奈良シカマルが好きなんです!   作:あるか

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その2

青い空、ぽつりぽつりと浮かぶ白い雲。

それらを一切見ずに屋上で目を瞑る私。

みなさんこんにちは、人並ナミです。

絶賛狸寝入り中です。

 

この場所がシカマルのお気に入りの日向ぼっこスペースだという事を突き止めてから早1週間。

シカマルに偶然会うために毎日ここに来て狸寝入りをする日々。

いやもうびっくりするほどシカマル来ない。

もう1週間だよ?毎日2-3時間日を浴びながら狸寝入りしてるからちょっと日に焼けてきたよ?

とかなんとかダラダラと考えて考えてるうちに今日もまた帰る時間になってきてしまった。

はぁ…今日もまた会えなかったよ…。

と思っていたら、誰かが階段を登ってくる気配を感じる。

なんで気付いたかって?もちろん狸寝入り中はいつシカマルが来てもいいように全力で周囲の気配を探っているからである。

変態?ストーカー?なんとでも言って。

相手にバレなければ合法だから。

 

っていうか、 あれ、え、もしかしてこの気配って…!

 

ガチャ、と扉を開ける音が聞こえる。

いや、まだだ、まだ慌てるような時間じゃない…。

この気配がものすごくシカマルに似た気配だとしても本人とは限らない。

慌てるな、落ち着いて狸寝入りをするんだ私。

この1週間で磨き上げた狸寝入りの技術を見せつけてやるんだ。

 

「…っ!先約が居たのか」

 

ボソリと呟くような声が聞こえる。

脳髄を蕩けさせるような、私の待ち望んだ声だ。

シカマルだーーーーーーー!

し、しかもこの気配的には私に近付いて…え、隣に来た!寝転んだ!

お、落ち着いて。

とにかく自然な寝息を意識しないと、ひっひっふー、ひっひっふー。

あっだめもう無理我慢出来ない。

 

「ん゛んっ…、ふぅ……ん…」

 

我慢出来なかった…。

大好きな人が隣にいるのに呼吸を荒らげない方が無理だったよ…。これでもどうにかまだ自然に身じろぎしたくらいで抑えられた私を褒めたい。

 

………って、隣からめっちゃ視線感じるんだけど。

これ、もしかして起きてるのバレた?い、いや、シカマル、私起きてないよ、大丈夫だよ。

すやすや。

すやぁ。

………。

…………………いや、もうこれ起きた方がいいな。

バレかけてるなら不自然に眠り続けるよりもいっそのことシカマルが隣に寝転んだことで目が覚めたみたいな感じにした方がまだマシな気がしてきた。

私の修行が足りなかったせいでシカマルと数十分一緒の空間で寝転ぶ幸せ計画がパーになってしまった。

 

「ん……、ふわぁ………んー…あれ…?シカマル……?」

 

「……おう」

 

どうしようシカマルすごく反応悪いんだけど。

シカマル頭いいからなぁ、やっぱ狸寝入りバレてたのかな?いやでもバレる訳にはいかない、私がシカマルのことを好きだとバレる時はシカマルが私のことを好きになってくれた時だって心に誓ってるんだ。

ということで今からフォローすればなんかいい感じにまとまらないかな…。

ダメ元でやってみよう。

 

「あはは、いやぁなんかこの場所すごく気持ちよくってさ〜。気付いたら寝ちゃってたよ」

 

あはは、と誤魔化すように笑う。

シカマルがこの場所を気に入ってるからそこを持ち上げつつ、同級生に眠りこけてたところを見られて恥ずかしくて言い訳をしている風の対応!お願い!誤魔化されて!

 

「まぁ…確かにな。俺もよくここで雲見るけど、うるさくねーし風が気持ちいいよな」

 

まさかの会話が続いた。

誤魔化せたかはわからないけどもうそれどころじゃない。

夢じゃない?ほっぺ抓りたいけど今は我慢して会話繋げて仲良くならないと!

 

「雲?」

 

「あぁ、俺、雲好きなんだよな。好きに空を浮かんでて、自由で」

 

「雲を自由だって考えたことなかったなぁ。でも私も雲は好きだよ。いろんな形があって、時間と共に形を変えていって、見ていて飽きないよ」

 

好きって言った、好きって言った、好きって言った。

しかも柔らかい笑顔付きで。

脳みそにそりゃもう深く刻み付けていつでも再生できるようにするしかないよね。

 

「お前もよくここに来るのか?」

 

これ、探られてる?

ここで来るって言ったらもうシカマル来なくなる?

さっきもここ静かだからいいって言ってたしやっぱ雲見るなら一人で見たいよね…。

でも私はシカマルと見たいんだ!いや、シカマルと見たいというかシカマルと居たいんだ!でもやっぱりシカマルが迷惑そうなら邪魔するわけにはいかないし…。

ここはとりあえずそれとなく確認しよう。

 

「ううん、今日は偶然来ただけ。すごく気持ち良くて眠っちゃったけど」

 

あはは、と照れたように笑い一番聞きたかったことを聞く。

 

「さっき言ってたけど、シカマルはこの場所好きなんだよね?もし良かったらなんだけど、私もたまにでいいからここに来てもいいかな?」

 

心の中で拒絶されないように願う。

 

「別に、俺に聞くことじゃねーだろ。ここは俺の場所じゃねぇんだし」

 

そういうシカマルは、ちょっと言いづらそうに、目線を逸らしながら、

 

「でもまぁ、俺もよくここ来るし、お前が来るようになったらまた会うかもしれねぇな」

 

と、照れくさそうにはにかみながら言った。

………好き。シカマルのこういうところが好き。

きっと私がシカマルの場所に横入りしたことを気にしてるんじゃないかって思ってフォローしてくれたんだろう。

こんな優しい言葉をかけるようなキャラでも無いのに、照れくさそうに私のことを気遣ってくれて。

やっぱり私はシカマルのことが好きだ。

 

「ほんと?じゃあお言葉に甘えてまた来ようかな」

 

さーて、家に帰ったらどれくらいペースで来るのが自然かを計算しないと。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

俺は雲が好きだ。

特に日当りのいい場所で雲を見ると心が落ち着く。

だから俺は今日も、よく雲を見るために使う場所の一つへ向かった。

 

「…っ!!?」

 

ドアを開け、普段寝転んでいる大きめのベンチへ向かうと、そこには俺の好きな相手、人並ナミが居た。

 

「先約が居たのか」

 

驚きすぎたのを誤魔化すように呟く。

しまった、この声で起きたりしねぇよな。

なんでこんなところで寝てるんだ?つーか寝顔可愛すぎだろ…。

と考えながらナミの隣に寝転ぶ。

距離が近い。実質添い寝だ。

でも仕方ねえよな、ここにはベンチは一つだけで、俺は雲を見に来た。何も不自然なことは無い。

心臓が高鳴り過ぎて痛くなりつつも寝ているこいつに視線を向ける。

 

「んんっ…、ふぅ……ん…」

 

……エッロ。

なんだ今の息遣い、すげぇエロかったぞ。

つーかこいつこんなところで寝てここに来たのが俺以外だったらどうするつもりだったんだ?寝顔かわいいな…。いや違う、そうじゃない、そうじゃないはずだが寝顔に見惚れすぎて頭が回らない。

もう雲どころではない。

にしても何だこの顔、ちょっと微笑んで寝てるなんて反則だろ。

 

「ん……、ふわぁ………んー…あれ…?シカマル……?」

 

!!!!!!!!!!!

しまった、やっぱり起こしちまってたか。

つーか眠気眼を擦ってんの可愛すぎねぇか。

好きなやつの寝起き見れるとか貴重な体験すぎる、今日ここに来てよかった。

 

「……おう」

 

こんな素っ気ない返しをしたいわけじゃ無いんだ。

だが寝起きのこいつがあまりにも破壊力が高すぎて何も考えられなくなる。

くそっ、もっと気の利いたこと言えれば今頃こいつと仲良くなれてるかもしんねーのに。

 

「あはは、いやぁなんかこの場所すごく気持ちよくってさ〜。気付いたら寝ちゃってたよ」

 

と思っていたらまさかあいつから話しかけてきてくれた。

2度目のチャンス、これを逃すともうあとは無い。

どうにか話をしねーと。考えろよ、俺。

 

「まぁ…確かにな。俺もよくここで雲見るけど、うるさくねーし風が気持ちいいよな」

 

「雲?」

 

「あぁ、俺、雲好きなんだよな。好きに空を浮かんでて、自由で」

 

話している最中で気付く。

いや雲の話なんて誰も興味ねーよ。

何話してんだよ俺。

こいつの好み知ってんだからもっとこう、甘いもんの話とかあっただろ。

なんでくそつまんねー雲の話なんて始めたんだ。

なんで俺こんなつまんねーやつなんだ。

 

「雲を自由だって考えたことなかったなぁ。でも私も雲は好きだよ。いろんな形があって、時間と共に形を変えていって、見ていて飽きないよ」

 

楽しそうに笑いながらナミは言う。

だが俺はそんなこいつを見る余裕なんて無かった。

「好きだよ」

こいつの、こんな言葉を、二人きりの状況で聞ける日が来るなんて夢にも思っていなかった。

もちろん俺に向けて言ったわけじゃねぇのは分かってる。

でもそれでも頭の中では無限にリピートしている。

いつかこのセリフが俺に向けて言われる日が来るのだろうか。

 

それにしてもこいつ今日ここで寝てたけど、もしかしてここによく来たりするのか?

俺は普段はここにはそんなに来ねぇが、こいつが来るって言うなら話は別だ。

別に今回は偶然会っただけだから普段来る頻度なんてバレてねーだろうし、こいつがよく来るならもっとこの場所に来る回数を増やして会う確率を上げてぇところだ。

 

「お前もよくここに来るのか?」

 

「ううん、今日は偶然来ただけ。すごく気持ち良くて眠っちゃったけど」

 

やっぱそう上手くは行かねぇか。

会う回数が増えたらその分会話も増えて少しでも仲良くなれんじゃねーかと思ったんだけどな。

 

「さっき言ってたけど、シカマルはこの場所好きなんだよね?もし良かったらなんだけど、私もたまにでいいからここに来てもいいかな?」

 

「別に、俺に聞くことじゃねーだろ。ここは俺の場所じゃねぇんだし」

 

やべぇ……、嬉しすぎてにやけちまう…。

どうやらこいつはこの場所を気に入ったようだ。

これからはここに来るようにするか。

しかしこいつ、もしかしたら俺が邪魔だと思ってると勘違いしてるかもしれねーな。

そんなことはありえねぇがこいつが来るのを遠慮しちまわねーように念の為駄目押ししておこう。

 

「でもまぁ、俺もよくここ来るし、お前が来るようになったらまた会うかもしれねぇな」

 

しまった…。

これだとまるで俺がこいつに会いたいみてぇじゃねーか。

間違ってねぇけど。

下心丸出しできめーんだよ俺。

駄目押しどころか大失敗じゃねーか。

あーくそ、これならなんも言わない方がまだ良かったかもしれねぇな。

頼むから考え変えないでくれ頼む。

 

「ほんと?じゃあお言葉に甘えてまた来ようかな」

 

下心には気付いて無かったみたいだ。

うし、これからはここに来よう。

もし今よりも話せるようになれば、俺の他の気に入ってる穴場にも一緒に行きてぇな。




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