燃え続ける腕、あれは酷い遺物だ。
飾りとして売り払われるならいいが、遺物を使う者が耐えきれなければあの遺物は手にとって起動させた者を塵になるまで燃やし続ける。
私は運が良かっただけだ、何度もアビスへと潜り上昇負荷を受けている中で身体の中に祝福が眠っていた。
遺物による炎上で焼き死ぬ時に、その祝福が私の生存本能により表へと出てきた。
異常な程の再生能力、只再生する速度が段違いに早くなるだけの祝福。これのおかげてこの遺物を使っていても死ぬことはなくなった。
しかし、一番の痛手は痛覚が完全に無くなってしまった事。痛みが無ければ色色な判断が鈍ってしまう。
それに全身の火傷痕、これはこの状態で完全に再生していると固定されてしまったが故に一生このままらしい。
別に誰かに見せるわけでもない身体だ、不便は無いが人目を引きたくないので肌は最低限見せない服を新たに慎重した。
これも、もちろんすべて遺物から作り上げた、そうでなければ燃え続ける腕を使うたびに全身素っ裸。
私は露出狂になりたくはない。
しかし、この遺物を所有する事が出来て念願の白笛としての活動がようやくできる。
白笛の象徴
私には目指す場所がある、このアビスの最下層。
◆ ◆ ◆
「ありがとう御座います、ではまた何時か会えたら」
「お気をつけて」
身体の調子をアビスへと潜る前に整える為、何度か通った医者の元へ訪ねていた。痛覚や瞳の濁りは直せないが、体調面に悪いところはないと言われたので、医者の元を去る。
旅に必要な医療品も必要だったので、一石二鳥。
医療品、探窟に必要な備品、あとは調味料。
食材は現地調達すれば事足りるので、味付け用に数種類用意しとけば外れはないだろう。
火は簡単に用意できるので、不便は無い。
「ん、お前はもしかしてシオンか?!」
「んぅ〜……? 嗚呼、ハボか久しぶりだ」
両手に買いこんだ物を持って自宅に向かっていと、黒笛のハボルグと遭遇した。
ハボルグとは黒笛の探窟家の時に世話になったが、ここ最近は疎遠だった。
しかし、遺物のせいで容姿がかなり変わっていたが、ハボルグは私と気づいた。茶髪の髪は炭のように黒くなり、目は黒く濁り、皮膚を晒さないように服装まで昔と違う物を身につけていると言うのに。
「噂には聞いていたが、白笛になったとは本当だったんだなぁー! はははっ! これは俺も頑張らないとなぁ!!」
「おぅぼぇ、うがっ、あまりゆするな、しゃべりにくぃ!!」
大きな手で背中を何度か叩かれるので、とても喋りづらい。振りほどいて逃げる事もできたが、久しぶりに出会ったのを無碍にするわけにもいかない。
こちらの言葉を聞いたハボルグが笑いながら背中を叩くのをやめた。
ハボルグは豪胆な男だが、私はハボの探窟家としての腕は買っている。なのでハボからの情報を聞きに行くこともある、逆に私からハボに情報を渡すこともある。
このデブハボは大部隊の統率にも優れているデブだ。確か不動卿が見つけた
せっかく出会ったのだ、少ない知人に何も言わず出ていくのも後味が悪い。
「ハボ、ちょっとアビスの奥に潜ってくるよ。せっかく、白笛になったんだ。目指す果てまで行ける。だから目指さないといけないんだ」
ハボの表情は見ない、どうせあっけにとられてから少し寂しそうな顔を見せる。けど、止めることはしない事はわかってる。同じ探窟家なのだから、気持ちは痛い程理解できるだろう。
「そうか……寂しくもなるな。これは早いこと俺も白笛になってお前に追いつかないといかんな」
「その頃にはもっと先にいてやるよ、ハボ。追いついてこいよ」
六層に降りれば再び帰還するこは不可能とされている、実質地獄への片道切符というわけだ。因みに六層からの上昇負荷は人間性の喪失、もしくは死に至るらしい。
「シオン、一つ。頼まれごとをしてくれないか……?」
「頼まれごと? 内容しだいでは受けてもいいぞ、話してみ」
何時にもまして真剣な表情でハボが頼み事をしてきた、今まで一度も頼る事をしてこなかった男の頼み事だ、内容しだいとも言ったが
ハボは声を押し殺し、手短に要件を伝える。
「アビスに降りた、子供達を見守ってくれないか」
アビスに降りた? 子供達?
要件だけでは到底理解ができない。取り敢えずハボの自宅へ向かい頼み事の内容をしっかりと把握する。
この二人はアビスの深層、奈落の底へ向けて探窟をしている。若干十二歳の子供達がアビスの底へと潜っている。これだけ聞いても驚きだが、あの人に子供がいたほうがよっぽど驚きだ。
あの性格で結婚してくれる人がいるなんて、度し難い人もいたもんだ。
しかし、子供がアビスの底に向かっているなんて。やはり、カエルの子はカエル。血は脈々と受け継がれている。
そんなハボの頼みごと、私は娘がどんな子供なのか好奇心が湧いてくる。
「その頼み、引き受けた! じゃあなハボ、またいつか会おう!」
「ああ、頼む……!!」
ハボの頼み事を受け、最後に今生の別れを告げる。底を目指せば生きては戻れない、これが最後の話だ。強く握手を交わし、ハボの家を後にする。
何処か落ち込んでいた気持ちは晴れやかになり、今は早くアビスに潜りたいと身体がうずうずしている。絶界行の申請はすでに済ましている、あとは認証が済めばすぐにでもアビスの奥底に迎える。
駄目だと言われても潜るつもりだが、一様は手順を踏んでおかないと後味が悪いだろう?
◆ ◆ ◆
「きゃっ!?」
「おっと……?」
自宅への帰り道、曲がり角でこちらに気づかない子供が勢いよくぶつかってきた。こちらの方が体格は上なので、そのまま子供は尻もちをついてしまう。
「大丈夫かい?」
尻もちをついた子供に手を差し伸べる、遺物がついた不格好な手の平をものともせずに握りしめて子供は起き上がる。目元に若干涙を溜めているのは見ないことにしおいてやろう。
砂を払ってやり、子供と視線を合わせる為に少しかがむ。
「元気なのはいいけど、気をつけな。私は頑丈だからいいけれど、思わぬ相手に出会うことだってあるんだ、いいね?」
「うん」
賢そうな子供、私が言うことに素直に返事をしてそれを理解している。
私が子供に買い込んでいた飴玉を一つ上げると、曲がり角からまったく同じ顔の子供が出てきた。あっけにとられそうになるが、双子は初めて見たのだから当然の反応とも言えよう。
「君たち双子か、じゃあ君にも飴玉あげよう。せっかくだし、名前を聞いてもいいかい?」
「私はシェルミ」
「私はメナエ」
「いい名前だ、それに賢いな君たちは」
オースに住む一般的な子供の服装からみて普通の家庭の子だろう、しかし将来有望だ。
名前を言えた二人の頭を撫でてやり飴玉を平等に追加する。
そして今度からは気をつけなと言い残し、二人と別れる。
二人に健やかに幸せな未来を。死ぬ為にアビスに潜る私は、小さな願いを込めながらまた歩く。
さよなら、オース。
無茶苦茶書くの難しい。