深く潜れば潜るほどにアビスへ足が進んでいく。底を見るために、想像も出来ない物語に挑む為に、狂うように進んでいく。
(知りたい、知りたい。いや、知らなくてはならない。)
身体を起こし、賑わう祭りを一望する。トコシエソウの花吹雪が舞い散り祭りの熱気は下がる様子は無い。
首にかけている黒笛をしっかりと握りしめ、私は決意をする。目標を失った今、新たな目標を立てる。
それは目標だった人の見た風景、見た場所を見に行く事だ。誰かが踏みしめた場所に価値は無いかもしれない。探窟家ならば新たな事を得なければならないかもしれない。
しかし、それでは私の心は動かない。
そういえばと、在ることを思い出した。
今日の朝に家に届いていた招集の手紙。探窟関係での呼び出しだと思うが、最近は不祥事も起こしていないしいらない遺物はかなりの数を渡していたはずだ。ならば、何処かで見つかった遺物の回収の為の依頼かもしれない。
面倒ではあるが、祭りを後にして呼び出し先へと行くことにした。今思えば、ここで少しでも立ち止まっていれば私は普通の人生を送れたのだろう。
◆ ◆ ◆
探窟組合本部、探窟家情報録。
現黒笛のシオン、この者は本人の技量と一級遺物所持適用者として、白笛への昇格を良しとする。白笛作成の材料は後に本人から組合に渡されたのち、加工を持って白笛として認定するものとする。
今回、一級遺物である燃え続ける腕は今後はシオンが所持する事を確定。燃え続ける腕の使用時、全身を重度の火傷を負うが遺物との適応が一致。
驚く事に数日後には身体に痕は残るが、遺物を扱えるまでに回復を遂げる。しかし、瞳は後遺症のためか鈍く黒くなり、痛覚の喪失が見受けられる。
白笛の所有を持って、黒笛のシオンは白笛の燈火のシオンと改める。
遺物の腕により自身の意識と共に遺物の腕が燃え上がり、全身を常に燃やし続ける事を確認。
アビス下部へと探窟の際の祝福が、遺物による最初の火により併発して発覚。
異常な程の再生能力、つまり燃えながら再生を繰り返して火を灯し続ける事が記録されてる。自身が痛覚を失っている為、遺物との組み合わせは抜群であろう。
現在発覚している異常は精神異常、痛覚喪失、感情の起伏。遺物制御の際、精神の異常を来し発狂。組合職員数人が焼失、塵だけの状態で確認されている。